コラム
share:

トヨタの「からくり」やカイゼンに満ちたクルマづくりを、EVも混流生産する現場で見た


TEXT:桃田 健史 PHOTO:トヨタ
TAG:

踏み台と椅子が合体した”からくり”で作業効率を上げた様子。出典:トヨタ

マルチパスウェイプラットフォーム向け生産で電動化に対応

トヨタには電動車で大きく3つの枠組みがある。

ひとつは、 TNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)を使い、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、BEV、FCEV(燃料電池車)を使い分ける、「マルチパスウェイプラットフォーム」。

二つ目が、「bZ4X」と「ソルテラ」から導入した、BEV専用TNGAのe-TNGA。

そして三つ目が、現在研究開発を進めている「次世代BEV」である。

このうち、元町工場では前述の生産モデルを見て分かるように「マルチパスウェイプラットフォーム」と「e-TNGA」が混流生産されている。

パワートレーンの多様化についても、汎用トレーで対応して作業効率をあげている。

マルチパスウェイプラットフォームでは、内燃機関+モーター、モーター、燃料電池など各種パワートレインに対応する。最終組立ラインにこれらの各種パワートレインを運ぶ際、共通のトレーでその一部を変更することで対応し、作業効率を上げている。実際、各種パワートレインの大きさはかなり違い、汎用トレーに対すトヨタの工夫に驚いた。

ボディのシルエットもミニバン、セダン、SUVなど様々あるが、混流生産ラインでは、作業をする上で様々なカイゼンを行い、作業の効率化と作業員の疲労軽減につとめている。

例えば、作業を楽にする「からくり台車」がある。

立ち仕事で、様々なモデルに対応すると背伸びをしたり、かがんだりと、作業員の動きがモデル毎に大きく変わっている。

そこで、生産ラインで同期する、親台車と子台車を上手く使い分ける。子台車の中にはコンパクトな踏み台が装備されており、モデルに応じて使い分ける。視察中も、車内で座った状態で部品の組付けをする様子が分かった。

そのほか、ラインの床部を黄色ペイントすることで、各種照明が反射する明るさを利用して車体下部の部品取付けの効率を上げている。

ライン床部を黄色にペイントし、作業中の明るさを確保。出典:トヨタ

作業時間の長いクルマを連続で流さない工夫

多様な電動車を混流生産すると、1台あたりの作業時間は当然変わってくる。

例えば、MIRAIは11.3時間、パトカーは10.1時間、ノアは9.6時間、そしてbZ4Xは8.8時間それぞれかかる。

また、ひとつの工程の作業時間でも、MIRAIとbZ4Xでは最大で30秒もの差が生じている。

こうした状況で、作業時間の長いクルマを混流ラインで連続して流さないことで、生産ライン全体での平準化を図っていることが分かった。

近い将来、次世代BEVの自走ラインの実用化も進むが、元町工場内が今後どのように進化するか、改めて視察に来たいと未来に向けた期待が高まった。

TAG:

PHOTO GALLERY

NEWS TOPICS

EVヘッドライン
中国から地球上最強コスパの新星EV現る! IMモーターL6の驚くべきスペックとは
BYDの売り上げ鈍化に注目しても意味なし! むしろ心配すべきはテスラか? BYDは利益率も投資額も驚くべき水準だった
いすゞがピックアップトラック「D-MAX」にBEVを用意! バンコク国際モーターショーでワールドプレミア予定
more
ニュース
東京都に住むEVオーナーは注目!  最新設備の「アウディ・チャージング・ハブ 紀尾井町」の150kWh超急速充電を30分無料開放
EVの充電がプラグを接続するだけに! Terra Chargeがプラグアンドチャージ対応EV充電器を2025年度から設置開始
BYDの勢いが止まらない! 新エネルギー車の生産台数が世界初の1000万台を突破
more
コラム
「タイヤの摩耗が早い」「買い取り価格は期待できない」EVにまつわる巷のウワサ6つの真実
AM放送が聴けない「電気自動車」が数多く存在! FMラジオは搭載されているのになぜ?
新車が買えないレベルで人気沸騰中のメルセデス・ベンツGクラス! EVが売れない日本でも「G 580 with EQ Technology」ならバカ売れするか?
more
インタビュー
電動化でもジーリー傘下でも「ロータスらしさ」は消えない? アジア太平洋地区CEOが語るロータスの現在と未来
「EX30」に組み込まれたBEVの動的性能とは。テクニカルリーダーが語る「ボルボらしさ」
「EX30」には、さまざまな可能性を。ボルボのテクニカルリーダーが話す、初の小型BEVにあるもの
more
試乗
【試乗】二度見必至の存在感は普通のコナとはまるで別モノ! イメージを大きく変えたヒョンデ・コナ「N Line」に乗って感じたマルとバツ
ボルボEX30で11時間超えの1000km走行チャレンジ! 課題は90kWまでしか受け入れない充電性能
EV専業の「テスラ」とEVに力を入れる従来の自動車メーカー「ヒョンデ」! モデルYとコナを乗り比べるとまったく違う「乗りもの」だった
more
イベント
外からもまる見えな全面ガラスドアも高齢化が進む地域のモビリティとして最適!? タジマの超低床グリーンスローモビリティ「NAO2」が斬新すぎた
EVはレアメタルが詰まった都市鉱山! CEATEC2024でBASC展示が提唱するサーキュラーエコノミーというバッテリーとは
畳めるバイク! 階段を上り下りできるカート! 自由な発想のEV小型モビリティが作る明るい未来を見た!!
more

PIC UP CONTENTS

デイリーランキング

過去記事一覧

月を選択