BYD 記事一覧

TEXT:岩尾 信哉
BYDオートジャパン社長が考える日本進出戦略とは?[社長インタビュー:その 4]

BYDの日本市場でのブランド構築 想像するほど大きくない国の干渉 BYDの日本市場への参入に関してひとつポイントになりそうなのは、BYDが中国にオリジンを持つ企業であることだ。過去には米国と日本のマーケットでは貿易不均衡が問題になり、そこに政治が介入することがあったが、客観的に中国という国家は様々な意味で大きな存在に思える。たとえばBYDのビジネスを拡大するために、私企業であるBYDに対して国家による大きなバックアップは期待できるのだろうか。 「中国は国策として『ニューエナジーヴィークル』(NEV)に対して補助金を出して普及を促進しています。NEVとは燃料電池車、BEV、プラグインハイブリッド車の総称です。BYDの乗用車はすべてNEVに認定されるように2022年の3月末にラインナップを整えて、純粋なガソリン車などは生産終了しています。自動車強国を目指す中国が、NEVを推すというのも大きな追い風のひとつかもしれません」 「海外への輸出に対して積極的な企業を、どんどん応援してくれる空気があると思います。BYDのような私企業でも一所懸命に社会のためになる製品をしっかりと生産・販売を拡大して輸出する会社に対する干渉はないと聞いています。BYDは現状では中国国内の販売も伸びており、この勢いのままどんどん行こうということで、輸出も今年からアジア太平洋地域とともにヨーロッパでも先のパリ・モーターショーでも来年以降の新型モデルを発表するなど、様々な形態で海外に打って出るフェーズに達している状況なので、そんな全体の空気感にうまく乗れているのではないのかと思います」 地道に進めるブランディング それではBYDのマーケティング活動は今後どのような形で進められるのか、具体的に尋ねてみた。たとえばブランドの訴求に当たって様々なメディアを活用する、イベントを開催する、若い人に関心を持ってもらいたいなど、企業によってそれぞれ方向性があると思われるが、今現在どのような方針で進めていこうと考えているのだろうか。 「日本の一般のお客様からするとBYDというブランド自体、まったくご存じない初めてのブランドだと捉えていて、まずはBYDという企業体がどのような会社なのか、今世界の中でどんな技術を備えて広がりを見せているのか、今に至る経緯をきちっとした形で伝えられるようなPR活動を実施していきます。販売を開始するまでの間に地ならし的な意味でBYDのブランディングを、主としてSNSを中心にウェブ媒体で、様々な形で多くの人々に目に触れるようなチャンスを作っていきたい。と同時にEVを紹介する展示試乗会のようなイベントで直接お客様にクルマをご覧いただき、BYDが持っている技術や品質の高さ、クルマとしての仕上がりの良さを実感してもらう機会をできるだけ多く用意していきたいと思っています」。 最後に具体的なネットワーク構築のスケジュールに関連する、BYDオートジャパンの販売促進の取り組みを訊いてみよう。 「来年1月以降に販売開始になりますが、当初の段階で出店が決まっている会社に対しては、近隣の地域のお客様に対して試乗できるようなイベントを実施したり、車両を毎月1ヶ月間貸与して、生活の中でBYDのEVの使い心地等々、生の声をSNSで発信してもらうモニターキャンペーンの応募受付を開始しています。メーカー側が宣伝するよりは、実際にお使いいただいだお客様からの声のほうがより刺さるのではないかと捉えています。店頭での販売も行いつつ、モニターキャンペーンや試乗の機会を様々な場所で設けてじわじわとBYDというブランドの認知と商品に対する関心を高めていく。最初は地道ですがそのように進めていきたいと考えています」

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TEXT:岩尾 信哉
BYDオートジャパン社長が考える日本進出戦略とは?[社長インタビュー:その 3]

