中国国内で苦戦しているEVが日本でどう評価されるか
またサスペンションについて、冒頭でFSDを搭載していると評価したものの、リヤサスペンションにはトーションビームが採用されています。550万円というプレミアムSUVにトーションビームというのは、ややコストカットが行き過ぎだと率直に感じます。
さらなる懸念は取りまわしの観点です。インサイトの最小回転半径は5.9mと、とくに同サイズのbZ4Xと比較して大まわりで、取りまわしを気にする日本人にとってもマイナス部分かと思います。

そして価格設定について、インサイトは550万円で発売されました。CEV補助金の130万円を満額適用できるため、実質420万円で購入可能となります。ただしリーフのB5(Xグレード)やbZ4XのGよりも高額であり、正直EV性能だけを比較してしまうと、コスト競争力に劣っているといわざるを得ないでしょう。
一方で、インサイトに期待できるのが標準装備の充実度です。注目すべき装備内容を列挙します。
・18インチアルミホイール
・タイヤ:コンチネンタル UltraContact UC6
・12.8インチセンタースクリーン
・11.5インチヘッドアップディスプレイ
・前後席ふたつずつのUSB Type-Cポート
・最大20Wに対応するワイヤレス充電器
・電動テールゲート(メモリー、ハンズフリー対応)
・本革シート
・運転席8方向電動調整、シートメモリー、シートヒーター、シートベンチレーション
・リヤシートヒーター
・アンビエントライト
・リヤサイドガラスを含めた全面の二重ガラス化
・1列目頭上の電動開閉式ガラスルーフ
・レベル2 ADAS(Honda SENSING)
・最大1.5kWのV2L機能
・BOSE製12スピーカーシステム
・周波数応答型ダンパー(FSD)
・7エアバッグシステム
・フレグランスシステム
・内蔵ドライブレコーダー
このように、リーフB5のXやbZ4XのGと比較しても、ユーティリティ面に関しては充実した装備内容です。さらに上級グレードとなるbZ4XのZグレードと比較しても引けを取りません。

とはいえ、個人的に指摘したいのが、ホンダのエンジニアたちはインサイトを自信をもっておすすめできるEVとして、本当に胸を張って開発し切ることができたといえるのか、という点です。
今回インサイトの開発責任者は、「開発にあたっては、かつての日本車が欧州に学んだように、いまやEV先進国となった中国の市場においても競争力のあるEVとなるよう鍛え上げてきました。一方、EVであることを声高に主張するのではなく、クルマとしての完成度に主眼をおいて磨き上げてきました。その結果、ガソリン車やハイブリッド車に勝るとも劣らない魅力的なクロスオーバーSUVを完成させることができたと自負しています」と主張しています。
しかし問題は、インサイトのベースモデルとなっている中国国内での「e:NS2」の販売が完全に不発に終わっていることです。これでは、競争力のあるEVとなるよう鍛え上げたとはいい難いでしょう。

※ホンダの中国国内EV月間販売台数。水色のグラフがインサイトのベースモデルe:Nシリーズ第2弾。発売以降、まったく需要が伸びていない。
いずれにしても、ホンダが日本国内にインサイトとして中国製EVを逆輸入し、実質420万円で購入可能というコスト競争力を実現した形になります。EVの選択肢が増えたことは歓迎すべき一方で、3000台の限定販売であり、実際にどれほど本気で日本国内にインサイトを売り出したいのかについては、この点だけを見てもやや疑念をもたざるを得ません。

競合のbZ4Xやリーフは月間1000台以上をコンスタントに売り続けており、インサイトがどれほどの販売台数を達成できるのかには注目です。



















































