THE EV TIMES

生方 聡 記事一覧

TEXT:生方 聡
悲報! 充電料金が大幅値上げに [ID.4をチャージせよ!:その13]

食料品や電気料金など物価上昇が止まらないなかで、ついに電気自動車の充電料金も値上げに。「ID.4 Pro」オーナーの私も、その影響をモロに受けそうです。 7月からe-Mobility Powerが値上げに ふだん私が利用しているのが、e-Mobility Power(イーモビリティパワー、以下eMP)ネットワークの急速充電器です。2023年3月現在、全国に約7,800口の急速充電器があり、日産や三菱、トヨタ、メルセデス・ベンツ、BMWといった自動車ディーラーをはじめ、高速道路のサービスエリア/パーキングエリア、道の駅、ショッピングモール、コンビニエンスストア、ガソリンスタンドなど、さまざまな場所にある急速充電器が、専用の充電カードをかざすだけで利用できます。 フォルクスワーゲン・ジャパンでも、ID.4や「eゴルフ」のオーナー向けに、eMPネットワークが利用できる「フォルクスワーゲン充電カード」(以下、VW充電カード)を用意しており、私も加入しています。 そのeMPが2023年7月1日から、eMP会員向けの料金改定を発表しました。「急速・普通併用プラン」の新旧料金は次のとおりです。   基本料金 急速充電料金 普通充電 旧 4,620円 16.5円/分 2.75円/分 新 4,180円 27.5円/分 3.85円/分 月額料金が4,620円から4,180円に値下がりする一方、充電時間に応じて支払う都度利用料金が大幅にアップ。急速充電では1分あたり16.5円から27.5円。67%の値上がりです。普通充電も1分あたり2.75円から3.85円と40%上昇します。30分急速充電した場合の料金は、これまでの495円が825円になりますから、今回の値上げ幅がかなり大きいことがわかります。

TAG: #ID.4 #急速充電
TEXT:生方 聡
EVになってもプジョーの走りは変わらない!? [プジョーe-208試乗記:その4]

プジョーのコンパクトハッチバックといえば、軽快な走りが魅力。そのDNAはこのe-208にも受け継がれているだろうか? 街もワインディングロードも楽しい! 今回試乗した上級グレードのe-208 GTには、e-208アリュールに対して1インチアップの205/45R17タイヤが装着されている。そのせいか、一般道では路面の荒れやざらつきを伝えがちで、ロードノイズも耳に付く。目地段差を超えたときのショックも目立ち、リアからの軽い突き上げが気になることもあった。しかし、スピードが上がるにつれて乗り心地の硬さは和らいでいく。 一方、スポーティな味付けの足まわりと、EV特有の低重心設計のおかげで、1,500kgという車両重量にもかかわらず、コーナリング時の身のこなしは思いのほか軽快。今回の試乗ではワインディングロードを走る機会があったが、ロールを抑えながら、軽快にコーナーをクリアするe-208の走りは、文句なしに楽しいのひと言である。 前述のとおり、街中では多少乗り心地に我慢を強いられることもが、コンパクトなボディは取り回しやすく、瞬発力のあるモーターのおかげもあって、機敏な走りが味わえるのも、このクルマの大きな魅力だ。 ステアリングの操舵力はきわめて軽く、それ自体はいいのだが、高速走行時に中立付近の舵の収まりがややあいまいなのが気になるところだ。

TAG: #e-208
TEXT:生方 聡
あなどれない100kW [プジョーe-208試乗記:その3]

100kWの電気モーターで前輪を駆動するe-208。数字は控えめだが、その走りには期待を超える力強さがあった。 発進からわかる秘めた実力 “THE POWER OF CHOICE”というコンセプトを唱えるプジョー208シリーズには、内燃機関を積む208と、EVのe-208が用意されているのはすでにお伝えしたとおり。同じGTグレードで比較すると、208 GTには74kW(100ps)の1.2Lガソリンターボエンジンが搭載されるのに対して、e-208 GTにはよりパワフルな100kW(136ps)の交流同期モーターが積まれている。しかし、e-208 GTはガソリンエンジンの208 GTより340kg重く、果たしてフレンチコンパクトらしい小気味よい走りが楽しめるのか、興味津々である。 さっそくダッシュボードのスタートボタンを押してシステムを起動し、ランニングチェンジを機にトグルスイッチに変わったセレクターでDレンジを選べば、発進の準備は完了。ブレーキペダルから足を離すとゆっくりとクリープを始めるのはガソリンエンジンの208と変わらない。しかし、軽くアクセルペダルを踏んだ瞬間から力強く動き出すのは、電気モーターで駆動するEVらしいところで、その気になればわずか300rpmの低回転から260Nmの最大トルクを発揮できる実力を垣間見た気がする。 前輪を駆動するモーターは、1,500kgのボディを軽快に走らせるには十分の性能で、“GT”という名前から期待するほど強烈ではないものの、日本の公道で許される120km/hまでの速度域ならストレスのない加速が楽しめる。EVらしくアクセルペダルに対するレスポンスは良く、ノーマルモードからスポーツモードに切り替えれば、さらに加速は鋭くなる。

TAG: #e-208
TEXT:生方 聡
小ささは正義だ! [プジョーe-208試乗記:その2]