変化をいとわぬIT企業ゆえの身軽さ 巨大ITグループ独特の「スピード感」 ここまでBYDオートジャパンの具体的なビジネスを紹介してきた。いっぽうでBYDという企業グループは、これまで国内外の自動車会社でキャリアを積み重ねてきた東福寺氏の視点から見ると、企業としてどのような個性があるのだろうか。 「BYDに来て、他社と一番大きく違うなと驚いたのがスピード感ですね。方針決定から実現に至る期間の短さでした。そして本当により良い結果になるのであれば、状況の変化に応じて一旦決めたことでも変えていく、朝令暮改も恐れないフレキシビリティは従来の企業とは違うと思います。それが急成長、急拡大をもたらした主たる要因ではないでしょうか」 「私も長く自動車業界に関わってきましたが、自動車はご承知の通り、年式やマイナーチェンジ、フルモデルチェンジと1年や2年、4年ごとといったタイミングで変更を実施すると信じていたのですが、BYDは必要であれば年の途中でもバージョンアップするなど、市場が求めているのであれば計画変更も辞さずに新しい製品を投入していくなどの自由さが特徴です」 「さらに端的な特徴は、お客様の動向を常にウォッチしていることです。この色の方がもっと売れると思ったらその色に変えてしまうとか、切り替えがものすごく早いのです。その自由さはよくよく考えてみるとBYDは電子部品、バッテリーから始まったメーカーで、コンピューターや電子部品の売上利益も、いまだに自動車と並んでかなり大きいのです、ですからIT企業でもある、いわゆるテック系と呼ばれる企業としての身軽さや素早さ、変革に対する恐れのなさが働くのではないでしょうか。つまり、トラディショナルな自動車会社に比べると、『ITエレクトロニクス企業の自動車部門』と考えたほうが変化に対する躊躇のなさを説明できる気がします」 目が行き届いたディーラー拡大戦略 BYDオートジャパンでは、2025年までの3年間で100ディーラーの展開という目標を急務として掲げている。すなわち、各県あたり2ディーラーのレベルとなり、かなりの急拡大を実現しなければならない。ネットワーク全国拡大にあたってはどんな戦略を描いているのだろうか。 「2023年から販売を開始する際には、各販売会社さんがある程度余裕を持っていないと販売を開始できません。どの企業がディーラーとして我々のパートナーになってもらえそうかは様々な情報を集めました。私が入社してから、前職時代の様々なお付き合いや、業界でその道のプロの人だと認められる人たちばかりをリクルートしてチームを組んでいます。彼らが知っている販売店の情報を参考にしながら、販売してほしい会社をピックアップして飛び込み訪問で社長さんに直接アポイントを取りました。そのうえで『BYDがEV事業を考えているが興味ありませんか』と個別にアタックして、現在では16社ほどが来年以降に事業のパートナーになっていただけそうな状況です」 BYDは日本においてはBEV専業としているが、BEVは寒い環境に弱いというイメージが一般的にあるが、販売の地域性についてはどのように捉えているのだろうか。 「BYDの電気自動車の観点で見ると、中国には日本よりもはるかに寒く気候の厳しい地域があります。そんな場所で長年使われている事実を考えると、特に日本だから環境が厳しいことはないと考えています。一方でたとえば北海道や東北の販売会社からすると、雪国ではどうだろうか、マイナス20度になる気候の中でバッテリーが保つのだろうかなどと心配されている部分も現実にはあります。性能的にはBYDの最先端の温度管理ができるバッテリーマネジメントシステムが搭載され、熱帯地域でも寒冷地域でもバッテリーを最適な温度域で稼働できるように常にコントロールが可能です。いかなる温度環境下でも安心して使えるBEVとして商品化されているので、ほとんどの地域で問題なく使えます。この点はまずは販売会社さんに納得して販売していただく形を取っています」

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TEXT:岩尾 信哉
BYDオートジャパン社長が考える日本進出戦略とは?[社長インタビュー:その 2]

電動化の流れを見定めたBEV販売戦略 BYDがBEV一本で勝負する理由 東福寺氏がこれまでのキャリアで販売店勤務あるいは販売ネットワークを構築するにあたって培ってきたノウハウは、BYDオートジャパンにおいてスタッフの教育面などで活かされているはずだ。 「やはり売る側が『面倒くさいな』とか『難しいな』とか、『ここまで苦労するのであれば、他のものを』と考えてしまうようだと先に進めなくなってしまいます。まずは売る側がしっかりと製品を理解してお勧めできるような、そんなセールストークを最初からトレーニングしていくことが必要だと思います」 脱線気味かもしれないが、実力のあるセールススタッフほど自分の勧めたい製品を売る傾向があるように思われる。この点でセールススタッフが納得したうえで、顧客も納得して買ってもらうことがベストのはずだ。 「ガソリンやディーゼル、プラグインハイブリッドなど多様な選択肢があってBEVもあるといった場合に、BEV特有の準備や手続きがよく分かっていなかったり、お客様から質問された際に的確に答えられないと、自ずとそちらにお客様の目が向かないように、ディーゼルやガソリンを勧めることになってしまいます。ですが、BYDの日本でのラインナップはBEV100%ですので、BEVありきですべてきちんと仕事ができないと営業スタッフとして成績は上がりません。まして最初はアット 3の1車種しかありませんから、商品に精通してもらうことがセールススタッフとしての第一歩になると思います」 BYDはグローバルの販売状況を考えると、プラグインハイブリッドもかなりの比率を占めていると想像されるが、日本でプラグインハイブリッドを販売する考えはないのだろうか。 「実は初期の頃はプラグインハイブリッドとBEVと両方を手がけることを検討したのですが、日本市場の場合は一般的にマーケットの中心にハイブリッドがあって、次いでプラグインハイブリッドやBEVがあるという棲み分けになります。つまりプラグレスのハイブリッドが圧倒的にお客様から支持されているので、プラグインハイブリッドとBEVの両方をラインナップしていたとしても、大きなメリットがないことがひとつ。あとはBEVに絞れば、ディーラーの整備工場で用意していただくものが少なく済む利点もあります。ガソリンエンジン車に対応する設備やいろいろな油脂類を用意しながら、BEV用の専用設備も持つとなると負担が大きいのです。ここは最初からBEVでスタートした方が、ディーラーの設備の面からも投資がそれほど嵩まずに参入しやすいのではないかと考えてBEV一本でいこうと決断しました」 タイミングを見計らった日本市場参入 それではなぜ今このタイミンングで日本での販売をスタートし、BEV一本で行くことが相応しいと判断したのだろうか。 「日本政府が2050年にカーボンニュートラルを実現するという公約を表明し、それに向けて2035年までに新車販売は100%電動化する決定を菅内閣が下したことが一番大きな引き金になっています。2035年までの間に、様々な形で今までの内燃機関のクルマが徐々に電動車に置き換わっていく流れの中で、BEVもシェアが拡がると想定されます。そこで今の段階から関わることで日本でのBEV販売のチャンスも増やしていくことができると思います。他のメーカーでもBEVのラインナップが揃いつつあるので、いろいろな形でお客様にとっての選択肢のひとつとして、日本車もあるし、欧州車もある。アジアからもヒョンデも参入していますが、BYDもありますということです。姿形も中身も少しずつ違いますが、それぞれに特徴がありますので、その中から選んでいただける状況を構築していきます。BYDとしては長い目で見た時にカーボンニュートラルという大きな目標に少しても貢献できるのではないかと捉え、来年からの日本での販売が最終的に決定されたと理解しています」 日本でのグループ企業との協力関係 BYDはグループ企業として、BYDジャパンがバスや商用車を手がけ、日本でも販売が急拡大している状況にある。この中で、BYDオートジャパンの乗用車が参入するに当たって各社の協力関係はどのようなものなのだろうか。 「実は今朝も劉会長と部門長を集めてのミーティングがありました。BYDジャパンとともに、BYDグループ内に群馬県館林市にタテバヤシモールディング(筆者注:自動車用外板製作を主に手掛ける)があります。さらにBYDフォークリフトジャパン、そして我々BYDオートジャパンがあるため、4法人体制になっています」 「それぞれが自らの分野で目標を設定して頑張っていく関係ではあるものの、一方ではオリジンが共通で、同じバッテリー技術に基づく商品を数多く展開しており、今後はより協力やコミュニケーションを密にしていきます。たとえばすでにEVバスを納めている事業者の方で業務用の乗用車が必要であれば、すぐにその乗用車部門に繋いでもらう。乗用車を扱っているディーラーさんが地場の法人でバスが必要なら、バス部門に繋ぎます。いろいろな形で常に情報を共有して、BYDというファミリーの中でよりビジネスを大きくしていく方向で常にアンテナを張っていく、そういう関係ですね」  

