ジープ 記事一覧

TEXT:TET 編集部
650馬力・6速MTのEVオフローダー。ジープ「ラングラー マグニトー3.0コンセプト」を初公開

ステランティス傘下のジープブランドは、新たなEVオフロードカーのコンセプトモデル「ジープ ラングラー マグニトー3.0」を発表した。最高出力650hp、最大トルク1,220Nmを6速MTで操るというモンスターEVはどんな特徴を持っているのか。その内容に迫ってみたい。 巨大タイヤを駆動する高出力電動ユニット まず、マグニトー3.0のネーミングにピンと来た向きは、かなりのジープ通。今回のコンセプトは2021年の「マグニトー」、2022年の「マグニトー2.0」に続くマグニトーシリーズ第3弾だ。スパルタンなラングラーの2ドアモデルをベースに両サイドのドアを取り払い、過激なリフトアップを施した外観は最新型でも踏襲され、マグニトー3.0のリフト高は3インチ(約7.5cm)。その高められた車高に合わせ、20インチ・オフロードホイールと40インチ・マッドテレーンタイヤを装着し、迫力の佇まいを生み出している。 ロールバーがむき出しとなるリアエンドの処理やEVらしいブルーを基調としたボディカラーについても、シリーズのアイデンティティとしてマグニトー3.0へとキャリーオーバーされている。一方、2.0でブラックアウトされ迫力が増したフロントグリルは、3.0ではさらに小型化されボディ構造むき出しの部分が増えたことで、より強そうな雰囲気を見せる。 このほか外観では、ドア開口部が乗降に配慮した形状に変更されたほか、Bピラーも6cm後方に移動された。サイドビューがチョップトルーフの雰囲気をさらに強めたのも特徴で、これはフロントフェンダー後端を約5cm延長し、フロントガラスを12度傾斜させたことが強く効いているようだ。 マグニトー3.0の発表の場は、米国ミシガン州オーバーン・ヒルズで毎年開催されるファンイベント「イースター・ジープ・サファリ」。57回目となる本年は4月1~9日の日程で開催される。 >>>次ページ MTの電気自動車の先駆け

TAG: #マグニトー #ラングラー
TEXT:曽宮 岳大
ジープからEVが続々。ステランティス、2022年はEVを29万台弱販売。2023年に登場するSUVのニューモデル3台

米ジープや伊フィアット、仏プジョーなど15のブランドを展開する自動車大手ステランティス・グループ。2022年には、前年比26%増の168億ユーロ(約2兆4175億円)の純利益をあげた。拡大市場の電気自動車(EV)は、2022年に前年比41%増の28万8000台を販売し、台数を急増させた。2023年はさらに9車種のEVを投入すると意気込む。なかでも注目はジープ。2023年には3モデルが登場する予定だ。 次なる狙いは米市場 ステランティスの発表によると、2022年の自動車販売は純利益と調整後営業利益で過去最高を達成した。同グループは、2030年までに純利益を2021年比で倍増させ、10年間連続で2桁台の利益率を上げるという野心的な戦略を掲げているが、2022年はその目標をクリアした格好だ。 成長市場のEVについては、現在23台をラインナップしており、グローバルで28万8000台を販売した。EU加盟国内で商用車のEV販売で首位、EV全体では2位となったほか、イタリアでは「フィアット ニュー500(日本名:500e)」が首位、フランスでは「プジョー e-208」が販売ナンバー1を獲得している。ステランティスは2030年までにCO2排出量を半減(2021年比)させる目標を掲げており、2022年は11%の削減を達成した。 ステランティス・グループのEV攻勢は今後も続く。現在23台のEVラインナップを2024年末までには47台に増やす計画だ。その勢いを強力に加速させるのがジープ。2022年末に欧州で披露された「アベンジャー(Avenger)」のほか、北米では2023年中に「リーコン(Recon)」と「ワゴニアS(Wagoneer S)」の発表が予定されている。 ジープが海外向けに展開するコンパクトSUV「アベンジャー」 ジープ初のバッテリーEV(BEV)として登場したアベンジャーは、Bセグメントに位置する全長4.08mのコンパクトSUV。欧州をはじめとする海外市場向けに用意するモデルだ。航続距離は400km(WLTPモード)を達成し、急速充電を使用すれば3分の充電で30kmの走行が可能という。アベンジャーは日本にも導入される見通しだ。 ルビコントレイルを横断できる走破性と航続距離「リーコン」 アベンジャーが欧州など海外向けであるのに対し、リーコンは、北米を主戦場とするEV。完全新設計となるEV専用モデルで、4×4モデルが展開される。ジープでは、過酷なオフロードコース「ルビコントレイル」を走破した、卓越したオフロード性能を持つモデルに「Trail Rated」という特別な称号を与えているが、リーコンはルビコントレイルを横断し、街まで戻ってこられるだけの航続距離を確保するとのこと。2023年前半に北米で受注が開始され、2024年に北米での生産開始が予定されている。 航続距離640km級のプレミアムSUV「 ワゴニアS」  ジープが2021年に発表した大型SUV「ワゴニア」にもEVの設定が計画されている。コードネーム「ワゴニアS」と呼ばれるそのモデルは、1充電あたりの航続距離は640km、最高出力は440kW(600ps)、0-96km/h加速は3.5秒を誇る、高性能プレミアムSUVだ。先進技術と充実した豪華装備が与えられる模様で、ラインナップの中でも存在感を放つモデルとなりそう。こちらも2023年前半に受注が開始され、2024年の生産開始が計画されている。 EV化の波は欧州で急速に進んでいるが、北米市場でも電動モデルの発表が相次いでいる。ステランティスのような大手が人気ブランドからEVを発表すると、その勢いにさらに弾みがつくだろう。 ジープでは2030年までにEVのフルラインナップを完成させ、モデル数や販売台数の面でSUVナンバーワンを目指すとしている。今後の動向を楽しみに見守りたい。

