2023年10月
TEXT:小川 フミオ
200kmごとに水素ステーションが整備される欧州でBMWが燃料電池に取り組む理由

ジャパンモビリティショーのBMWブースにはFCEV(燃料電池車)の「iX5ハイドロジェン」が展示されている。JMS開幕前日に燃料電池車の開発を進めるBMWとトヨタ関係者によるシンポジウムが開かれていた。この催しに参加した小川フミオ氏のレポートをお届けする。 再エネでグリーン水素製造が理想的 BMWジャパン(正式にはビー・エム・ダブリュー株式会社)は、水素を燃料とするFCEVの実証実験を、2023年7月25日から開始している。 その車両「iX5ハイドロジェン」を、私も、2022年にアントワープでの国際試乗会でドライブしたことがある。 なんでアントワープだったかというと、巨大な港湾都市であり、船舶や大型貨物車の次世代燃料として、水素が有力視されていて、水素ステーションも増えているため相性がいい、と説明された。 水素を解析して、イオンを取り出し、それを電気エネルギーとしてバッテリーに充電してモーターを駆動する。つまり、水素を燃料とした電気自動車である燃料電池車のiX5ハイドロジェン。 アントワープを走り回ったところ、好印象。トルクがたっぷりあって、加速はスムーズ。燃料としての水素と、窒素化合物の排出ゼロの燃料電池車の可能性を実感させてくれるものだった。 そんななか、「ジャパンモビリティショー2023」開催とタイミングを合わせて、BMW本社で、水素技術におけるジェネラルプログラムマネージャーを務めるドクター・ユルゲン・グルドナー(Dr. Juergen Guldner)が来日した。 ショー開催前の10月24日には、ジャーナリストを招いて「燃料電池車をテーマとしたシンポジウム」が、BMWジャパン主催で開催され、2011年より基礎研究を共同で行っているトヨタ自動車の担当者らも出席。 モデレーターを務めたジャーナリストの清水和夫氏が「風力などで発電した電気の貯蔵は喫緊の課題で、電気から水素を作り(グリーン水素などと呼ばれる)エネルギーとして使うのがひとつの理想型」とするなど、可能性が示唆されたのも印象的だった。

TAG: #BMW #iX5ハイドロジェン #燃料電池車(FCEV)
カワサキ・ニンジャe-1(photo=磐城 蟻光)
TEXT:磐城 蟻光
漢の「ニンジャ」“エコで売らない”次世代の電動スポーツ登場……カワサキ、2台のEVバイクを日本公開

電動化でも漢の「ニンジャ」スタイル 硬派なバイクメーカーが電動化にシフトした。カワサキモータースジャパンは、「ジャパン・モビリティ・ショー2023」の会場において、2台のEVバイクを公開した。完全電動の「ニンジャe-1」とエンジン・モーターの両方を積んだ「ニンジャ7ハイブリッド」である。 両車はただ時代に合わせて電動化したモデルではない。硬派なスポーツモデルを作り続けるカワサキらしいスタイルが込められた新世代のスポーツバイクである。 250ccより軽く普通二輪No.1のトルク……「ニンジャe-1」 両車とも諸元が公開されていた。まず「ニンジャe-1」の値を確認してみよう。 ・パワートレイン:交流同期モーター ・最高出力9.0kW(12ps)/2,600〜4,000rpm ・最大トルク40.5Nm(4.1kgm)/0〜1,600rpm ・全長1,980×全幅690×全高1,105mm ・シート高785mm ・車重140kg 「e-1」はニンジャ250/400の車体をベースに電動化したものと考えて良い。最高出力こそエンジン車には及ばないが(ニンジャ250は35ps)、最大トルクは「ニンジャ400」の3.8kgm/8,000rpm以上どころか、カワサキの他のどの普通二輪(400cc以下)モデルよりも強力な数値である。そのうえ車重は「ニンジャ250」の166kgに対してかなり軽く作られている。 ただ、航続距離は72kmとエンジンモデルに比べると短い。しかし、バッテリーは着脱交換式を採用し、家庭のコンセントを使用して充電が可能とのこと。追加のバッテリーを手に入れれば充電を待たずに走ることも可能だろうが、車体価格が未発表なので、追加バッテリーもどれほどの値段がつくか気になるところだ。