スタイリッシュなエクステリアデザインが魅力のe-208。コンパクトなハッチバックスタイルが、このクルマの魅力を加速する。 208とe-208の見分け方は? いつの時代もカッコいいコンパクトカーとして人々を魅了してきたプジョーの“20X”シリーズ。「P21」と呼ばれる現行タイプもコンパクトカーの定番であるハッチバックスタイルを採りながら、プジョーらしい躍動感溢れるデザインにより、全長4,095mm、全幅1,745mm、全高1,465mmとは思えない強い存在感を放っている。さらに“3本爪”と牙のように伸びる“セイバー”を組み合わせたLEDデイタイムランニングライト、やはり3本爪のテールライトとそれを結ぶブラックバンドが印象的なリアビューなどにより、最新のプジョーであることを主張。思わず“ジャケ買い”してしまいそうな一台である。 ガソリンエンジンを積む208とEVのe-208はボディサイズは同一であり、デザインもほぼ共通だ。数少ない違いとしては、“e208”のエンブレムに加えて、e-208ではラジエターグリルがボディカラーにあわせて塗装されること。さらに、ラジエターグリル内のライオンマークが見る角度により色が変わったり、Cピラーに“e”マークが備わるのが、見分けるうえでのポイントになる。個人的には、208と見分けがつかない、デザインも同一というメーカーオプションがあったらいいと思うのだが。 デザインと並んで、扱いやすいサイズのボディもこのクルマの大きな魅力である。大容量バッテリーを搭載しやすいという意味では、背の高いSUVは有利だが、それと引き換えに外出先で駐車場が見つからないことはよくある。私も「フォルクスワーゲンID.4プロ」に乗り換えてからそんな経験が何度もあり、そのうえID.4プロは車両重量が2トンを超えるため、重量オーバーで追い返されることもしばしば。その点、全高が1,465mm、車両重量が1,500kgのe-208 GTは「3ナンバーお断り」「外車お断り」という駐車場でもないかぎり、受け入れてもらえるのは本当に助かる。

TAG: #e-208 #コンパクトカー
TEXT:生方 聡
「EV専用」じゃなくて何が悪い!? [プジョーe-208試乗記:その1]

小粋なフレンチコンパクト「プジョー208」。そのEV仕様である「e-208」に試乗。“THE POWER OF CHOICE”とは何か、そして、EVとしてどんな特徴を持つクルマなのかからチェックしていこう。 “THE POWER OF CHOICE”という提案 “EV専用設計”や“EV専用プラットフォームを採用”を謳うモデルが増えるなかで、「お好みでエンジンも電気モーターも選べる」ことをウリにしているのがプジョーの208だ。コンパクトカープラットフォーム「CMP(コモン・モジュラー・プラットフォーム)」は、エンジン、電気モーターのいずれのパワーユニットにも対応するうえ、そのどちらを選んでもほぼ同等の居住空間やラゲッジスペースを確保しているというのが彼らの言い分である。 このコンセプトをプジョーは“THE POWER OF CHOICE”と呼んでおり、実際、208では1.2Lガソリンターボエンジンを積む「208アリュール」と「208 GT」、EVの「e-208アリュール」と「e-208 GT」を設定している。面白いなと思ったのが価格のシミュレーションができるコンフィギュレーター。208を選ぶと、まずはアリュールとGTからグレードを選び、その後、パワーユニットを決めることになるのだ。 スタイル優先でクルマが選べるのはやはりうれしいもの。私はいま「フォルクスワーゲンID.4」に乗っているが、もし、現行型の「フォルクスワーゲン・ゴルフ」にEV版があれば、これまで10台乗り継いできたゴルフを選んだと思う。また、素人目にはエンジン車なのかEVなのかわからないことも、EVをさりげなく乗りたい人にはうれしいのである。

TAG: #e-208 #コンパクトカー
TEXT:生方 聡
36分ならガマンできる!? 東京〜鈴鹿往復ドライブ [ID.4をチャージせよ!:その12]

愛車のID.4で東京〜鈴鹿のロングドライブに出かけました。途中の充電環境が様変わりしたおかげで、EVの旅が格段に便利になりました! “東名派”から“新東名派”へ 新東名の御殿場JCT~三ヶ日JCTが開通したのは2012年4月のこと。4年後の2016年2月には浜松いなさJCT~豊田東JCTが開通。さらに、2020年12月からは御殿場JCT~三ヶ日JCTの6車線化が完了し、この区間の最高速度が120km/hになりました。これにより、東京〜名古屋の移動が便利になったのはご存じのとおりです。 ただ、個人的には昔ながらの東名を好んで走っていました。というのも、新東名が開通したおかげで東名の交通量が減り、新東名よりもむしろ東名のほうが走りやすくなったからです。とくに週末などに、追い越し車線をマイペースで走り続けるマナー違反のクルマは新東名のほうが多く(個人の感想です)、気分良く走れるという理由からあえて東名を選んでいました。 そんな私でも、EVでドライブするのであれば、いまや新東名の一択です。駿河湾沼津SAと浜松SAの上下線に、150kW級急速充電器やマルチタイプ急速充電器が設置されたおかげで、一気に充電施設が充実したからです。とくに150kW級急速充電器が利用できるのは頼もしく、以前のレポート(新東名で150kW級急速充電器を巡る旅 [ID.4をチャージせよ!:その11])で報告したとおり、30分の急速充電で走行可能距離が220km増えたこともありました。 では、どれだけ便利になったのか? ちょうど良い機会なので、鈴鹿サーキットの取材にID.4で向かい、チェックしてみることにしました。

TAG: #ID.4 #充電インフラ #急速充電器
TEXT:生方 聡
急速充電性能を改善、航続距離も把握しやすく:トヨタが「bZ4X」のソフトウェアをアップデート

トヨタ自動車は2023年4月22日、ミドルサイズSUVタイプのEV「bZ4X」のソフトウェアアップデートを5月以降に実施すると発表した。 ユーザーの声に応えるために 「bZ4X」は、トヨタが新開発したEV専用プラットフォーム「e-TNGA」を採用するミドルサイズSUVタイプのEVだ。ハイブリッド車で電動化をリードしてきたトヨタだけに、EVのbZ4Xも優れた走行性能を有しているが、その一方で、急速充電やメーター表示に関してユーザーから改善を求める声が寄せられていた。 おもなものとしてトヨタは、 1 急速充電性能 2 メーター上の航続距離 3 メーター表示 を挙げている。 「1 急速充電性能」は、bZ4Xでは1日あたりの急速充電によるフル充電回数を2回に制限してきた。ここでいうフル充電とは、150kWの急速充電器でバッテリー残量(SOC)10%から80%に充電することを指す。また、SOCが80%を超えてからの急速充電は速度を制限。いずれも急速充電によるバッテリー劣化を抑制する狙いがある。 「2 メーター上の航続距離」は、メーターに表示される航続距離が0kmになるタイミングが早いという指摘だ。トヨタによれば、“電欠”で走行不能になるのを避けるために、航続距離が0kmになっても、実際には充電場所までたどり着ける余裕を持たせているという。 「3 メーター表示」は、「感動よりも扱いやすさを [トヨタbZ4X試乗記:その3]」でも指摘しているように、メーター内にSOCの%表示がなかった。また、エアコン使用時の航続可能距離が大幅に短く表示される傾向にあった。