TEXT:烏山 大輔
新型Jeep Avenger(ジープ・アベンジャー)、ステランティスのティヒ工場で生産開始

「2023年欧州カー・オブ・ザ・イヤー」を受賞した「新型Jeep Avenger (ジープ・アベンジャー)」がポーランドのティヒ工場で2月6日より生産開始された。同車は、ジープ・ブランド初のバッテリー電気自動車(BEV)だ。 ヨーロッパに適したコンパクトサイズでBEVラインナップの先陣を切る。ゼロエミッション SUV の世界的リーダーを目指すジープのグローバル電動化戦略における重要なモデルとなる。 ジープのICEと同じように、路面状況によって走行モードを選択できるSelec-Terrain(セレクテレイン)とヒルディセントコントロールを標準装備。アプローチアングル、デパーチャーアングル、地上高とも、このセグメントとしては余裕がある水準だ。 パワートレインは、最高出力115kW(156ps)、最大トルク260Nmの新型電気モーターと54kWhの新型バッテリーパックを組み合わせた新世代の400ボルト電動システムを搭載している。 2022年のパリ・モーターショーで公開されたジープ・アベンジャーは、2022年12月1日のファーストエディション、2023年1月11日のフルラインナップの受注開始後、10,000台以上を受注した。専門家からの高い評価を、欧州でのこの販売実績が裏付けている。 もし日本に導入されれば、BMW「iX1」やBYD「ATTO 3」、ヒョンデ「IONIQ 5」に加え、DSオートモビル「DS 3 CROSSBACK E-TENSE」、プジョー「e-2008」とコンパクトBEV対決が繰り広げられるかもしれない。

