前後2基の電気モーターにより、システム最高出力390kW、システム最大トルク640Nmを発揮するe-tron GTクワトロの加速を体験する。
踏み方次第で羊にも狼にも
e-tron GTクワトロには前後1基ずつ交流同期モーターが搭載されている。最高出力はフロントモーターが175kW(238ps)、リアモーターが320kW(435ps)。システム総出力は350kW(476ps)に達し、さらにローンチコントロール使用する際のブースト時には2.5秒間だけ390kW(530ps)を発揮する。トランスミッションはフロントアクスルが1速固定であるのに対して、リアアクスルは2速。通常は2速ギアを使うが、前述のブースト時には1速を用いることで0-100km/hを4.1秒で加速して見せるのだ。
今回の試乗ではブースト時の加速を試す機会はなかったが、e-tron GTクワトロの実力は十分知ることができた。このクルマには「efficiency」「comfort」「dynamic」の3つの走行モードがあらかじめ用意されており、まずはcomfortで走り出すことにする。
センターコンソールのギアセレクターでDレンジを選び、ブレーキペダルから足を離すと、e-tron GTクワトロはゆっくりとクリープ走行を始める。ここから浅めにアクセルペダルを踏むだけで、2,290kgのボディは軽々とスピードを上げていく。その感覚は4L V8を扱うような頼もしさで、しかもEVだけに静かにスムーズに加速するのが実に爽快。走り出したあとの加速も余裕たっぷりで、アクセルペダルを穏やかに操作するかぎりはラグジュアリーサルーン顔負けの心地よさである。
一方、高速道路への流入や追い越しの場面でアクセルペダルを深く踏み込めば、e-tron GTクワトロはその本領を発揮し、鋭い加速を見せてくれる。2基のモーターによる電動“クワトロ”のおかげで、通常時でも最大630Nmに達するシステムトルクを4輪でしっかりと受け止め、安定しきったままスピードを上げていく。涼しい顔で高性能を手懐けられるのがクワトロの伝統である。