TAG: #bZ4X #ソフトウェア #充電
TEXT:生方 聡
EQBはIQ高め!? [メルセデス・ベンツEQB試乗記:その3]

2基のモーターにより、215kWのシステム最高出力を発揮する「EQB 350 4MATIC」の走りは? 4MATICがもたらすスムーズな加速 EQBを発進させるまでの手順はエンジン車と同じ。すなわち、ブレーキを踏みながらステアリングコラム左側にあるスタートボタンを押し、そのあと、ステアリングコラム右側から伸びるシフトセレクターで「D」または「R」を選べばいい。準備が整ったところでブレーキペダルから足を離すと、クルマはゆっくりと動き始める。 資料を見ると、EQB 350 4MATICでは、「リアの電気モーターをメインとして、フロントの電気モーターを高負荷時等にサポートとして使う」とある。ダッシュボード中央のメディアディスプレイでエナジーフロー表示を選択すると、前後モーターの動きがわかるので、それを観察しながら走り出すことにした。 軽くアクセルペダルを踏む状況では、EQB 350 4MATICはリアモーターだけでスムーズでストレスのない加速を見せる。街中を穏やかに走るぶんには、リアモーターだけでカバーできてしまうほどだ。そこからさらにアクセルペダルを踏んでいくと、フロントモーターのサポートが加わり、より素早い加速が楽しめる。 高速道路の合流や追い越しといった場面でアクセルペダルをさらに踏み込むと、勢いよくスピードを上げていくのが爽快だ。そんな状況でも、EQBがスムーズさと静かさに加えて、4輪で大トルクを受け止めて安定した加速を続けるのは、4WDを採用するEQB 350 4MATICならではの強みだ。

TAG: #EQB #パワートレイン
TEXT:生方 聡
906万円は高い? 安い? [メルセデス・ベンツEQB試乗記:その4]

SUVらしいデザインが特徴の「EQB 350 4MATIC」。その走りっぷりを試すとともに、気になる部分もチェックしていこう。 4MATICの恩恵はここにも 今回試乗したEQB 350 4MATICには、メーカーオプションのAMGラインパッケージが装着されている(上の写真はAMGラインパッケージ非装着車)。これを選ぶと、装着されるタイヤが標準の235/55R18から2インチアップの235/45R20になるとともに、アジャスタブルダンピングシステム(可変ダンピングコントール)が備わるスポーツサスペンションに変更となる。 サスペンションの特性は「ダイナミックセレクト」により「Eco」、「Comfort」、「Sport」の3つから選択可能で、さらに自分好みに設定が変更できる「Individual」が用意される。 標準のComfortモードで走り出すと、2インチアップされた235/45R20のタイヤが多少硬めの印象だが、乗り心地自体は十分に快適で、目地段差を超える場面でもショックをうまくいなしてくれる。高速道路では概ね落ち着いた挙動を示すが、軽いピッチングが気になるのであればSportモードに切り替えることで安定感が向上。乗り心地は少し硬くなるが、ドイツ車らしい乗り味を好む人には受け入れられるだろう。 ダイナミックセレクトでモードを変更すると、当然パワートレインの挙動も変わってくる。標準のComfortモードに対して、Sportモードではアクセル操作に対するモーターの反応が鋭くなり、スポーティなドライビングが楽しめる。一方、Ecoモードではアクセルレスポンスが穏やかになるが、それでもストレスのない加速が味わえた。 別の機会にFWDのEQB 250をチェックすることもできたが、最高出力140kWのパワートレインでも加速には余裕があり、84万円の価格差を考えると、どちらを選ぶか悩ましいところ。ただ、モーターの大トルクを4輪で受け止めるEQB 350 4MATICのほうが加減速の挙動が落ち着いており、加速そのものもよりリニアでスムーズなだけに、私ならEQB 350 4MATICを選びたい。

TAG: #EQB #SUV
TEXT:生方 聡
「GLB」とは別モノ!? 「EQB」の電気自動車らしいデザインとは? [メルセデス・ベンツEQB試乗記:その2]

メルセデス・ベンツの人気SUVがベースの「EQB」は、「GLB」譲りの強い存在感を放つ一方、EVらしいデザイン要素によってGLBとは異なる個性を手に入れている。 フロントマスクを一新 大小の箱を連ねたような、まさにSUVという四角いフォルムが特徴のEQBのエクステリア。全長は、以前試乗した「トヨタbZ4X」よりも5mm短い4,685mmであるにもかかわらず、ひとまわり大きく思えるほど、強い存在感を放つ。この印象は、ベースとなるGLB譲りといえるが、フロントマスクやリアビューはGLBとは明らかに異なるデザインに仕上げられている。 たとえばフロントマスクは、押しの強いGLBに対して、EQBは都会的なイメージ。電気自動車だけに本来ラジエターグリルがある場所は光沢のあるブラックパネルでカバーされ、EQB専用デザインのヘッドライトと組み合わされることで、洗練された印象を強めている。 フロント以上に個性的なのがリアエンドのデザインで、ユニークな意匠のLEDテールライトとそれを結ぶライトストリップがEQシリーズの一員であることをアピールしている。 一方、EQBのコックピットはGLBのデザインをほぼ受け継いでいる。コックピットディスプレイとセンターメディアディスプレイを並べたダッシュボードや、5つの円形のエアアウトレットなどには見覚えがあり、GLB同様、きらびやかさが際だっているのだ。