TAG: #ジープ
TEXT:生方 聡
ジープ・アベンジャーが欧州カー・オブ・ザ・イヤー2023を受賞

欧州カー・オブ・ザ・イヤー組織委員会は、1月13日、ベルギーで開催中のブリュッセル・モーターショーにおいて授賞式を開き、ジープ・アベンジャーが欧州カー・オブ・ザ・イヤー2023を受賞した。 今年60回目を迎えた欧州カー・オブ・ザ・イヤー(以下、欧州COTY)には、27台がノミネートし、ジープ・アベンジャー、日産アリア、ルノー・オーストラル、フォルクスワーゲンID.Buzz、起亜ニロ、プジョー408、スバル・ソルテラ/トヨタbZ4Xの7台が最終審査に残った。 23ヵ国、59名の自動車評論家の投票で決まる欧州COTY2023は、21名の審査員が1位票を投じたジープ・アベンジャーが328ポイントを獲得し、堂々の1位に輝いた。ジープが欧州COTYを獲得するのはこれがはじめて。 コンパクトSUVのアベンジャーはジープ初のバッテリーEVであり、115kWの電気モーターと54kWのバッテリーによりWLTPモードで400kmの航続距離を達成する。 2位は“ワーゲンバス”の再来といわれるフォルクスワーゲンID.Buzz、3位は日産アリアとなった。 投票の結果は次のとおり。 1位 328点 ジープ・アベンジャー 2位 241点 フォルクスワーゲンID.Buzz 3位 211点 日産アリア 4位 200点 起亜ニロ 5位 163点 ルノー・オーストラル 6位 149点 プジョー408 7位 133点 スバル・ソルテラ/トヨタbZ4X  

TEXT:TET編集部
デイリーEVヘッドライン[2022.12.15]

  ・ジープ、「ラングラー」のPHEVが日本発表  【THE 視点】「ジープ ラングラー」の高性能グレード「ルビコン」のPHEVモデル「ラングラー アンリミテッド ルビコン 4xe」が日本で発表された。価格は1030万円。 パワートレインは2L直列4気筒ターボエンジンに8速AT、2基のモーターが組み合わされ、350Vのリチウムイオン・バッテリーが搭載される。EVモードでは航続距離約42kmの走行が可能という。 バッテリーはリアシート下部に配置され、重量配分を最適化するとともに、外部からの衝撃による損傷リスクも低減され、渡河性能はガソリンエンジン車と同等の76cmを実現している。 モーターは発進と同時に最大トルクを発生する特性を持つため、悪路を低速で進む場面などオフロードにおいても威力が発揮される。このPHEVの「ラングラー」は、本格オフローダーに新たな可能性をもたらすモデルとなるだろう。 (福田雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ・メルセデス・ベンツ、「EQA250」がリコール……フロントモーターの電気配線に問題があり走行不能になる恐れ ・パナソニック、米ルシッドのEVにリチウムイオン・バッテリーを供給……複数年契約で「エア」のフルラインナップに ・日立AstemoのEV用インバーターにロームの半導体が採用……「第4世代SiC MOSFET」を採用、WLTCモード値6%の電費を改善 ・ポルシェ、フォーミュラEのバレンシア・テストに参加……ニューマシン「99Xエレクトリック Gen3」を持ち込む ・ポルシェ、フォーミュラEチームのテストドライバーにデビッド・ベックマンを起用……2013年のドイツジュニアカート選手権ではミック・シューマッハを抑え総合優勝 ・次世代電池開発のテラワット、科学技術政策担当大臣賞を受賞……数年以内に世界初の次世代バッテリーの商用化、アメリカでの大きな資金調達が評価 ・メルセデス・ベンツ、2024年からの電動パワートレインの生産体制を強化……EU内の生産拠点に10億ユーロを投資、ウンターテュルクハイム工場の生産能力が100万台へ

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連載企画 一覧
VOL.15
本当に日本はEVで「立ち遅れた」のか:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第15回