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TEXT:岩尾 信哉
BYDオートジャパン社長が考える日本進出戦略とは?[社長インタビュー:その 1]

東福寺厚樹 1958(昭和33)年生まれ。早稲田大学商学部卒業後、1981年に三菱自動車に入社。2011年にフォルクスワーゲングループジャパン(VGJ)、2016年よりVWジャパンセールス代表取締役社長を経て、2022年にBYDオートジャパン株式会社の代表取締役社長に就任、現在に至る。   セールスのエキスパートが考えるEV販売戦略 去る2022年7月に日本市場への参入を発表した中国の巨大企業であるBYD。いまや2022年上半期において、中国の新エネルギー車(NEV:BEV+PHEV+FCV)の合計販売台数をテスラモーターズを抜くことになった。今回はBYDオートジャパンの東福寺厚樹代表取締役社長に、日本市場での販売体制をどのように構築していくのか、氏の経歴が活かされたBYDオートジャパンのEV販売戦略について、TET編集長・田中誠司がインタビューする機会を得た。 三菱自動車、フォルクスワーゲンでの経験を活かす 「最初に三菱自動車に入社して、ひと通り自動車メーカーの中での仕事に携わってきました。2年ほど販売店でセールスに従事した後、本社に異動して海外事業で北米市場に13年間関わり、国内販売本部で北海道や首都圏販売部を担当しました。その後に販売金融子会社に出向して、オーストラリアの三菱自動車に2年ほど派遣され、日本に戻って中東アフリカ部を担当するなど、三菱自動車の中では様々な部署に関わってきました」 東福寺氏に転機が訪れたのは、今から10年ほど前。2011年に縁があってVWの日本法人であるVWグループジャパン(VGJ)に転職した。 「5年間ほどネットワークマネジメント部長として、主に販売体制整備の仕事に携わりました。仕事の内容としては、販売会社さんと契約を結んだり、あとは新しいお店を出店する際の販売スタッフ、セールス、サービス、管理部門、店長さんといった方の資格要件などのトレーニングですね。アカデミーという組織があって、そこからスタッフトレーニング担当の方を主として指導し、様々な方法で販売できる組織を作っていくための仕事に5年ほど携わりました。北海道から沖縄までいろいろ販売会社の幹部の方と知り合う機会を得たことが良い経験になりました」 「その後はVGJ子会社であるVWジャパンセールスに出向したのが2016年、そこで4年ほど社長を務め、首都圏を中心に現場の指導にあたっていました。そして縁あって2022年の7月からBYDオートジャパンに入社して、今日に至っています」 前職でのEV導入に向けた苦い経験 氏がはじめてEVに関わったのは以前に勤めていた企業でのことだ。「かなり早い時期から電気自動車をやりたいと言いながらも、なかなか日本市場に導入することがなかなかできませんでした」と東福寺氏は当時を振り返る。 「他国で発売していた電気自動車を日本でも限定で販売しようとしましたが、実現できなかったという経験があります。その時は販売会社さんでも充電器を用意してくださいとか、急速充電器は価格が高く、数が入らないので普通充電器でいきましょうとなって、ひと通り整備していたのですが、最終的に日本での電気自動車販売は実現しませんでした」 つまり、電気自動車を市場導入していく段階での貴重な経験をBYD入社以前に、氏は得ていたことになる。 「家庭で基礎充電する際の充電器周りのいろいろな設備を設置しなければならないなど、EVを試験導入する手前の段階でかなり準備はしましたので、そのあたりの経験が結構役に立っていますね」 過去のEVセールスの立ち上げで得た教訓 その際に感じた、電気自動車を現場のディーラーで売らなければいけない場合に何が必要なのか、実感や印象に残ったことはあったのだろうか。なにより、この点で氏がEV販売・購入についての壁の高さを感じていたことは強みといえる。 「やはり一般のお客様に買っていただくには、充電器をご家庭で準備いただくのが一番必要なことになりますので、どうしても車庫をお持ちのお客様で200Vを引けるかどうかがまずはハードルになることが難しさのひとつでした。あとは申請やサポートも政府や自治体から得られるケースも多いものの手続きがかなり煩雑だったので、これらをお客様にお願いするのは極めてハードルが高いなと。お客様からするとそこまで大変だったら『別にいいよ』という話になってしまうので、販売店側でお膳立てして整えて買っていただくとなると手間暇がかかる。すると今度は販売店側も面倒に感じてしまい、なかなか販売促進に繋がらないのが実態だと痛感しました」 「BYDオートジャパンが日本で販売する車種はすべてBEVですから、充電器を設置していただくことは、クルマをお勧めするのとセットでお客様に最初から話していく要素になります。ご案内の仕方、必要な書類、手続きに要する時間などもセールススタッフの方にはしっかりとした説明ができるよう学習して、販売が始まった時にはお話できるような知識を持っていただくようなトレーニングプログラムを今準備しているところです」 <つづく>

