期待が高まる反面、気になる3つの課題
一方で、課題もあると筆者は見る。
大きく次の3点を指摘したい。
第一の課題は、フォーミュラEに対する日本での知名度の低さだ。
2014年のフォーミュラEのレース開始以来、日本ではキー局が地上波やBSなどでテレビ中継番組を放送してきた。
しかし、F1、WRC、二輪のMOTO GP、そして国内でのスーパーGTなどに比べると、フォーミュラEの知名度は未だにかなり低いのが実状だ。
例えば、一般的なモータースポーツファンであっても、他のフォーミュラカーレースと比較して独自性の強いフォーミュラEのレースレギュレーション(規定)をしっかりと理解している人は極めて少ないだろう。
また、自動車関連のメディアでも、フォーミュラEについて報道されることはけっして多くない。
実際、今回の24年3月東京開催についても、一部では報道されたが、いわゆるクルマ好きを含めた一般社会からの反響が大きいとは言えない印象がある。
こうした現状を踏まえて、24年3月開催までに、東京都を中心にしてどのようにフォーミュラEを盛り上げていくのか、プロモーターの手腕が問われる。
第二の課題は、自動車メーカーや二輪車メーカーの業界団体である日本自動車工業会(自工会)の、フォーミュラEへの対応だ。
自工会としてはこれまで「2050年カーボンニュートラルに向きた業界の対応策は、国や地域の社会状況に応じて多様であるべき」と主張してきた。
その上で、日本ではトヨタが言う「マルチパスウェイ」のように、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、バイオディーゼル車、BEV、燃料電池車、そして水素燃料車などの全方位体制を敷く姿勢を示してきた。
直近では、トヨタを含めてBEVシフトを強化しているとはいえ、フォーミュラEに参戦している日産ですら、BEV一辺倒ではなくe-POWERを友好的に活用していくとの事業方針を進めているところだ。
そうした中で、フォーミュラEの存在意義を、自工会としてどのように捉え、そして日本におけるBEV普及の啓蒙活動にどのように結び付けていくのか?
自工会として早急に、各方面との議論を深めていく必要を感じる。
第三の課題は、「東京都としての出口戦略が現時点ではまったく見えてこない」ことだ。
フォーミュラEが、ゼロエミッション東京におけるシンボリックな存在であることだけでは、地方自治体がモータースポーツ開催を強力に支える理由付けとして弱い。
一般的に、モータースポーツにおける投資コストに対する実績評価は難しいとされている。
そのため、東京都においては、ゼロエミッション東京という施策全体におけるロードマップ(行程表)の中で、フォーミュラE開催に関連する施策を切り離すかたちが望ましいと思う。
その上で、例えば、KPI(キー・パフォーマンス・インデックス:重要業績評価指標)を定める。そうした手法によって、都民に対して、また自動車産業界を含む日本社会全体に対しての、フォーミュラE開催による実績評価を明確化することが必要だ。
フォーミュラEの24年3月東京開催に向けて、今後もその動向を追っていきたい。