EVには高電圧・大電流ヒューズが必要
EVにおいても、ヘッドライトやオーディオ、ワイパーなどエンジン車と共通した電装系には、こうした平型ヒューズが使われている。その意味では、エンジン車とEVに違いはないのだが、EVならではといえるのが駆動系に使われている大容量ヒューズだ。
冒頭、ヒューズの役割として、ショートしたときやオーバーカレントが起きた際に回路を守り、全体としての大きなトラブルを防ぐといったことを記したが、EVの駆動用バッテリーや車載充電器、DC/DCコンバーターといった高電圧ユニットにおいて、ショートなどのトラブルが起きると、それは車両火災などの大きなトラブルにつながる可能性が高い。そのため、こうした高電圧系にもヒューズが使用されている。
たとえば軽EVの代表モデルである日産サクラのバッテリー総電圧は350Vとなっている。12V電装系で見かける平型ヒューズで対応できるはずもない。そのため、おもに筒型のEV専用ヒューズが使われている。電圧でいうと500V級、対応電流は200~500A程度に対応するバッテリー用ヒューズが存在している。このような駆動用バッテリー向けのヒューズは、日本で生まれた世界初の量産EV、三菱アイミーブのときから使われている。
さて、EVで高電圧・大電流となっているのは駆動用バッテリーだけではない。バッテリーよりは低めのスペックとなるが、車載充電器であっても30Aは流れているし、駆動用バッテリーの電力を12V電装系に供給するためのDC/DCコンバーターにはEV用ヒューズは必須といえる。
いうまでもないが、こうしたヒューズはユーザーが簡単に交換できるようなものではないし、ユーザーが整備できるような設計にはなっていない。自動車整備工場においても、EVの高電圧システムに関する資格を取得している整備士でなければ作業できないものである。EV専用ヒューズの交換はプロの領域といえるのだ。