TET 編集部 記事一覧

TEXT:TET 編集部
東京都、集合住宅でのEV充電器の購入・設置費用を助成。「令和5年度集合住宅等への充電設備普及促進事業」が開始

東京都は6月1日、令和5年度の集合住宅(マンション)等への充電設備導入に対する助成事業を発表。今年度は集合住宅の機械式駐車場に関する工事費補助等が強化され、マンション居住者にも電気自動車(EV)がグッと身近になりそうだ。 自己負担なしで設置できるケースも EV購入にあたって一番心配なのが充電環境。最新の高級EVでは500kmを超える航続距離があたり前になってきているものの、公共用充電設備がまだまだ整備途上の日本では、やはり毎日自宅で充電できることが重要。ただ、一戸建てなら簡単な工事でコンセントを新設できるが、マンションだと個人が勝手に充電器を設置することはできない。また、最近では都内マンションに多い立体駐車場にも設置できる充電器が登場しているものの、工事費が高く、管理組合では中々新設に踏み切れないという状況にある。 そんな苦境に朗報となりそうなのが今回の助成拡充。今年度から機械式駐車場に充電器を設置する場合の補助金が、1基目は上限171万円/基、2基目以降は上限86万円/基に引き上げられたのだ。助成率については10/10とされ、上限の範囲内なら自己負担は発生しない。 では、この補助金はどの程度負担を低減してくれるのだろう。この点、正確な金額はメーカーから見積もりを取るしかないが、ネット情報だと最新の機械式駐車場対応普通充電器なら、設置費は1基当たり数十万円程度まで抑えられる場合もある模様。ということは、補助金を受給できれば、実質的に管理組合の負担なしで充電器を新設できる可能性がある。もちろん、充電器の新設には工事費以外に充電設備本体の購入費用もかかるが、こちらについても普通充電設備の場合2分の1の助成があるので、自己負担は低額に抑えられる。 >>>次ページ 維持管理費をサポートする補助金も

TAG: #充電 #東京都 #補助金
TEXT:福田 雅敏、ABT werke
リマック、2000ps級EVスーパー・スポーツ「ネヴェーラ」を英国で初納入[2023.06.01]

4モーターを搭載で最高出力1,427kW(1,941ps) エンジン車にはできないEVスーパーカーの新世界 【THE 視点】リマックは5月31日、EVスーパーカー「ネヴェーラ」を英国で納車したと発表した。「ネヴェーラ」は2021年に発表された世界150台限定の超高性能EV。世界各地で納車が始まっており、今回は英国での初納車となった。 リマックは、2009年クロアチアに設立されたEVメーカー。2011年には「ネヴェーラ」の前身となるEV「コンセプトワン」を発表し、2018年春に「ジュネーブ・モーターショー」にてコンセプトカー「C_Two」が発表。「ネヴェーラ」はその市販モデルだ。ちなみに2018年にはポルシェが資本参加し、開発が加速した。 「ネヴェーラ」は、カーボンファイバー製のモノコックシャシーに4つのモーターを搭載して4輪を独立して駆動する。システム総合の最高出力は1,427kW(1,941ps)で、総合の最大トルクは240.7kgmとなる。バッテリーの最大容量は120kWhだ。 これらの数値からも読み取れるように、2022年には、公道を走るEVとして最高速度となる412km/hを記録。2023年には、1日で23件の加速性能および制動能力記録を達成した。 「ネヴェーラ」は早い話、2,000psのモンスターEVである。エンジン車でこれほどの性能を出そうと思うと、エンジン自体の大型化もそうだが、何より排ガス対策や熱対策などで、ボディが余計に大型になりがちだ。当然空力性能も悪化する。もちろんコストだって相当にかかってしまう。 2,000psを達成できたのは、EVだからと言って良いだろう。「ネヴェーラ」のボディは全体的に低いデザインとなっているが、2,000ps級のマシンでこのスタイルを実現するのは困難だと思われる。また筆者の想像だが、2,000psのエンジン車をつくるよりも開発コストは低いのではないだろうか。 EVは、スーパーカーにエンジン車にはない価値を生み出せる。リマックが「ネヴェーラ」をもってそれを証明した。いつか日本でお目にかかれる日を楽しみにしている。 (福田雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ★★トヨタ、米国にバッテリー工場を建設……事業に21億ドル(約2,900億円)の追加投資も[詳細はこちら<click>] ★★メルセデス・ベンツ、中型ミニバンタイプのEV「EQT」及び商用タイプ「eシタン」を本国で発売開始……「EQT」が4万9,444.50ユーロ(約740万円)、「eシタン」が37,740ユーロ(約560万円)から[詳細はこちら<click>] ★★フィアット、小型EV「トポリーノ」を発表……2人乗りの都市型電動モビリティ[詳細はこちら<click>] ★東京都、「令和5年度集合住宅等への充電設備普及促進事業」を開始……EV充電器の購入・設置費用を助成、6月30日(金)〜令和6年3月29日(金)まで受付[詳細はこちら<click>] ★神奈川県、法人向けに「令和5年度神奈川県事業用EV導入費補助金」の受付を開始……4月27日(木)〜12月28日(木)まで受付、EVのバス・トラック・軽トラック・タクシーが対象[詳細はこちら<click>] ★オムロンとユビ電、新たなEV充電器をオムロン岡山事業所にて実証実験……EV充電用コンセントに後付け可能な充電機器、個別測定で充電サービス「ウィーチャージ」より課金 ★テラモーターズ、富山県舟橋村にEV充電器「テラ・チャージ」を導入……舟橋村役場など計2ヵ所の公共施設に ★大阪メトロ、「大阪・関西万博」の会場整備従事者向けの通勤バスにEVバスを導入……65台を順次導入、6月1日より「舞洲〜夢洲(万博会場)間 」「咲州〜夢洲(万博会場)間」にて運行 ★国際航業、「V2H」の効果測定サービス「エネがえるEV・V2H」を開始……有償版として正式にスタート、太陽光発電なども総合的に測定 ★小型EV輸入販売のベクトリクス・ジャパン、「自治体・公共week・スマートシティ推進EXPO」<東京ビッグサイト(東京都江東区)/6月28日(水)〜30日(金)>に出展……小型三輪EV「I-カーゴ」の2023年仕様を展示 ★フォーミュラE第10戦ジャカルタ、今週末に開催……現在のランキングトップはニック・キャシディ選手(エンビジョン・レーシング) デイリーEVヘッドライン[2023.06.02]

