Contents
EVは各部の適性温度が異なる
現在は、効率でもっとも優れる(全固体電池はまだ普及段階にはない)といわれるリチウムイオン方式が使われている。正極の活物質にニッケル酸リチウム、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウムなどが用いられ、負極の活物質にカーボン、そして正極と負極が接しないようセパレーターが設けられ、密閉された電池内でリチウムイオンが動く(遊動)ことができるよう、電解液が充填される構造となっている。電気は、この正極と負極の間をリチウムイオンが移動すること(化学反応)によって発生する仕組みだ。
ところで、この化学反応が円滑に進む要素としては、適性温度であることが必要条件として挙げられ、理想温度域は20〜25℃といわれているが、実用上は5〜45℃あたりと考えられている。つまり、EVを効率よく(より多くの電力発生、充放電に対する電池の寿命など)走らせようとすれば、動力用バッテリーを適性温度内に保っておく必要がある、ということだ。
では、まず温度上昇の対策から見てみよう。リチウムイオンバッテリーは、極端な高温になると爆発の可能性があり(EVでの一般用途では考えにくいが)、バッテリーの能力(容量)を維持する上で、バッテリーの温度を適性範囲内に保っておく必要がある。
このために必要なものが冷却システムで、一般的に空冷、水冷、液冷(油冷)の3方式が考えられている。基本的には、内燃機関車の冷却システムと同じ考え方で、現状は水冷方式がもっとも多いようだ。冷却システムは、モーター、バッテリーの周辺に水路を巡らせることで発生した熱を奪い、最終的には大気中に放散するという方式だ。
一方、温度が下がり過ぎてもリチウムイオンバッテリーの性能は低下する。航続距離が短くなったり(正常時の20〜30%ダウンと見積もられている)充電時間が余計にかかったり、という実用性能面でのマイナス要素だ。原因はバッテリー温度が下がり過ぎているためで、バッテリーを暖めることで性能の低下を防ぐシステムが設けられている。これが電力を使ったバッテリー加温ヒーターだ。
EVの難しい部分は、EVシステムを構成する各部の適性温度がそれぞれで異なることで、その冷却方法がやっかいな問題点となっている。結果的に、冷却システムが複雑になることで、そのぶんの車両コスト上昇や重量の増加が避けられない問題となってなる。
とはいうものの、EVはまだスタートして間もないシステム。発展途上にあるのは間違いなく、この先何年かすれば、飛躍的に向上した形態に発展している可能性は十分考えられる。現状でいうEVの及第点は、実用性能において内燃機関車と遜色がないこと、あるいは劣っていても容認できる範囲内にあること、これが判断の分岐点になるのだろうか。