エンジン車とBEVの両方を選択できる環境を整えている輸入車ブランドの雄、BMW。国内においてBMW正規ディーラーの中核ディーラーに位置づけられるBMW東京の成田 仁社長に、BEVの現状から国内マーケット動向に対する雑感、近未来の戦略まで幅広く話を訊いた。
(プロフィール)
BMW東京代表取締役社長
成田 仁
いすゞ自動車にてキャリアをスタートし、2002年にBMW Japanに入社、ディーラー開発の多くのプロジェクトを完遂。2004~2005年にBMW AG(独本社)でアジア・東ヨーロッパのディーラー開発チームでの国際業務を経験。2008年にアウディジャパンへ転職し、ディーラー開発部門にてマネジャーおよびゼネラルマネジャー、2013年にハーレーダビッドソンジャパンにてディーラー開発部門のダイレクターを経て、2015年にBMW Japanに復帰。2020年に常務取締役就任。2021年に、BMW Tokyo代表取締役社長に就任。
──聞けば、BMWは「フィジタル」というコンセプトを導入しているそうですが、これはどのようなものでしょうか?
フィジタルは、「フィジカル」と「デジタル」を組み合わせた造語で、オンラインとオフラインの顧客体験をシームレスに繋げていこうというコンセプトですね。お客様と私たちの接点にはオンラインの部分とオフラインの部分がありますが、BMWはその継ぎ目をできるだけなくし、お客様がどこでも好きな方法でBMWと接点が持てるようにしています。お客様によっては、ディーラーを訪問しなくてもクルマを注文することができますし、「BMWコネクテッド・ドライブ」というオンラインのサービスを使えば、サービスの入庫予約や車検の予約もできるようになっています。
──「フィジタル」のコンセプトはまだ完成形ではなく、発展途上にあるという話を聞いたことがあるのですが、今後についてどのような将来像を描いているのでしょうか?
おっしゃるように完成形には至っていないものの、順調に前に進んでいると思います。構想のうち、実現できているのはまだ数分の1程度に過ぎませんが、BMWグループは、以前からビジネスモデルの変革に取り組んでおり、明確なロードマップにしたがって前に進んでいます。我々は一ディーラーに過ぎませんが、好きな「時と場所と方法」でお客様がBMWと接することができるように努力を重ねていくつもりです。
──先ほどお話に出た「BMWコネクテッド・ドライブ」について、もう少し詳しく教えてください。
様々な機能を付与したサービスですから一言で説明することは難しいのですが、端的に言うと、車両の状況をリアルタイムで把握し、ユーザーをサポートするサービスということになるでしょうか。
例えば、車両位置の特定やドアのロックとロック解除、搭載カメラによる車両周囲の確認のほか、クルマの充電状態や航続可能距離の常時表示など、EVに関する幅広い有益な機能も提供します。加えて、スマートフォンをデジタル・キーに変えることもできます。スマートフォンを持ってクルマに近づけば自動的にドアロックが解除され、クルマから離れれば自動でクルマがロックされるという仕組みです。
──ちゃんとロックされたのかがわからず、不安に駆られるユーザーも多くなりそうです(笑)。
それは「ステータスチェック」できちんと確認できるようになっています。クルマの世界は日進月歩で進化していて、私自身もクルマを運転するときにキーを持ち歩かなくなりました。以前までは、このサービスは使用を希望するお客様だけに機能を提供していましたが、現在では、原則的にはすべてのお客様にご利用いただくことにしています。納車時にこちらですべて設定したうえで、クルマをお渡ししています。実際に体験したお客様からは「すごく便利」と好評ですね。
──他ブランドも同様のサービスを提供していますが、BMWが一歩先を行っている印象を持ちました。
私たちもそう自負しています。
──貴重なお話、ありがとうございました。
<完>