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ヤンマーの水素燃料電池システムを搭載したハイブリッド旅客船「ハナリア」(photo=モテナシー)
TEXT:福田 雅敏/ABT werke
静かで快適なFC船が来年に運航……ヤンマー、船舶向けの水素燃料電池(FC)を初出荷[2023.10.31]

商船三井グループの電動旅客船「ハナリア」に搭載し来年4月から運航予定 バイオディーゼル発電機とFCを組み合わせた日本初のハイブリッド船 【THE 視点】ヤンマーホールディングスのグループ会社であるヤンマーパワーテクノロジー(以下、ヤンマーPT)は、船舶用水素燃料電池(FC)システムを初出荷したと発表した。このFCは2023年8月に商品化したもの[詳細はこちら<click>]。商船三井グループなどが出資するMOTENA-Sea(モテナシー)の旅客船「HANARIA(ハナリア)」が搭載する。 「ハナリア」は、FCとバイオディーゼルを使用する日本初のハイブリッド型旅客船で、両機関で発電した電気でスクリューを回す電動推進システムを採用している船となる。2基のFC/蓄電池/発電機関/電力制御/推進機器/遠隔監視など、ヤンマーPTが統合設計したパワートレインが搭載されている。 特にFCシステムを主とした運航では、ゼロエミッション化を実現するとともに、動力源からの振動や騒音を大幅に低減し、排気ガスの臭いも無い快適な船内環境の実現に貢献する。 推進はモーターの動力となるので、自動車でいうFCEVとシリーズハイブリッド両方の側面を持ったシステムと言える。どのような状態でFCとディーゼルが切り替わるのかは気になるところだが、ディーゼルは発電専用なので、それが動いていたとしても通常の船舶に比べて圧倒的に静粛性が高いのではないだろうか。 FCシステムは、定格出力240kWのものを2基搭載している。重量は2,400kg。自動車用のおよそ10倍はある大型のシステムだ。バイオディーゼルと推進用モーターの諸元は公表されていないが、船舶に使用する電気を発電し船を進めることを考えれば、相当な大きさのものだろう。 自動車と異なり、船の場合の水素の充填などには許認可の問題など課題は多いと認識しているが、実際に船が出来上がり稼働に漕ぎつけたことは大きな進歩である。今後も、自動車のみならず船や建機など様々なモビリティでFCの活用が進むことを期待する。 なお「ハナリア」は2024年3月に竣工し、同年4月より福岡県を中心に営業開始予定だ。 (福田 雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ★★ヒョンデ、コンパクトSUV「コナ」を日本発売 ……11月1日(水)から販売開始する。ヒョンデとしては「アイオニック5」に続いて日本導入2機種目。4グレードが導入され、航続距離は541〜625km。価格は399万3,000円〜となる[詳細はこちら<click>]。 ★東京都住宅供給公社がEVイベント ……JKK東京(東京都住宅供給公社)は、「コーシャハイム向原ガーデンコート」<板橋区>でEV普及啓発イベントを開催する<11月18日(土)〜19日(日)>。イベントでは、EV展示・試乗会/ソーラーカー工作ワークショップ/EVを電源としたキッチンカーの出展などが行なわれる。 ★ヤマハ、ゴルフカーベースの自動運転EVを開発 ……屋内外対応自動搬送用EV「FG-01」を開発した。ゴルフカーをベースにしたことで、高い走破性と耐久性を有するとのこと。「2023国際ロボット展(iREX2023)」<東京ビッグサイト/11月29日(水)〜12月2日(土)>に出展する。 デイリーEVヘッドライン[2023.10.31]

