巨大な「電気運搬船」、巨大バッテリー工場を計画
定置用蓄電池、メガパワーはコンテナほどの容積に3,000kWhの電力を貯蔵できる。洋上や陸上に設置した風車、太陽光、地熱発電などにより生み出された電力を蓄えた多数のバッテリーを、タンカーのように巨大な「電気運搬船」で需要地に送り届けようというのだから壮大だ。
そんなことをしてコストに見合うのだろうかと心配になるが、2030年にはたとえば陸上風力発電のコストが現在の3分の2程度まで下がることが見込まれている。また陸から離れた沖合での洋上風力発電も、海底に敷くケーブルの工事が少なくなれば設置可能な範囲が広がるという。
パワーエックスによれば、同社がすでに受注したバッテリーの容量は1,816億円、3.30GWhにおよぶ。これらの計画は決して絵空事でないということだ。2025年には全長100m、222MWh分のメガパワーを搭載可能な専用船「Power ARK 100」を完成させる計画が海運会社との間で進められている。年間最大生産能力5GWhの自社工場も2024年に稼働する予定だ。妹島和世による設計で岡山県玉野市に建築される新工場は、高度に自動化されるという。
電気自動車の充電に話を戻すと、パワーエックスの充電ステーションは2023年夏までに東京エリア10拠点、2030年までに全国各地7,000拠点への展開を目論んでいる。東京・六本木には実際の充電器を備えたショールームがオープンしており、充電用モバイルアプリの開発も順調に進んでいるという。現地にて広報を担当する社長室のチェン・フェンディ マネジャーと大津虎太郎 氏が対応してくれた。
アウディジャパンの会見にトーク・セッションのゲストとして出演したパワーエックスの伊藤 正裕 取締役代表執行役社長CEOは、「急速充電の普及は、集合住宅の多い日本の都市部においてEVを普及させるために不可欠です。今後政府が安全対策の法規制を緩和する方向であることも、超急速充電に追い風になるでしょう。いまはビジネスモデル、資本調達、人材集めという3つの軸がうまく噛み合っている。今後に期待してください」と自信のほどをうかがわせた。