EVシフトの流れは先読み不可能
これを受けて、最初にアクションを起こしたのが、フォルクスワーゲングループ(VW)だった。ちょうど、排気ガス規制の違法行為によりブランド価値は地に落ちており、そこからのV字回復を狙いEVシフトを掲げたのだ。
その時点では、同じくドイツのメルセデス・ベンツ、そして日米の大手メーカーは、急激なEVシフトに対して懐疑的だった。
ところが、2010年代後半になり、EV関連投資の嵐がグローバルで吹き荒れた。そこに欧州連合の執務機関である欧州委員会、アメリカ政府、そして中国政府がそれぞれの政治的な思惑が重なるという、複雑な状況が生まれた。
自動車メーカー各社としては、そうした国や地域の政策に乗ることが必然となり、欧州ではメルセデス・ベンツやボルボが早期に完全EVシフトを実現するとの目標を掲げた。また、アメリカのゼネラルモーターズ(GM)やフォードは、主要セグメントであるピックアップトラックやSUVでのEVシフトを急ぐという事業戦略を発表した。
ところが、2023年に入るころにはEV投資バブルがはじけてしまい、また半ば強引に市場導入したEVに対して、ユーザーの購買意欲が伸びず、その結果としてリセールバリュー(再販価格)が大幅に下がるという事態を招いた。
その上で、将来的にはEVシフトが進むという見解が、日本メーカーを含めてグローバル自動車産業界の総意であり、その展開がいつどのように起こるかについては「先読み不可能」という声が市場には多い。
そのため、メーカー各社は、それぞれの資産であるガソリン車、ディーゼル車、ハイブリッド車を当面維持しながら、それと並行してEV事業を継続するという状況にある。各メーカーとしては2030年を目処に、全体需要の○○%をEVとするとの仮定はあれど、その仮定もかなり短いスパンで変更されているのが実情だ。