ジャパン・モビリティ・ショー開催でにわかに沸き立つ日本のEVマーケット。しかし現実の販売状況は日本において大きく立ち遅れている。技術では先導してきたはずの日本メーカーは、なぜEVで世界をリードできていないのか。この分野のベテランジャーナリストである御堀 直嗣が解説する。 日本の低いEV市場占有率 日本は、世界に先駆けて電気自動車(EV)の市販に踏み切った。2009年に三菱自動車工業が、軽自動車EVの「i-MiEV」を法人向けにリース販売しはじめ、翌10年には一般消費者向けへの販売も開始した。同年には、日産自動車も小型EVの「リーフ」を発売した。この2社によって、EVの量産市販が実現し、ことにリーフは海外への販売も行われ、「i-MiEV」はフランスの当時PSA社にOEM供給された。リーフの販売は世界で累計65万台に達し、その他EVを含めると、日産は世界で100万台のEV販売の実績を持つ。そのうち、日本国内は累計23万台である。 ちなみに、米国テスラは2022年では年間で約130万台、中国のBYDは同年に約90万台規模へ成長している。 同時にまた、世界共通の充電規格であるCHAdeMO(チャデモ)も準備され、リーフが販売される世界の各地域にCHAdeMO充電器の設置が動き出した。 それらを背景に、経済産業省は2012年度補正予算で1,005億円の補助金を計上し、全国に約10万基の充電器を整備するとした。この補助金は全額支給でないため、トヨタ/日産/ホンダ/三菱自の4社が資金を拠出し、補助金で賄いきれない残額を補填することに合意した。 しかし、現在の充電器の数は、急速充電と普通充電を合わせて約2万基である。 国内の新車販売において、EVが占める割合は1%以下という状況が長く続いた。昨2022年、「日産サクラ」と「三菱eKクロスEV」が発売となり、1年で5万台以上を販売することで2%ほどの占有率になろうかという状況にある。 一方、世界全体では、EVの市場占有率が13%になる。米国は5.8%、欧州は12%、中国は21%となっており、日本がいかに低水準であるかがみえてくる。 日本でEV普及が進まなかった理由 EVの先駆者であった日本が、なぜ欧米や中国の後塵を拝するようになったのか。 最大の要因は、せっかく1,005億円という充電基盤整備に対する経済産業省の支援があったにもかかわらず、急速充電器の整備にばかり世間の目が行き、EV利用の基本である基礎充電、すなわち自宅での普通充電(200V)の重要性が広がらなかったからである。ことに、マンションなど集合住宅の駐車場と、月極駐車場への普通充電設置がほぼできなかったことが原因であった。 EVの充電は、普通充電で8~10時間、あるいはそれ以上かかるとされ、これが単純にガソリンスタンドでの給油時間と比較されて、使い勝手が悪いとさまざまな媒体を通じて流布された。いまでもそうした論調が消えていない。しかし、自宅で普通充電できれば、寝ている間に満充電になるので、翌朝出かけるときは満充電で出発できる。 戸建て住宅に住む人はそれができた。ところが、戸建て住宅でも自宅に車庫がなく月極駐車場を利用する人は、近隣の急速充電器を利用しなければならなくなった。 集合住宅に住む人は、敷地内に駐車場が併設されていても、管理組合の同意が得られず普通充電ができない状態に陥った。無知がもたらした悲劇だ。EVを買う意思があっても、手に入れにくい状況があった。 集合住宅の管理組合で賛同が得られない最大の理由は、幹事がEV時代を予測できず、また自分には関係ないとして無視され続けたことにある。設置の経費は、ことに当初は補助金と自動車メーカー4社による補填があったので、ほぼゼロであった。現在でも、施工業者が残金を負担するなどのやりくりで、集合住宅側の負担が軽く済む仕組みが出てきている。それでもなお、管理組合で合意を得るのが難しい状況は払拭できていない。 基礎充電の普及を目指す業者の間でも、さらに難しいとされるのが月極駐車場への普通充電の設置だ。月極駐車場を管理する不動産業者の理解を得にくいという。

VOL.1
リッター200円にもう限界……給油の“枷”をぶっちぎれ!【モデルサードインパクト vol.1】

ガソリン高い、燃費も悪い、限界だ! かつてないほどの猛暑に喘いだであろう今夏。「もういいよ」「もう下がってくれ」と、気温に対して誰もが感じていたと思うが、自動車ユーザーはガソリン価格に対しても同じことを思っていたのではないだろうか。 リッターあたり170円、180円、190円、そして200円の大台を突破……給油をするたびに、誰もが憂鬱な気分になったはずだ。小生はドイツの某オープンスポーツカーに乗っているのだが、リッターあたり平均10kmでハイオク仕様。愛車にガソリンを入れるたび、顔が青ざめていた。 「高額給油という枷から解放されたい……」 EVの購入を決意した所感である。クルマを走らせることは、本来喜びのはず。給油のたびに落ち込むのは本望ではない。 小生は、THE EV TIMES(TET)の編集スタッフを務めています。この9月、「テスラ・モデル3・パフォーマンス」を購入しました。新たな愛車と共に進むEVライフを「モデル・サードインパクト」と銘打ち、連載で紹介していこうと思います。 EVは便利だと実感した「日産リーフ」 小生が初めて体験したEVは「日産リーフ」(2代目)である。遡ること2017年、「リーフ」が2代目になった頃、日産が全国で試乗キャラバンを開催し、小生はその試乗アテンダントを担当していた。そこで「リーフ」を存分に運転することができたのだ。 それゆえ、EVの利便性の高さを実感することになった。スポーツモデル顔負けの力強くスムーズな加速にまず驚いたのだが、給油という枷から外れて自由に走り回れることが大変な魅力に感じた。アイドリング状態でエアコンを入れっぱなしでもガソリン代を気にせずに済む。車内でPCを開けば、そのままオフィスになる。車の用途が無限大に広がると感じた。 充電時間も特別長いとは感じなかった。充電残量が50%くらいになったら、急速充電を使用してあっという間に80%まで回復できる。ちなみに100%まで充電した場合、280kmを走れる表示が出ていたと記憶している(当時は寒い季節で暖房を使用した)。ちょっとした遠出も十分に対応可能。「EVなんて不便」という印象は全く抱かなかった。そこで薄々と「将来はEVもアリだな」と思ったのだ。