TAG: #EQB #デザイン
連載企画 一覧
VOL.13
岡崎宏司の「EVは楽しい!」第13回:もし、ドイツやアメリカに住んでいたら

道路事情や駐車環境は国によって様々。プジョー 「e-208GT」は、日本ではジャストサイズで愛用される岡崎さんですが、時には「ドイツやアメリカだったら」と思いを巡らします。 日本ではコンパクト。ドイツやアメリカだったら……。 僕は常々「コンパクト系が好き!」と言っている。だが、これは、あくまでも日本でのこと。日本の道路や駐車場を中心にした使用環境下ではコンパクト系がいいということだ。 だから、僕がこれまでに所有したLクラス車は3台。テールフィン全盛期のアメリカン2ドアハードトップ……、「デソート・ファイアスイープ」、そして、5.3L V型12気筒を積んだ「デイムラー・ダブルシックス」が2台の、計3台だけだ。 それ以外は、数台のDセグメントを除けば、すべてCセグメント以下。でも、ドイツやアメリカに住んでいたら……車歴はまったく変わっていただろう。 僕の現在の愛車は、プジョー e-208GT。Bセグメントサイズの使い勝手の良さは、大いに気に入っている。 ドイツに住んでいたら、と思えば―e-tron GT ……が、もしも、サイズのことなど考えず、ストレートに「ほしいEV」を選んでいたとしたら……「アウディ e-tron GT」か、「GT RS」が愛車になっていたはず。 つまり、僕が、道路環境も駐車環境もいいドイツに住んでいたら、迷わず「いちばんほしいEVをゲット」していたということ。 アウディ e-tron GTでアウトバーンを……いったいどんな気分なのだろうか。 ヒューンという微かなモーターの唸り、抑制の効いたロードノイズと風音……「素晴らしく心地よくもインテリジェンスなハイスピード クルージング」……といったところが、僕の描くイメージだ。 さらに、ドイツは充電環境の整備も進んでいる。これも、大型で高性能なEVをゲットする垣根を低くする。 充電環境といえば、同じ欧州でも、イタリアなどは遅れている。かつて、ガソリンが無鉛化されたタイミングで、ミュンヘン~シエナを往復する家族旅行をしたが、イタリアでの無鉛ガソリンの供給遅れには困惑した。 ドイツで手に入れた「無鉛ガソリン供給スタンド マップ」では、イタリアでも難なく無鉛ガソリンは給油できるはずだった。だが、現実はまるで違った。多くの丸印付きスタンドでの給油は叶わなかったのだ。 クルマのレンタル先(ドイツ)に電話を入れ、有鉛ガソリン使用の許可を得て旅を続けることはできたが、冷や汗ものだった。

VOL.2
変速機付きイー・アクスル増加の予感……「人テク展」を写真で振り返る[THE視点]

5月24日〜26日まで開催された「人とくるまのテクノロジー展 2023 YOKOHAMA」<パシフィコ横浜(横浜市みなとみらい地区)>。 自動車メーカーとサプライヤーが最新技術を持ち寄るこの展示イベントは、今年は前回以上の来場者数と出展者数を記録した(来場6万3,810人/出展484社)。 前回[詳細はこちら<click>]のレポートはメーカーを中心に紹介したが、今回は中編として、サプライヤー系から昨今の注目パーツであるモーター一体型駆動装置(イー・アクスル)を紹介する。 TOP……小型EV対応のイー・アクスル TOP(タケフ・オリジナル・プロダクション)ブースには、小型EVとともに、イー・アクスル+減速機が展示されていた。 モーターは使用電圧48Vに対応した最高出力(定格)6.0kW(8.2ps)のもので、「モーターのみ」「モーター+インバーター」「モーター+インバーター+減速機」から選べるのが特徴。現在はGen1と呼ばれるものが主流だが、より小型化された、Gen2も展示されていた。 住友化学……軽量・高剛性の次世代プラスチック製イン・ホイール・モーターケース 住友化学のブースには、スーパーエンプラ(スーパー・エンジニアリング・プラスチックス)のPES(ポリ・エーテル・サルフォン)材を、イン・ホイール・モーターのケースに採用したものを展示。 アルミニウム製カバーに比べ約30%軽量化できるうえ、モーターに必要な放熱性も保持するという。 アイシン……電費が10%向上するイー・アクスル アイシンブースでは、イー・アクスルを展示。現在は第1世代のミディアムクラスの展示であったが、将来的(第2世代以降)には、スモール、ラージともラインナップを増やしていくという。このイー・アクスル化により、電費が10%向上するという。 デンソー……前・後輪搭載可能で電費が向上するインバーター(モックアップ) デンソーは、樹脂製のイー・アクスルのモックアップを展示し、その中にインバーターを組み込んだものを紹介していた。フロント用とリア用の2種類を展示。損失低減により、電費を向上、航続距離が延伸できるという。 マグナ・インターナショナル・ジャパン……商用車向けのイー・アクスル マグナでは、商用車向けイー・アクスルを展示。スペック等は明らかにされなかった。

VOL.13
悲報! 充電料金が大幅値上げに [ID.4をチャージせよ!:その13]

