レアアースを必要としない未来
自動車部品メーカーのアステモは、2025年のジャパンモビリティショーでレアアースを使わないEVの駆動用モーターを出展した。
ほとんどのEVは永久磁石式同期モーターのローター(回転子、鉄心)にネオジム磁石を使う。ところが、中国に供給のほぼ8割を依存するレアアースを用いるため部品調達に不安が残るとされ、日本では南鳥島沖の海底泥から発見されたレアアースへの期待が高まっている。ただしこれも、存在が確認され試掘された段階で、事業化の時期はまだ明確ではない。
その間にもクルマの電動化は日々前進している。そしてレアアース確保の課題はEVやHVの行方を左右する。
アステモは、レアアースを使わずにネオジム磁石を使うモーターと同等の性能を出せる技術を開発したという。
我々が日常的に知る永久磁石はフェライト磁石と呼ばれる。子どものころ砂場で砂鉄を探したりするのに使ったが、クルマを走らせるほどの強い磁力は得にくい。フェライト磁石の10倍の磁力が得られるとして、ネオジムを用いた永久磁石がクルマの電動化で用いられてきた。
では、アステモはネオジムを使わずどのようにして強い磁力を得ているのか。使うのはフェライト磁石である。ローターの鉄心に埋め込む際に独自の用い方をし、これによって磁気抵抗(電流を流した時に起こる磁気の抵抗)を増やし、磁力を高めるという。
これを多層フラックス構造と呼び、鉄心の中心へ向けて山を重ねるようにフェライト磁石の層を積み上げていく用い方をしている。そのうえで、ローターの大きさを約3割増やし、ローターを囲むステーター(固定子)により大きな電流を流すことで、レアアースなしでも相応のモーター出力を出せるようにした。
ちなみに、今回公開されたアステモのモーターは、最高出力が180kWで、これは新型リーフB7の160kWを上まわり、トヨタbZ4Xの4WD車の前輪用の167kWも上まわる。馬力換算では約244.8馬力となる。ごく一般的な乗用車を走らせるには十分な性能で、またエンジンに比べ低速トルクの大きいモーターなら十分な加速性能を発揮できる性能に達しているといえるだろう。
アステモはまた、4輪駆動車の副駆動用として別の設定を用意している。こちらはローターにフェライト磁石も使わず、135kWの出力を出す。フェライト磁石を使わない理由は、4輪での駆動を必要としない走行条件で2輪のみで走る際、ローターに永久磁石があることで磁力によるエネルギー損失をなくすためだ。
この発想は、既存のEVでも4WD車で通常走行では使用しない車輪の駆動に電磁石を用いた巻き線式を採用する事例があるのに通じる。電磁石を使う巻き線式モーターは、電気を流さなければ磁力の影響がなく、電力の損失を抑えられる。日産アリアはこれを用いることで、回生を使わない滑空走行ではほかのEVに比べさらに滑らかな惰性走行を実現している。
レアアースの問題を回避するため、永久磁石を使わない電磁石による誘導モーターや巻き線界磁モーターの採用が考えられてきたが、電磁石とするため鉄芯に銅線を巻く際の銅自体の資源も、電動車や再生可能エネルギーの普及などを通じて需要が高まれば、原価の上昇につながる。
今回のフェライト磁石を使った駆動用モーターの開発は、そうした情勢を背景として生まれた。レアアースの供給は資源の偏在のほか、採掘や精錬に際し環境汚染や健康問題などの解決が求められており、使わずに済めばそれに越したことはない。
クルマの電動化推進において、世界的な政治情勢にも左右されにくい一石を投じる成果といえるのではないだろうか。














































