竹岡 圭さんが案内する各ブランド・イチオシのEVたち
僕がイベントにお邪魔した18日の土曜日は、モータージャーナリストの竹岡 圭さんが会場を訪れていて、マイクを持って各ブースを回るという催しも行われた。圭さんがフィアットのブランドマネージャーである熊崎陽子さん、ジープのブランドマネージャーである新海宏樹さん、プジョーのプロダクトマネージャーである八木亮祐さんというマーケティング部のお三方それぞれに質問をし、マーケティング部の方々が答えていくというかたちでトークが進められた。
が、興味深い内容は多々あれど、それを連ねはじめると絵巻物のような長文になってしまう。ここではそれぞれについて圭さんからコメントをいただいたので、そちらを紹介することにしよう。
フィアット 500e
「フィアット500eは、パッと見だとこれまでの500のガソリンエンジンを電気モーターにすげ替えただけのクルマに思えるという人も多いと思うけど、実はイチからちゃんと設計もデザインもしていて、95%くらい違う部品でできているんですよね。なのに、スタイリングから受ける雰囲気も乗り味も、エンジンの500とほとんど同じ。そこがすごいと思います。展示されていたのはオープンモデルなんですけど、オープンカーはトップを開けると見えちゃうから、インテリアもエクステリアのようなもの。そこにもものすごくこだわって作っているところがまた素晴らしい。顔がチコちゃんみたいで(笑)、名前をつけたいくなるくらいかわいいです。“かわいい”は正義、でしょう? そのかわいさを活かしつつ、500に乗ったときの独特の楽しさを、低重心による安定感とともに再現しているんですよね。とってもよくできていると思います。EVがどうっていう以前に、クルマとして楽しいですよね」
ジープ・ラングラー・ルビコン4×e
「実はラングラーのPHEVは未試乗なんです。なので、最初にジープのPHEVとして日本に入ってきたレネゲード4×eのお話になっちゃうんですけど、電気モーターってすごく細かく制御ができるので、岩場とかの悪路であと1cm動かしたいようなときに、そういうことができちゃうんですよ。悪路を走るジープと電気モーターの組み合わせは、ものすごく相性がいいと思うんですよ。でも完全なBEVだと、山の奥とか砂漠とかでは充電できないから、そうなるとお手上げ。PHEVというのは、最良の選択でもあるんです。それに重いバッテリーを積んでいるから、その分だけ乗り味にしっとり感が出る。普段使いの乗り味もいいんですよ。おそらくラングラーもそういうクルマに仕上がっていると思います。しかもルビコンといえば、階段登れちゃうヤツ(笑)でしょ。それがモーター駆動になったのだから、さらにパフォーマンスが上がっていることが期待できますね。アドベンチャーなところでぜひ乗ってみたいです」
プジョー e-208
「e-208だけに限ったことじゃないんですけど、プジョーのBEVやPHEVは、同じモデルのガソリン車とかディーゼル車とかほかのパワートレーンンのクルマと並べても、それどころか乗り換えても、違和感がないのがいいところだと思うんですよ。BEVって普通は乗り味が独特でしょう? 同じモデルでパワートレーンがいくつか用意されている場合、BEVはわざとBEVっぽくして乗り味を変えているメーカーが多いんだけど、プジョーはそうしていないんですよ。そこが独特というか、乗り味というものへの考え方に1本しっかり筋が通っている感じ。そうなると、うちは充電できるからBEVにしようとか、うちはダメだからガソリンかなという感じで、ルックスと使い勝手が好きなモデルの中から選んでいける。自分のライフスタイルに合わせてパワートレインを選べるのって、なかなかないですよ。プジョーが提唱している“パワー・オブ・チョイス”って、非常によいと思います。もちろんe-208も、ほかの208と同じような乗り味で、そこにBEVならではのよさが加わっているから、1台のコンパクトハッチとしてはかなり素晴らしいクルマになっていますよ」
今回ここで紹介したのはわずか3モデルだけど、語られていることはそれぞれまったく違っていて、ときどきまことしやかにいわれる“電気自動車なんて何に乗ってもほとんど似たようなもの”というのは、真実なんかじゃないことがおわかりいただけるだろう。
内燃エンジンのクルマがそうであるように、ブランドによって、車種によって、乗り味も個性もまったく違っている。今や自分のライフスタイルに合わせて、クルマの原動力をチョイスできるどころか、その中から乗り味や個性だって選べるわけだ。何とも充実した時代になったものだな、と感じた1日だった。