食料品や電気料金など物価上昇が止まらないなかで、ついに電気自動車の充電料金も値上げに。「ID.4 Pro」オーナーの私も、その影響をモロに受けそうです。 7月からe-Mobility Powerが値上げに ふだん私が利用しているのが、e-Mobility Power(イーモビリティパワー、以下eMP)ネットワークの急速充電器です。2023年3月現在、全国に約7,800口の急速充電器があり、日産や三菱、トヨタ、メルセデス・ベンツ、BMWといった自動車ディーラーをはじめ、高速道路のサービスエリア/パーキングエリア、道の駅、ショッピングモール、コンビニエンスストア、ガソリンスタンドなど、さまざまな場所にある急速充電器が、専用の充電カードをかざすだけで利用できます。 フォルクスワーゲン・ジャパンでも、ID.4や「eゴルフ」のオーナー向けに、eMPネットワークが利用できる「フォルクスワーゲン充電カード」(以下、VW充電カード)を用意しており、私も加入しています。 そのeMPが2023年7月1日から、eMP会員向けの料金改定を発表しました。「急速・普通併用プラン」の新旧料金は次のとおりです。   基本料金 急速充電料金 普通充電 旧 4,620円 16.5円/分 2.75円/分 新 4,180円 27.5円/分 3.85円/分 月額料金が4,620円から4,180円に値下がりする一方、充電時間に応じて支払う都度利用料金が大幅にアップ。急速充電では1分あたり16.5円から27.5円。67%の値上がりです。普通充電も1分あたり2.75円から3.85円と40%上昇します。30分急速充電した場合の料金は、これまでの495円が825円になりますから、今回の値上げ幅がかなり大きいことがわかります。

VOL.10
知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第10回:自由自在な電気自動車の駆動方式

歴史が語る駆動方式の変遷 駆動方式について、永年にわたり後輪で駆動し、前輪で操舵する方式が、素直だとの認識が広まっている。たとえば、馬車の時代の馬は、駈足(かけあし)をする際に後ろ脚から走り出す。 後輪駆動(RWD)は、世界初のガソリン車であるカール・ベンツの「パテント・モトール・ヴァーゲン」がそうだった。ただしそれは馬車のようなフレームの後ろ側にエンジンを搭載し、ベルト駆動で後輪を回す仕組みだった。ミッドシップ的でもあり、リアエンジン・リアドライブ(RR)の形態ともいえる。今日のフロントエンジン・リアドライブ(FR)に通じるRWDは、フランスのパナール・エ・ルバッソールによってもたらされ、ドイツのダイムラーのメルセデスが、この手法を世界的に広めた。 前輪駆動(FWD)の歴史は実は古く、18世紀に蒸気機関で走るフランスのキュニョーという大砲を車載した車両があった。エンジン車のFWD誕生について乗用車として有名なのは、フランスのシトロエンの「トラクシオン・アヴァン」ではないか。のちに英国で生まれたミニもFWDの代表的車種であり、ドイツ車ではフォルクスワーゲンの初代「ゴルフ」が誕生すると、FWDの象徴的存在となった。FWDの価値は、駆動系の機器や装置を車体の前寄りに集中させ、後ろの空間を客室や荷室に有効に利用できるところにある。 四輪駆動(4WD)は、1903年にオランダのスパイカーによって世に出された。これはレーシングカーだったが、実用的な4WDとしては、ゴットリープ・ダイムラーの息子のパウル・ダイムラーが軍用車に適用した。米国でも、第一次世界大戦には4WDのトラックが活躍するなど、悪路走破の威力が4WDには求められた。そして「ジープ」が名を馳せる。舗装路での有用性は、日本のスバルやドイツのアウディによって示され、今日に至る。 電気自動車(EV)も、駆動方式による走りの得手不得手は基本的に同様ではある。そのうえで、エンジン車で4WDとなると燃費の悪化はやむを得ないが、EVではエンジン車の4WDで不可欠なトランスファーやセンターディファレンシャルといった装置を省けるので、それらに使われる歯車がなくなり摩擦損失がない。このため、モーター追加による重量増はあるが、電力消費にそれほど大きな差が出ず、目的に応じて駆動方式を選びやすくなる。 駆動方式を自由に選べるEV EVのプラットフォームを改めて見てみると、床下のほぼ一面にバッテリーが搭載され、その前後に、駆動用のモーターと制御機器、充電器などが配置されている。エンジン車と大きく異なるのは、バッテリーからの電気を配線でつなげば、モーター駆動では、エンジン車のようなプロペラシャフトや前後へトルクを分配するトランスファーといった伝達系部品を省略できる。変速機も不要だ。したがって、どの駆動方式も比較的簡単に設定できることになる。 EV専用車として開発された米国テスラは、RWDと4WD(AWD:オール・ホイール・ドライブと表現されることもある)の車種構成で売り出された。 日本の三菱「i-MiEV」はRWDだが、日産「リーフ」はFWDでの発売となった。「i-MiEV」は、リアエンジン車の「i(アイ)」が先に発売され、そのコンバートEVであったため、自動的にRWDを採用した。リーフはEV専用とはいえ、エンジン車の小型車を基にした開発によってFWDとなった。 ドイツのBMW i3は、EV専用車としてRWDで登場した。フォルクスワーゲンの「ゴルフe」は、エンジン車からのコンバートだったのでFWDだが、EV専用車のID.4はRWDと4WDである。 生産するうえで部品点数が少なくなるEVは、プラットフォームにバッテリーを搭載したあとは、基本的に前後の空間にモーターを設置するだけなので、製造工程を簡素化できるだろう。

VOL.12
岡崎宏司の「EVは楽しい!」第12回:EVは、軽自動車へステータスをあたえた!

