インタビュー
share:

誰が乗ってもロールス・ロイスと感じるEVが出来た理由。CEOが語るスペクターが目指した「あるべき姿」


TEXT:小川フミオ PHOTO:Rolls Royce Motor Cars
TAG:
ロールス・ロイス スペクターのフロントビュー

ロールス・ロイス「スペクター」は、電気自動車だからといって、これまでのICE車と大きくかけ離れたデザインや仕掛けは与えられていない。なぜなら、グッドウッドから送り出すべきは、斬新なEVではなく、あくまでロールス・ロイスであるべきだから。同社CEOはそう語る。

ロールス・ロイス スペクターのコクピット

ロールス・ロイスならではの開発要件

「ロールス・ロイスが手がけるBEVは、いかにもBEVでございというデザインである必要はありません」

そう語るのは、ロールス・ロイス・モーター・カーズのトルステン・ミュラー=エトヴェシュCEOだ。最初はシリコンバレーも候補地だったけれど、顧客のライフスタイルとの相性がよりよい場所にしようと選ばれたというプレミアムワインの産地、ナパバレーでの試乗会でのインタビューにおける発言だ。

スタイルしかり、とミュラー=エトヴェシュCEOは続ける。

「BEVを開発しようと決定してから私の頭のなかにずっとあったイメージは、乗るひとに感動してもらえるスタイルがほしい、ということでした。そこでワーミング(デザイン統括)とディスカッションし、美しいファストバックのクーペこそ、ロールス・ロイス初のBEVにふさわしい、と決めました」

ロールス・ロイス スペクターのリヤシート

クーペ(本来はホイールベースを短く切り詰めた、という意味)といっても、きちんと4人の大人が乗れるパッケージングは重要というのも、スペクター開発当初からの要件だった。

ロールス・ロイスの調査によると、顧客の多くは、パーソナルな雰囲気の強いクーペを好んでも、それでも友人たちと4人でレストランに出かけるなどのスタイルを送れるクルマを欲しがっているそうだ。

顧客に提供したいロールス・ロイス像とは、よく書かれているように、従来からロールス・ロイスが大事にしてきた特徴を、きちんと備えているものだったそうだ。

「ロールス・ロイスでは、いくつもの要件があります。力の要らない操縦性であるエフォートレスドライビング、飛んでいるように路面からの衝撃を受けず、そして静かなマジックカーペットライド、それにワフタビリティと私たちが呼ぶ静かな水面を進んでいくような乗り心地とか。これらを、スペクターも継承するのが、私が開発陣に対して出した条件です」

ロールス・ロイス スペクターのスピリット・オブ・エクスタシー

目指したのはICE車と同じフィーリング

結果は、まさにミュラー=エトヴェシュCEOの要望どおりに仕上がった。スペクターがBEVと知らされないまま運転する機会をもったロールス・ロイス車のオーナーがいたとしたら、操縦性になんの違和感も抱かないにちがいない。

「開発総責任者を務めてくれたドクター・アヨウビは、私が何を求めているか、最初に“BEVを作ることになったよ”と電話したときに、すぐ理解してくれたようです。私のなかにも、彼のなかにも、もはやロールス・ロイス車のフィーリングが染みついていて、なので、何度もテスト車の試乗を繰り返すなかで、お互いの言いたいことはすぐにわかったんです」

とくにBEVは、エンジン車と車体構造が異なるし、重心位置もちがう。スペクターに乗った瞬間に驚くのは、102kWhもの大容量のプリズム型バッテリーのパックを搭載しているはずなのに、床面は低く、サイドシルも低いこと。従来のICEのロールス・ロイスそのままなのだ。

「同じような乗り心地を実現することに彼は苦労していましたが、どんどんよくなっていって、それに感心しました。私が欲しいものを彼はちゃんと与えてくれる。私たちは言ってみれば、魂でつながる兄弟みたいだなあと思いました」

Vol. 3につづく

TAG:

PHOTO GALLERY

NEWS TOPICS

EVヘッドライン
日本は3年連続「日産サクラ」がトップ! じゃあ中国・欧州・アメリカで一番売れてるEVってなにか調べてみた
電気自動車って「お金的に」得? エンジン車と諸々の費用を比べてみた
リーフのバッテリーパックをバラして積むって意外に大変! 初代フィアット・パンダのEV化に挑戦してみた【その5】
more
ニュース
これまでに40万人が参加したeモータースポーツイベント! 「Honda Racing eMS 2025」の開催が決定
ついに「コルベットがEV」に!? 2種類のコンセプトカーでシボレーが未来のハイパフォーマンスカー像を描く
ホンダが2026年に発売予定の新型EVは「アシモ」も搭載! アキュラRSXプロトタイプを米国・モントレーで初披露
more
コラム
4つ輪エンブレムじゃなく「AUDI」! VWは「ID.UNYX」! ワーゲングループが中国のZ世代獲得に動く!!
ガソリン車よりも安くね? ジーリーの6人乗り大型SUVのEV「M9」のコスパが「嘘だろ」レベル
EVのネックのひとつは重量! その大半はバッテリー! ではなぜバッテリーは重いのか?
more
インタビュー
電動化でもジーリー傘下でも「ロータスらしさ」は消えない? アジア太平洋地区CEOが語るロータスの現在と未来
「EX30」に組み込まれたBEVの動的性能とは。テクニカルリーダーが語る「ボルボらしさ」
「EX30」には、さまざまな可能性を。ボルボのテクニカルリーダーが話す、初の小型BEVにあるもの
more
試乗
【試乗】いい意味で「EVを強調しない」乗り味! 本格4WDモデルも用意される期待のニューモデル「スズキeビターラ」に最速試乗
【試乗】5台の輸入EVに一気乗り! エンジン車に勝るとも劣らない「個性」が爆発していた
【試乗】CR-Vに中身を乗っけただけのプロトなのにもう凄い! ホンダの次世代BEV「0シリーズ」に期待しかない
more
イベント
マンションでもEVが身近になる! 官⺠連携で既存マンション全274駐⾞区画にEV充電コンセントを導⼊した事例リポート
公道レース「フォーミュラE東京」が帰って来る! チケットを持っていなくとも無料で1日遊び尽くせる2日間
災害に備えて未来を楽しむ! 「AWAJI EV MEET 2025」の参加はまだまだ受付中
more

PIC UP CONTENTS

デイリーランキング

過去記事一覧

月を選択