コラム
share:

まさかの充電数5回の大誤算!? メルセデス・ベンツ「EQS」で1000kmのロングランに挑戦した


TEXT:高橋 優 PHOTO:EV NATIVE/THE EV TIMES
TAG:

所要時間は10時間9分!

4)湾岸長島PA→浜松SA(150kW級急速充電器)

・走行距離:109.9km
・消費電力量:33%→10%
・平均電費:4.5km/kWh(222.2Wh/km)
・外気温:2.5℃→1.0℃
・充電セッション:10%→27%(15分)

浜松SA到着の段階で150kW級急速充電器に先客のボルボEX30が充電していました。よって充電をスタートさせても80kWしか発揮できず、恐れていた充電出力制限に遭遇してしまいました。

ちなみにEX30は日本仕様では約80kW(=200A)しか発揮できないので、隣の青いマルチで充電しても充電出力は変わりません。とはいうものの、青いマルチでは15分後に充電出力が125Aにまで制限されてしまうので、現状の時間課金制であれば同じ時間でなるべく多く充電できたほうがお得です。よって充電性能の低いEX30オーナーが150kW級を使用したい気もちも理解できます。

テスト中のメルセデス・ベンツEQS

いずれにしても150kW級の本領を発揮させてタイムを少しでも短縮するために、最後の150kW級急速充電器が設置されている駿河湾沼津SAに到着できる最小限の充電で切り上げることにしました。

5)浜松SA→駿河湾沼津SA(150kW級急速充電器)

・走行距離:114.8km
・消費電力量:27%→3%
・平均電費:4.0km/kWh(250Wh/km)
・外気温:0.5℃→2.0℃
・充電セッション:3%→15%(7分)

テスト中のメルセデス・ベンツEQS

最後の150kW級では早朝ということもあってか充電器を共有するEVに遭遇することなく、充電出力をわけ合わずにフルの充電スピードを発揮することができました。ゴールの海老名SAまでは約100kmなので、15%まで充電して海老名SAまで走り抜けます。

充電器の表示

※7分間の充電で15kWh弱を充電。浜松では充電出力を分け合ったことによって15分間で約19kWhしか充電できなかったことを踏まえると、やはり同じ150kW級で充電する場合でも、1台のみと2台同時充電では充電時間に大きな影響を与えることがわかります

6)駿河湾沼津SA→海老名SA上り(ゴール)

・総走行距離:1012km
・充電回数:5回
・平均電費:4.64km/kWh(215.7Wh/km)
・外気温:-3℃〜6℃

メルセデス・ベンツEQSのメーター

海老名SA到着前に走行距離1000kmを達成しました。海老名SAには充電残量2%で到着。この海老名SA到着時点での充電残量が少なければ少ないほど、最後の充電時間を短縮することができるわけですので、綿密な充電残量コントロールが求められるわけです。その意味においてはほぼ完璧な充電残量コントロールを達成できたといえそうです。

トータルの所要時間は10時間9分と、私がこれまで行ってきた1000kmチャレンジの検証のなかでは悪くないタイムとなりました。とはいうものの、旧型のEQSが10時間2分、EQEも10時間3分を達成していたことを踏まえると、真冬の検証とはいえ10時間切りは達成したかったところです。日本国内で購入できる航続距離最長EVで充電回数5回というのは想定外の結果でした。

表

ちなみに競合となるテスラ・モデルSの冬の1000kmチャレンジの際の電費は215Wh/kmと、今回のEQS450+とほとんど同じであり、テスラと同等レベルの電費性能というのは、メルセデス・ベンツの底力を感じる部分でしょう。新型EQSからはヒートポンプシステムが標準搭載されたことが冬場の電費改善につながっているはずです。

いずれにしても、メルセデス・ベンツのフラッグシップEVであるEQS450+は、新型としてバッテリー容量の増量やヒートポンプシステムの搭載など、EV性能をさらに引き上げています。一方、EQSのEV性能をいかんなく発揮できる充電インフラ側が追いついていない様子が、今回の1000kmチャレンジの結果を通して図らずも浮き彫りとなった格好です。

メルセデス・ベンツEQSのエンブレム

高速道路上の急速充電ネットワークを整備するeMP社は、この数年間で150kW級の増強をアナウンスしています。1〜2年後に再び1000kmチャレンジを行った際、どれほどタイムを短縮することができるのかに期待でしょう。

また、メルセデス・ベンツは次世代EV専用プラットフォームを採用するCLAのEVバージョンを2025年中に発表予定です。この次世代EVのEV性能が新型EQSと比較してどれほど進化しているのかも、2025年の注目ポイントでしょう。

TAG:

PHOTO GALLERY

NEWS TOPICS

EVヘッドライン
ヒョンデの魅力を日本に伝える新たな拠点! 「ヒョンデ みなとみらい 本社ショールーム」がグランドオープン
中国から地球上最強コスパの新星EV現る! IMモーターL6の驚くべきスペックとは
BYDの売り上げ鈍化に注目しても意味なし! むしろ心配すべきはテスラか? BYDは利益率も投資額も驚くべき水準だった
more
ニュース
地元の再生可能エネルギーを使って小田原・箱根を駆け巡ろう! BYD ATTO 3とドルフィンがカーシェアリングサービス「西湘・足柄レンたび」に登場
2025年大阪・関西万博開催へ向けてラストスパート! EVモーターズ・ジャパンが大阪メトロに小型乗合EVバスを28台納車
マンションの機械式駐車場にもEV用充電器を! ユビ電とファムが集合住宅における充電問題解決へ向けて大きな一歩を踏み出した
more
コラム
150kWの高出力を謳っているのに2台同時に充電したら90kW程度しか出ない! 日本の「EVの急速充電器」の謎
まさかの充電数5回の大誤算!? メルセデス・ベンツ「EQS」で1000kmのロングランに挑戦した
「ガソリンでも走れるくせに急速充電器使うなよ」は暴論? 正論? PHEVの急速充電器問題を考えてみた
more
インタビュー
電動化でもジーリー傘下でも「ロータスらしさ」は消えない? アジア太平洋地区CEOが語るロータスの現在と未来
「EX30」に組み込まれたBEVの動的性能とは。テクニカルリーダーが語る「ボルボらしさ」
「EX30」には、さまざまな可能性を。ボルボのテクニカルリーダーが話す、初の小型BEVにあるもの
more
試乗
【試乗】CR-Vに中身を乗っけただけのプロトなのにもう凄い! ホンダの次世代BEV「0シリーズ」に期待しかない
【試乗】二度見必至の存在感は普通のコナとはまるで別モノ! イメージを大きく変えたヒョンデ・コナ「N Line」に乗って感じたマルとバツ
ボルボEX30で11時間超えの1000km走行チャレンジ! 課題は90kWまでしか受け入れない充電性能
more
イベント
子どもに大人気の電動バギーに大迫力のエアロキットや色が変わるフィルムまで登場! 大阪オートメッセのEV関連出展物はどれもユニークすぎた
大阪は電動モビリティも元気いっぱい! ヒョンデの超注目EVにスズキ初の電動モペットなど見どころたくさん
小型3輪モビリティはカッコかわいいだけじゃない! 造船会社ならではの超絶クオリティで魅せるe-NEOの「NEO-ONE」&「NEO-Light」【大阪オートメッセ2025】
more

PIC UP CONTENTS

デイリーランキング

過去記事一覧

月を選択