TAG: #EV船 #THE視点 #燃料電池(FC)
TEXT:烏山 大輔
ヒョンデの新型電気自動車「コナ」は399.3万円から、11月1日に販売開始

ヒョンデは11月1日に販売を開始する新型の電気自動車「コナ」の価格を発表した。下記表のとおり、399.3万円(税込)から489.5万円だ。 コナがアイオニック5と同様に、国から65万円の補助金が交付される場合、実質334.3万円で購入可能になるだろう。 東京都民の場合は、都からさらに45万円の補助金が期待できるので289.3万円になる。自宅に太陽光発電設備がある場合はさらに30万円がプラスされ、合計140万円も安くなり、259.3万円で購入できる可能性がある。 コナは前輪駆動(FWD)の電気自動車で、バッテリーの大きさは2種類、グレードは4種類が用意される。 一充電走行距離は、48.6kWhバッテリーのCasualグレードが456km(WLTCモード、参考値)、64.8kWhバッテリーのLoungeグレードが541km、Voyageグレードが625kmと発表された。 給電口は、フロントナンバープレートの右上にあり、“顔”が左右対称ではないことがコナの特徴のひとつだ。 そんなコナのCd値は0.27と、兄貴分の「アイオニック5」よりも0.05良好だ。一充電走行距離を高めることに成功している。 ボディカラーは、日本専用色の「デニムブルーマット」を含む8色があり、2トーンも3種類から選択できる。内装色も3色が用意された。 同じSUVでライバルとなりそうなBYD「アット3」(税込440万円)は、58.56kWhのバッテリーで、一充電走行距離は470kmだ。 ボルボ「EX30」(559万円)は、69kWhのバッテリーで、一充電走行距離は480km(欧州仕様車、WLTPモード。日本仕様車は未定)と発表されている。 フォルクスワーゲン「ID.4」(Liteグレード、514.2万円)は、52kWhのバッテリーで、一充電走行距離は435kmだ。 日本でも、全長4.3〜4.6mのSUV電気自動車の選択肢が増えてきた。ぜひ気になる方は近くのディーラーや実車を体験可能なスポットで実際に触れてみてはいかがだろうか。 スペック コナ(Casualグレード) 全長:4,355mm 全幅:1,825mm 全高:1,590mm ホイールベース:2,660mm 車両重量:1,650kg 一充電走行距離:456km(WLTCモード、参考値) 最高出力:99kW(約135ps) 最大トルク:255Nm バッテリー総電力量:48.6kWh モーター数:前1基 駆動方式:FWD(前輪駆動) 荷室容量:466L(VDA) Cd値:0.27 車両本体価格:399.3万円 コナ(Casualグレード以外) 全長:4,355mm 全幅:1,825mm 全高:1,590mm ホイールベース:2,660mm 車両重量:1,730-1,790kg 一充電走行距離:541-625km 最高出力:150kW(約204ps) 最大トルク:255Nm バッテリー総電力量:64.8kWh モーター数:前1基 駆動方式:FWD(前輪駆動) 荷室容量:466L(VDA) Cd値:0.27 車両本体価格:452.1万円~489.5万円

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TEXT:烏山 大輔
パワーエックス社が従量料金制の充電事業を開始!再エネ100%電力による充電も可能

パワーエックス社は、10月26日より自社運営によるEV充電事業「PowerX チャージステーション」を開始した。専用アプリを使用し事前に予約もできるなどとても使い勝手の良い充電サービスだ。 予約可能で「充電待ち」なし 今回オープンしたチャージステーションは東京の南青山と目黒の2拠点。年内に丸の内や成田空港などの10拠点に、来年には100拠点に拡大していく計画だ。 都市部の集合住宅に住んでいるEVユーザーは、近くの急速充電器で充電するパターンが多いと思うが、その場合にネックとなるのが、他のユーザーが既に充電中の場合に、充電待ちが発生することだ。 パワーエックス社の充電サービスは、専用の「PowerX アプリ」を使い、利用の3日前から予約が可能なため、充電待ちを避けられる。予約時間は30分、45分、60分の3種類から選択可能だ。 予約した時間は、駐車スペースを確保できるため、60分の予約をして食事に向かい、充電を30分で終わらせたとしても、残りの30分間はクルマを停めておいたままでも良い。食事の途中でクルマに戻り、一般の駐車スペースに移動させなければならないということはない。 もし追加で充電をしたい場合は、予約している時間内であれば、アプリ操作とプラグを挿しなおすことですぐに充電を開始できる。 この充電サービスは毎月支払う固定費は無料。充電した分だけ支払う従量料金制を採用しているため、車両側の充電能力の差による不公平感もない。充電中は、アプリで充電できた量と料金、車両のバッテリー残量(SOC)をいつでも確認できる。目標の充電に達したらアプリ側で充電を終了させることも可能だ。 充電料金は、アプリに登録したクレジットカードから自動決済される。クレジットカードや自動車メーカーなどが発行する充電カードを手元に用意する必要もなく、スマホだけで予約から充電、決済までを完結させることができる。 同社が「国内最速クラス」と謳う最大150kWの超急速充電が可能で、クルマによっては10分間で約130km分をチャージできる。2台同時充電の場合でも、両車ともに最大120kWでの充電が可能だ。