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TEXT:TET編集部
デイリーEVヘッドライン[2022.12.06]

  ・BYD、日本市場で発売……第1弾モデルは「ATTO 3」 【THE 視点】中国のEVメーカーBYDの日本法人であるBYDオートジャパンは、電動SUV「ATTO 3(アットスリー)」の価格と発売日を発表した。440万円(税込)で2023年1月31日に発売する。今年度の補助金の利用で355万円で購入可能となる。 今後日本全国に正規ディーラーを設けて、販売のほかアフターサービスも提供する。販売店の運営会社にはオートバックス系列も含まれ、将来的には100店舗程度に増やす計画という。 「ATTO 3」は中国市場では今年2月に発売され、10月末でのグローバル累計で14万3000台を販売した。欧州でも発売が予定され、すでにユーロNCAP安全性評価で最高評価の5つ星を獲得している。 プラットフォームには、BYDが独自に開発した「ブレードバッテリー」を搭載した「e-Platform 3.0」を採用。バッテリー容量は58.5kWh、モーター出力は150kW(204ps)。満充電での航続距離は485km(WLTCモード)となっている。 BYDは日本市場にEVバスをすでに導入しており、シェア約70%を占め一定の評価を得ている。「ATTO 3」は大容量の電池を搭載し安全性が高く価格は比較的安価だ。一般ユーザー向けとしては初の中国製EVとなるが、磐石の販売とサービス体制を構築することで、EVバスでの実績同様、一定のシェア獲得が期待できるのではないだろうか。 (福田雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ・オートバックス、BYDの正規販売ディーラーに……2023年度上半期に「BYD AUTO 宇都宮(仮称)」をオープン ・エフエルシー、BYDの正規販売ディーラー3店舗を計画……2023年下半期に「BYD AUTO四日市」、2024年より「BYD AUTO松坂」「BYD AUTO岐阜」のオープンに向けて準備 ・フォルクスワーゲン、改良予定の「ID.3」のデザインスケッチを公開……外観のほかインテリアにもテコ入れ ・フォルクスワーゲン、カナダにバッテリーの大規模工場を建設……2030年に年間40GWh分(約55万台分)を生産 ・EUの2021年EV輸出額が123億ユーロで輸入額を上まわる……EU統計局「ユーロスタット」発表 ・ステランティス、EVの「ラム1500レボリューションBEVコンセプト」を2023年のCESで公開予定……米伝統のピックアップトラックのEV ・BMW、燃料電池車の「iX5」の生産を開始……駆動機構はBMWのEVに使用されているEアクスルを使用 ・BMWチューナーのACシュニッツァー、パトカー仕様のEV「BMW i4」を公開……サスペンションなども専用にチューニング ・DS、フォーミュラE選手権シーズン9用のマシンを発表……名門チーム「ペンスキー」とのタッグ、「DSペンスキー」として再出発 ・プレステージ・インターナショナル、“電欠”救援サービス「EV駆けつけ充電サービス」を開始……現場に駆けつけて自走再開を支援

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連載企画 一覧
VOL.15
本当に日本はEVで「立ち遅れた」のか:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第15回

