#FCV
TEXT:御堀直嗣
水素燃料電池車は大型トラックでこそ活きる? FCVトラックのいまの立ち位置と立ちはだかる課題

FCVの大型トラックの開発が進んでいる 燃料電池車(FCV)といえば、トヨタMIRAIを思い浮かべる読者も多いだろう。 ほかに、乗用車での技術を応用し、大型トラックに燃料電池(FC)を活用しようという動きがある。トヨタ・グループの日野自動車の例があり、ほかにホンダ(本田技研工業)も燃料電池開発は続けていて、いすゞとともに実用化へ向けた開発が行われている。海外では、ドイツのダイムラートラックと、スウェーデンのボルボが取り組んでいる。 国内では、アサヒグループジャパン株式会社(以下、アサヒグループ)、西濃運輸株式会社(以下、西濃運輸)、NEXT Logistics Japan株式会社(以下、NLJ)、ヤマト運輸株式会社(以下、ヤマト運輸)が、2023年5月から、燃料電池トラックの実証走行を開始した。 日野プロフィアという既存の大型トラックを基に、固体高分子形の燃料電池と、70MPa(メガパスカル=約700気圧)の水素タンクを車載する。1回の水素充填で走行できる距離は、約600km(都市間と市街地の混合モードでのトヨタと日野の計測による)であるという。 トラック輸送には、総重量の制約があり、車両重量と積み荷を合わせた重さの上限がある。したがって、電気自動車(EV)では駆動用バッテリーを車載しなければならず、積み荷の重量に限界があると考えられており、FCへの期待が高まった。 一方で、満載の状態で走る大型トラックは、つねに出力が最高の状況で運転されることになり、生産財としての耐久性をFCで得られるかというのが、ディーゼルエンジンとの置き換えにおいてひとつの注目点になる。乗用車は、一度走り出してしまえば全力加速はほぼ必要なく、いわば巡航状態となって出力を下げても速度を維持できる。しかし、トラックではそうはいかないため、耐久性がより重視されるのだ。 次に、水素充填について。 これは乗用車でも短時間に満充填できるところが、ガソリンなどの液体燃料と同様に扱えるとされ、FCトラックでも期待されるところだ。水素ステーションは設置に数億円かかるとされるが、トラック・ターミナルなど必ず立ち寄る場所に設ければ、国内あらゆるところに設置が望まれる乗用車の場合と異なる。 一方で、水素ステーションは10年を超えて代替え時期を迎えるといわれ、10年ごとの数億円規模の設備投資がどこまで輸送費に影響を及ぼすかも、これから検証されることになるだろう。

TAG: #FCV #大型トラック #燃料電池車
TEXT:御堀直嗣
ヒョンデもまた「水素」の可能性を探るメーカーのひとつ! ミライ・CR-Vと並ぶFCVの1台「NEXO」とは?

満充填からの走行可能距離は820km! 現代(ヒョンデ)自動車のNEXO(ネッソ)は、燃料電池車(FCV)である。電気自動車(EV)のIONIQ 5(アイオニック・ファイブ)とともに、日本で販売されている。 ヒョンデは、起亜(KIA=キア)を傘下に置く企業グループとして、トヨタ、フォルクスワーゲンに次いで、世界3位の自動車メーカーだ。そして、2022年に日本市場へ再参入する際、電動車両に的を絞り、EVとFCVを導入した。現在、EVではIONIQ 5に加え、KONA(コナ)を追加している。 ネッソは2018年に韓国で発売された。3本の高圧水素タンクを搭載し、満充填からの走行可能距離は820kmである。日本では、トヨタMIRAI(ミライ)がFCVの代表格といえ、その走行距離も約820kmとしている。今年発売を開始したホンダCR-V e:FCEVは、約621kmである。ただし、CR-V e:FCEVは、車載バッテリーを外部から充電でき、その一充電走行距離は約61kmなので、これを足すと合計682kmになる。 車載の高圧水素を使って燃料電池スタックで発電し、モーターを駆動して走るのがFCVだ。各車モーターの最高出力は、ネッソが120kWであるのに対し、ミライは134kW、CR-V e:FCEVは130kWと、ネッソは10kWほど低い。 一方、車両重量は、ネッソが1870kgであるのに対し、ミライが1920kg以上(グレードにより差がある)、CR-V e:FCEVは2トン以上で、ネッソは少なくとも50kgは軽い。その分、パワー・ウエイト・レシオではCR-V e:FCEVと遜色なく、ミライはより高性能となるが、優劣を問うほどの差ではない印象がある。実際、ネッソを試乗すると、走りに不満はない。 車格としては、CR-V e:FCEVの全長がネッソに比べやや長いが、車幅は同等で、同じくSUV(スポーツ多目的車)であるので、全高もほぼ差はなく、競合といえる車体寸法になる。ミライは、初代から4ドアセダンであるため、車種違いとなり、現行の2代目は、ヒョンデとホンダの2車に比べやや大柄になる。

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TEXT:御堀直嗣
超最先端の燃料電池車ミライが700万円台ってのはぶっちゃけバーゲンセール! 文字どおり「未来」を見据えた投資だった

ゼロがひとつ足りないという声も! 市販の量産燃料電池車(FCV)として世界を牽引してきたのが、トヨタMIRAI(ミライ)だ。2014年に初代が発売となり、20年に現行車へモデルチェンジした。新車価格は、726万1000~861万円で、グレードや装備の違いなどで7つも選択肢がある。ちなみに、現在はクラウンにもFCVの設定があり、価格は830万円だ。クラウンのハイブリッド車は730万円であり、ほぼミライの価格帯と並んでいる。ミライでもっとも身近な726万1000円と、クラウンハイブリッドの730万円がほぼ同等というのも、衝撃的な価格とみることができなくもない。 そうしたことから、トヨタのFCVは、採算割れで売られているのではないかとの憶測もないではない。そもそも初代ミライが723万6000円で売り出されたとき、海外からは「ゼロが1桁少ないのではないか?」との声もあったといわれる。 ちなみに、ホンダが売り出したCR-V e:FCEVは、809万4900円だ。ただし、このFCVは外部から充電することで、電気自動車(EV)として走れる機能も備える。もう1台、ヒョンデのNEXOは、776万8300円である。 他社のFCVの価格を参考にすれば、ミライが採算割れの新車価格との言い方は当てはまらないだろう。 とはいえ、FCVには高度な技術が詰め込まれている。 燃料電池スタックは、固体高分子型と呼ばれる方式で、正極(空気極)と負極(水素極)の間に挟まれる固体高分子膜(電解質)は、料理などで使うラップのように薄く、その取扱いは慎重かつ繊細さが求められる。また、正負の電極は、カーボンブラックの担体に白金が塗られており、高価だ。材料にしても、製造法にしても、高価であったり高度であったりする燃料電池スタックの製造と、数を求めた量産化は容易でない。 その難易度は、EVに搭載されるリチウムイオンバッテリーの製造も同様だろう。 約700気圧(地上の700倍)となる70MPa(メガ・パスカル)もの高圧水素を携行するための水素タンクも、高度な技術を必要とする。 元素の周期表でもっとも小さな水素は、ほかのあらゆる元素で構成される容器の隙間を容易に抜け出てしまう懸念がある。そこで、ミライの水素タンクは3層構造となっている。水素を入れる一番内側の層は、水素の透過を抑える特殊な分子構造の樹脂で作られている。次に、70MPaの高圧に耐えるため炭素繊維を使った複合素材の層がある。そして、容器全体を保護するためガラス繊維を用いた複合素材による3層目がある。

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