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航続距離や電費はいいが急速充電性能はもう一歩
【総評】
まず航続距離テストについて、外気温は平均13.5℃程度と、EVの電費という観点ではまずまずのコンディションでした。そして、シーライオン7 AWDのもっとも信用できるEPA基準の航続距離は、米国で未発売ということもあり公表されていないものの、独自の計算式から約375km程度と概算していました。よって、カタログスペックを上まわる結果ということになりました。また、競合の日産アリアB9 e-4ORCEやテスラ・モデルYロングレンジAWDと比較すると、モデルYには劣るものの、アリアとまったく同等の電費性能である様子が見て取れます。
ただし、気になるのが時速120kmで巡航するハイスピードテストの電費の落ち幅が大きいという点でしょう。この結果からも、シーライオン7は強豪と比較してもハイスピード走行で電費が稼ぎにくいという特徴がありそうです。
次に充電性能テストについて、150kW級の急速充電器を使用した場合、SOC10%から80%までの充電時間は約39分を達成しました。これは同じ電池を搭載するシールと比較してもまったく同様の充電性能です。その一方で、30分間の充電時間で回復可能な航続距離を、航続距離テストの結果である427kmから概算すると、およそ230km。個人的にEVの経路充電において最低限必要な充電性能を「30分充電すると300km分程度の航続距離を回復可能」と定義しているため、その意味において物足りない充電性能であるといえます。
とくに日本国内で普及している90kW級を使用すると、30分充電したとしても約202kmぶんしか充電できないとイメージしてみると、電費の低さをカバーできていない印象です。繰り返し主張していますが、急速充電性能というのは対応出力の高さや充電時間の短さだけではなく、そのEVの電費との掛け算で決定されるものであり、その意味において、今回のシーライオン7 AWDは航続距離の長さや電費は悪くないものの、急速充電性能がもう一歩であるといえるでしょう。
また、私がEV性能とは別の評価軸として独自設定している6つの項目についても確認しましょう。
・乗り心地:7.5/10ポイント
両グレードともに可変ダンパーが搭載されていることで、段差の突き上げもよりマイルドに。ただし高速走行時にときどきいなしが甘くなってフワッとしすぎる感覚あり。シールRWDでもたまに感じた挙動。
・静粛性:8.0/10ポイント(100km/h:63-65dB・120km/h:65-67dB)
フロント窓ガラスに2重ガラスを採用しており優れた静粛性を実現。さらに、EV専用タイヤだからか、ロードノイズも低く抑えられている。
・自動運転支援機能:7.5/10ポイント
シールと比較してもADASの精度が大幅に改善。レーンキープの精度が非常に高くなっており、豪雨の状況でもレーンキープは途切れることなく安定していた。
・音響性能:7/10ポイント
Dynaudio 12スピーカーシステム(サブウーファーあり、システム出力775W)
重低音はパンチがあるものの、高音域のクリア感に欠けるのでバランスはあまりよくない。日産アリアなどのBOSEシステムに似た音響システム。
・回生ブレーキのフィーリング:6/10
シーライオン7はワンペダルドライブ不可。回生力も弱くフットブレーキを多用せざるを得ない。停止直前のカックンブレーキはオートホールドを解除することで軽減可能。
・小まわり性能:6/10
最小回転半径は5.9mとホイールベースが2930mmであることもあり取りまわしはよくない。また、全幅が1930mmとそれなりに大きいので、都心部などでは気にする必要あり。ただし前方視界の見切れはよく、アラウンドビューモニターも装備されているので、実際に狭い駐車場などで苦労はしなかった。