軽EVのサクラとeKクロス EVには、軽乗用車の印象を変えるステータスのようなものを感じると岡崎さんは語ります。ミニマムで、仕立てよく、そしてEVの気持ちよさから期待大です。 海外エンジニアが評価する軽乗用車 軽EVの「日産サクラ」と「三菱eKクロス EV」は共に魅力的。前者は大人の雰囲気を、後者は若々しい雰囲気を纏う。基本は同じ両車だが、巧みな棲み分けをしている。 僕が試乗したのは日産サクラ。デビューしてすぐだったが、その姿を一目見て頷き、ちょっと走っただけで気に入った。直感的に「売れる!」と思った。 現在の軽はよくできているし、よく走りもする。限られたあれこれの中での、各メーカーの競い合いは素晴らしいのひとことだ。 少し前のことだが、欧州有力メーカーの技術系トップと食事をした。その時、僕は、「日本車でいちばん高く評価しているクルマはなにか?」と質問をした。 答えは「軽乗用車」。「厳しい条件下で、ユーザーの求めに、あれほど高いレベルで応えているクルマは他にない」との答えだった。 僕はハッとした。ずっと身近で発展成長してきた軽だけに、そうした視点での見方が甘かったことに気づかされたのだ。 この方はすでに引退されている。でも、軽EVにはきっとお乗りになっているはず。そして、間接的ではあろうが、後輩エンジニアに、あれこれ印象を、意見を、述べられているだろうと想像している。 「EV」は、付加価値があるもの 話をサクラに戻そう。 その走り味乗り味については、すでに多くの記事が出ているし、読まれているだろう。なので繰り返すことはやめる。 サクラに乗ったとき、「売れる!」と思ったことは上記の通りだが、売れ先として直感的に頭に浮かんだひとつが、旧い高級住宅街。 親しい友人が住んでいる、東横線沿線の伝統ある高級住宅街だ。 風格ある、あるいは瀟洒な佇まいの家が立ち並んでいる。……でも、その街を抜ける通りは狭い。駐車車両は明らかな障害になるし、Lクラスのクルマや、大型SUV辺りは明らかに過剰を感じる。 そう……そんな街に、「サクラはピッタリじゃないか!」と閃いたのだ。そして、試乗でも「旧い街」を走ってみた。それも、坂のある込み入った街を……。 軽は狭い道は得意だが、登り勾配は得意ではない。過給機付きでトルクのある軽はよく走る。……でも、タイトな角の先が上り坂といった条件ではスイスイとはいかない。 しかし、サクラは、そんな条件下でも、ほんとうに気持ちよく、文字通り「スイスイ」走り抜けてくれる。 とはいえ、「べつにEVでなくてもいいのでは?」という疑問も出るだろう。「気持ちよくスイスイとはいかなくても、実用には十分でしょ!」と……。答えは「その通り」だ。 しかし、高級住宅地に住むような豊かな人たちにとっては、たとえ便利でも、「普通の軽」に乗るのは抵抗があるかもしれない。 メルセデス、BMW、アウディ、ジャガー……といったクルマを愛車とする人たちのセカンドカーとしては、なにか、ステータスになるようなプラスアルファがほしい。 そう……サクラにはそれがあるということ。軽ではあっても、新しい時代を象徴するサンプルのひとつとも言える「EV=電気自動車」に乗っているというステータスだ。 日本ならではのEVに期待! それに、実際に運転しても、静かで、滑らかで、ピックアップがよくて……と、日々乗っているプレミアムセグメントのクルマとの、感覚的乖離が少ない。気持ちよく走れる。 上記した東横線沿線の高級住宅地に住む友人によると、僕の予測は「当たり!」らしい。 サクラはどんどん増えていて、同じ街に住む彼の妹さんも買ったという。そして、「日々の近場の買い物が、ほんとうに楽になった!」と喜んでいるそうだ。 加えて、「電気自動車がこんなに楽で、気持ちのいいものとは思わなかった。もう手放せないわ!」とも。道路の狭さに加えて、坂も多い街なので、とくにそう感じるのだろう。 日産サクラと三菱eKクロス EVのデビューは、軽の世界を大きく拡げてくれた。とともにEVの世界をも拡げてくれた。この2車への追従モデルがどんな形で、どんなレベルで出てくるのか……大いに楽しみだ。

VOL.
36分ならガマンできる!? 東京〜鈴鹿往復ドライブ [ID.4をチャージせよ!:その12]

愛車のID.4で東京〜鈴鹿のロングドライブに出かけました。途中の充電環境が様変わりしたおかげで、EVの旅が格段に便利になりました! “東名派”から“新東名派”へ 新東名の御殿場JCT~三ヶ日JCTが開通したのは2012年4月のこと。4年後の2016年2月には浜松いなさJCT~豊田東JCTが開通。さらに、2020年12月からは御殿場JCT~三ヶ日JCTの6車線化が完了し、この区間の最高速度が120km/hになりました。これにより、東京〜名古屋の移動が便利になったのはご存じのとおりです。 ただ、個人的には昔ながらの東名を好んで走っていました。というのも、新東名が開通したおかげで東名の交通量が減り、新東名よりもむしろ東名のほうが走りやすくなったからです。とくに週末などに、追い越し車線をマイペースで走り続けるマナー違反のクルマは新東名のほうが多く(個人の感想です)、気分良く走れるという理由からあえて東名を選んでいました。 そんな私でも、EVでドライブするのであれば、いまや新東名の一択です。駿河湾沼津SAと浜松SAの上下線に、150kW級急速充電器やマルチタイプ急速充電器が設置されたおかげで、一気に充電施設が充実したからです。とくに150kW級急速充電器が利用できるのは頼もしく、以前のレポート(新東名で150kW級急速充電器を巡る旅 [ID.4をチャージせよ!:その11])で報告したとおり、30分の急速充電で走行可能距離が220km増えたこともありました。 では、どれだけ便利になったのか? ちょうど良い機会なので、鈴鹿サーキットの取材にID.4で向かい、チェックしてみることにしました。

VOL.4
バイクのEV化に対する海外と日本の温度差、欧州のショーで年々敷地面積を拡大するEVバイク[EICMA(ミラノモーターサイクルショー)レポート:その4]