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TEXT:TET 編集部
欧州で大型トラックのEV化が進む。ダイムラートラックが新型「eアクトロス300 トラクター」を今秋より量産化

ドイツのトラックメーカー「ダイムラートラック」は5月30日(現地時間)、電動トラクターヘッド「eアクトロス300 トラクター」がドイツのヴェルト工場からトルコのアクサライまで約3,000kmにおよぶテスト走行に成功したと発表。今後欧州では、重量物を運ぶトレーラーも電動化が進みそうだ。 最大400kmの航続距離を達成 「アクトロス」はダイムラートラックが、メルセデス・ベンツ・ブランドで販売している大型トラックシリーズだ。日本でも以前販売され、スリーポインテッド・スターをグリルに付けた大型トラックを見掛けたことがある人もいるはず。 eアクトロスはその名の通り、アクトロスの電動版。既に2021年には通常のトラックバージョン「eアクトロス300」(112kWhバッテリー3個搭載)および「eアクトロス400」(同4個搭載)が登場しており、後者の航続距離は最大400kmと長距離輸送もこなす実力を誇る。 パワートレインは2基の電気モーターと2速トランスミッションの組み合わせで、水冷モーターの連続出力は330kW(約443hp)、一時的なピークパワーは400kW(約536hp)と強力そのもの。モーター駆動にもかかわらずトランスミッションを備えるのは、重量物積載時に必要な発進時のパワーを引き上げるためだろう。 今回、テスト走行の成功が発表されたトラクターヘッドは、通常のトラックに次ぐeアクトロスの新たなバージョンとして、現在開発が進行中のもの。ダイムラートラックでは本年秋からの量産開始を目指しているとのことで、既に海抜1,800m超を含む高地テストはクリア済みという。今後は同社がトルコに持つテストサイトで耐久試験に挑む予定だが、その前段階としてプロトタイプのドイツからの移動を、公道テストの機会として活用したというわけだ。 ルートはオーストリア、スロベニア、クロアチア、セルビア、ブルガリアを経由するもので、途中の充電は一般の充電ステーションでのみ行ったとのこと。トラックで国際長距離輸送を行えるのは欧州ならではの環境だ。 >>>次ページ 日本のEVトラック市場の状況

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TEXT:福田 雅敏、ABT werke
コスモ石油、EVの新サービスを開始……軽商用EV「ASF2.0」をリース

サービスステーションや加盟店にて定額で充電とメンテナンス ASF社のブランド価値を高めるためにしっかりとサポートを 【THE 視点】コスモ石油マーケティング(コスモ)は5月31日、ASF(資本業務提携契約を締結したEVの企画および開発を行うスタートアップ企業)が製造する軽商用EV「ASF2.0」の取り扱いを開始すると発表した。同社が展開する「コスモMyカーリース」において展開する。 コスモエネルギーグループは、カーボンニュートラル実現に貢献すべく、「グリーン電力サプライチェーン強化(発電~需給調整~売電サプライチェーンによる高付加価値化)」の経営計画「ヴィジョン2030」を掲げている。 これまでコスモは、カーリースやカーシェア事業でのEVの活用を、法人や自治体に提案してきた。今後もカーボンニュートラル事業の需要が拡大することを想定し、国産EV向けのサービス「コスモmyカーリース」に、ASFの軽商用EV「ASF2.0」の導入を決めたという。 ASFは、日本国内でのEV普及促進を図るために設立されたファブレスメーカー(工場を持たない製造業)で、国内EVベンチャーのFOMMより、技術協力を得て事業を進めている。佐川急便と7,200台の「ASF2.0」の供給契約も締結している期待のベンチャー企業である。 「ASF2.0」は、最大容量30kWhのリン酸鉄リチウムイオン・バッテリーを搭載し、航続距離は209km。最大積載量は350kgで、ラストワンマイルの配送に適した性能を持つ。駆動系統はニデック(旧日本電産)製を採用しているため、十分な信頼性があると言える。 「コスモMyカーリース」にラインナップするにあたり、「EV向けメンテナンスパック」の提供も開始した。ASFの充電やメンテナンスを定額で、コスモのSSほか加盟店で受けられることになる。 そのような拠点が多ければ、車両を酷使する配送業に安心して車両を導入できる。法人や小規模な事業を営むところなどへの拡販が、大きく期待できることになる。 ただ、ASF自体は国内では無名と言えるメーカーだ。設計上のクオリティは高いとはいえ、現場での信頼性を得るには、根気強くサービスを提供してゆく必要があるだろう。ともあれ、軽商用EV市場の熱気が高まることは歓迎したい。 (福田雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ★★トヨタ、「水素ファクトリー」を新設……7月1日付けの組織改正にて、燃料電池の開発を加速[詳細はこちら<click>] ★★「日産サクラ」と「三菱eKクロスEV」の累計生産台数が5万台を達成……生産開始から約1年で達成 ★ボルボ、コンパクトSUVの新型EV「EX30」の内装を一部情報公開……リサイクル素材と再生可能素材を活用[詳細はこちら<click>] ★エネチェンジ、JR沼津駅前の商業施設「Plaza Fontana-Numazu Station-」にEV用充電器を設置……施設内有料駐車場に最高出力6kWタイプを2基 ★テラモーターズ、埼玉県三芳町にEV用充電器「テラチャージ」を導入……三好町役場など5ヵ所の公共施設に ★LG、バッテリーの材料「カーボンナノチューブ」の生産を加速……4ヵ所目の専用工場を建設、三菱自動車にも供給予定 ★ステランティス、オー・ド・フランス地域にて大規模バッテリー工場を開設……トタル・エナジーズとの合弁会社が運営、2023年末までに生産ラインを稼働 ★EVバイクシェアのハロー・モビリティ、「BIGFUN平和島」<東京都大田区>にてEVスクーターのシェアサービスを開始……交換式バッテリーを採用、区内のバッテリーステーションの利用も可能 ★テスラ、「広島T-SITE」<広島市西区>にて展示・試乗会を開催……6月1日(木)〜25日までの長期 ★ボッシュ、EV船事業を推進……EVで培った品質・技術を活用、小型ボート用に電動システムを開発 ★太田房江経済産業副大臣とデイビッド・イービー・カナダ・ブリティッシュコロンビア州首相が会談……水素燃料電池の研究開発について企業連携の後押しなどを確認 デイリーEVヘッドライン[2023.06.01]