VOL.20
VW「ID.4」オーナーはアウトバーンを時速何キロで走る? [ID.4をチャージせよ!:その20]

9月上旬、スイスで開催された「ID.TREFFEN」(ID.ミーティング)を取材した際に、参加していた「ID.4」オーナーに、そのクルマを選んだ理由などを聞きました。 フォルクスワーゲン一筋 鮮やかな“キングズレッドメタリック”のID.4で登場したのは、ドイツのハノーファーからはるばるスイスに駆けつけたデュブラック・マルクスさん。「フォルクスワーゲンT3」のTシャツを着ているくらいですから、かなりのフォルクスワーゲン好きと見ましたが、予想は的中! 「18歳で免許を取ってからこれまで30年間、フォルクスワーゲンしか買ったことがないんですよ」という、まさにフォルクスワーゲン一筋の御仁でした。 彼の愛車はID.4のなかでももっともハイパフォーマンスな「ID.4 GTX」。日本未導入のこのグレードは、2モーターの4WD仕様で、最高出力220kW(299PS)を発揮するというスポーツモデル。こんなクルマに乗れるなんて、なんともうらやましいかぎりです。 そんなマルクスさんにID.4 GTXを購入した理由を尋ねると、「これからはEVの時代だと思ったので!」と明確な答えが返ってきました。とはいえ、ID.ファミリーのトップバッターである「ID.3」が登場した時点ではすぐに動き出すことはありませんでした。「1年半くらい前にID.4 GTXを試乗する機会があって、踏んだ瞬間から力強くダッシュするID.4 GTXのパンチ力にすっかり惚れ込んでしまい、即決でしたよ(笑)」。

VOL.14
欧州メーカーはなぜ電気自動車に走ったのか?:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第14回

EVの知識を、最新情報から「いまさらこんなこと聞いていいの?」というベーシックな疑問まで、ベテラン・ジャーナリストが答えていく連載。今回は欧州メーカーの特集です。 日本市場参入が遅かった欧州製EV 日本市場では、欧州からの電気自動車(EV)攻勢が活発に見える。ドイツの「BMW i3」が発売されたのは2013年秋で、日本市場へは2014年春に導入された。 日本の自動車メーカーがEVを市販したのは、2009年の「三菱i-MiEV」の法人向けリースが最初で、翌2010年には「i-MiEV」も一般消費者への販売を開始し、同年に「日産リーフ」が発売された。「i3」の発売は、それより数年後になってからのことだ。 ほかに、フォルクスワーゲン(VW)は、「up!」と「ゴルフ」のエンジン車をEVに改造した「e-up!」と「e-ゴルフ」を2015年から日本で発売すると2014年に発表した。だが、急速充電システムのCHAdeMOとの整合性をとることができず、断念している。その後、VWは「e-ゴルフ」を2017年秋に販売を開始した。EV専用車種となる「ID.4」を日本に導入したのは、2022年のことだ。フランスのプジョーが、「e-208」を日本で発売したのは2020年である。 以上のように、欧州全体としては、EVへの関心が高まってきたのは比較的最近のことといえる。 くじかれたディーゼル重視路線 欧州は、クルマの環境対策として、自動車メーカーごとの二酸化炭素(CO2)排出量規制を中心に動いてきた。そして2021年から、1km走行当たりの排出量を企業平均で95gとする対処方法を考えてきた。EU規制は、販売する車種ごとのCO2排出量を問うのではなく、販売するすべての車種の平均値で95gを下回らなければならないという厳しさだ。 対策の基本となったのは、ディーゼルターボ・エンジンを使った排気量の削減と、出力の低下を補う過給器との組み合わせを主体としつつ、ハイブリッドによるさらなる燃費の向上である。 既存のディーゼルターボ・エンジンをできるだけ活用しようとする考えは、欧州メーカーが補機用バッテリーの電圧を世界的な12ボルトから、36ボルトや48ボルトに変更することによるマイルドハイブリッド化に注目してきた様子からもうかがえる。 ところが、2015年にVWが米国市場でディーゼル車の排出ガス規制を偽装していたことが明らかにされた。公的機関での測定では規制値を満たすものの、実走行で急加速などした際に基準を上回る有害物質が排出され、それによって力強い加速を得られるようにした制御が発覚したのである。その影響は、VW車だけでなく、アウディなどVWグループ内に広く影響を及ぼした。