TAG: #パワーエックス #充電インフラ #急速充電
TEXT:烏山 大輔
「トヨタさんF1やりましょうよ」26年に半分EVになるF1にトヨタが参戦すべき10の理由

トヨタは過去にF1で戦っていたが、関係者は頑なにF1に再参戦はしないと言い続けてきた。 そんな中、F1は2026年からエンジンとモーターの出力比が同等に近くなり、よりEV的要素の強いマシンになることが決まった。このことを受けてか、トヨタ系ドライバーである平川 亮選手が来年マクラーレンF1チームのリザーブドライバーを務めることが発表された。 これらの経緯も含め、筆者は今こそ、トヨタがF1参戦を決断するべきタイミングなのではないかと考える。 理由1:小林 可夢偉選手、中嶋 一貴氏 冒頭から荒々しい表現だが、トヨタにはF1参戦に必要な「ヒト、モノ、カネ」が揃っていると思う。 ヒトについては小林 可夢偉選手と中嶋 一貴氏だ。 ご存知のように二人ともF1そのもので戦ってきたレーシングドライバーだ。小林 可夢偉選手はWEC(FIA世界耐久選手権)とスーパーフォーミュラにも参戦中で、中嶋 一貴氏も2021年までWECとスーパーフォーミュラで戦っていた。   そして小林選手は2022年よりWECのチーム代表も兼務、中嶋氏はTGR-E(TOYOTA GAZOO Racing Europe GmbH)の副会長と、ともにTOYOTA GAZOO Racingの重要なポジションも務めている。 “F1を経験し、トップレベルで走れるヒト”が二人もいる。これほど人事に恵まれたチームがほかにあるだろうか。 理由2:TMG モノについては、トヨタF1チームで参戦していた時の「TMG(TOYOTA Motorsport GmbH)」がドイツにある。現在の名称はTGR-Eだ。 F1に参戦するチームはヨーロッパ(主にイギリスとイタリア)に拠点を設けている。 トヨタがF1に参戦する場合は、設備の更新が必要な部分もあるかもしれないが、ゼロから立ち上げるよりはましだろう。 日本の東富士研究所とともに、WEC参戦を通じて磨き上げてきた世界トップレベルの開発力やノウハウの蓄積も活かせるはずだ。 理由3:カネ カネ(資金力)については、トヨタは2022年までの3年間、世界で販売台数世界1位のメーカーだ。2023年の上半期も2位のフォルクスワーゲングループに100万台の圧倒的な差をつけているので、4年連続1位も射程圏内である。 しかも、2023年4-6月期の営業利益は、「トヨタとして過去最高」どころのレベルではなく、「日本企業として初めて」四半期の営業利益が1兆円を超えた(1兆1,209億円)。2024年3月期の通期見通しは3兆円だ。 2021年から、F1は各チームの年間予算額の上限を設けるレギュレーションを導入し、その額は1億4,550万ドル(約215億円)だ。 トヨタは2009年にリーマンショックによる赤字を計上したこともあり、F1から撤退した。しかしながら現時点の業績は絶好調で、年間利益の1%にも満たないF1の年間予算は高くないと思うのだが、素人考えだろうか。 もちろん参戦に当たっては他にも様々なお金が必要になるだろうが、繰り返すがトヨタは現在世界1位のメーカーだ。これほど余裕を持って参戦できるメーカーは限られるだろう。 理由4:参戦していた歴史がある 新規でF1に参戦するのとは違い、過去に参戦していた歴史(2002年から2009年の8年間)があるので、その時のノウハウも活かせる。 例えば2009年(17戦)と2024年のF1開催スケジュール(24戦)を比較すると、13戦が同じサーキットだ。さらに2024年のWECも8戦中6戦が2024年のF1開催サーキットと同じだ。 過去データのアップデートやWECデータの変換も必要だが、20数戦を一切のデータなしで戦うよりはましだ。 理由5:26年からのF1マシンは半分EVなので市販車にも技術応用は可能 26年からはエンジンとモーターの出力比が2:8から5:5に変更され、よりハイブリッド車やEVに近い特性のレースカーになる。 バッテリー(エナジーストア)への回生エネルギーへの入力も、26年からは2MJから9MJに増えるため、高性能なバッテリーも必要になる。WECで使用している8MJのハイパワー型リチウムイオンバッテリーの知見を大いに活かせる。 理由6:26年はタイミングがいい 26年はトヨタが一連の新電池技術を市場に投入し始めるタイミングとも合う(バイポーラ型LFPは26年、全固体電池は27年の実用化目標)。 さらに出遅れを指摘されるEVのラインナップを拡充するタイミングとも合う。佐藤社長は、26年にEV10車種を新たに投入し年間150万台を世界で販売するという目標を発表したし、中嶋副社長も「電池を効率よく使って、航続距離を2倍にし、心揺さぶる走りとデザインを兼ね備えた次世代バッテリーEV」を26年に投入すると発表している。 F1での活動は、そのプロモーション効果として絶大だ。 EVで存在感を示したいアメリカや中国でF1が開催されることもプラスだ。2024年のF1開催スケジュールでは、北米4戦(アメリカ3戦、カナダ1戦)、中国1戦となっている。

