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より厳重な安全対策をする必要がある
たとえば、50kW(キロ・ワット)の充電器で充電するとした場合、400Vアーキテクチャーであれば最大で125Aの電気を流すことになるが、800Vであれば62.5Aで同じ電力を得られる。そのぶん、充電ケーブルを細くすることもでき、軽い扱いで充電作業ができる。
高出力のEVにしたい場合も、電圧が400Vのままであれば、必要な高電力(W)を得るため、配線を太くして、より多くの電気を流せるようにしなければならない。当然ながら、太くなった配線分は重量増になる。
とはいえ、電圧が高いと、故障や不具合に対する安全対策をより厳重にする必要がある。
家庭で使う100Vでさえ、万一ショートしたら火花が散る。車載されている補器用の鉛酸バッテリーの12Vでさえ、ショートしたら火花はもちろん、それなりの衝撃を感じるはずだ。
それらを知れば、400Vでも万一の危険性はかなり高いのであって、それであるから、高電圧系の配線はオレンジに色分けされ、資格をもつ整備士以外は触れないように注意喚起されている。それが2倍の800Vとなれば、より以上の注意深さが、設計はもちろん取り扱いにおいて不可欠だ。
消費者の立場からすれば、高電圧化は利便性の向上に直結し、歓迎されるべきと思いがちだ。しかし、いいことばかりではないことを知っておくべきだろう。
それはEVの高性能化を否定するものではなく、適切なバッテリー車載量を選びながら、充電の仕方で利便性を損なわないような、最良の充電社会基盤整備という構想が不可欠であることを、改めて認識することに通じる。
それには、EVはエンジン車やハイブリッド車とは違う乗り物であるという出発点からはじめなければならない。このことは、メーカーだけでなく、EVを使う消費者にも発想の転換を促すことになるだろう。