TAG: #THE視点 #商用EV #国内ビジネス
TEXT:福田 雅敏
最新のEV技術を各社持ち寄り……「人とくるまのテクノロジー展」よりレポート メーカー編[THE視点]

出展者数499社、来場者数6万3,810人で昨年を上回る 「人とくるまのテクノロジー展 2023 YOKOHAMA」が、5月24日~26日までパシフィコ横浜<横浜市みなとみらい地区>で開催された。 自動車メーカーとサプライヤーが、それぞれの最新技術や製品を展示するこのイベント。今年は499の出展社、来場登録者数も6万3,810人と、昨年の484社、来場登録者43,665人を大きく上回った。初日の朝からかなり混んでいると感じたのが第一印象だった。 また今回も各社から展示物が目白押しだった。会場の模様を数回に分けてお伝えしたい。初回は自動車メーカーを中心にEVに関係する情報をレポートする。 日産……「アリア」のカットモデル 日産のブースには、「アリア」のカットモデルが展示されていた。ボンネット内のモーター、インバーターを始めとする機器類や、室内フロアをカットしてバッテリーパックを覗く事ができ、リアモーターの搭載位置も現物として確認できた。 加えて英国大使館のブースにも「アリア」が展示されていた。その理由を尋ねたところ、「日産の工場が英国サンダーランド市にあるから」との事だった。 また、ホワイトボディが主催の自動車技術会の展示コーナーに展示されており、そちらについては、別記事で触れたい。

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TEXT:TET編集部
トヨタが米国でのバッテリーEV生産工場を決定、バッテリー工場に追加投資

トヨタ自動車は、需要が拡大する米国市場でのバッテリーEV(BEV)の供給に向けて、米国におけるBEVの生産工場の決定と、バッテリー工場への追加投資を発表した。 2025年からToyota Motor Manufacturing Kentucky, Inc.(TMMK)において、BEVの3列シート新型SUVを生産開始する。トヨタが米国でBEVを生産するのは初めてであり、同車両には、Toyota Battery Manufacturing, North Carolina(TBMNC:写真)で生産するバッテリーを搭載する予定。 トヨタの北米統括会社であるToyota Motor North America, Inc.(TMNA)と豊田通商は、今後のバッテリーの需要増を見据え、将来の拡張に備えた土台づくりとして、現在建設中のTBMNCに、21億ドルを追加投資し、インフラ整備を進めることを決定した。今回の発表で、TBMNCへの総投資額は59億ドルに達した。TBMNCは、拡大する電動車の需要に必要なリチウムイオン・バッテリーを生産・供給する。 TMNAの小川哲男CEOはこう述べている。「カーボンニュートラルの実現に向け、できる限り早く、できる限り多くのCO2排出量を削減することを目指してまいります。この目標を達成するためには、お客様のニーズを満たす電動車のラインナップを提供する必要があります。米国初のトヨタ単独の車両生産拠点であるTMMKと、最新の工場であるTBMNCが、電動車のラインナップを拡げるため、BEVとバッテリー生産を開始し、未来に向け走り出すことを楽しみにしております」 トヨタは米国において、トヨタとレクサスの両ブランドで22種類の電動車を提供しており、過去2年間で米国での事業に対して80億ドル以上を投資してきた。 グローバルでは、フルラインナップメーカーとして、これまで累計2,300万台以上の電動車を販売してきた。2025年頃までには、グローバルで販売する全車種を、電動専用車もしくは電動グレード設定車とする予定。2026年までに、年間150万台のBEV生産を基準としてペースを定め、10モデルの投入を計画する。さらに2030年までに約5兆円を投資することを公表している。 トヨタは、できる限り早く、できる限り多くのCO2排出量を削減していくために、あらゆる国と地域における様々なニーズにマルチパワートレインで柔軟に対応し、できる限り多くの選択肢を提供していくとしている。

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TEXT:TET 編集部
トヨタ、定置用蓄電池システムを開発。東京電力ホールディングスなどとコラボし、秋田県で実証実験を開始

トヨタ自動車と東京電力ホールディングスは5月29日、両社の蓄電池技術を融合した定置用蓄電池システムを開発したと発表。本年秋頃より、トヨタ系商社の豊田通商および豊田通商の子会社で風力・太陽光発電事業を行うユーラスエナジーホールディングスとも連携し、秋田県鹿角市に立地する大規模風力発電所「ユーラス田代平ウインドファーム」において実証実験を開始するとのことだ。 拡大が見込まれる蓄電池市場 今回両社が実証実験に取り組むのは、蓄電池を直流電源として接続し電力系統や各種電気機器に交流電力を供給する「PCS」と呼ばれる設備と、複数台の電気自動車用バッテリーを組み合わせたシステム。カーボンニュートラル達成のためには利用拡大が必須の再生可能エネルギーだが、天候等に左右される風力発電や太陽光発電はどうしても発電量が不安定になりがちだ。 ただし、一旦発電した電力の一定量を蓄電池に蓄え、電力需要に応じて随時取り出すことが可能になれば、課題の多くが解決する。そのため、東京電力を始めとする電力会社にとって、大容量でコストが安く、効率に優れた蓄電池システムの開発は達成したいテーマのひとつなのだ。 一方、トヨタなど大手自動車メーカーは、既に電気自動車用バッテリーで様々なノウハウを蓄積しており、蓄電池技術については一日の長がある。さらに、自動車メーカー自身にとっても、電気自動車を廃車にする際などに発生する使用済み車載用バッテリーの処理は大きな課題。特に、今後電気自動車が広く普及していけば、大量の使用済みバッテリーが自動車メーカーの手元に残ることとなるから、蓄電池システムでのリユースを含め、その有効活用については今から見通しを付けておきたいところだろう。 こうした両社のニーズが一致して実現したと見られる今回の実証実験では、トヨタの電気自動車に採用されている車載用バッテリーや制御部品と、東京電力の系統接続に関する知見とを融合して、定置用蓄電池システム(1MW/3MWh)を共同開発。このシステムを設備容量7,650kWを誇るユーラス田代平ウインドファームに設置し、蓄電池の充放電に関する最適運用や電力系統の安定化に資する制御などを数年程度かけて確認していく。 >>>次ページ 車載用バッテリーのリユースも視野に

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TEXT:福田 雅敏、ABT werke
商用EVにも地殻変動か、三菱ふそうと日野が経営統合