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FOMM ONE(photo=福田 雅敏)
TEXT:福田 雅敏/ABT werke
出光、EV新興のFOMMとともにバッテリー交換式EVの事業化を検討[2023.10.30]

多角的に事業を展開することで次世代への対応を早める出光 バッテリー交換式はインフラのひとつとして普及する可能性 【THE 視点】出光興産と新興EVのFOMMは、EV事業の協業に関する覚書を締結した。出光のサービスステーション(SS)ネットワークを活用し、EVのメンテナンスや軽自動車向けEVコンバージョンサービス体制の構築などを検討する。 FOMMは、小型EVの企画・開発メーカー。同社が開発した軽自動車規格の4人乗り小型EV「FOMM ONE」の販売を2019年からタイで開始し、2021年からは日本において販売を開始している。今後、出光と協業するということは、FOMMの販売体制の強化も意味することになる。 協業検討項目をまとめると以下となる。 1  「FOMM ONE」のメンテナンス等のアフターサービス 2  FOMMのバッテリー交換式コンバージョンEV事業における販売/改造業務/アフターサービス 3  SSネットワークを活用したFOMMのバッテリー交換ステーション事業の展開に関する検討 4  FOMMが将来的に量産を計画する新型車両の展開における連携可能性の検討 出光は系列SSを通じて給油に留まらない車検や整備等のカーケアサービスを手掛けてきた。新車販売台数の半数以上が電動車(ハイブリッド車含む)となっている現在の環境を踏まえ、電動車のメンテナンスを含むアフターサービス需要が今後加速すると予測している。このような環境の変化に対して、出光はバッテリー交換式EVに関する技術と知見を有するFOMMと協力して、EVに関連する多様なサービスとネットワークの拡充を目指す。 出光は新事業の開拓を加速している。カーコーティングの専門店を開いたり[詳細はこちら<click>]、トヨタと全固体電池の開発で協業したり[詳細はこちら<click>]、双葉電子とともに国産ドローンの開発を行なったり[詳細はこちら<click>]と、EVを含めた新時代のモビリティに対応できるよう多角的に事業を計画・実行している。 今回の発表で気になった点は「バッテリー交換EV」の事業化である。現在開催中の「ジャパン・モビリティ・ショー2023」にFOMMが出展しており、「FOMM ONE」のバッテリー交換型が展示してあったのだ。リアバンパー中央の黒い部分にバッテリーを搭載しそこから交換するという仕組み。「FOMM ONE」は水に浮いて走る(推進する)EVとしても知られている。バッテリーの防水性にも自信があるのだろう。 また、三菱ふそうやいすゞが小型トラックでのバッテリー交換のデモを行なったほか、ホンダも自社の交換式バッテリーを搭載した車両を展示。カワサキやEVスクーターのベクトリクスなども電池交換式を展示していた。 筆者も十数年前にバッテリー交換式のEVタクシーの実証試験をした経験を持つ。当時と比較して、バッテリーの性能向上や充電設備の拡充といったEVを取り巻く環境変化があったにも関わらず、ここに来て大手各社がバッテリー交換式に手を出すということは、今後トレンドの一つになるということを示唆しているのではないか。 