EVの特性上バッテリーにガソリンと同じエネルギー量は不要
3元系のバッテリーも、マンガンを含むことで、鉄の結晶と同様に結晶を支える支柱の構造をもつ。多くのリチウムイオンをもてるコバルトやニッケルと、リチウムイオンのもてる量は減っても、結晶構造が崩れにくいマンガンを混ぜることで、3元系の電極は高性能かつ安全の確保も考えられているといえるだろう。
ちなみに、周期表でもっとも軽いのは水素だ。つまり元素番号は1である。また炭素は、6番目の元素だ。つまり、水素と炭素の化合物であるガソリンは、軽い元素を組み合わせた化合物である。
ただし、いくつもの炭素と水素を複合的に組み合わせた化学式をもつので、周期表で軽い元素だから、ガソリンも軽いとはいえない面がある。それでも、容積と重さの関係(比重)でいえば、水より軽いのがガソリンだ。水を1とした場合のガソリンの比重が、0.7程度であることからもわかる。
別の視点として、エネルギー密度を調べると、ガソリンが重量当たり12000whであるのに対し、リチウムイオンバッテリーは200whでしかない。ガソリンの1.6%ほどになる。
つまり、ガソリンと同じエネルギーをリチウムイオンバッテリーで手に入れるには、600倍の重量でなければならない計算になる。
とはいえ、エンジンに比べモーターはエネルギーの変換効率が高い。数値でいえば、エンジンの30~40%に対し90%以上であるため、ガソリンのエネルギーと同じ容量を車載しなくても、走行距離を伸ばすことができる。また、クルマの燃費(EVなら電費)は、停車から発進する際にもっとも悪化する。
エンジンは低回転トルクが小さいのに対し、モーターは低回転のトルクが最大値に達する。つまり、わずかなエネルギーで発進し、速度に乗せていくことができる。
クルマを走らせるという実用において、モーターはわずかなエネルギー消費で日常の用途に十分な加速や速さを得られるため、この点においても、ガソリンと同等のエネルギー量は必要ないといえる。