#合成燃料
TEXT:琴條孝詩
EV化だけじゃカーボンニュートラルは不可能! この先重要なのはハイブリッドとe-fuelだった

カーボンニュートラルを取り巻く現実は厳しい 近年、世界の自動車業界では、電気自動車(EV)の普及が盛んに推進されているが、その勢いが力をなくしているように見える。米国や欧州では成長率が鈍化ないし横ばい傾向も見られる。国際エネルギー機関(IEA)の高位シナリオでは、2030年に新車販売の約6割がEVになるとされるが、現在の世界シェアは25%程度にとどまっている。現実を見渡してみると、どうやらカーボンニュートラルは現実的に難しいといわざるをえないのではなかろうか。 2021年に開催されたグラスゴー気候合意(COP26)では、CO2のみならず全温室効果ガスの排出量を減らすか吸収するなど、なんらかの方法で相殺し、排出量を実質ゼロにするというネットゼロの重要性が示された。それをきっかけに世界全体が2050年のネットゼロを目指す流れになったが、その目標が実現性の乏しいものになっている。 <世界のEV戦略が直面する現実的な壁> 世界各国がカーボンニュートラルに向けてEV普及を加速させているが、その戦略には大きな問題が存在することがわかった。まず、電力源の問題である。EVは生涯にわたってICE(内燃機関)車より温室効果ガス排出量が少ないとされるが、これは電力網が十分に脱炭素化されている場合の話である。 中国、インド、アメリカ、ドイツなどの主要国では、依然として石炭や天然ガスによる火力発電が電力供給の大部分を占めている。とくに2024年時点で、中国では石炭火力発電が全体の約57%を占めており、EVを普及させても実質的なCO2削減効果は限定的である。欧州でも、ロシア・ウクライナ戦争の影響で天然ガスや石炭への依存がふたたび高まっている国も多い。 さらに深刻なのは、リチウムイオンバッテリーの製造過程における環境負荷である。リチウム、コバルト、ニッケルなどのレアメタルの採掘は、おもにアフリカや南米の発展途上国で、精製・加工の多くは中国で行なわれており、現地の環境破壊や人権問題を引き起こしている。研究によっては、バッテリー製造時のCO2排出量が車両全体の製造時排出量の40〜50%程度とする試算もある。 加えて、充電インフラの整備は世界的に大きく遅れている。ノルウェーと中国が国際的な気候目標達成に必要な速度でEVを普及させているとされるが、これらは例外的な成功例である。アメリカでは2030年までに50万基の充電器設置を目標としているが、現在の設置ペースでは達成困難と予想されている。アフリカや南米などの発展途上国では、充電インフラの整備はさらに困難な状況にある。 こうした現実を考慮すると、EVだけでカーボンニュートラルを実現するのは非常に難しく、より多様で現実的なアプローチが必要となる。とくに、既存の10億台を超えるICE車をどう脱炭素化するかが、地球規模での課題となっている。

TAG: #カーボンニュートラル #マルチパスウェイ #合成燃料
TEXT:岩尾 信哉
EU(欧州議会)、脱炭素に向けて方針転換 2035年以降、合成燃料利用によりエンジン車の新車販売が可能に

欧州連合(EU)の欧州委員会とドイツ政府は3月25日、これまでにEU議会が採択していた2035年でエンジン車の新車販売を禁止する法案について、2035年以降も条件付きで内燃機関(エンジン)車の新車販売を認めることで合意したと発表した。 さらに続く28日に同委員会はエネルギー相の閣僚理事会を開き、2035年以降も「e-fuel」と呼ばれる合成燃料を使用する場合に限り、エンジン車の新車販売を認めることで正式に合意した。 EUは当初、二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガス削減策の一環として、ハイブリッド車を含むすべての内燃機関(エンジン)車を禁止する方針だった。いっぽうで、大規模な自動車産業を抱えるドイツを中心にイタリア、ポーランドなどが反対の意を表明していた。 継続してきた欧州委員会とドイツとの協議 事の経緯を辿っていくと、欧州委員会は2021年、「2035年以降のエンジン車の新車販売禁止」に関して、温室効果ガスの排出削減に向け、ハイブリッド車(HEV)を含むエンジン車の販売を事実上禁止する法案を発表した。EU加盟国と主要機関が2022年に政治的に合意、欧州議会が同年2月に法案を採択したことで、加盟国の正式承認を残すのみとなっていた。 いっぽうで、主要な自動車メーカーが多数存在するドイツが雇用などへの影響を懸念し、承認手続きの最終局面で反対を表明。欧州委員会との協議を続けていた。ここに至って今回の協議の結果、地球温暖化対策としての世界的な脱炭素化に向けて、電気自動車(EV)の普及をリードすることを狙っていたEUは、方針転換を迫られることになった。 なお、今回の合意について具体的な内容は明らかになっておらず、今後、他のEU加盟国も交えた正式な手続きの中で示される予定だ。

TAG: #内燃機関 #合成燃料

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