コラム
share:

知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀直嗣 第3回:バッテリーを活かす制御


TEXT:御堀 直嗣
TAG:

EVの装備を最適化する工夫

EVはモーターと電池を組み合わせれば誰にでもできると、あたかも模型をつくるかのように簡単に語られることがある。しかし、安全かつ最高の性能を引き出すには、何よりバッテリー管理が不可欠であり、温度の影響を受けやすいバッテリーをいかに上手に使うかは、一朝一夕にはいかないのである。

もちろん、家庭電化製品やスマートフォン、あるいはパーソナルコンピューターなら、発熱してもいいというわけではない。だが、EVともなると車載バッテリーの容量が比較にならないほど大きく、高出力時の電圧や急速充電においては何百ボルトというような厳しい使い方がされるので、リチウムイオン・バッテリーを徹底的に知ることが、最高のEVをつくることにつながる。

そのうえで、ことに冬場にバッテリー性能の低下を覚えやすいのは、冒頭の特性的な内部抵抗の問題もあるが、車内の空調で使う機器の消費電力の多さも要因のひとつといえる。

たとえば、オートエアコンディショナーの設定を20℃と仮定し、真夏の35℃、冬場の0℃と比べると、温度差は、夏が15℃、冬は20℃と計算できる。冬のほうが5℃余計に空調を働かせなければ室温を保てない。それが電力消費の増大につながっている。そこで走行のための電力が不足することになる。

対応策のひとつが、室内全体の空気を冷暖房する空調という考えを再考することだ。ことに冬は、シートヒーターやハンドルヒーターを活用することで、直接体を温め寒さを感じずに済ませることができる。そのシートヒーターやハンドルヒーターの消費電力は、空調の1/10以下で済む。快適に移動しながら、走行以外の消費電力を抑えることで、冬でもある程度の走行距離を保つことが可能だ。

トヨタのbZ4Xでは、ハンドルコラムの下側に輻射熱を利用した暖房が装備されている。これで下半身を温めることができる。これも空調と違い、消費電力は少なく済むだろう。

漫然とエンジン車の装備をそのまま標準として考えるのではなく、EVにとって最適な装備は何かを再構築する。このことも、使い方にコツのあるバッテリーを最大に活かし、EVを快適に乗るための商品性強化策につながる。

電池構造図

TAG:

NEWS TOPICS

EVヘッドライン
日本は3年連続「日産サクラ」がトップ! じゃあ中国・欧州・アメリカで一番売れてるEVってなにか調べてみた
電気自動車って「お金的に」得? エンジン車と諸々の費用を比べてみた
リーフのバッテリーパックをバラして積むって意外に大変! 初代フィアット・パンダのEV化に挑戦してみた【その5】
more
ニュース
「BEVですか?」→「マルチパスウェイです」を徹底するトヨタ! EVにこだわらない姿勢で今後も世界で支持される予感がビンビンに伝わってきた【ジャパンモビリティショー2025】
新型エルグランドがいよいよe-POWERで登場!? 「EVの雄」日産のジャパンモビリティショー2025は電動モデルが盛り盛り
トヨタの新型モビリティでお台場周辺が一気に便利になる! 「eパレット」と「C+walk」が街全体の活性化にも貢献
more
コラム
1000馬力オーバーもザラなEVだけどそれって本当に必要な価値? 馬力じゃなくて本当に見るべき性能とは
早くも大幅進化を遂げたBYDシール! ガチライバルのテスラと徹底比較してみた
EV時代はブレーキも多様化! 回生に加えて電動キャリパーやMR流体など新技術が続々検討されていた
more
インタビュー
電動化でもジーリー傘下でも「ロータスらしさ」は消えない? アジア太平洋地区CEOが語るロータスの現在と未来
「EX30」に組み込まれたBEVの動的性能とは。テクニカルリーダーが語る「ボルボらしさ」
「EX30」には、さまざまな可能性を。ボルボのテクニカルリーダーが話す、初の小型BEVにあるもの
more
試乗
【試乗】いい意味で「EVを強調しない」乗り味! 本格4WDモデルも用意される期待のニューモデル「スズキeビターラ」に最速試乗
【試乗】5台の輸入EVに一気乗り! エンジン車に勝るとも劣らない「個性」が爆発していた
【試乗】CR-Vに中身を乗っけただけのプロトなのにもう凄い! ホンダの次世代BEV「0シリーズ」に期待しかない
more
イベント
見どころはスーパーワンプロトタイプだけじゃない! 全メーカー中でもっともモビリティショーしていたホンダは陸・海・空に加えて宇宙にも進出か【ジャパンモビリティショー2025】
スーパーオートバックスかしわ沼南に90台のEVとオーナーが集合してゆる〜く懇親! 「EV MEET 2025 AUTUMN」を開催
EVらしさをなるべく廃したスタイリングで乗り換えを自然に! スズキが軽EVコンセプトカー「Vision e-Sky」で考えたのはEVであることを気づかれないことだった【ジャパンモビリティショー2025】
more

PIC UP CONTENTS

デイリーランキング

過去記事一覧

月を選択