自動車と同様にバイクも多様な電動車は欧米や中国のメーカーから続々と発表されているようだ。EICMA(ミラノモーターサイクルショー)でそれらを目の当たりにしたモーターサイクルジャーナリストの小川 勤さんにユニークなバイク達の印象を語ってもらった。 オリジナリティは高いが不安になるスペックが乱立するEVバイクも…… こ、これはどうなのだろう……。このダヴィンチという中国メーカーのバイクのスペックを見て驚愕した。興味のある方はメーカーのサイトに飛んでいただきたいが、最高時速は200km/h、最高出力は100kW(135ps)とあるが、少なくとも僕はこのディメンションや細部の作り込みでこの速度を出す気にはならなかった。 説明によると1000個以上のチップや200個以上の高性能センサーを採用しており、スマートフォンが鍵にも、メーターにもなるらしい。足まわりは本格的で倒立フォークにブレンボ製のキャリパーを装備。電子制御はヒル・スタート・アシスト・コントロール(坂道発進をサポート)やリバースアシスト(バック機能)、コンバインド・ブレーキ(ABS機能)、トラクション・コントロールも搭載している。 しかし、スポーツバイクに必要なホールド性の高いポジションは考慮されておらず、趣味のバイクに必要な美しさや機能美もない。価格は2万7500ドル(1ドル=135円の場合、約370万円)とかなり高めで、すでにアメリカでは発売されているらしい。少なくとも僕にこのEVバイクを受け入れる感性はなかった。 https://global.davincimotor.com/ 一方で気になったのはスウェーデンのCAKE(ケイク)だ。EICMA 2022で『Sustainable Exhibitor Award(持続可能な出展者賞)を受賞し、日本ではゴールドウインが代理店となって販売を進めていくメーカーだ。 2016年よりスタートしたケイクは、「エキサイティングなモビリティ体験」と「環境への責任」の両立を目指し、ゼロエミッション社会への移行を加速させることを使命として活動している。ケイクが考える持続可能性とは、人と自然の共生をよりスマートで、環境に優しく、健康的かつ平和的に実現することにある。そのためにケイク社は年齢や性別、サイズ、スタイルを問わず、誰しもが敬意をもって自然と都市を冒険できる製品を生み出している。 ケイクで森の中を鳥のさえずりを聞きながら駆け抜ける喜びは想像に難しくないが、価格は高めでオフロードイメージのバイクである「カルク」は247万5000円から。その喜びを堪能するのはかなりハードルが高そうだ。 https://goldwin.ridecake.jp/

VOL.3
燃費と加速性能を両立するカワサキのハイブリッドバイク[EICMA(ミラノモーターサイクルショー)レポート:その3]

EICMA(ミラノモーターサイクルショー)で発表されたカワサキのハイブリッドバイクと水素エンジンバイクについて、カワサキ側の考えを聞いて、実車を見て、モーターサイクルジャーナリストの小川さんが思ったこととは? 距離を走ることと加速。これが趣味領域のバイクに大切なこと 『125cc以上=距離を走る趣味の領域』はハイブリッド。これがカワサキの出したカーボンニュートラル化のひとつの答えである。フルEVや水素ももちろん開発しているが、まずは燃費を良くすることにカワサキは注力する。 それがエンジンと電気のハイブリッドバイクであるHEV(ハイブリッド・エレクトリック・ビークル)モーターサイクルだ。数ある二輪メーカーの中でもハイブリッドに着目しているメーカーは少ないが、カワサキはその可能性を模索している。 「EVの開発を進めていると、125cc相当はEVの方が効率が良いことがわかってきました。しかしそれ以上になるとバッテリーも大きくなるし、コストもかかる。もちろん重たくもなります。でも、遠くには行きたい。街から出たいじゃないですか。ニンジャZX-10Rなどを開発しながら、頭の中でハイブリッドやりたいなとずっと燻っていました。 ガソリンエンジンのままではいつまでもカーボンニュートラルにならないけれど、ハイブリッドなら燃費をよくできます。四輪のハイブリッドは、燃費を良くすることにふっていますが、バイクだと燃費を狙うとファンの部分をつくるのが難しい。 だからカワサキのハイブリッドは、加速を楽しめるハイブリッドです」とカワサキの先進技術&カーボンニュートラルの総括部長である松田義基さん。 すでにテスト走行シーンも公開しているが、その加速性能はテストライダーも驚くほどなのだという。 「ゼロ・スタートからバンッといきます。加速感はまさしくエンジンとモーターを足した感じです。面白いのは間違いないんです」と語る松田さんの表情は自信に満ちている。 電動化の前に燃費を良くすることを考える いま、欧州のガソリン価格は国によって変わるけれど1L1.5ユーロ以上で、日本よりも高い。クルマやバイクでの移動はコスト的に楽ではないのだ。さらに今後ガソリンはもっと高くなるだろう。 世界的にカーボンニュートラル化の話が進めば、ガソリンにはより多くの税金がかけられるようになり、反対にe-fuel(※)は税金を少なく、補助金などを出しながら価格を下げていく流れになる可能性が高いからだ。もちろん国にもよるが先進国ではこの流れになっていくのが妥当だ。 ※二酸化炭素(CO2)と水素(H2)を原材料として製造する石油代替燃料 そんな時、やはり好燃費のバイクの方が良い。カワサキのハイブリッドは、もちろんe-fuelになった社会でも、恩恵を受けられる。 「燃費と加速を両立するのがカワサキのハイブリッドです。e-fuelになっても燃費が良い方がいいじゃないですか。技術的には大変です。難しいところもたくさんあります」と松田さん。 排気量などの詳細は発表されていないが、車体を見るとエンジンは並列2気筒だ。油圧のクラッチシステムでエンジンとEVを切り替えられるパラレルハイブリッドで、EVのみの走行も可能となっている。車体を見るとシステムが大きくなるハイブリッドの懸念をすでに克服しているのがわかる。 細かいディテールを見るほどに、テストライダーも驚いたというその加速を早く体感してみたくなる。