それぞれの親会社のトヨタ自動車とダイムラー・トラックが合弁会社を設立 三菱ふそう車にトヨタのFCが載る可能性も 【THE 視点】日野自動車と三菱ふそうトラック・バス(三菱ふそう)は30日、経営統合することで基本合意したと発表した。三菱ふそうの親会社であるダイムラー・トラックと、日野の親会社であるトヨタ自動車の4社で基本合意書を同日付で締結した。 トヨタとダイムラー・トラックが合弁会社を設立し、日野と三菱ふそうの両ブランドを残しながら、商用車の開発・調達・生産分野で協業し、水素をはじめとする「CASE(※1)」技術開発を加速させる。 これで、トヨタの燃料電池(FC)を活用した日野のバス「ソラ」や、大型FCEVトラックの技術をダイムラー側が、一方で三菱ふそうの小型EVトラック「eキャンター」の技術や、ダイムラー傘下のメルセデス・ベンツ等がもつ大型バッテリー式EVトラック・バスの技術をトヨタ側が手に入れることになる。 今や単独で「CASE」技術を開発するには限界が見えたのだとみられる。双方が持つ技術を、双方が使えるようになれば、新たなシナジーも生まれよう。 筆者が予想するには、大型トラックの電動化はFCEV、中・小型トラックはバッテリー式EVという方向に明確に進むと思われる。大型車はやはり、充電時間と走行距離を考えると、バッテリー式は難しいところがある。 日本では、刺身にする鮮魚のような鮮度最優先の生鮮食品の輸送もある。充電に時間がかかるバッテリー式の大型EVトラックの場合、大きなタイムロスが発生してしまう。 なお同日行われた会見では、トヨタを中心とする「CJPT(※2)」への、三菱ふそう側の参加については発表やコメントがなかった。 日野は、バスに関してはいすゞと製造部門を統合した「ジェイ・バス」も抱えている。どのような影響が出るのかも気になるところだ。たとえばダイムラー・トラックは、傘下のメルセデス・ベンツ名義で大型EVバスをドイツで製造・販売して公共交通機関に納入するなどの実績を持つ。あわよくば、そのEVバスの導入もあり得る。 ともあれ、三菱ふそうとの事業統合は、国内の商用車業界に大きく影響しそうである。 (福田雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ※1:CASE……「コネクテッド」「自動化」「シェアリング」「電動化」の英語の頭文字をとった造語 ※2:CJPT……「コマーシャル・ジャパン・パートナーシップ・テクノロジーズ」の略語、トヨタが中心となりいすゞも参画する次世代商用車の開発団体 ★★メルセデス・ベンツ、新型EV「EQS SUV」を日本で発売……7人乗りに対応、メーカー初のEV専用プラットフォームを採用[詳細はこちら<click>] ★関東鉄道、茨城県初の路線型の大型EVバスを導入……「BYD K8」(定員81人)を採用、6月1日より守谷営業所管内で運行開始 ★東京都、お台場や有明地区などの臨海部でEVバイクシェアリングを5月29日より開始……ドコモ・バイクシェアと共同事業、前二輪のトライクタイプの小型EVを導入 ★メルセデス・ベンツ、EVのトラクター・ヘッド「eアクトロス」シリーズの長距離テストを実施……ドイツのヴェルト工場からトルコのアクサライまで3,000km、秋に量産開始 ★東北大学、「カルシウム蓄電池」の500回以上の充放電に成功……レアメタル不使用の次世代型バッテリー、トヨタ北米先端研究所も研究に協力 デイリーEVヘッドライン[2023.05.31]

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TEXT:福田 雅敏、ABT werke
BMW、「7シリーズ」のEVモデルの頂点「i7 M70 xDrive」を日本で発売

世界最高級かつ最高性能クラスのEVが上陸 日本のメーカーの目は覚めるか 【THE 視点】ビー・エム・ダブリュー(BMW)は5月29日、高級セダン「7シリーズ」のEVモデル「i7」に、新規に2機種を追加・発売した。 追加したのは「i7 eDrive50」と「i7 M70 xDrive」。既存の「i7 xDrive60」と合わせて3機種の展開となる。なお、納車は2023年第4四半期以降の予定だ。 「7シリーズ」は、2022年に現行型の第7世代に進化した。最高峰の品質と技術を取り入れたのは言うまでもないが、「7シリーズ」としては初のEVモデルが追加されたのが最大のトピックと言えよう。 今回追加されたうちの1台、「i7 eDrive50」は、最高出力335kW(455ps)を発揮する電気モーターが後輪を駆動するBMW伝統のFRレイアウトに則ったモデル。最大トルクは650Nm(66.3kgm)で、0-100km/hの加速はわずか5.5秒だ。床下に収納されているバッテリーの容量は105.7kWhで、航続距離は最大611kmである。価格は1,598万円となる。 そしてもう1台は「i7 M70 xDrive」。BMWのハイパフォーマンス車に与えられる「M」が冠されたシリーズの頂点だ。 最高出力190kW(258ps)のモーターを前輪に、そして360kW(489ps)のモーターを後輪に配置したAWDで、合算の出力は485kW(659ps)となる。最大トルクは1,015Nm(103.5kgm)で、0-100km/hは3.7秒だ。バッテリーの容量は105.7kWhで、航続距離は最大で560kmとなる。価格は2,198万円。 今回発表された「M」を冠した「i7」は、全開加速をしたらむち打ちしそうなトルクで、もはやスーパーカークラスの性能である。BMWなだけに走りを楽しむドライバーズカーであるのは間違いないだろう。 しかし、「7シリーズ」はVIPを乗せるショーファー・ドリブン・カーという側面もあり、いくらハイパフォーマンスEVといえども、そのあたりの仕様は抜かりがない。たとえば後席には超大型の31インチ「シアタースクリーン」が装備されている。EVの静粛性などと相まって、快適性はガソリン車の「7シリーズ」以上と思われる。 日本のEVは、いまだに実用車クラスしかない。海外のEVは、この「i7」に見られるように、富裕層やVIPに向けたモデルが続々と登場している。「上海モーターショー 2023」にて、メルセデス・マイバッハのEVがデビューしたのも記憶に新しい。一方の日本勢は、ほとんどがコンセプトカーの発表にとどまっていた。 日本勢も悠長に構えているわけにはいかないのは明白だ。今年は「東京モーターショー」改め「ジャパン・モビリティ・ショー」が控えている。そこで従来のようにコンセプトカーの展示だらけでは、「日本メーカーは高級EVも作れないのか」と、世界の笑い者になる。「i7」をはじめ、海外の高級EVの登場を無視してはいけない。 (福田雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ★★アウディ、EVシリーズ「e-tron」が150kWの急速充電に対応……既存ユーザーも無料アップグレードが可能[詳細はこちら<click>] ★★ヒョンデ、米国でFCEVトラック「エクシエント・フューエル・セル」を初公開……車両重量15トン(クラス8)の大型トラクター・ヘッド ★トヨタ、EV用のバッテリーや技術を活用した定置用蓄電池システムを開発……東京電力などと共同開発、本年秋より風力発電所「ユーラス田代平ウインドファーム」<秋田県鹿角市>にて実証実験[詳細はこちら<click>] ★半導体のオンセミ、パワー半導体用素材「SiC(炭化ケイ素)」の収益を2027年に倍増目標……ケンパワーのEV用充電器や吉利などへ供給を強化 ★ボルボ、新型EV「EX30」が6月7日の13時30分(現地時間)にいよいよワールドプレミア デイリーEVヘッドライン[2023.05.30]

