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EV推進の急先鋒日産が欧州でリーフの販売を終了! BYDが勢いを増すなか欧州市場の戦略はどうなる?


TEXT:高橋 優 PHOTO:EV NATIVE/THE EV TIMES
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日産の前に立ちはだかるのはコスパ最強中国EV

そしてその欧州市場に導入が予定されているのが、マイクラのEVバージョンです。2024年中の導入がアナウンスされているこのマイクラEVは、日本のマーチの欧州バージョンとして、現在は販売が終了している内燃機関車のマイクラをEVバージョンとしてリブートしてきたモデルとなります。

日産マイクラのEVバージョンのサイドビュー

そして、このマイクラEVについては、アライアンスメンバーであるルノーの新型EV、ルノー5の兄弟車であり、どちらもルノーのEV専用工場で生産予定です。その兄弟車であるルノー5については、ちょうど直近においてワールドプレミアが開催され、詳細なスペックが公開されました。

ルノー5のフロントスタイリング

40kWhと52kWhという2種類の三元系バッテリーをラインアップすることで、航続距離は、欧州WLTCモードにおいてそれぞれ300kmと400kmを実現。充電性能については、最大100kW程度に対応することが可能です。さらに、全長が3920mm、全幅1770mm、全高1550mm、ホイールベースが2540mmと、日本のコンパクトカーと同等の取りまわしやすいサイズ感です。

また、マイクラEVも同様に、アライアンスのEV専用プラットフォームを採用しています。元々CMF-B EVプラットフォームと呼ばれていたものの、今回のワールドプレミア内において、AMPR SMALLプラットフォームと命名変更されました。いずれにしても、EV専用プラットフォームを採用することによって、コンパクトEVに求められるEV性能を実現してきた格好です。

ルノー・日産・三菱アライアンスのEV専用プラットフォーム

そして、値段設定が2.5万ユーロからのスタート、日本円でおよそ407万円からのスタートを予定しています。現状ラインアップされているリーフについては、40kWh搭載グレードでも3万ユーロを超えていることから、同じく40kWhを搭載するルノー5が2.5万ユーロであることを鑑みると、コスト競争力がかなり増していると言えます。

他方で問題は、先ほど取り上げていた、とくに中国製EVの存在です。MG4については2022年末に発売されているにもかかわらず、51kWhバッテリー搭載グレードで2.8万ユーロから発売中。

MG4のフロントスタイリング

また、ドルフィンについても、45kWhバッテリー搭載グレードで、同等の2.9万ユーロ程度から発売されている状況です。

つまり、じつはコスト競争力という観点では、2024年末に発売されるルノー5は、数年前に発売されている中国製EVと対して変わらず、やはり中国製EVのコスト競争力の高さが見て取れるわけです。

BYDドルフィンのフロントスタイリング

しかも、現在中国BYDについては、ハンガリーにおいてEV生産工場の建設をスタートしている状況です。よって、輸送費のコスト削減とともに、現在フランスを筆頭としてさらに多くの国で導入見込みの中国製EVを念頭においた補助金排除の制約を回避しようとしてきています。

BYD側については、2025年末から2026年前半ごろまでにハンガリー工場の操業スタートを計画しているため、補助金排除の動きを回避可能な見込みです。

いずれにしても、今回のルノー5、およびその兄弟車となるマイクラEVについては、リーフよりもコスト競争力は高くなるものの、競合関係となる中国製EVと比較すると、現状でも中国製EVのコスト競争力の高さが光るわけです。この点は、日産とルノーの電動化における大きな脅威となることは間違いありません。

ルノー5のフロントスタイリング

このようにして、日産が欧州市場におけるリーフの現地生産をすでに終了しながら、2024年中にも13年間続けてきたリーフの販売の歴史に幕を閉じる方針を表明し、そのリーフの後継モデルとなるChill outベースのコンパクトクロスオーバーについては2026年中に現地生産スタートとなっていることから、ただでさえアリアの販売台数が伸び悩んでいる日産にとっては、後継モデル登場までの空白期間によってさらにEVシフトが停滞する可能性が出てきている状況です。

日産のコンセプトカーChill Outのサイドビュー

そして、その空白期間を埋める存在として期待されているのが、日本のマーチに該当するマイクラのEVバージョンの存在です。兄弟車となるルノー5のスペックを見てみると、EV性能や車両サイズという点で、日本にも導入してほしいと感じさせる、非常にまとまったスペックを実現しているように見えます。

他方で、現在欧州で脅威論が噴出している中国製EVの競合車種と比較すると、すでに同等のコスト競争力を有したEVが発売されているという点、並びに補助金排除や関税回避、輸送費削減などのために欧州域内に生産工場を建設中であるという現状を見ると、中国製EVのコスト競争力がさらに増していくことは間違いない情勢です。

いずれにしても、
・世界初の本格量産EVであるリーフを発売した日産が、2030年までに、欧州の完全EVシフトを実現することができるのか。
・そのために、マイクラEVを皮切りとして、リーフの後継モデルなどのEV性能やコスト競争力をどれほど引き上げることができるのか。
・そして、中国製EVに対してどこまで対抗することができるのか。
・さらには、日本国内においてリーフをいつまで生産するつもりなのか。
・そして、リーフの後継モデルはいつから発売スタートとなるのか。
に注目です。

それ以外の新型EVの投入計画も含めて、最新情報が分かり次第情報をアップデートしていきたいと思います。

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