各メーカーが計画する交換システムも自社のみで開発を行なわず、専門業者などとの協業で事業化を目指しているところも興味深い点だ。バッテリー交換というビジネスモデルが出来つつあると言える。数年後には、充電インフラのひとつのカタチとして認識されているかもしれない。 (福田 雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ★★パワーエックス、超急速充電サービスが稼働 ……最高出力150kWの公共急速充電サービスを開始した。10月26日より「シェアグリーン南青山」<港区青山1−12−32>と、「目黒セントラルスクエア」<品川区大崎3-1-1>が稼働している。2023年末までに、「新丸の内ビルディング」<千代田区丸の内1-5-1>と、「成田空港第1ターミナル」<P1駐車場1階>も稼働予定。10分の接続で約130km分の電力を充電できる充電サービスとなる。 ★★ルノー、次世代のモーターを採用へ ……仏自動車部品メーカーのヴァレオと共同開発した次世代モーター「E7A」を発表した。2027年より導入する。「E7A」は巻線ローターを使用したレアアースフリーのモーターで、現在のものよりも30%コンパクトだという。 ★ヤマダ電機の住宅ローンでEVの購入が可能に ……ヤマダデジタル会員向けのネット銀行「ヤマダ NEOBANK」の「ヤマダ NEOBANK住宅ローン」にEVやV2H機器の組み込みが可能となった。住宅からEVまでワンパッケージで購入できることとなる。 ★超急速充電サービスにグリーン電力 ……最高出力150kWの急速充電サービスを開始したパワーエックスは、クリーンエナジーコネクトと「バーチャルPPAサービス」の契約を結んだ。クリーンエナジーコネクトがパワーエックス専用に太陽光発電システムを構築し、充電サービスにグリーン電力を供給する。 ★会津若松市の循環バスがEVに ……福島県会津地方でバス事業を展開する会津乗合自動車(会津バス)は、会津若松市内を走るまちなか周遊バス「あかべぇ」に2台のEVバスを導入した。車両は「BYD・J6」。JR会津若松駅〜鶴ヶ城〜七日町といった主要観光スポットを通る。 ★パナソニック、千葉県市川市で充電インフラの整備を促進 ……「日常生活圏のどこでもEV充電ができる」をコンセプトに展開しているEV充電器のシェアリングサービス「エブリワ・チャージャー・シェア」のモデル地域を市川市に選定した。まずは、市の公共施設にEV用充電器を設置する。 ★アクスル、フォロフライのEVを導入 ……社用車として「フォロフライF1バン」を10月から1台導入した。国内初の1トンクラスのEVバンとなる。アクスルは配送車のEV化を進めているが、フォロフライの導入は初。今後積極的な導入に向けて検討するとのこと。 ★チューリング、自動運転EVのコンセプトカーを発表 ……完全自動運転EVへのマイルストーンとして、コンセプトカー「チューリング・マシン・アルファ」を「ジャパン・モビリティ・ショー2023」で公開した。オープントップでバギースタイルをとっている。 ★太陽光発電システムが車両化 ……ポータブルのリチウムイオンバッテリー製品を展開するジャックリーは、太陽光発電のコンセプトマシン「ジャックリー・ソーラーマーズボット」を公開した。小型の自動運転EVの上部にソーラーを備えた車両で、自動で太陽光を追跡し発電する。 デイリーEVヘッドライン[2023.10.30]