ジャパン・モビリティ・ショー開催でにわかに沸き立つ日本のEVマーケット。しかし現実の販売状況は日本において大きく立ち遅れている。技術では先導してきたはずの日本メーカーは、なぜEVで世界をリードできていないのか。この分野のベテランジャーナリストである御堀 直嗣が解説する。 日本の低いEV市場占有率 日本は、世界に先駆けて電気自動車(EV)の市販に踏み切った。2009年に三菱自動車工業が、軽自動車EVの「i-MiEV」を法人向けにリース販売しはじめ、翌10年には一般消費者向けへの販売も開始した。同年には、日産自動車も小型EVの「リーフ」を発売した。この2社によって、EVの量産市販が実現し、ことにリーフは海外への販売も行われ、「i-MiEV」はフランスの当時PSA社にOEM供給された。リーフの販売は世界で累計65万台に達し、その他EVを含めると、日産は世界で100万台のEV販売の実績を持つ。そのうち、日本国内は累計23万台である。 ちなみに、米国テスラは2022年では年間で約130万台、中国のBYDは同年に約90万台規模へ成長している。 同時にまた、世界共通の充電規格であるCHAdeMO(チャデモ)も準備され、リーフが販売される世界の各地域にCHAdeMO充電器の設置が動き出した。 それらを背景に、経済産業省は2012年度補正予算で1,005億円の補助金を計上し、全国に約10万基の充電器を整備するとした。この補助金は全額支給でないため、トヨタ/日産/ホンダ/三菱自の4社が資金を拠出し、補助金で賄いきれない残額を補填することに合意した。 しかし、現在の充電器の数は、急速充電と普通充電を合わせて約2万基である。 国内の新車販売において、EVが占める割合は1%以下という状況が長く続いた。昨2022年、「日産サクラ」と「三菱eKクロスEV」が発売となり、1年で5万台以上を販売することで2%ほどの占有率になろうかという状況にある。 一方、世界全体では、EVの市場占有率が13%になる。米国は5.8%、欧州は12%、中国は21%となっており、日本がいかに低水準であるかがみえてくる。 日本でEV普及が進まなかった理由 EVの先駆者であった日本が、なぜ欧米や中国の後塵を拝するようになったのか。 最大の要因は、せっかく1,005億円という充電基盤整備に対する経済産業省の支援があったにもかかわらず、急速充電器の整備にばかり世間の目が行き、EV利用の基本である基礎充電、すなわち自宅での普通充電(200V)の重要性が広がらなかったからである。ことに、マンションなど集合住宅の駐車場と、月極駐車場への普通充電設置がほぼできなかったことが原因であった。 EVの充電は、普通充電で8~10時間、あるいはそれ以上かかるとされ、これが単純にガソリンスタンドでの給油時間と比較されて、使い勝手が悪いとさまざまな媒体を通じて流布された。いまでもそうした論調が消えていない。しかし、自宅で普通充電できれば、寝ている間に満充電になるので、翌朝出かけるときは満充電で出発できる。 戸建て住宅に住む人はそれができた。ところが、戸建て住宅でも自宅に車庫がなく月極駐車場を利用する人は、近隣の急速充電器を利用しなければならなくなった。 集合住宅に住む人は、敷地内に駐車場が併設されていても、管理組合の同意が得られず普通充電ができない状態に陥った。無知がもたらした悲劇だ。EVを買う意思があっても、手に入れにくい状況があった。 集合住宅の管理組合で賛同が得られない最大の理由は、幹事がEV時代を予測できず、また自分には関係ないとして無視され続けたことにある。設置の経費は、ことに当初は補助金と自動車メーカー4社による補填があったので、ほぼゼロであった。現在でも、施工業者が残金を負担するなどのやりくりで、集合住宅側の負担が軽く済む仕組みが出てきている。それでもなお、管理組合で合意を得るのが難しい状況は払拭できていない。 基礎充電の普及を目指す業者の間でも、さらに難しいとされるのが月極駐車場への普通充電の設置だ。月極駐車場を管理する不動産業者の理解を得にくいという。

VOL.1
リッター200円にもう限界……給油の“枷”をぶっちぎれ!【モデルサードインパクト vol.1】

ガソリン高い、燃費も悪い、限界だ! かつてないほどの猛暑に喘いだであろう今夏。「もういいよ」「もう下がってくれ」と、気温に対して誰もが感じていたと思うが、自動車ユーザーはガソリン価格に対しても同じことを思っていたのではないだろうか。 リッターあたり170円、180円、190円、そして200円の大台を突破……給油をするたびに、誰もが憂鬱な気分になったはずだ。小生はドイツの某オープンスポーツカーに乗っているのだが、リッターあたり平均10kmでハイオク仕様。愛車にガソリンを入れるたび、顔が青ざめていた。 「高額給油という枷から解放されたい……」 EVの購入を決意した所感である。クルマを走らせることは、本来喜びのはず。給油のたびに落ち込むのは本望ではない。 小生は、THE EV TIMES(TET)の編集スタッフを務めています。この9月、「テスラ・モデル3・パフォーマンス」を購入しました。新たな愛車と共に進むEVライフを「モデル・サードインパクト」と銘打ち、連載で紹介していこうと思います。 EVは便利だと実感した「日産リーフ」 小生が初めて体験したEVは「日産リーフ」(2代目)である。遡ること2017年、「リーフ」が2代目になった頃、日産が全国で試乗キャラバンを開催し、小生はその試乗アテンダントを担当していた。そこで「リーフ」を存分に運転することができたのだ。 それゆえ、EVの利便性の高さを実感することになった。スポーツモデル顔負けの力強くスムーズな加速にまず驚いたのだが、給油という枷から外れて自由に走り回れることが大変な魅力に感じた。アイドリング状態でエアコンを入れっぱなしでもガソリン代を気にせずに済む。車内でPCを開けば、そのままオフィスになる。車の用途が無限大に広がると感じた。 充電時間も特別長いとは感じなかった。充電残量が50%くらいになったら、急速充電を使用してあっという間に80%まで回復できる。ちなみに100%まで充電した場合、280kmを走れる表示が出ていたと記憶している(当時は寒い季節で暖房を使用した)。ちょっとした遠出も十分に対応可能。「EVなんて不便」という印象は全く抱かなかった。そこで薄々と「将来はEVもアリだな」と思ったのだ。

