EVの速度は電費に影響する 電気自動車(EV)は、最高速度を抑える傾向がある。それは、なぜか? モーター駆動だからという意見もあるかもしれないが、そうではではない。たとえば、世界で最初に時速100kmを達成したのはEVだった。それは、1899年のことだ。今日では、たとえばポルシェ・タイカンのターボGTウィズ・バイザッハ・パッケージの最高速度は、時速305kmといわれる。 一方、メルセデス・ベンツが最初に市場導入したEQCは、最高速度を時速180kmに留めた。理由は、一充電走行距離の確保にある。 EVであるかエンジン車であるかを問わず、高速走行したときに燃費(EVなら電力消費=電費)に影響を強く及ぼすのは、空気抵抗だ。空気抵抗は、速度の2乗に比例して増加する。 たとえば、時速100kmから時速200kmへ速度を2倍引き上げれば、空気抵抗は4倍に増えてしまう。国内での日常的な速度感覚で例をあげると、時速80kmから時速100kmへ、わずか時速20km速度を高めただけで、空気抵抗は1.5倍、すなわち50%も増えてしまう。これが電費に大きく影響する。 日産サクラのリチウムイオンバッテリー容量は20kWhでしかないが、それで長い距離を移動しようとする場合、時速100kmで走って経路充電に30分要するか、時速80kmで走ることで経路充電なしに目的地に到着できるかを考えることになる。結論は、巡航速度を時速80kmに抑えても、経路充電しないほうが目的地に早く到着できる。 たとえば、東名高速道路の東京都側の瀬田の入り口から御殿場インターチェンジを目指す際、東京料金所の手前に、所要時間が表示されている。渋滞などの支障がなければ、瀬田インターチェンジから御殿場インターチェンジまでの所要時間は、70分だ。この区間を時速80kmで走っても、ほぼ70分で到着できる。 東名高速道路は時速100kmで走れるが、それでも経路充電を避けるため、時速80kmに抑えて走っても、それほど多くの時間を移動に要するわけではない。