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TEXT:桃田 健史
東大が実施中の国内初公道実証が国際規格化へ弾み。東大オープンキャンパスで技術詳細を聞く

夢のEV充電(給電)方法とも言われる、走行中充電(給電)。国内初の公道走行実験が行われている千葉県柏市で東京大学関係者らに実験に関する詳しい内容と、今後の見通しなどについて聞いた。 4年ぶりのオープンキャンパスで各種機器公開 東京大学が走行中充電(給電)の公道実験に乗り出した。 そんなニュースが2023年10月上旬に明らかになった。 それから数週間後の10月下旬、東京大学柏キャンパスではコロナ禍を経て4年ぶりにオープンキャンパスと呼ばれる一般公開で、各種研究所の成果を広い世代に向けて紹介するイベントが開催された。 そうした中、東京大学大学院 新領域創成科学研究科の藤本・清水研究室を中心とした走行中充電(給電)のデモンストレーションが柏キャンパスで実施された。 これに合わせて、走行中充電(給電)に係わる各種車両の機器も公開され、同研究室関係者らが来場者に詳しく説明をした。 受電・送電のコイル出力は最大25kW まず、走行中充電(給電)の仕組みについて、紹介パネルには「スマホ『置くだけ充電』と同じ原理」であるワイアレス給電、と表現されていた。科学的な名称としては電磁誘導である。地中に埋めた送電コイルから、車体下部の受電コイルに対して給電する。 今回の公道実験は、国土交通省が公募した社会実験の中で「電気自動車への走行中給電による低炭素道路交通システムの実現のための実証実験」である。 送電コイルを埋設した場所は、柏キャンパスからクルマで10分ほどの距離にある、つくばエクスプレス・柏の葉キャンパス駅近隣の商業施設「ららぽーと」前のT字路。交差点の30mほど手前だ。 送信コイルはケースの中に入れてあり、地表から約3㎝ほどの位置に設置。周辺をコンクリートで覆っている。 一般的なアスファルト舗装ではコンクリートより柔らかいため、通過交通が増えると道路表面が変形する可能性がある。 実際の作業としては、道路に長方形の大きな穴をあけて、そこに送信コイルを埋設したコンクリートの塊を重機ではめ込む。 現在、公道走行用の車両はトヨタ「ハイエース」と「RAV4 PHEV」の2台。その他、キャンパス内で走行する実験車両の合計3台が走行中充電(給電)対応となっている。 コイルの出力は1つ25kW。これを左右後輪の内側に近いサスペンションアームに取り付けてある。この位置だと、サスペンションが可動しても地上高の変化が少なく、受電・送電が安定的に行うことができる。 今回のデモンストレーションでは、出力を1.5kWに落として行った。 タイヤの内側に受電コイル装着の試験も 今回の展示では、ブリヂストン等と共同研究を進めている、タイヤ・ホイールの内側に受電コイルを設定するシステムの実機も公開された。 このシステムでは、地表との距離が短いため受電・送電の効率が安定することが考えられる。 こうした様々な方法で走行中充電(給電)について、民間企業各社や道路管理者などが共同で実用化を目指すとした。 走行中充電(給電)で重要な点は、受電・送電の出力と通過速度とのバランスだ。 通過速度が低ければ、充電(給電)する時間が長くなる。 そのため、今回の柏市内での実証実験のように、信号で止まったり、またはT字路でゆっくり走行するとったシチュエーションでの充電(給電)の効率を検証している。 実用化の可能性としては、走行ルートが決まっている路線バスが有力な候補として考えられる。 また、高速道路での可能性は、登坂車線のような充電(給電)専用で速度を落として走行する専用レーンを設ける、といったアイディアもあるだろう。 走行中充電(給電)については現在、日本のほか、スウェーデンがドイツなど欧州各国と連携する動きがある。 そうした中、国内的な技術としての規格化(標準化)に向けた動きも出てきているようだ。柏市での実証実験が、そうした国際連携の中で果たす役割は大きい。

TAG: #充電インフラ #東京大学 #走行中給電
TEXT:TET 編集部
EVの常識を打ち破れ。レクサスが新たな電気自動車のコンセプトカー「LF-ZC」と「LF-ZL」を初披露

レクサスはジャパンモビリティショー2023でバッテリー電気自動車のスポーツクーペ「LF-ZC」、ならびに次世代フラグシップ「LF-ZL」を発表した。 航続距離1,000kmを追求したスポーツクーペ「LF-ZC」 10月25日に行われたレクサスのプレスカンファレンスでは、サイモン・ハンフリーズCBO(チーフ・ブランディング・オフィサー)が登壇し、「レクサスはラグジュアリーカーの常識を打破する存在として誕生した」と言及。さらに「あらゆる場面や時代において、常識や限界を超える挑戦をしてきた」と述べ、2035年までにBEV100%のブランドになるというコミットメントを改めて明言した。 その上で、2026年の市販予定モデルとして発表されたのがスポーツクーペの「LF-ZC」だ。全長4,750mm×全幅1,880mm×全高1,390mmという非常に低いスタイリングを可能にしているのは、開発中の「次世代電池パフォーマンス版(角形)」で、目標Cd値0.20以下という高い空力性能を実現。航続距離は1,000kmの実現を目指しているという。 また、ハイパフォーマンスクーペ「RC F」と同じ全高にもかかわらず、LF-ZCはフルフラットなフロアやパノラマルーフにより、外観からは想像できない開放的なインテリアを実現。低いフードとカウルによって、これまでになかった視界の広がりも確保され、コクピットは運転に没入できる空間となっている。 生産技術の面で画期的なのは、LF-ZCが車体をフロント、センター、リアに3分割した新モジュール構造「ギガキャスト」を採用していること。ボディの大部分を一体成形にすることで締結部が減少してボディ剛性が高まり、操作に対してリニアで自然なフィーリングを実現しているという。 また、電池をボディ中央部分に集中して搭載し、フロントおよびリアは構造上の影響を受けない仕組みとすることで、電池等の進化を素早く取り入れられるメリットもある。 ハンフリーズCBOはLF-ZCを「より小さく、より広く、もっとエモーショナルなデザイン、もっと広いスペースとフレキシビリティ、もっとドライバーに寄り添うクルマ」と説明しており、市販化された暁にはBEVに革新を起こす存在になりそうだ。 >>>次ページ EV時代のフラグシップ「LF-ZL」