VOL.20
VW「ID.4」オーナーはアウトバーンを時速何キロで走る? [ID.4をチャージせよ!:その20]

9月上旬、スイスで開催された「ID.TREFFEN」(ID.ミーティング)を取材した際に、参加していた「ID.4」オーナーに、そのクルマを選んだ理由などを聞きました。 フォルクスワーゲン一筋 鮮やかな“キングズレッドメタリック”のID.4で登場したのは、ドイツのハノーファーからはるばるスイスに駆けつけたデュブラック・マルクスさん。「フォルクスワーゲンT3」のTシャツを着ているくらいですから、かなりのフォルクスワーゲン好きと見ましたが、予想は的中! 「18歳で免許を取ってからこれまで30年間、フォルクスワーゲンしか買ったことがないんですよ」という、まさにフォルクスワーゲン一筋の御仁でした。 彼の愛車はID.4のなかでももっともハイパフォーマンスな「ID.4 GTX」。日本未導入のこのグレードは、2モーターの4WD仕様で、最高出力220kW(299PS)を発揮するというスポーツモデル。こんなクルマに乗れるなんて、なんともうらやましいかぎりです。 そんなマルクスさんにID.4 GTXを購入した理由を尋ねると、「これからはEVの時代だと思ったので!」と明確な答えが返ってきました。とはいえ、ID.ファミリーのトップバッターである「ID.3」が登場した時点ではすぐに動き出すことはありませんでした。「1年半くらい前にID.4 GTXを試乗する機会があって、踏んだ瞬間から力強くダッシュするID.4 GTXのパンチ力にすっかり惚れ込んでしまい、即決でしたよ(笑)」。

VOL.14
欧州メーカーはなぜ電気自動車に走ったのか?:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第14回

EVの知識を、最新情報から「いまさらこんなこと聞いていいの?」というベーシックな疑問まで、ベテラン・ジャーナリストが答えていく連載。今回は欧州メーカーの特集です。 日本市場参入が遅かった欧州製EV 日本市場では、欧州からの電気自動車(EV)攻勢が活発に見える。ドイツの「BMW i3」が発売されたのは2013年秋で、日本市場へは2014年春に導入された。 日本の自動車メーカーがEVを市販したのは、2009年の「三菱i-MiEV」の法人向けリースが最初で、翌2010年には「i-MiEV」も一般消費者への販売を開始し、同年に「日産リーフ」が発売された。「i3」の発売は、それより数年後になってからのことだ。 ほかに、フォルクスワーゲン(VW)は、「up!」と「ゴルフ」のエンジン車をEVに改造した「e-up!」と「e-ゴルフ」を2015年から日本で発売すると2014年に発表した。だが、急速充電システムのCHAdeMOとの整合性をとることができず、断念している。その後、VWは「e-ゴルフ」を2017年秋に販売を開始した。EV専用車種となる「ID.4」を日本に導入したのは、2022年のことだ。フランスのプジョーが、「e-208」を日本で発売したのは2020年である。 以上のように、欧州全体としては、EVへの関心が高まってきたのは比較的最近のことといえる。 くじかれたディーゼル重視路線 欧州は、クルマの環境対策として、自動車メーカーごとの二酸化炭素(CO2)排出量規制を中心に動いてきた。そして2021年から、1km走行当たりの排出量を企業平均で95gとする対処方法を考えてきた。EU規制は、販売する車種ごとのCO2排出量を問うのではなく、販売するすべての車種の平均値で95gを下回らなければならないという厳しさだ。 対策の基本となったのは、ディーゼルターボ・エンジンを使った排気量の削減と、出力の低下を補う過給器との組み合わせを主体としつつ、ハイブリッドによるさらなる燃費の向上である。 既存のディーゼルターボ・エンジンをできるだけ活用しようとする考えは、欧州メーカーが補機用バッテリーの電圧を世界的な12ボルトから、36ボルトや48ボルトに変更することによるマイルドハイブリッド化に注目してきた様子からもうかがえる。 ところが、2015年にVWが米国市場でディーゼル車の排出ガス規制を偽装していたことが明らかにされた。公的機関での測定では規制値を満たすものの、実走行で急加速などした際に基準を上回る有害物質が排出され、それによって力強い加速を得られるようにした制御が発覚したのである。その影響は、VW車だけでなく、アウディなどVWグループ内に広く影響を及ぼした。

VOL.3
ボルボは新型EVの「EX30」でインテリアに新たな価値を与え、空間を最大限、利用する!