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TEXT:福田 雅敏
観光型EVバス普及で浮き彫りになる問題……専用の充電インフラがない[THE視点]

「2023 バステクフォーラム」が5月12日、大阪・舞洲スポーツアイランド「空の広場」<大阪市此花区>にて開催された。前編[詳細はこちら]では、会場にて試乗ができた路線型のEVバスを紹介した。 しかし会場には、路線型以外にも観光型のEVバスが展示されていた。現在、日本はインバウンド需要などが再び高まり、観光バスの出番も増えていると聞く。今後導入が検討されるであろう観光型のEVバスは一体どのような特徴があるのか、むしろ、無視できない問題が浮き彫りとなってきた。 EVモーターズ・ジャパンが提案する観光型のEVバス EVモーターズ・ジャパンが会場に持ち込んだもうひとつのEVバスが、観光型の「F8 シリーズ6 コーチ」だ。 全長8.85m×全幅2.49mの観光バスで、定員は35人。最大容量210kWhのバッテリーで、280km(社内基準値)の航続距離を持つ。モーターは最高出力240kW(326ps)。ステンレスのシャシーにFRPのボディや「アクティブ・インバーター」を搭載しているところなど、根底の設計は路線バスタイプと同じだ。 この観光タイプも現在は中国生産だ。内外ともに品質のレベルは高いが、内装面ではUSBソケットが付く程度。簡素ではあるが、国内の観光バスのクオリティに合わせるには、価格やバッテリー容量の問題を解決しなければならないのだろう。 ちなみにバッテリーは、床下はもちろんトランク・ルームにも設けられていた。価格は5,500万円(標準車)で、観光型としてはリーズナブルに思える。 EVモーターズ・ジャパンは現在、北九州にEVバス工場を建設中であり、完成次第国内生産に切り替える予定だという。国産化するということは、内外の完成度に相当のクオリティが求められることになる。 しかし逆に捉えれば、国産の観光型EVバスのリーディングカンパニーになれるチャンスとも言えよう。是非とも日本の商用EV企業としての底力を見せて頂きたい。 ちなみに参加者には、帰る際にアンケート代わりにシール3枚が渡され、それを良かったブースに貼って帰るのがこのイベントの特徴。今回印象的だったのは、私が帰る時点で、EVモーターズ・ジャパンに一番多くのシールが貼られていたことだった。

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連載企画 一覧
VOL.15
本当に日本はEVで「立ち遅れた」のか:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第15回

ジャパン・モビリティ・ショー開催でにわかに沸き立つ日本のEVマーケット。しかし現実の販売状況は日本において大きく立ち遅れている。技術では先導してきたはずの日本メーカーは、なぜEVで世界をリードできていないのか。この分野のベテランジャーナリストである御堀 直嗣が解説する。 日本の低いEV市場占有率 日本は、世界に先駆けて電気自動車(EV)の市販に踏み切った。2009年に三菱自動車工業が、軽自動車EVの「i-MiEV」を法人向けにリース販売しはじめ、翌10年には一般消費者向けへの販売も開始した。同年には、日産自動車も小型EVの「リーフ」を発売した。この2社によって、EVの量産市販が実現し、ことにリーフは海外への販売も行われ、「i-MiEV」はフランスの当時PSA社にOEM供給された。リーフの販売は世界で累計65万台に達し、その他EVを含めると、日産は世界で100万台のEV販売の実績を持つ。そのうち、日本国内は累計23万台である。 ちなみに、米国テスラは2022年では年間で約130万台、中国のBYDは同年に約90万台規模へ成長している。 同時にまた、世界共通の充電規格であるCHAdeMO(チャデモ)も準備され、リーフが販売される世界の各地域にCHAdeMO充電器の設置が動き出した。 それらを背景に、経済産業省は2012年度補正予算で1,005億円の補助金を計上し、全国に約10万基の充電器を整備するとした。この補助金は全額支給でないため、トヨタ/日産/ホンダ/三菱自の4社が資金を拠出し、補助金で賄いきれない残額を補填することに合意した。 しかし、現在の充電器の数は、急速充電と普通充電を合わせて約2万基である。 国内の新車販売において、EVが占める割合は1%以下という状況が長く続いた。昨2022年、「日産サクラ」と「三菱eKクロスEV」が発売となり、1年で5万台以上を販売することで2%ほどの占有率になろうかという状況にある。 一方、世界全体では、EVの市場占有率が13%になる。米国は5.8%、欧州は12%、中国は21%となっており、日本がいかに低水準であるかがみえてくる。 日本でEV普及が進まなかった理由 EVの先駆者であった日本が、なぜ欧米や中国の後塵を拝するようになったのか。 最大の要因は、せっかく1,005億円という充電基盤整備に対する経済産業省の支援があったにもかかわらず、急速充電器の整備にばかり世間の目が行き、EV利用の基本である基礎充電、すなわち自宅での普通充電(200V)の重要性が広がらなかったからである。ことに、マンションなど集合住宅の駐車場と、月極駐車場への普通充電設置がほぼできなかったことが原因であった。 EVの充電は、普通充電で8~10時間、あるいはそれ以上かかるとされ、これが単純にガソリンスタンドでの給油時間と比較されて、使い勝手が悪いとさまざまな媒体を通じて流布された。いまでもそうした論調が消えていない。しかし、自宅で普通充電できれば、寝ている間に満充電になるので、翌朝出かけるときは満充電で出発できる。 戸建て住宅に住む人はそれができた。ところが、戸建て住宅でも自宅に車庫がなく月極駐車場を利用する人は、近隣の急速充電器を利用しなければならなくなった。 集合住宅に住む人は、敷地内に駐車場が併設されていても、管理組合の同意が得られず普通充電ができない状態に陥った。無知がもたらした悲劇だ。EVを買う意思があっても、手に入れにくい状況があった。 集合住宅の管理組合で賛同が得られない最大の理由は、幹事がEV時代を予測できず、また自分には関係ないとして無視され続けたことにある。設置の経費は、ことに当初は補助金と自動車メーカー4社による補填があったので、ほぼゼロであった。現在でも、施工業者が残金を負担するなどのやりくりで、集合住宅側の負担が軽く済む仕組みが出てきている。それでもなお、管理組合で合意を得るのが難しい状況は払拭できていない。 基礎充電の普及を目指す業者の間でも、さらに難しいとされるのが月極駐車場への普通充電の設置だ。月極駐車場を管理する不動産業者の理解を得にくいという。