VOL.3
ボルボは新型EVの「EX30」でインテリアに新たな価値を与え、空間を最大限、利用する!

ボルボはEX30の室内で多くの新たなチャレンジを行なっていると謳う。その詳細を小川フミオ氏が訊いていく。連載1回目はこちら、2回目はこちら。 冷たさの排除し素材を“素直”に使う EX30のインテリアが、他車と決定的に違うのは、金属的な表面処理がほとんど見当たらないこと。それは意図的にそうしたのだと、インテリアデザインを統括するリサ・リーブス氏は言う。 「心したのは、冷たさの排除です。使う素材はオネスト、つまり木に見えるものは木であり、また同時に、リサイクル素材を人間にやさしいかたちで使用しました」 インテリアは「ブリーズ」(やさしい風)をはじめ「ミスト」(もや)、「パイン」(松)それに「インディゴ」と4種類(日本はそのうち「ブリーズ」と「ミスト」を導入)。 「ブリーズを例にとると、デザインインスピレーションはサマーデイズ。シート表皮の素材はピクセルニットとノルディコ、ダッシュボードの飾り材はパーティクル、そして空気吹き出し口のカラーはブルーです」 リーブス氏は説明してくれる。 「ピクセルニットはPETボトルをリサイクルしたもの。それを3Dニッティング(立体編み)プロセスでシート用素材にしています。組み合わせるノルディコは、PETボトルなどのリサイクル素材、北欧で計画的に伐採された木から採取された素材、リサイクルされたワインコルクなどで作られたテキスタイルです」 ダッシュボード用のパーティクルは、窓枠やシャッターを中心に工業廃棄物であるプラスチックを粉砕したものだし、フロアマットは漁網をリサイクルしたという。 「リサイクル材とともに、インテリアは雰囲気を統一したので、私たちは“ルーム”という名を与えています。インディゴの場合、デザインインスピレーションは”夜のはじまり”で、デニムをリサイクルしたときに余る糸を使った素材をシート表皮に使っています」 シートじたいは「スニーカーにインスパイアされた形状」(メイヤー氏)だそうだ。

VOL.2
ボルボの新型電気自動車「EX30」にはスターウォーズのデザインが取り入れられている!?