ボルボはEX30の室内で多くの新たなチャレンジを行なっていると謳う。その詳細を小川フミオ氏が訊いていく。連載1回目はこちら、2回目はこちら。 冷たさの排除し素材を“素直”に使う EX30のインテリアが、他車と決定的に違うのは、金属的な表面処理がほとんど見当たらないこと。それは意図的にそうしたのだと、インテリアデザインを統括するリサ・リーブス氏は言う。 「心したのは、冷たさの排除です。使う素材はオネスト、つまり木に見えるものは木であり、また同時に、リサイクル素材を人間にやさしいかたちで使用しました」 インテリアは「ブリーズ」(やさしい風)をはじめ「ミスト」(もや)、「パイン」(松)それに「インディゴ」と4種類(日本はそのうち「ブリーズ」と「ミスト」を導入)。 「ブリーズを例にとると、デザインインスピレーションはサマーデイズ。シート表皮の素材はピクセルニットとノルディコ、ダッシュボードの飾り材はパーティクル、そして空気吹き出し口のカラーはブルーです」 リーブス氏は説明してくれる。 「ピクセルニットはPETボトルをリサイクルしたもの。それを3Dニッティング(立体編み)プロセスでシート用素材にしています。組み合わせるノルディコは、PETボトルなどのリサイクル素材、北欧で計画的に伐採された木から採取された素材、リサイクルされたワインコルクなどで作られたテキスタイルです」 ダッシュボード用のパーティクルは、窓枠やシャッターを中心に工業廃棄物であるプラスチックを粉砕したものだし、フロアマットは漁網をリサイクルしたという。 「リサイクル材とともに、インテリアは雰囲気を統一したので、私たちは“ルーム”という名を与えています。インディゴの場合、デザインインスピレーションは”夜のはじまり”で、デニムをリサイクルしたときに余る糸を使った素材をシート表皮に使っています」 シートじたいは「スニーカーにインスパイアされた形状」(メイヤー氏)だそうだ。

VOL.2
ボルボの新型電気自動車「EX30」にはスターウォーズのデザインが取り入れられている!?

エンジンの回転の盛り上がりには、時に人間的な表現が用いられる。しかしBEV(バッテリー電気自動車)はエンジンもなく無音なため、より無機質な、機械的な印象が強くなる。ボルボはそんなBEVに人間的な要素を入れたと主張する。連載1回目はこちら。 どことなく楽しい感じの表情 ボルボEX30は、いってみれば、二面性のあるモデルだ。ひとつは、地球環境保全(サステナビリティ)を重視したコンセプト。もうひとつは、大トルクの電気モーターの特性を活かしたスポーツ性。 デザイナーは「いずれにしても、BEVと一目でわかってもらうデザインが重要と考えました」(エクステリアデザイン統括のTジョン・メイヤー氏)と言う。 「もちろん、昨今ではICE(エンジン車)かBEVか、デザインをするときあえて差別化をしないのが世界的な流れです。ただし、私たちとしては、スカンジナビアデザインの原則を守りつつデザインしました」 メイヤー氏の言葉を借りて、この場合のスカンジナビアデザインの肝要を説明すると「形態は機能に従う」となる。 「そこで、上部に開口部とグリルはもたせないようにしようと。ただし(インバーターなどのために)空気を採り入れる必要はあるので、下にインレットは設けています」 ボルボ車のデザインアイディンティティである「トール(神の)ハンマー」なる形状のヘッドランプも採用。ただし、カバーで覆った一体型でなく、四角いLEDのマトリックスが独立しているような形状があたらしい。 「そうやって出来上がったのがこのデザインです。顔になっていて、そこには眼があって、鼻があって、口があるんです。どことなく楽しいかんじで、これまで以上に人間的な表情を実現しました」 暴力的でもなければ、ロボット的でもない。メイヤー氏はそこを強調した。

VOL.1
ボルボの新型電気自動車「EX30」は、相反する2面性を合わせ持つ文武両道なクルマ

ボルボの新たなBEV(バッテリー電気自動車)として、ついに10月2日から「サブスク」モデルの申し込みが始まるEX30。この「ボルボ史上最小のBEV」はどのように開発されたのか。ミラノで行われたワールドプレミアに参加した小川フミオ氏が関係者の声とともに振り返る。 スカンディナビアン+デジタル 2023年6月に登場したEX30は、コアコンピューティングテクノロジーを大胆に採用する、ボルボの新世代BEV。 内容にとどまらず、同時に、デザイン面でもさまざまな大胆な試みがなされているのも特徴だ。 いってみれば、伝統的ともいえるスカンディナビアンテイストに、デジタライゼーションの融合。 「私たちのデザイン的価値のすべてを小さなフォーマットで具現」したモデルと、ボルボ・カーズはプレスリリース内で謳う。 「非常に電気自動車的なデザインで(中略)閉じられたシールド(フロントグリルの開口部のこと)とデジタル表現を用いたトールハンマーヘッドライト」がフロント部の特徴とされる。 さらに新世代BEVとしてボルボが狙ったものはなんだろう。ミラノでの発表会において出合った担当デザイナー(たち)に、デザインの見どころと背景にあるコンセプトを取材した。

