環境負荷低減だけではない副次的なメリットも 福岡県北九州市に本社を構えるEVモーターズ・ジャパンは、全長10.5mの主要幹線向け路線バスから、全長8.8mの中型路線バス、さらには全長6.99mのコミュニティバスに、全長12mの観光バスまで、多種多様なEVバスをラインアップしている。 そのEVモーターズ・ジャパンから、このほど全長8.8mの中型観光EVバス(F8 series6-Coach)を1台、愛知県名古屋市の名鉄観光バスへ納車したことが発表された。 導入先の名鉄観光バスは、これまでもエコドライブの実施やアイドリングストップの励行など、環境負荷の低減に取り組んできた企業ではあるが、EVモーターズ・ジャパンから観光バスタイプのEVバスが発表されるやいなや、全国に先駆けて導入できないか興味を持ったのだという。 むろん環境対策だけで導入に至ったわけではなく、コスト削減メリットなど複合的な要素に基づいて判断がなされているのだが、導入することで意外なメリットが生まれたのだという。それは、今回の中型EV観光バスの導入は同社にとって初のEVバス導入にあたり、すなわち内燃エンジンを搭載したバスしか知らない同社社員にとって新たな挑戦となる。それにより社員のモチベーションが向上する副次的な効果をもたらすのだと名鉄観光バスは説明する。 いくら環境負荷の小さいEVバスとはいえ、それだけで導入できるほどバス会社も潤沢な予算があるとは言えない。スペックは重要だ。 導入された中型EV観光バスは、社内公募によりフランス語で「空(そら)」を意味する「CIEL(シエル)」と名付けられ、主に近郊の観光輸送をはじめ、イベントや行事で使用されることが想定されている。それには210kWhのバッテリー容量に、エアコンオフの状態で定速40km/h、負荷重65%で走行した場合の航続距離が280kmというこの中型EV観光バスのスペックは、必要十分と同社は判断したようだ。 EVモーターズ・ジャパンは、2025年の大阪・関西万博向けに大型EV路線バス「F8 series2-City Bus 10.5m」と小型EVコミュニティバス「F8 series4-Mini Bus」を計100台受注しているほか、東京都渋谷区のコミュニティバスにも採用された実績がある。しかし、今回は路線バスよりも柔軟な運用が求められる観光バスだけに、EVバスの真価が問われるかもしれない。今後のEV観光バスの普及につながるかに注目したい。