#インフラ
TEXT:御堀直嗣
150kWの急速充電器ならアッという間に満タンなハズ……があれ? EVの充電量が思ったよりも回復しない理由

150kW級充電器の恩恵は限定的なもの 国内のCHAdeMO(チャデモ)でも、150kW級の高出力充電器の設置がはじまっている。一方、せっかく高出力充電器を探したのに、思ったほど充電できなかったという経験をもつ人がいるかもしれない。それはなぜか。 まず、150kWの高性能急速充電器であっても、30分の充電時間では、最大でもその半分の75kWしか充電できないことになる。150kWとか90kW、あるいは現在の標準的な50kWという急速充電器の性能は、1時間での充電能力を指しているからだ。 次に、150kWの充電器ではブーストモードを備えた機器があり、その場合は充電の初めに最大の出力を15分だけ出せるような仕組みにしている。ただ、それを実現するには、EV側の備えが必要だ。EV側の備えとは、バッテリーの充電残量がかなり少ない状態であること。また、車両の仕様として、高電圧での充電が可能な性能を満たしていること。 充電残量が少ないとは、SOC(バッテリー残量)のパーセンテージが低い状態をいう。それはメーター表示で確認できる。 急速充電は、たとえるならコップに水を入れるとき、水道の蛇口を全開にして大量の水を一気に注ぎこむ状況といえる。そして、コップから水をこぼさないようにしなければならないという条件が付く。コップから水が溢れてしまう状況とは、過充電を意味し、バッテリーが過熱するなどの支障をきたす恐れがある。 水がコップから溢れてこぼれないようにするには、あふれ出す前に蛇口を絞ってちょろちょろといった水の出方にするはずだ。急速充電も同じように、最初は最大電力で充電をはじめたとしても、途中から充電量を絞り、過充電にならない制御が行われる。 SOCがまだ50%前後あるような状態で急速充電しようとしても、EV側が過充電にならないように制限するため、高性能充電器を使ってもあまり充電できないという結果になる。ひとつの目安として、SOCが20%を切るような状況で急速充電するなら、その充電器本来の最高性能で充電をはじめられる可能性が高まる。 とはいえ、充電量が回復してくれば過充電にならないよう充電量は絞られるので、150kWの充電器で30分充電すれば75kWは充電できるはずだと思っても、それより少ない充電量になっても、充電制御上やむをえないことだ。

TAG: #インフラ #充電器 #急速充電器
TEXT:山本晋也
余った土地に「ヨシ! 急速充電器を設置するか」は現実的? 個人がEVの充電サービスで儲けられるか考えてみた

現状では儲かるビジネスとはなり得ない EV(電気自動車)の普及に急速充電インフラの整備は必須条件である、と思っている自動車ユーザーは多いだろう。現実的には、たまに利用する急速充電より、自宅や職場など長時間駐車している環境における普通充電(基礎充電)を確保することが利便性につながると理解できるのだが、それでも急速充電インフラが不要という意味ではない。 急速充電インフラが整備されればEVの運用にとってプラスしかないのも事実だ。 では、個人(自営や副業レベル)で急速充電インフラの整備に貢献することはできるのだろうか。具体的にいえば、自宅の敷地などに不特定多数が利用できる急速充電器を設置することは可能なのだろうか。 結論からいえば、個人が独立した急速充電器を使ってビジネス化することは非常に難しく、非現実的といえる。そこにはいくつもの理由が考えられる。 まずは、急速充電器を設置するためにクリアすべき規制や条件のハードルが高いことが挙げられる。いま日本で50kW級以上の急速充電器を設置するには高圧受電設備(キュービクル)の設置が必要で、建屋とキュービクルの間は3m以上の空間が必要となっている。高速道路のPAや、観光地の道の駅などで急速充電器がポツンと置かれているのには、こうした規制が影響している。 キュービクルの設備コストは最低でも200万円、高圧電力の引き込みにも同等のコストが必要とされている。加えて、急速充電器本体と設置工事のコストもかかる。そのため、初期費用の合計はおおむね600万円あたりが目安とされている。引き込みコストがかかるシチュエーションなどでは1000万円オーバーとなることもあり得るだろう。 仮に600万円の初期費用だとして、それで終わりではない。年間で100万円はくだらないであろう電気代は所有者の負担になるし、機器のメンテナンスコストもかかる。 また、規制的な話をすれば、電気を売ることができる売電業者は非常に限られている。そのため、個人レベルでの急速充電ビジネスは施設利用料として徴収するカタチになるという点も見逃せないポイントだ。