VOL.5
「BMW iX xDrive50」の高速電費は我慢不要! ロングドライブにうってつけのEV

[THE EV TIMES流・電費ガチ計測] THE EV TIMES(TET)流電費計測の5回目を、8月に「BMW iX xDrive50」で実施した。車高の高いSUVにもかかわらず、高速巡航時に電費が低下しにくいのが特徴だ。その詳細をお伝えする。 ※計測方法などについてはこちら、試乗記はこちらをご覧ください。 100km/h巡航でどんどん行こう iX xDrive50のカタログに記載された「一充電走行距離」は650km(WLTC)で、電池容量は111.5kWhだ。650kmを実現するには、電費が5.83km/kWh(以後、目標電費)を上回る必要がある。 各区間の計測結果は下記表の通り。5.83km/kWhを上回った場合、赤字にしている。 これまでのTETによる電費計測で初めてA区間の往路と平均で目標電費を超えた。A区間のように標高差が少ない場所では同じ状況になり得る、つまり100km/h巡航で一充電走行距離の650km近くを走破できる可能性がある。   100km/h巡航でも600kmは走れそう 各巡航速度の平均電費は下表の通りだ。「航続可能距離」は電費にバッテリー総容量をかけたもの、「一充電走行距離との比率」は650kmに対して、どれほど良いのか、悪いかだ。 iXのエクステリアは、大きなキドニーグリルが特徴的だ。ざっくり言えば全長5m、全幅2m、全高1.7m、車重2.5トンの堂々としたボディだが、Cd値が0.25と優れている。 100km/h巡航におけるiXの電費は、5.71km/kWhであった。絶対的な数値としては決して高くないが、一充電走行距離との比率を計算すると98%と、これまでにTETが計測したデータの中で最高の結果を記録した。120km/h巡航でもこの数字は78%であった。 つまり、iXは高速巡航でも電費の低下が少ないEVだといえる。 ちなみに、過去に計測したメルセデス「EQE 350+」は、この100km/h巡航時の比率が90%だった。EQEはセダンボディで背が低く、Cd値0.22で、高速巡航には有利であることを考えても、iXの98%という数字の凄さが分かる。 この結果は、空力性能の良好さと高効率なパワートレインの賜物ではないかと思う。BMWが「テクノロジー・フラッグシップ」「次世代を見据え、長距離走行が可能な革新的な次世代電気自動車」と謳っているだけのことはある。これらの記録を塗り替えるクルマが現れるのか、今後の計測が楽しみだ。   各巡航速度ごとの比率は以下の通り。80km/hから100km/hに速度を上げると21%電費が悪くなる。120km/hから80km/hに下げると1.6倍の航続距離の伸長が期待できる。

VOL.19
ぐっとパワフルな2024年モデルのフォルクスワーゲン「ID.4」をミュンヘンで緊急試乗! [ID.4をチャージせよ!:その19]

コンパクトSUVタイプの電気自動車「ID.4」が2024年モデルにアップデート。この最新版をドイツ・ミュンヘンでさっそく試乗しました。 モーターのパワーは60kW増し 「ID.4」が2024年モデルにアップデートし、コックピットのデザインが様変わりしたことは、前回のコラムで述べました。さらに今回の仕様変更では、走りにかかわる部分にも手が加えられています。 一番の変更が、新開発のモーターが搭載されたこと。フォルクスワーゲンでは、ID.ファミリーのプレミアムセダンである「ID.7」に、新たに開発した「APP550」型の電気モーターを採用しました。最高出力は210kW(286PS)と実にパワフルです。これが2024年モデルの「ID.4プロ」にも搭載されることになりました。これまでの「ID.4プロ」の最高出力が150kWですので、出力は60kW、4割増しという計算。最大トルクも従来の310Nmから545Nmとなり、こちらは75%の大幅アップです。 バッテリー容量は77kWhで変更はありませんが、2024年モデルからはバッテリーの“プレコンディショニング機能”を搭載し、冬の寒い時期、充電前にバッテリー温度を高めておくことで充電量の低下を抑えることができます。これはうれしい! 他にも、可変ダンピングシステムのDCC(ダイナミックシャシーコントロール)の改良なども行われ、果たしてどんな走りを見せてくれるのか、興味津々です。 早く乗ってみたいなぁ……と思っていたら、なんとうれしいことに、発表されたばかりの2024年式ID.4 プロ・パフォーマンスを、ドイツ・ミュンヘンで試乗するチャンスに恵まれました。試乗時間は約20分と超ショートですが、わが愛車のID.4 プロ・ローンチエディションと比較するには十分な時間です。

VOL.18
ミュンヘンで「ID.4」の2024年モデルに遭遇! [ID.4をチャージせよ!:その18]

ミュンヘンモーターショー(IAA)のメイン会場近くで、フォルクスワーゲンがメディア向けイベントを開催。そこで、2024年モデルの「ID.4」に遭遇しました。 見た目は同じ イベントスペースのパーキングに待機していたのは、“コスタアズールメタリック”のボディが爽やかな「ID.4 プロ・パフォーマンス」。日本のラインアップにはないボディカラーに目を奪われますが、エクステリアデザインはこれまでと同じで、私の愛車の「ID.4 プロ・ローンチエディション」との違いは1インチアップの21インチホイールが装着されていることくらいです。 ところが運転席に座ると、コックピットの眺めに違和感が! マイナーチェンジでもないのに、コックピットのデザインが私のID.4 プロ・ローンチエディションと大きく変わっていました。 ご存じのとおり、フォルクスワーゲンなど多くの輸入ブランドでは“イヤーモデル制”を採用していて、毎年のように細かい仕様変更を実施。エクステリアデザインは一緒でもパワートレインや装備が変わるというのはよくあること。この2024年モデルでは、インテリアのデザインまで様変わりしていたのです。 真っ先に気づいたのが、ダッシュボード中央にあるタッチパネルがリニューアルされていること。2022年モデルのID.4 プロ・ローンチエディションでは12インチのタッチパネルが搭載されていますが、この2024年モデルでは12.9インチにサイズアップが図られたのに加えて、デザインも一新され、明らかに使い勝手が向上していました。

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