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どんな未来にも即対応できる体制
ーー水素は、バッテリー駆動が向いていない、船舶とか大型トラック、あるいは充電時間が長いと不利なタクシーに向いていると、ドクター・グルドナーじしんが言っています。そういう製品を作っていないBMWが、なぜ、燃料電池に熱心なのでしょうか。
「端的にいうと、この技術を欲しがる企業が出てくると思うからです。もちろん、私どもは商用車を手がけていません。タクシーにすら、ほとんど使われていません。そこに、私たちがトヨタ自動車と共同開発を続ける意味があるのです。『MIRAI』は、日本に限らず、欧州のいくつもの都市でタクシーに使われていますし、技術的知見が蓄積されていくのです」
ーー水素を普及させていくためには、どのぐらいのインフラ投資が必要でしょうか。
「それは難しい質問です。そこは私たちが直接かかわっていない分野ですから。BMWジャパンのシンポジウムに出席した日本水素ステーションネットワーク合同会社(代表社員職務執行者)の吉田耕平さんが、日本における水素ステーション整備事業について話をしていらっしゃったように、水素ステーション事業者を募っていくのは大事です。私は、これまで数回、日本を訪れて、地方都市にも足を運んでいます。そこで充電施設を拡充していくのは大変だというのも理解しているつもりです。そういうところでは、従来のサービスステーションをコンバートできる水素ステーションは有意義だと思います。欧州では、化石燃料と水素燃料、ともに一つのステーションで販売していますし」
ーー燃料電池車の開発をこの先進めていくにあたって、どんな目標を持っていますか。
「具体的な目標を言うのは難しいです。パワートレインは何が主流になっていくか。絶対にこれだ、と言い切ることは出来ません。情勢はどんどん変わっていくので、どんなことになっても、即対応できる体制を敷いていくしかないっていうのが、私たちの考えです。ガソリン、ディーゼル、プラグインハイブリッド、バッテリー、そして燃料電池。ジャパンモビリティショーでも、私たちの展示は多彩です。それがいまの考えなのです」
燃料電池を手がけていない自動車メーカーも数多くあるが、様々な要件を考えていくと、パワートレインの多様性こそ、企業の存続にとって最も重要であると思えてくるのは事実。
「これからは水素タンクを小型化して(Z4を含めて)すべてのラインナップに対応するのも今の課題」とするドクター・グルドナーの言葉は、説得力を持つのだった。