TAG: #インフラ #ビジネス #急速充電器
TEXT:山崎元裕
外出先でもスマホからEVの充電開始・終了時間をコントロール! メルセデス・ベンツが持ち運べるウォールボックス「フレキシブルチャージングシステムPro」を欧州で発売

家でも外出先でもEVの充電プロセスを制御する メルセデス・ベンツから、BEVやPHEVのカスタマーの利便性をさらに高める、「フレキシブルチャージングシステムPro」がリリースされた。 いわばポータブルなウォールボックスと表現してもよいこのシステムは、最大充電容量が22kW。家庭用のコンセントや三相コンセント、公共の充電スタンドなどさまざまな電源に対応する、自己検知式のアダプターで、スマートフォンなどの独自のアプリで充電プロセスを制御。すべての充電機能に関するリアルタイムな情報にアクセスすることも可能としている。 これまでとくにBEVを使用したライフスタイルといえば、基本的に毎日の決まったルーティーンに従って、夜は自宅で、あるいは走行距離によっては昼間に会社などでそれを充電、休日には充電スポットを探しながら旅行を楽しむといったものが一般的だったが、このフレキシブルチャージングシステムProは、いずれのシーンにおいても最適なオールインワンの充電ソリューションだ。 充電スポットの空き状況や車両の装備、またアダプターの種類にもよるものの、前で触れたとおり22kWの最大充電容量に対応し、さらに最適な充電電力の自動検出と調整、温度、センサー、安全機能により、最大限の安全性を提供するという。 付属の各種アダプターを使用すれば、1本の充電ケーブルでヨーロッパのほぼすべてのソケットタイプや、公共の充電ポイントに接続することが可能。さらに、ヨーロッパ圏を離れても、フレキシブルチャージングシステムProによる充電は、じつに簡単にそれを行うことができる。 充電システムは、使用するべきアダプターを自ら検出し、さらには最適な充電電力を設定。セキュリティ面では、盗難防止のために付属の壁掛け用固定具を使って、充電システムを壁に取り付けることもできる。 メルセデス・ベンツのほかのアクセサリーと同様に、このフレキシブルチャージングシステムProもまた、最大限の安全性を追求して設計されている。IP67準拠の短時間の水没でも漏電しない防水構造などはその代表的な例だ。 フレキシブルチャージングシステムProは、メルセデス・ベンツ車のみならず、タイプ2のプラグを持つBEVやPHEVとの互換性を持っている。 最大容量の22kWでの充電のためには車載充電器を車両に取りつける必要があるが、このインターフェイスはWLANを自由に使用できるため、カスタマー自身のネットワークで無線更新を行うこともできる。充電の開始と終了をリモートで制御することなどは、そのもっとも典型的で便利な機能といえるのだろう。 ほかにもカスタマーはさまざまなメリットを、この持ち運び可能なウォールボックスから得ることができる。すべての充電プロセスは、アプリを介して充電目標を設定したり、充電コストを調整したり、また最新情報の確認を行うこともできる。すべての充電プロセスはアプリに保管され、実際のステータスはもちろんグラフィカルなダッシュボードにも表示することができる。それをスマートフォンにエクスポートすることも可能だ。 高品質なメルセデス・ベンツ・デザインのバッグに収納され、常に整理整頓されるフレキシブルチャージングシステムPro。その販売はEU諸国を始め、イギリス、スイスですでに開始されており、今後さらにほかの国へと市場を広めていくことになるという。

TAG: #インフラ #ヨーロッパ #充電
「apolloONE江東東陽町KeePerPROSHOP」のイメージ(photo=出光興産)
TEXT:福田 雅敏/ABT werke
EV充電ステーションへの布石か……出光が新業態の第一弾でコーティング・洗車専門店を開始[2023.10.13]

