装備の活用で電力消費を抑えられる
次に、EVの使い方の面でも冬対策がある。
北欧でEVの普及率が高い背景に、温度管理できる設備が住宅など施設側にも備わっていることをあげることができるだろう。
そもそもエンジン車でも、極寒の地ではエンジンオイルが硬くなり、始動できなくなる懸念がある。そこで、自宅などに駐車する際は、屋外のコンセントから配線をつなげ、電気ヒーターで温め続けてきた。それを活かせば、自宅でEVに基礎充電ができるのはもちろん、バッテリーの管理にも電気を使って温めることが可能になる。
エンジン車なら何も心配がなく、EVでは心配が増えるわけではないということが、極寒の地では起きている。
ほかに、走行中の暖房についても、EVならではの工夫がある。
いまではオートエアコンディショナーの普及により、年間を通じて空調をつけっぱなしの習慣が広がっている。しかし、たとえばひとりで移動するのに、車内の空気を冷やしたり温めたりし続けるのはエネルギー(EVなら電力)の無駄だ。
冬は、シートヒーターとハンドルヒーターの活用が、電力消費を抑えるのに役立つ。つまり、走行距離をそれほど短くさせずに済む。それら装備の消費電力は、空調の10分の1以下であるからだ。降雪地域でなければ、空調をほとんど使わなくても体を暖められる。それを補う程度、足もとへヒーターを使えばよい。
エンジン車の時代が100年近く続いたので、その扱い方が標準だと思いがちだ。しかし、そのままでは環境への負荷を増やし続けてしまう。いくらエンジンの燃費を改善しても、エンジン車が普及する間に世界の人口は約5倍に増えた。燃費向上の効果は薄れている。そして、EVの普及が求められている。
クルマが違えば特性が変わり、上手な利用の仕方にも新たな取り組みがあるのは当然で、不具合や不都合ではない。
21世紀という新しい時代を我々自身が切り拓く局面に暮らしていることを改めて意識し、適切な利用を進めることが、快適で楽しい暮らしや移動をもたらすことになるのだと思う。