Contents
ワンペダルは細かく操作するといい
一方で、それより回生効果なしの走行のほうが、高速で流れに乗った際は電力消費が少なくなるのではないかという声もある。回生による減速感がなく、スゥーッと先へ伸びていくような走行感覚があるからだ。
しかし、何の抵抗もないと思える回生なしの状態でも、そのEVが巻き線式の電磁石を使ったモーターではなく、永久磁石を回転子に使う同期モーターの場合、アクセルペダルを踏まなくても永久磁石は磁気を生じし続けている。ことに、EVで使われるネオジム磁石は、一般に使われるフェライト磁石の10倍ともいわれる磁力をもつ。ネオジム磁石がもしくっついたら、人の力ではとても切り離せないほど強烈な磁力だ。それだからこそ、効率よく、また力強くEVを走らせることができるのである。
そして、固定子といわれる外側のハウジング側の磁石が巻き線式の電磁石であっても、それは鉄の芯に銅線を巻き付けた構造で、その内側をネオジム磁石の回転子がまわれば、その強力な磁力の影響が鉄芯に及ぶことになる。
フェライト磁石を鉄に近づけると吸い付くのと同じだ。それが、モーターのなかで抵抗となって働き続けている。電気を流さないからモーターはただ空転し、滑空状態になっていると感じても、モーターの内側では磁力が働いているのである。
ならば、たとえわずかな速度の上下であっても、それを逃さず回生し、発電してバッテリーに貯えたほうがよいのではないか。サクラを開発した日産自動車の技術者は、e-Pedalを使い、Bレンジで走るのがもっとも効率が高いとし、高速でもe-Pedalを使うのがよいと語り、私の運転の仕方は理にかなっていると教えてくれた。
一方、同じ日産のEVでも、アリアは回転子も巻き線式モーターを使う。この場合、固定子も回転子も電気を流さなければ、ただの鉄芯と銅線という金属でしかなくなるので、回生を使わない滑空走行が電力消費を抑える一助になるかもしれない。ほかに、テスラやメルセデス・ベンツの4輪駆動車も、どちらかの車輪に巻き線式モーターを使う例がある。
回生しないほうが高速では電力消費が抑えられるという実感や考え方は、どの種類のモーターを使っているかも考慮して採り入れるといいのではないか。
そのうえで、アクセルのワンペダル操作を身に着けると、余計な電力を消費し過ぎることなく、より安心してEVを走らせられる。ワンペダル操作のコツは、アクセルペダルを1ミリメートル単位で踏み戻しするつもりで、細かく操作するといい。言葉で読むと難しそうだが、私が助手席に乗って助言した年配の女性は、5分ほどで習得した。1ミリメートルずつのアクセルペダル操作という意識をもつことで、意外に簡単にワンペダル操作を日常化できるだろう。