VOL.1
リッター200円にもう限界……給油の“枷”をぶっちぎれ!【モデルサードインパクト vol.1】

ガソリン高い、燃費も悪い、限界だ! かつてないほどの猛暑に喘いだであろう今夏。「もういいよ」「もう下がってくれ」と、気温に対して誰もが感じていたと思うが、自動車ユーザーはガソリン価格に対しても同じことを思っていたのではないだろうか。 リッターあたり170円、180円、190円、そして200円の大台を突破……給油をするたびに、誰もが憂鬱な気分になったはずだ。小生はドイツの某オープンスポーツカーに乗っているのだが、リッターあたり平均10kmでハイオク仕様。愛車にガソリンを入れるたび、顔が青ざめていた。 「高額給油という枷から解放されたい……」 EVの購入を決意した所感である。クルマを走らせることは、本来喜びのはず。給油のたびに落ち込むのは本望ではない。 小生は、THE EV TIMES(TET)の編集スタッフを務めています。この9月、「テスラ・モデル3・パフォーマンス」を購入しました。新たな愛車と共に進むEVライフを「モデル・サードインパクト」と銘打ち、連載で紹介していこうと思います。 EVは便利だと実感した「日産リーフ」 小生が初めて体験したEVは「日産リーフ」(2代目)である。遡ること2017年、「リーフ」が2代目になった頃、日産が全国で試乗キャラバンを開催し、小生はその試乗アテンダントを担当していた。そこで「リーフ」を存分に運転することができたのだ。 それゆえ、EVの利便性の高さを実感することになった。スポーツモデル顔負けの力強くスムーズな加速にまず驚いたのだが、給油という枷から外れて自由に走り回れることが大変な魅力に感じた。アイドリング状態でエアコンを入れっぱなしでもガソリン代を気にせずに済む。車内でPCを開けば、そのままオフィスになる。車の用途が無限大に広がると感じた。 充電時間も特別長いとは感じなかった。充電残量が50%くらいになったら、急速充電を使用してあっという間に80%まで回復できる。ちなみに100%まで充電した場合、280kmを走れる表示が出ていたと記憶している(当時は寒い季節で暖房を使用した)。ちょっとした遠出も十分に対応可能。「EVなんて不便」という印象は全く抱かなかった。そこで薄々と「将来はEVもアリだな」と思ったのだ。

VOL.20
VW「ID.4」オーナーはアウトバーンを時速何キロで走る? [ID.4をチャージせよ!:その20]

9月上旬、スイスで開催された「ID.TREFFEN」(ID.ミーティング)を取材した際に、参加していた「ID.4」オーナーに、そのクルマを選んだ理由などを聞きました。 フォルクスワーゲン一筋 鮮やかな“キングズレッドメタリック”のID.4で登場したのは、ドイツのハノーファーからはるばるスイスに駆けつけたデュブラック・マルクスさん。「フォルクスワーゲンT3」のTシャツを着ているくらいですから、かなりのフォルクスワーゲン好きと見ましたが、予想は的中! 「18歳で免許を取ってからこれまで30年間、フォルクスワーゲンしか買ったことがないんですよ」という、まさにフォルクスワーゲン一筋の御仁でした。 彼の愛車はID.4のなかでももっともハイパフォーマンスな「ID.4 GTX」。日本未導入のこのグレードは、2モーターの4WD仕様で、最高出力220kW(299PS)を発揮するというスポーツモデル。こんなクルマに乗れるなんて、なんともうらやましいかぎりです。 そんなマルクスさんにID.4 GTXを購入した理由を尋ねると、「これからはEVの時代だと思ったので!」と明確な答えが返ってきました。とはいえ、ID.ファミリーのトップバッターである「ID.3」が登場した時点ではすぐに動き出すことはありませんでした。「1年半くらい前にID.4 GTXを試乗する機会があって、踏んだ瞬間から力強くダッシュするID.4 GTXのパンチ力にすっかり惚れ込んでしまい、即決でしたよ(笑)」。

VOL.14
欧州メーカーはなぜ電気自動車に走ったのか?:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第14回

