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EV時代が近づいているのになぜ「合成燃料」が注目される? 課題がクリアされれば「エンジン車」に乗り続けられる未来もある!


TEXT:琴條孝詩 PHOTO:TET編集部
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普及への課題はコストにあり

<夢の燃料への険しい道のり>

e-fuelがもつ可能性は計り知れないが、実用化に向けてはいくつかの課題がある。最大のデメリットは製造コストの高さである。現状では、e-fuelの製造コストは従来のガソリンに比べて非常に高く、その価格は経済産業省資源エネルギー庁の試算では、海外調達で1リットルあたり約300円、国内製造で、約700円とされる。これは主に、水素を製造するための電気分解や、CO2を回収・合成するプロセスに莫大なエネルギーを必要とするためだ。このコストをいかにして低減させるかが、普及に向けた最大の鍵となる。

バイオフューエルが入る容器

また、製造過程におけるエネルギー効率も課題だ。再生可能エネルギーから電気を作り、その電気で水素を生成し、さらに合成するという多段階のプロセスを経るため、最終的に燃料として得られるエネルギーは、もともとの電気エネルギーの半分以下になってしまうという指摘もある。このエネルギーロスをいかに少なくするかが、技術開発の焦点となっている。

<発電への応用と未来への展望>

e-fuelの用途は自動車だけに留まらない。じつは、発電分野での活用も大いに期待されている。再生可能エネルギーは天候によって発電量が変動するという不安定さをもつが、余剰電力が発生した際に、それをe-fuelという形で貯蔵しておけば、電力需要が高まったときにその燃料を使って発電することができる。これは、電力網の安定化に大きく貢献する。いわば、巨大な「エネルギーの缶詰」を作るようなものだ。すでに、火力発電所での混焼実験などが進められており、脱炭素社会における電力供給の一翼を担う技術として注目されている。

火力発電所のイメージ

このように合成燃料には、製造コストや効率という高いハードルが存在するものの、技術革新のスピードは目覚ましく、これらのハードルも徐々に下がっていくと思われる。カーボンニュートラル社会実現のためといってEV化一辺倒の考え方ではなく、その他の選択肢、水素・合成燃料なども含め、それぞれの長所を活かす「適材適所」の発想で、e-fuelがエネルギーの選択肢のひとつとして確固たる地位を築く日は、そう遠くないのかもしれない。

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