VOL.
知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第9回:電気自動車がもたらすデザインの進化

EVでも生き残るラジエターグリル いうまでもなく自動車において、スタイリングなどのデザインは商品性として重要な要素に違いない。電気自動車(EV)の造形として象徴的なのが、米国のテスラだろう。同社は、EVしか開発・製造・販売していない。従来のクルマの形にとらわれることなく、新車を創造することができる。 クルマの姿形は、機能を覆う皮膚のように、その造形が発展してきた。エンジン車は、ガソリンを燃焼することで高温になるエンジンを冷やすため、ラジエターが不可欠だ。冷却を効率的に行うため、車体の先端にラジエターグリルが設けられている。ドイツのBMWは、“キドニーグリル”と呼んで、同社のクルマの外観的特徴としてラジエターグリルを位置づけている。その昔、空冷エンジンを使ったフォルクスワーゲンの「タイプ1」(通称“ビートル”)は、ラジエターを必要としなかった。そこでエンジン車にもかかわらず、グリルレスであることが外観の特徴になった。同様に、当初はビートルの部品を流用したスポーツカーのポルシェもグリルレスで、現在は水冷エンジンを使うが、グリルレス的な表現を継承している。 クルマの外観は、中身の機能によって影響を受ける。EVになれば、モーターやバッテリーがある程度の熱を持つが、エンジンほど高温ではないので、大きなラジエターは必要ない。テスラのようなグリルレスの顔つきは、機能を形で表現したひとつの姿といえる。 一方、永年にわたりエンジン車を販売してきた自動車メーカーは、キドニーグリルを特徴としてきたBMWのように、EV専用車種でもその造形を外観の特徴としていまは残している。メルセデス・ベンツの「EQS」や「EQE」、アウディの「e-tron」などもEV専用車種だが、メルセデスではマスコットの“スリーポインテッド・スター”を配したグリルや、近年のアウディを象徴してきた“シングルフレームグリル”は残したままだ。ただし、ラジエターグリルのように空気が通り抜ける機能はなく、蓋をしたようなつくりだ。 クルマの顔つきは、各社の象徴である。簡単に変更できないかもしれない。だが、この先ある時点で、EV時代にふさわしい顔つきがもっと広がっていくのではないか。テスラは、グリルレスとはいえ光の陰影を活かした顔つきを生み出した。 オーバーハングの短さはEVの特徴 EVらしさの表現は、ラジエターの有無などによる顔つきに留まらない。 背景にあるのは、機能をもたらす部品である。床下一面に駆動用バッテリーを敷き詰めるEVは、駆動系や充電系の機器をその前後に配置する。ここから、ホイールベースが長く、前後のオーバーハングは短い姿になる傾向にある。 英国ジャガーの初のEVである「I-ペイス」は、エンジン車のSUVと同様の姿に一見思えるが、オーバーハングがかなり短い。ラジエターが不要なだけでなく、駆動用モーターがエンジンに比べ小さいためにショートノーズだ。広々として見える客室の前方に鼻さきが少し出っ張るといった、独特の姿になっている。そうしたわずかな違いで、エンジン車と並べてみたときの存在感はずいぶん違う。 メルセデス・ベンツ「EQS」や「EQE」も、客室部分が長く見え、前後のオーバーハングは短い。車体全長はエンジン車の「Sクラス」とあまり変わらないが、長いホイールベースと短いオーバーハングによって、独特な存在感を備えている。 テスラの各車種が路上で目立つのも、グリルレスな顔つきだけでなく、短いオーバーハングやロングホイールベースが、個性を引き立たせているだろう。駆け抜けていくテスラは、一目でほかと違うことを意識させ、目を引く。

VOL.11
岡崎宏司の「EVは楽しい!」第11回:EVを身近に。e-208GTを愛用して思うこと

岡崎さんにとって、愛用するe-208GTをドライブして思うことのひとつに「EVの今と未来」があるそう。もっと身近になってほしい、とEVへ思いを馳せます。 電費は気にせずに 僕のEV使用環境についてはいろいろ話してきたが、辛いこと苦痛なことはなにもない。 中でも、もっとも有り難いのは、わが家にはガレージがあって充電器があること。 念の為、日産の充電ネットワークが使える会員になってはいるが、一度も使っていない。わが家のガレージの3kWh充電器に繋ぎ、安い夜間電力を使うやり方でこと足りている。 ちなみに、プジョーe-208GTの電費は、ヒーターをフルに使う冬場で4km/Whくらい。陽気のいい季節では6km/kWhといったところが平均値だと思う。 バッテリーは50kWh。心理的に安心感の持てる10kWhくらいの余裕を残すと……冬場は160km、陽気のいい季節は240kmといったところが一充電あたりの平均的走行可能距離ということになる。 運転のしかたでもけっこう差が出る。なので、あくまでも目安だが、「電費は気にしない。でも、基本、交通の流れに乗って走る」といった僕の使い方での電費である。 電費といえば、勾配の影響も大きい。箱根の経験では……登りを楽しんでしまったりすると、登り下りの電費差は5倍ほどにもなる。 幸い、箱根のお気に入りのホテルには充電設備がある。なので登りもガンガン行ける。楽しめる。そして寝ている間に充電できてしまうのだから、ほんとうに助かる。 水素FCEVのミライをそばにしてみると 話はそれるが、息子は水素FCEVのミライに乗っている。水素ステーションの普及はまだ遠いが、息子の住まいの近くには3ヵ所あるという。 加えて、一充填での走行距離が、グレードZで750km、グレードGで850km(カタログ値)と長いので、「まったく不安も不自由もない」とのこと。 これは僕の憶測だが……いくら航続距離が長くても、水素ステーションが近くになかったら、どうだっただろう。買わなかったかもしれない……。そんな気もする。 “ながら”充電ができるのが理想 まぁ、自宅で充電できなくても、勤務先やショッピングモール辺りで充電できれば問題はない。「ただ充電を待つ」のは苦痛だが、「なにかをしている間に充電できる環境」があれば、EVはグンと身近なものになる。 公共充電設備の整備ももちろん重要。世界でもっとも高密度な充電ネットワークを持つとされるオランダの場合は、道路延長100kmあたり平均47.5基の充電器が設置されているという。

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