EVの知識を、最新情報から「いまさらこんなこと聞いていいの?」というベーシックな疑問まで、ベテラン・ジャーナリストが答えていく連載。今回は欧州メーカーの特集です。 日本市場参入が遅かった欧州製EV 日本市場では、欧州からの電気自動車(EV)攻勢が活発に見える。ドイツの「BMW i3」が発売されたのは2013年秋で、日本市場へは2014年春に導入された。 日本の自動車メーカーがEVを市販したのは、2009年の「三菱i-MiEV」の法人向けリースが最初で、翌2010年には「i-MiEV」も一般消費者への販売を開始し、同年に「日産リーフ」が発売された。「i3」の発売は、それより数年後になってからのことだ。 ほかに、フォルクスワーゲン(VW)は、「up!」と「ゴルフ」のエンジン車をEVに改造した「e-up!」と「e-ゴルフ」を2015年から日本で発売すると2014年に発表した。だが、急速充電システムのCHAdeMOとの整合性をとることができず、断念している。その後、VWは「e-ゴルフ」を2017年秋に販売を開始した。EV専用車種となる「ID.4」を日本に導入したのは、2022年のことだ。フランスのプジョーが、「e-208」を日本で発売したのは2020年である。 以上のように、欧州全体としては、EVへの関心が高まってきたのは比較的最近のことといえる。 くじかれたディーゼル重視路線 欧州は、クルマの環境対策として、自動車メーカーごとの二酸化炭素(CO2)排出量規制を中心に動いてきた。そして2021年から、1km走行当たりの排出量を企業平均で95gとする対処方法を考えてきた。EU規制は、販売する車種ごとのCO2排出量を問うのではなく、販売するすべての車種の平均値で95gを下回らなければならないという厳しさだ。 対策の基本となったのは、ディーゼルターボ・エンジンを使った排気量の削減と、出力の低下を補う過給器との組み合わせを主体としつつ、ハイブリッドによるさらなる燃費の向上である。 既存のディーゼルターボ・エンジンをできるだけ活用しようとする考えは、欧州メーカーが補機用バッテリーの電圧を世界的な12ボルトから、36ボルトや48ボルトに変更することによるマイルドハイブリッド化に注目してきた様子からもうかがえる。 ところが、2015年にVWが米国市場でディーゼル車の排出ガス規制を偽装していたことが明らかにされた。公的機関での測定では規制値を満たすものの、実走行で急加速などした際に基準を上回る有害物質が排出され、それによって力強い加速を得られるようにした制御が発覚したのである。その影響は、VW車だけでなく、アウディなどVWグループ内に広く影響を及ぼした。

VOL.3
ボルボは新型EVの「EX30」でインテリアに新たな価値を与え、空間を最大限、利用する!

ボルボはEX30の室内で多くの新たなチャレンジを行なっていると謳う。その詳細を小川フミオ氏が訊いていく。連載1回目はこちら、2回目はこちら。 冷たさの排除し素材を“素直”に使う EX30のインテリアが、他車と決定的に違うのは、金属的な表面処理がほとんど見当たらないこと。それは意図的にそうしたのだと、インテリアデザインを統括するリサ・リーブス氏は言う。 「心したのは、冷たさの排除です。使う素材はオネスト、つまり木に見えるものは木であり、また同時に、リサイクル素材を人間にやさしいかたちで使用しました」 インテリアは「ブリーズ」(やさしい風)をはじめ「ミスト」(もや)、「パイン」(松)それに「インディゴ」と4種類(日本はそのうち「ブリーズ」と「ミスト」を導入)。 「ブリーズを例にとると、デザインインスピレーションはサマーデイズ。シート表皮の素材はピクセルニットとノルディコ、ダッシュボードの飾り材はパーティクル、そして空気吹き出し口のカラーはブルーです」 リーブス氏は説明してくれる。 「ピクセルニットはPETボトルをリサイクルしたもの。それを3Dニッティング(立体編み)プロセスでシート用素材にしています。組み合わせるノルディコは、PETボトルなどのリサイクル素材、北欧で計画的に伐採された木から採取された素材、リサイクルされたワインコルクなどで作られたテキスタイルです」 ダッシュボード用のパーティクルは、窓枠やシャッターを中心に工業廃棄物であるプラスチックを粉砕したものだし、フロアマットは漁網をリサイクルしたという。 「リサイクル材とともに、インテリアは雰囲気を統一したので、私たちは“ルーム”という名を与えています。インディゴの場合、デザインインスピレーションは”夜のはじまり”で、デニムをリサイクルしたときに余る糸を使った素材をシート表皮に使っています」 シートじたいは「スニーカーにインスパイアされた形状」(メイヤー氏)だそうだ。

VOL.2
ボルボの新型電気自動車「EX30」にはスターウォーズのデザインが取り入れられている!?

エンジンの回転の盛り上がりには、時に人間的な表現が用いられる。しかしBEV(バッテリー電気自動車)はエンジンもなく無音なため、より無機質な、機械的な印象が強くなる。ボルボはそんなBEVに人間的な要素を入れたと主張する。連載1回目はこちら。 どことなく楽しい感じの表情 ボルボEX30は、いってみれば、二面性のあるモデルだ。ひとつは、地球環境保全(サステナビリティ)を重視したコンセプト。もうひとつは、大トルクの電気モーターの特性を活かしたスポーツ性。 デザイナーは「いずれにしても、BEVと一目でわかってもらうデザインが重要と考えました」(エクステリアデザイン統括のTジョン・メイヤー氏)と言う。 「もちろん、昨今ではICE(エンジン車)かBEVか、デザインをするときあえて差別化をしないのが世界的な流れです。ただし、私たちとしては、スカンジナビアデザインの原則を守りつつデザインしました」 メイヤー氏の言葉を借りて、この場合のスカンジナビアデザインの肝要を説明すると「形態は機能に従う」となる。 「そこで、上部に開口部とグリルはもたせないようにしようと。ただし(インバーターなどのために)空気を採り入れる必要はあるので、下にインレットは設けています」 ボルボ車のデザインアイディンティティである「トール(神の)ハンマー」なる形状のヘッドランプも採用。ただし、カバーで覆った一体型でなく、四角いLEDのマトリックスが独立しているような形状があたらしい。 「そうやって出来上がったのがこのデザインです。顔になっていて、そこには眼があって、鼻があって、口があるんです。どことなく楽しいかんじで、これまで以上に人間的な表情を実現しました」 暴力的でもなければ、ロボット的でもない。メイヤー氏はそこを強調した。

VOL.1
ボルボの新型電気自動車「EX30」は、相反する2面性を合わせ持つ文武両道なクルマ

ボルボの新たなBEV(バッテリー電気自動車)として、ついに10月2日から「サブスク」モデルの申し込みが始まるEX30。この「ボルボ史上最小のBEV」はどのように開発されたのか。ミラノで行われたワールドプレミアに参加した小川フミオ氏が関係者の声とともに振り返る。 スカンディナビアン+デジタル 2023年6月に登場したEX30は、コアコンピューティングテクノロジーを大胆に採用する、ボルボの新世代BEV。 内容にとどまらず、同時に、デザイン面でもさまざまな大胆な試みがなされているのも特徴だ。 いってみれば、伝統的ともいえるスカンディナビアンテイストに、デジタライゼーションの融合。 「私たちのデザイン的価値のすべてを小さなフォーマットで具現」したモデルと、ボルボ・カーズはプレスリリース内で謳う。 「非常に電気自動車的なデザインで(中略)閉じられたシールド(フロントグリルの開口部のこと)とデジタル表現を用いたトールハンマーヘッドライト」がフロント部の特徴とされる。 さらに新世代BEVとしてボルボが狙ったものはなんだろう。ミラノでの発表会において出合った担当デザイナー(たち)に、デザインの見どころと背景にあるコンセプトを取材した。

