販売ランキング上位の日本車にBYDが急追
次に、2023年シーズンにおいて、タイ国内で人気の、ガソリン車をすべて含めた自動車ランキングトップ20を確認しましょう。
バッテリーEVに関しては、概ね4車種ほどがランクインしてきていることから、すでに2023年通しでも、バッテリーEVが主要な選択肢のひとつになり始めている様子を確認可能です。
とくに2023年後半から登録がスタートしていたDolphinに限っていえば、2024年シーズンではトップクラスにランクインすることは確実です。
しかも2024年後半からは、タイ国内の車両生産工場にて現地生産がスタートすることで、輸送費の削減による、さらなる値段引き下げにも期待可能です。その上、Dolphinよりも安価なSeagullの発売もスタートすれば、電気自動車のプレゼンスがさらに増すことは間違いないでしょう。
実際に、最新のデータが判明している2023年12月単体における、ガソリン車を含めた販売ランキングトップ20を確認してみると、バッテリーEVは6車種もランクインしていることが見て取れます。
他方で、Dolphinですら第6位であり、トップ5はトヨタとホンダのガソリン車が席巻しているという点も見逃せません。
ヤリスATIVとホンダ・シティについてはコンパクトセダン、ヤリスクロス、HR-V、カローラクロスについてはコンパクトSUVセグメントに該当します。なんといっても値段設定が安価であることが求められることから、まだバッテリーEVのラインアップが手薄なわけです。
そして、この人気のコンパクトセグメントに対して、いよいよ2024年は新型EVが投入される見通しでもあります。
まずは、中国BYDがYuan UpというコンパクトSUVをラインアップする予定であり、Atto 3よりもさらに安価となることで、ヤリスクロスを筆頭とするガソリン車のコンパクトSUVのシェアを奪うことに期待可能です。
そして、それ以上にもっとも注目するべきセグメントというのが、ピックアップトラックセグメントです。
このグラフは、ピックアップも含めた2023年12月単体の、タイ国内の自動車ランキングトップ20を示したものになります。
ヤリスATIVを上まわる圧倒的な人気を誇るのが、トヨタ・ハイラックスやいすゞD-Maxという、ピックアップトラックです。
よって、タイ国内のEVシフトをさらに進めていくためには、このピックアップトラックセグメントに対して、バッテリーEVを投入していく必要があるわけです。
そして、BYDはここにも新型EVを投入する予定であり、現在テスト走行が行われている真っ最中です。おそらくこれもタイ国内の生産工場で現地生産が行われる可能性が濃厚で、同じくピックアップトラックが人気で右ハンドル市場であるオーストラリアなどにも出荷されていくものと推測可能です。
いずれにしても、タイ市場については、記録的なEVシフトを実現した2023年シーズンに続いて、さらにEVシフトが進む一年となることは間違いありません。
とくに、現在急ピッチに販売ディーラー網を構築中のBYDについては、Dolphinの納車ラッシュと現地生産化しながら、さらに安価なSeagullの発売予定です。
その上、内燃機関車で人気となっているコンパクトSUVセグメントにYuan Upを投入しながら、タイで大人気であるピックアップトラックの発売をスタートする予定です。これらの矢継ぎ早のEV投入によって、タイのEVシフトをさらに進める見込みです。
そして、もっとも注目すべきは、いま列挙したBYDの新型EVたちの投入によって、競合するセグメントというのは、すべて例外なく、日本メーカーのガソリン車が現状圧倒的なシェアを有しているという点です。
日本メーカーの内燃機関車が引き続き圧倒的な支配力を有する1年となるのか、それともBYDを筆頭とする中国メーカー勢のEVの投入ラッシュによって日本勢の販売シェアが低迷する1年となるのか、2024年シーズンの東南アジア・タイ市場のEVシフト動向からは、俄然目が離せません。