EVの装備を最適化する工夫
EVはモーターと電池を組み合わせれば誰にでもできると、あたかも模型をつくるかのように簡単に語られることがある。しかし、安全かつ最高の性能を引き出すには、何よりバッテリー管理が不可欠であり、温度の影響を受けやすいバッテリーをいかに上手に使うかは、一朝一夕にはいかないのである。
もちろん、家庭電化製品やスマートフォン、あるいはパーソナルコンピューターなら、発熱してもいいというわけではない。だが、EVともなると車載バッテリーの容量が比較にならないほど大きく、高出力時の電圧や急速充電においては何百ボルトというような厳しい使い方がされるので、リチウムイオン・バッテリーを徹底的に知ることが、最高のEVをつくることにつながる。
そのうえで、ことに冬場にバッテリー性能の低下を覚えやすいのは、冒頭の特性的な内部抵抗の問題もあるが、車内の空調で使う機器の消費電力の多さも要因のひとつといえる。
たとえば、オートエアコンディショナーの設定を20℃と仮定し、真夏の35℃、冬場の0℃と比べると、温度差は、夏が15℃、冬は20℃と計算できる。冬のほうが5℃余計に空調を働かせなければ室温を保てない。それが電力消費の増大につながっている。そこで走行のための電力が不足することになる。
対応策のひとつが、室内全体の空気を冷暖房する空調という考えを再考することだ。ことに冬は、シートヒーターやハンドルヒーターを活用することで、直接体を温め寒さを感じずに済ませることができる。そのシートヒーターやハンドルヒーターの消費電力は、空調の1/10以下で済む。快適に移動しながら、走行以外の消費電力を抑えることで、冬でもある程度の走行距離を保つことが可能だ。
トヨタのbZ4Xでは、ハンドルコラムの下側に輻射熱を利用した暖房が装備されている。これで下半身を温めることができる。これも空調と違い、消費電力は少なく済むだろう。
漫然とエンジン車の装備をそのまま標準として考えるのではなく、EVにとって最適な装備は何かを再構築する。このことも、使い方にコツのあるバッテリーを最大に活かし、EVを快適に乗るための商品性強化策につながる。