VOL.5
「BMW iX xDrive50」の高速電費は我慢不要! ロングドライブにうってつけのEV

[THE EV TIMES流・電費ガチ計測] THE EV TIMES(TET)流電費計測の5回目を、8月に「BMW iX xDrive50」で実施した。車高の高いSUVにもかかわらず、高速巡航時に電費が低下しにくいのが特徴だ。その詳細をお伝えする。 ※計測方法などについてはこちら、試乗記はこちらをご覧ください。 100km/h巡航でどんどん行こう iX xDrive50のカタログに記載された「一充電走行距離」は650km(WLTC)で、電池容量は111.5kWhだ。650kmを実現するには、電費が5.83km/kWh(以後、目標電費)を上回る必要がある。 各区間の計測結果は下記表の通り。5.83km/kWhを上回った場合、赤字にしている。 これまでのTETによる電費計測で初めてA区間の往路と平均で目標電費を超えた。A区間のように標高差が少ない場所では同じ状況になり得る、つまり100km/h巡航で一充電走行距離の650km近くを走破できる可能性がある。   100km/h巡航でも600kmは走れそう 各巡航速度の平均電費は下表の通りだ。「航続可能距離」は電費にバッテリー総容量をかけたもの、「一充電走行距離との比率」は650kmに対して、どれほど良いのか、悪いかだ。 iXのエクステリアは、大きなキドニーグリルが特徴的だ。ざっくり言えば全長5m、全幅2m、全高1.7m、車重2.5トンの堂々としたボディだが、Cd値が0.25と優れている。 100km/h巡航におけるiXの電費は、5.71km/kWhであった。絶対的な数値としては決して高くないが、一充電走行距離との比率を計算すると98%と、これまでにTETが計測したデータの中で最高の結果を記録した。120km/h巡航でもこの数字は78%であった。 つまり、iXは高速巡航でも電費の低下が少ないEVだといえる。 ちなみに、過去に計測したメルセデス「EQE 350+」は、この100km/h巡航時の比率が90%だった。EQEはセダンボディで背が低く、Cd値0.22で、高速巡航には有利であることを考えても、iXの98%という数字の凄さが分かる。 この結果は、空力性能の良好さと高効率なパワートレインの賜物ではないかと思う。BMWが「テクノロジー・フラッグシップ」「次世代を見据え、長距離走行が可能な革新的な次世代電気自動車」と謳っているだけのことはある。これらの記録を塗り替えるクルマが現れるのか、今後の計測が楽しみだ。   各巡航速度ごとの比率は以下の通り。80km/hから100km/hに速度を上げると21%電費が悪くなる。120km/hから80km/hに下げると1.6倍の航続距離の伸長が期待できる。

VOL.19
ぐっとパワフルな2024年モデルのフォルクスワーゲン「ID.4」をミュンヘンで緊急試乗! [ID.4をチャージせよ!:その19]

コンパクトSUVタイプの電気自動車「ID.4」が2024年モデルにアップデート。この最新版をドイツ・ミュンヘンでさっそく試乗しました。 モーターのパワーは60kW増し 「ID.4」が2024年モデルにアップデートし、コックピットのデザインが様変わりしたことは、前回のコラムで述べました。さらに今回の仕様変更では、走りにかかわる部分にも手が加えられています。 一番の変更が、新開発のモーターが搭載されたこと。フォルクスワーゲンでは、ID.ファミリーのプレミアムセダンである「ID.7」に、新たに開発した「APP550」型の電気モーターを採用しました。最高出力は210kW(286PS)と実にパワフルです。これが2024年モデルの「ID.4プロ」にも搭載されることになりました。これまでの「ID.4プロ」の最高出力が150kWですので、出力は60kW、4割増しという計算。最大トルクも従来の310Nmから545Nmとなり、こちらは75%の大幅アップです。 バッテリー容量は77kWhで変更はありませんが、2024年モデルからはバッテリーの“プレコンディショニング機能”を搭載し、冬の寒い時期、充電前にバッテリー温度を高めておくことで充電量の低下を抑えることができます。これはうれしい! 他にも、可変ダンピングシステムのDCC(ダイナミックシャシーコントロール)の改良なども行われ、果たしてどんな走りを見せてくれるのか、興味津々です。 早く乗ってみたいなぁ……と思っていたら、なんとうれしいことに、発表されたばかりの2024年式ID.4 プロ・パフォーマンスを、ドイツ・ミュンヘンで試乗するチャンスに恵まれました。試乗時間は約20分と超ショートですが、わが愛車のID.4 プロ・ローンチエディションと比較するには十分な時間です。

VOL.18
ミュンヘンで「ID.4」の2024年モデルに遭遇! [ID.4をチャージせよ!:その18]

ミュンヘンモーターショー(IAA)のメイン会場近くで、フォルクスワーゲンがメディア向けイベントを開催。そこで、2024年モデルの「ID.4」に遭遇しました。 見た目は同じ イベントスペースのパーキングに待機していたのは、“コスタアズールメタリック”のボディが爽やかな「ID.4 プロ・パフォーマンス」。日本のラインアップにはないボディカラーに目を奪われますが、エクステリアデザインはこれまでと同じで、私の愛車の「ID.4 プロ・ローンチエディション」との違いは1インチアップの21インチホイールが装着されていることくらいです。 ところが運転席に座ると、コックピットの眺めに違和感が! マイナーチェンジでもないのに、コックピットのデザインが私のID.4 プロ・ローンチエディションと大きく変わっていました。 ご存じのとおり、フォルクスワーゲンなど多くの輸入ブランドでは“イヤーモデル制”を採用していて、毎年のように細かい仕様変更を実施。エクステリアデザインは一緒でもパワートレインや装備が変わるというのはよくあること。この2024年モデルでは、インテリアのデザインまで様変わりしていたのです。 真っ先に気づいたのが、ダッシュボード中央にあるタッチパネルがリニューアルされていること。2022年モデルのID.4 プロ・ローンチエディションでは12インチのタッチパネルが搭載されていますが、この2024年モデルでは12.9インチにサイズアップが図られたのに加えて、デザインも一新され、明らかに使い勝手が向上していました。

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