カーコーティングと洗車はEVでも需要変わらず 充電インフラを展開すれば複合サービスが可能 【THE 視点】出光興産は、モビリティサービスに特化した新業態の店舗「apolloONE(アポロワン)」を展開する。第1号店として、カーコーティング・洗車専門店「アポロワン江東東陽町キーパープロショップ」<東京都江東区>を10月7日にオープンした。 出光は、中期経営計画において「スマートよろずや構想」を掲げている。全国展開のサービスステーション(SS)「アポロステーション」を重要なインフラ網として維持・活用するため、従来の給油所のみならず地域の生活支援基地としての役割も担うべく変革を進めている。 「アポロワン」はそのうちの一つの類型で、洗車/カーコーティング/カーシェアリング/レンタカー/車検/板金/整備/車両販売/買取といったニーズに高い専門性をもって対応する新業態のSSだという。 その先陣として、「アポロワン江東東陽町」ではカーコーティングと洗車を専門的に行なう。今後、2030年までに約250店舗の「アポロワン」の展開を目指し、多様に変化するモビリティのニーズに柔軟に対応していくとのこと。 EVやFCEVが普及すれば、従来の給油所としてのSSの需要は減る。SSの倒産は実際に増えており、今後もガソリン価格の高騰などでユーザーの給油回数が少ない傾向が続けば、SSの軒数が増える可能性はないと思われる。 出光はそこに目をつけた。出光と昭和シェルが経営統合し、エリアによっては店舗同士が隣接することも背景の一つであろうが、SSを廃業するのではなく、より社会に役立つ形に業態転換して商機を作るのだ。 「アポロワン」は特に良い目の付け所だ。第一弾の展開となるカーコーティングと洗車はEVでも欠かせないメンテナンスだ。そのほかにも出光は、一般家庭のソーラーの余剰電力を使用したEV用充電設備を導入したり[詳細はこちら<click>]ドローンのベースとなるような構想を立てていたりと[詳細はこちら<click>]、時代に合わせたSSの活用を試みている。 筆者はFCEVに乗るが、現在の水素ステーションでは洗車もタイヤの空気圧点検も行なえない。トイレを借りたり飲料を買うことさえできないところもある。EVにおいても同様で、街に広がる充電インフラはそれだけの機能を持つ設備が多く、トイレや買い物をしたいのならお店を自分で探して徒歩移動する必要があるのだ。店舗に隣接していても、充電時間が20分と決められていれば、クルマから離れるか迷ってしまう。 次世代車両が増えるに従い、休憩所を伴うような設備は必要になるだろう。「アポロワン」は、将来的にはEVの充電に対応すると予想する。充電待ちのついでに洗車やコーティングの施工も頼めるのであれば非常に便利だ。スタッフの作業を見ているだけでも楽しい時間となるだろう。 EVの充電待ち時間は商機である。SSの楽しい変革をこの勢いで進めてほしい。 (福田 雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ★★カワサキ、EVの「ニンジャ」を発表 ……完全電動のEVスポーツバイク「ニンジャ・e-1」と、ハイブリッドの「ニンジャ7・ハイブリッド」を発表した。両車は「ジャパン モビリティ ショー」で世界初公開する。 ★★トヨタと出光が全固体電池で協業 ……全固体電池の量産化に向けて、固体電解質の量産技術開発・生産性向上・サプライチェーンの構築を両社で取り組むことに合意した。両社の連携で、2027〜2028年の全固体電池実用化を確実なものにするという。 ★★ホンダと三菱商事がEVで新事業を創出へ ……EV用バッテリーのモニタリング機能を強化し、新車・中古車のバッテリーの状態を把握することで、定置型の転用を視野に入れたライフタイムマネジメントを目指す。また、電力需給のタイミングに合わせたエネルギーマネジメントシステムも構築していくという。 ★「日産・サクラ」の給電でマンションに給水 ……日産自動車・日立ビルシステム・日立産機システムが共同で実証実験を行なった。V2Xシステムを活用し、マンション・ビル向けの自動給水ユニットの稼働に成功したという。 ★ステランティスとサムスンSDIがアメリカに2ヵ所目のバッテリー工場を建設 ……合弁会社のスタープラス・エナジーを通じて、アメリカ・インディアナ州に建設する。年間生産能力は34GWhで、2027年初頭に生産を開始する。 ★日通、FCEVトラックを初導入 ……関東甲信越ブロックFBU(航空)に6台の水素燃料電池式(FCEV)トラックを導入した。2023年末までに合計20台を導入予定。 ★JR東日本がEVトゥクトゥクをレンタル ……傘下のJR東日本スタートアップが、EVトゥクトゥクのレンタルサービスを展開するエモビと連携。JR青梅線鳩ノ巣駅で10月18日から実証実験の形でレンタルサービスを行なう。 ★ヴァレオ、「JMS」にEV関連技術を展示 ……独自開発の小型EV「マイクロ・ユーティリティ・ビークル」を初公開するほか、800Vの高電圧に対応したインバーター・モーター一体型駆動装置「e-アクスル」を出展する。 デイリーEVヘッドライン[2023.10.13]

TAG: #THE視点 #インフラ #国内ビジネス

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