大容量バッテリーによるBEVトラックはやはり非現実的か?
ここでいう「スケールメリット」とは、具体的にはパワートレインを指す。
むろん、CASE(通信によるコネクテッド、自動運転、シェアリング等のシンサービス、電動化)という新技術は初期投資が大きく、また今後の技術進化が予測しづらいことで、ひとつのメーカーが独自にCASEの技術開発をすることは膨大なコストがかかると同時にリスクが大きい言われてきた。
そのため、CASEが注目されるようになった2010年代中盤以降、メーカー間での技術提携などアライアンスを組むことが多くなったという経緯がある。
なかでも電動化など次世代パワートレインについては、ハードウエアとソフトウエアの両面で投資効率をしっかり予測した事業計画が必要である。
他方、電動化や内燃機関に使う合成燃料については、国や地域の社会状況に深く関係し、さらには政治的な判断による規制が規格に大きく左右されるという側面がある。
実際、直近ではアメリカのインフレ抑制法(IRA)や欧州連合の欧州グリーンディール政策・政策パッケージ「Fit for 55」で国々による思惑が交錯するという状況だ。
そうした”世の中が先読みできない”中で、欧州では近年、大容量バッテリーを搭載し、大出力を使う急速充電による大型BEVの研究開発で世界をリードしてきた。
だが、今回の会見でダイムラートラックのマーティン・ダウムCEOは、大型BEV(バッテリーEV)トラックの早期実用化について懐疑的とも取れるような発言があった点に報道陣の注目が集まった。
BEVトラックは、三菱ふそうがすでに量産している「eキャンター」の有効性を強調し、中型・大型トラックについては燃料電池トラックや、内燃機関に水素を使う水素エンジンの大型トラックへの採用に積極的な姿勢を見せたのだ。
近年、水素関連の研究開発を加速させているトヨタとは、この点で共同歩調が取りやすい環境にあると思う。
欧州や中国を基点とする、いわばBEVバブルは、今回の2社(ダイムラートラック・トヨタ)と4ブランドの商用車領域での大連携により、大きな変化点に差し掛かるのかもしれない。