TAG: #ジャパンモビリティショー #新型車
TEXT:小川フミオ
「電座D9」の実力を知るべくBYD本社へ。日本未導入モデルをいち早く試す!

ジャパンモビリティショーで話題となった「電座D9」。ショーを直前にした時期に、小川フミオは中国BYD本社で、このラグジュアリーミニバンを体感してきた。 電座Denzaの豪華ミニバン「D9」シリーズは、アルファード/ヴェルファイアとの近似性が指摘される。パッケージングはミニバンとして似通ってしまうのは仕方ないだろう。 ディメンション(ボディサイズ)は、ただし、D9のほうが大きく、ピュアEVが設定されている点では、さきを行く。 私が、2023年10月に運転したのは、プラグインハイブリッドの「D9 DM-i」と、ピュアEVの「D9 EV」。 外国人が公道で運転するのは原則的に許可されていないため、自分でハンドルを握ったのは、深圳にあるBYD本社の敷地内だった。 敷地内といっても、社員移動用に、スカイレールという高架鉄道が敷設されているほど広大。本社とさまざまな関連施設と、それに工場があるのだから、ひとつの小さな街ぐらいにはなる。 BYD本社の敷地内で試すハンドリングと後席の居心地 まずドライブしたのは、D9 DM-iだ。1.5リッターのエンジンに、外部充電式のハイブリッドシステムが組み合わせてある。 最大トルクが681Nm(AWD)というだけあって、踏み始めからたいへんスムーズな加速で、加速していってもボディはいやな振動もなく、ハンドリングはすなおで、遊びも少なく、扱いやすいという印象が強かった。 プレミアムクラスのミニバンは、後席の快適性とともに、ドライバーには、それなりのファン・トゥ・ドライブ性が必要となる。そこもちゃんとクリアしていると感じられた。 満充電なら190kmは電気走行なので、エンジンが回ったときの印象は(残念ながら)わからなかった。エンジンは、ゴルフとか家族旅行とかで遠出する機会の多いひとなら、あったほうがよさそうだ。そういうひとには、このモデルがいいのだろう。 いっぽう、D9 EVは、こちらもよく出来ている。上記のとおり、DM-iでエンジンが回ったまま走行すると、どんなフィールなのかわからなかったので、ちゃんと比較できないのだが(すみません)。 速度が上がっても、静粛。ウインドウまわりからの音も、路面からの音もほとんど気にならない。バッテリーによって重心高が下がっているのも、ハンドリングのよさに寄与しているのだろう。運転が好きなひとも好感もてそうだと思った。 EVモデルでは、後席で移動する機会もあった。シートクッションはふかふかっとしているが、いわゆる腰があって、2~3時間ていどの乗車では、からだに負担がかかることもなく、快適。 バックレストを、いわゆるプレミアムエノコミークラスのシート程度にリクラインさせて乗れるし、レッグレストもでてくる。が、私はじつはあれが落ち着かない。ちょこんとまっすぐな姿勢で乗っているのが好きである。 でも、休んで移動したいというひとなら、これはアリだと思う。 「電座」の日本導入は未定 ジャパンモビリティショーでは、トヨタ車体が、レクサスLMやクラウンSUVなみに2列めシートがほぼフルフラットになる「ヴェルファイア・スペーシャスラウンジ(コンセプト)」を出展した。 すぐにでも注文を受けられる状態と聞いたので、この点は、トヨタ系が先に行っていると言えるかもしれない。 ただし、「電座ブランドの日本販売はいまのところ未定」(BYDオートジャパンのマーケティング責任者)とのことで、ピュアEVのミニバンという、少なくとも東京など都市内では活躍してくれそうなD9 EVは、いまはおあずけ。よく出来てるクルマだったので、ちょっと残念だ。 <了>

TAG: #BYD #Denza #電座

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