エンジンの回転の盛り上がりには、時に人間的な表現が用いられる。しかしBEV(バッテリー電気自動車)はエンジンもなく無音なため、より無機質な、機械的な印象が強くなる。ボルボはそんなBEVに人間的な要素を入れたと主張する。連載1回目はこちら。 どことなく楽しい感じの表情 ボルボEX30は、いってみれば、二面性のあるモデルだ。ひとつは、地球環境保全(サステナビリティ)を重視したコンセプト。もうひとつは、大トルクの電気モーターの特性を活かしたスポーツ性。 デザイナーは「いずれにしても、BEVと一目でわかってもらうデザインが重要と考えました」(エクステリアデザイン統括のTジョン・メイヤー氏)と言う。 「もちろん、昨今ではICE(エンジン車)かBEVか、デザインをするときあえて差別化をしないのが世界的な流れです。ただし、私たちとしては、スカンジナビアデザインの原則を守りつつデザインしました」 メイヤー氏の言葉を借りて、この場合のスカンジナビアデザインの肝要を説明すると「形態は機能に従う」となる。 「そこで、上部に開口部とグリルはもたせないようにしようと。ただし(インバーターなどのために)空気を採り入れる必要はあるので、下にインレットは設けています」 ボルボ車のデザインアイディンティティである「トール(神の)ハンマー」なる形状のヘッドランプも採用。ただし、カバーで覆った一体型でなく、四角いLEDのマトリックスが独立しているような形状があたらしい。 「そうやって出来上がったのがこのデザインです。顔になっていて、そこには眼があって、鼻があって、口があるんです。どことなく楽しいかんじで、これまで以上に人間的な表情を実現しました」 暴力的でもなければ、ロボット的でもない。メイヤー氏はそこを強調した。

VOL.1
ボルボの新型電気自動車「EX30」は、相反する2面性を合わせ持つ文武両道なクルマ

ボルボの新たなBEV(バッテリー電気自動車)として、ついに10月2日から「サブスク」モデルの申し込みが始まるEX30。この「ボルボ史上最小のBEV」はどのように開発されたのか。ミラノで行われたワールドプレミアに参加した小川フミオ氏が関係者の声とともに振り返る。 スカンディナビアン+デジタル 2023年6月に登場したEX30は、コアコンピューティングテクノロジーを大胆に採用する、ボルボの新世代BEV。 内容にとどまらず、同時に、デザイン面でもさまざまな大胆な試みがなされているのも特徴だ。 いってみれば、伝統的ともいえるスカンディナビアンテイストに、デジタライゼーションの融合。 「私たちのデザイン的価値のすべてを小さなフォーマットで具現」したモデルと、ボルボ・カーズはプレスリリース内で謳う。 「非常に電気自動車的なデザインで(中略)閉じられたシールド(フロントグリルの開口部のこと)とデジタル表現を用いたトールハンマーヘッドライト」がフロント部の特徴とされる。 さらに新世代BEVとしてボルボが狙ったものはなんだろう。ミラノでの発表会において出合った担当デザイナー(たち)に、デザインの見どころと背景にあるコンセプトを取材した。

VOL.5
「BMW iX xDrive50」の高速電費は我慢不要! ロングドライブにうってつけのEV

[THE EV TIMES流・電費ガチ計測] THE EV TIMES(TET)流電費計測の5回目を、8月に「BMW iX xDrive50」で実施した。車高の高いSUVにもかかわらず、高速巡航時に電費が低下しにくいのが特徴だ。その詳細をお伝えする。 ※計測方法などについてはこちら、試乗記はこちらをご覧ください。 100km/h巡航でどんどん行こう iX xDrive50のカタログに記載された「一充電走行距離」は650km(WLTC)で、電池容量は111.5kWhだ。650kmを実現するには、電費が5.83km/kWh(以後、目標電費)を上回る必要がある。 各区間の計測結果は下記表の通り。5.83km/kWhを上回った場合、赤字にしている。 これまでのTETによる電費計測で初めてA区間の往路と平均で目標電費を超えた。A区間のように標高差が少ない場所では同じ状況になり得る、つまり100km/h巡航で一充電走行距離の650km近くを走破できる可能性がある。   100km/h巡航でも600kmは走れそう 各巡航速度の平均電費は下表の通りだ。「航続可能距離」は電費にバッテリー総容量をかけたもの、「一充電走行距離との比率」は650kmに対して、どれほど良いのか、悪いかだ。 iXのエクステリアは、大きなキドニーグリルが特徴的だ。ざっくり言えば全長5m、全幅2m、全高1.7m、車重2.5トンの堂々としたボディだが、Cd値が0.25と優れている。 100km/h巡航におけるiXの電費は、5.71km/kWhであった。絶対的な数値としては決して高くないが、一充電走行距離との比率を計算すると98%と、これまでにTETが計測したデータの中で最高の結果を記録した。120km/h巡航でもこの数字は78%であった。 つまり、iXは高速巡航でも電費の低下が少ないEVだといえる。 ちなみに、過去に計測したメルセデス「EQE 350+」は、この100km/h巡航時の比率が90%だった。EQEはセダンボディで背が低く、Cd値0.22で、高速巡航には有利であることを考えても、iXの98%という数字の凄さが分かる。 この結果は、空力性能の良好さと高効率なパワートレインの賜物ではないかと思う。BMWが「テクノロジー・フラッグシップ」「次世代を見据え、長距離走行が可能な革新的な次世代電気自動車」と謳っているだけのことはある。これらの記録を塗り替えるクルマが現れるのか、今後の計測が楽しみだ。   各巡航速度ごとの比率は以下の通り。80km/hから100km/hに速度を上げると21%電費が悪くなる。120km/hから80km/hに下げると1.6倍の航続距離の伸長が期待できる。

