強力ライバルの登場で激戦必至
ところが問題は、このプレミアムセダンセグメントに極めて強力なEVセダンが続々と投入されているという点です。
とくに注目するべきは、ファーウェイのLuxeed S7、そのS7の兄弟車であるExeed Sterra ES、ジーリーの高級EVブランドZeekrのZeekr 007、そのZeekr 007の兄弟車であるGalaxy E8などの存在です。
とくにLuxeed S7については、ファーウェイが開発していることから、EV性能だけでなく、とくにHarmony OSを採用したことによる、ファーウェイのスマホユーザーの囲い込みという観点で強みを持ちます。
また、中国国内でもっとも評価が高い、ファーウェイ独自開発の自動運転システムによって、これまでドイツ御三家やレクサスのプレミアムセダンを購入していた、ブランドに重きを置いている購入層が、同じく中国国内においては絶大的なブランド価値を有するファーウェイ製のLuxeed S7へと流れる可能性があるわけです。
実際問題として、ファーウェイのミッドサイズSUVであるAITO M7が、発売開始数カ月で13万台以上の確定注文が入っていることを踏まえれば、まったく不思議な流れではないと思います。
また、Zeekr 007についても、とくに既存の内燃機関車オーナーを満足させることが可能な、最大870kmというゆとりの航続距離、15分間の充電時間で最大610km分の航続距離を回復可能という世界最速クラスの充電性能、ドイツBBAやレクサスESを上まわる内外装の質感の高さも相まって、2024年EVのベンチマークとして、内燃機関車のドイツ/レクサス勢とどこまで張り合うことができるのかに注目が集まっている状況です。
いずれにしても、この2023年シーズンについては、大幅値引きによってなんとか販売台数をキープすることができていたESであったものの、さらに競争力の高いEVセダンが複数市場に投入されることによって、値引き措置だけでは販売規模を維持できなくなる可能性が出てきているわけです。
また、レクサスの新型モデルとして中国国内でも正式納車がスタートしている、オフロードSUVのGXに関しても、超強力な競合車種が複数投入されてしまっている状況です。
とくに、中国BYDのFangChengBaoのBao5、およびハイエンドブランドYangwangのU8という2車種のオフロードSUVの存在です。
確かにBao5については、日本円で600万円程度からのスタートと、1500万円程度のGXとは直接の競合にならないと思われているものの、そのスペックについては完全な競合関係にあり、しかもBao5の販売台数は、発売開始2カ月目の12月単体で5000台オーバーと、まさかのスマッシュヒット状態です。
さらに、日本円で2000万円以上というU8についても、発売数カ月しか経過していない12月単体で1600台弱と、超高級車ということを踏まえれば、驚きの販売台数に達している状況です。
いずれにしても、この中国BYDの高級オフロードSUVの存在によって、GXの販売台数にどのような影響を与えるのか、その販売動向には注目する必要があると思います。
そして、中国レクサスのEVシフトという観点についても非常に課題が多く、すでにラインアップしているUX300e、およびRZの販売台数については低迷している状況です。
とくにRZについては、2月から登録がスタートしているものの、2023年通しで5200台程度しか販売することができていない状況です。直近の12月についてはたったの375台と、中国レクサスの販売台数にはまったく貢献することができていない状況でもあります。
いずれにしても、中国レクサスに関しては、グローバル全体で販売台数が回復しているにもかかわらず、3年連続で販売台数が落ち込んでしまっていることが見て取れます。そのうえ2024年シーズンについては、
・ES一本足打法に対して、そのESの競合となるEVセダンが矢継ぎ早に発売されていることで、値引きだけでは販売台数を維持することが難しくなるのではないかという点
・新型モデルとして中国にも投入されたGXに対して、その競合が中国BYDからも投入されたことで、発売開始直後から苦しい戦いを強いられるのではないかという点
・2030年までにバッテリーEV販売100%というEVシフト目標の達成についても、現状新型EVのRZについてはまったく販売台数を伸ばすことができていないという点
これらの観点から、短期的、および中長期的な観点からも、この中国国内でレクサスがさらに苦しい立ち位置に追いやられるのではないかと予測できます。2024年シーズンの中国レクサスの販売動向については定期的に情報をアップデートしていきたいと思います。