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エンジン車と違ってEVはFFだのFRだのにあまり意味はなかった! 重要なのは「駆動輪」がどこかだけ


TEXT:御堀直嗣 PHOTO:ボルボ/TET 編集部
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モーターの配置や駆動輪が関係

FR(フロントエンジン・リヤドライブ)やFF(フロントエンジン・フロントドライブ)の表現を、電気自動車(EV)では、何がどう配置されていることによって判断すればよいのだろうか。

ひとつの考え方は、エンジンに替わるモーターの配置と駆動輪の関係で、FRやFFなどということができるのではないだろうか。

それでも、たとえばボルボがEX40で当初の前輪駆動から後輪駆動へ、同じ車種で駆動方式を変更したように、モーターにはエンジンのような補器(排気管など)がないので、フレーム構造が許せば容易に車載位置を変更することができる。

ボルボEX40

モーターの車載という点で、インホイールモーターが端的にEVらしさを表しており、タイヤのホイールの内側にモーターを組み付けることで、車体側に搭載しない選択肢もある。こうなると、FRやFFといった表現はそぐわない。

したがって、単に前輪駆動、後輪駆動、あるいは4輪駆動(全輪駆動)ということになっていくのではないか。

EVは、駆動用バッテリーという重量物を、平たく床下に車載するのが一般的で、それによって前後の重量配分もほぼ決まる。したがって、エンジン車のようにFFだと前輪側が非常に重くなるといった不均衡は生じにくい。モーターよりバッテリー重量のほうが前後重量配分への影響が大きいからだ。

トヨタbZ4Xのボディとベアシャシー

EV専用設計になれば、駆動輪の近くにモーターを車載するほうが設計の合理性は高まる。もし、前輪側にモーターを配置し、駆動は後輪という配置にすれば、モーターから後輪側へプロペラシャフトを通さなければならず、それによって室内の床にエンジン車と同じようなトンネルの出っ張りができ、居住性に影響を及ぼす。なおかつ、車体床下には平らにしたバッテリーを敷き詰めたいので、その間をプロペラシャフトが通り抜けるような設計は、車載バッテリー容量の確保にも障害をもたらす。よいことはひとつもない。

後輪駆動なら、後輪側にモーターを搭載するのが適切で、この場合は、エンジン車でいうRR(リヤエンジン・リヤドライブ)といえなくもない。ただし、エンジン車でのRRは、後輪の車軸より後ろにエンジンが載っていることをいう。フォルクスワーゲンのID.4は、後ろにモーターがあり、後輪駆動だが、モーターを後輪車軸の前側に搭載するので、ミッドシップといえなくもないと語っている。モーター位置が車軸の前か後か、その配置次第で言葉どおりといえなくもないが、もはやエンジンのときのような意味はそれほどない。

フォルクスワーゲンID.4

結論として、EVでFRやFF、RRといった呼び方は、必ずしも間違いではないかもしれないが、もはやあまり意味をなさなくなっており、単に後輪駆動(RWD)、前輪駆動(FWD)、4輪駆動(4WDまたは全輪駆動AWD)と表現したほうがいいのではないか。

そのうえで、FRやFFといった表現が残るとしたら、それはエンジン車やハイブリッド車(HV)などと共通の車体を使うEVに限られていくのではないだろうか。

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