VOL.19
ぐっとパワフルな2024年モデルのフォルクスワーゲン「ID.4」をミュンヘンで緊急試乗! [ID.4をチャージせよ!:その19]

コンパクトSUVタイプの電気自動車「ID.4」が2024年モデルにアップデート。この最新版をドイツ・ミュンヘンでさっそく試乗しました。 モーターのパワーは60kW増し 「ID.4」が2024年モデルにアップデートし、コックピットのデザインが様変わりしたことは、前回のコラムで述べました。さらに今回の仕様変更では、走りにかかわる部分にも手が加えられています。 一番の変更が、新開発のモーターが搭載されたこと。フォルクスワーゲンでは、ID.ファミリーのプレミアムセダンである「ID.7」に、新たに開発した「APP550」型の電気モーターを採用しました。最高出力は210kW(286PS)と実にパワフルです。これが2024年モデルの「ID.4プロ」にも搭載されることになりました。これまでの「ID.4プロ」の最高出力が150kWですので、出力は60kW、4割増しという計算。最大トルクも従来の310Nmから545Nmとなり、こちらは75%の大幅アップです。 バッテリー容量は77kWhで変更はありませんが、2024年モデルからはバッテリーの“プレコンディショニング機能”を搭載し、冬の寒い時期、充電前にバッテリー温度を高めておくことで充電量の低下を抑えることができます。これはうれしい! 他にも、可変ダンピングシステムのDCC(ダイナミックシャシーコントロール)の改良なども行われ、果たしてどんな走りを見せてくれるのか、興味津々です。 早く乗ってみたいなぁ……と思っていたら、なんとうれしいことに、発表されたばかりの2024年式ID.4 プロ・パフォーマンスを、ドイツ・ミュンヘンで試乗するチャンスに恵まれました。試乗時間は約20分と超ショートですが、わが愛車のID.4 プロ・ローンチエディションと比較するには十分な時間です。

VOL.18
ミュンヘンで「ID.4」の2024年モデルに遭遇! [ID.4をチャージせよ!:その18]

ミュンヘンモーターショー(IAA)のメイン会場近くで、フォルクスワーゲンがメディア向けイベントを開催。そこで、2024年モデルの「ID.4」に遭遇しました。 見た目は同じ イベントスペースのパーキングに待機していたのは、“コスタアズールメタリック”のボディが爽やかな「ID.4 プロ・パフォーマンス」。日本のラインアップにはないボディカラーに目を奪われますが、エクステリアデザインはこれまでと同じで、私の愛車の「ID.4 プロ・ローンチエディション」との違いは1インチアップの21インチホイールが装着されていることくらいです。 ところが運転席に座ると、コックピットの眺めに違和感が! マイナーチェンジでもないのに、コックピットのデザインが私のID.4 プロ・ローンチエディションと大きく変わっていました。 ご存じのとおり、フォルクスワーゲンなど多くの輸入ブランドでは“イヤーモデル制”を採用していて、毎年のように細かい仕様変更を実施。エクステリアデザインは一緒でもパワートレインや装備が変わるというのはよくあること。この2024年モデルでは、インテリアのデザインまで様変わりしていたのです。 真っ先に気づいたのが、ダッシュボード中央にあるタッチパネルがリニューアルされていること。2022年モデルのID.4 プロ・ローンチエディションでは12インチのタッチパネルが搭載されていますが、この2024年モデルでは12.9インチにサイズアップが図られたのに加えて、デザインも一新され、明らかに使い勝手が向上していました。

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