コラム
share:

作りまくれ売りまくれじゃEV時代はこない! バッテリーを生涯ムダにしないための「デジタルパスポート」が必要不可欠だった


TEXT:御堀直嗣 PHOTO:DENSO/日産自動車/TET編集部
TAG:

日本国内で電池を循環させる体制構築が重要

ところが2010年に日産リーフが発売されて以後、世界の自動車メーカーはEV販売にばかり気を取られて廃車後のリチウムイオンバッテリーの二次利用についてほぼ実績がない。唯一日産だけが初代リーフ発売前に二次利用のための会社を設立し(フォー・アール・エナジー社=4R社)、すでに15年の実績をもつ。そして、二次利用の事業化をはじめている。他社はようやく実証実験を始める程度だ。

初代日産リーフ

とはいえ二次利用を前提とするなら、まず廃車後のリチウムイオンバッテリーの存在を明らかにし、それを集めて品質検査を行い、容量の残量によって格付けをし、それによって二次利用における製品保証をしてからさまざま産業における二次利用の道を切り拓かなければならない。その前提となるのがデジタルパスポートだ。

それにはリチウムイオンバッテリー製造段階でパスポートの名にふさわしい証明を発行し、これを1セルごとに取り付ける作業を進める必要がある。なぜ1セルごとといった細かい認証になるかというと、リチウムイオンバッテリーに限らず、バッテリーは使用段階で1セルことに消耗や劣化の度合いが異なるためだ。

バッテリーのイメージ

したがって、EVに車載されているバッテリーパックをそのまま二次利用に使おうとすれば、もっとも劣化したセルの性能でしか二次利用に活用できず、劣化の少ないセルがあってもそれを活かすことができなくなる。これでは資源を使い切ることにつながらない。日産系列の4R社は、すでに4セルを1単位としたモジュール単位で品質を確認する手立てをもつ。電気なので検査すれば誰にでもできることではあるが、それを短時間で判断できなければ、何百セルも車載するEVの廃車後のバッテリー品質を即座に判定できなくなる。それでは手間が掛かりすぎて二次利用における原価を高めてしまう。こうした実績をもつのは世界でも日産だけといえる。

そして、良質なバッテリー容量からA、B、Cの格付けをし、EVへの積み替え用がA、定置型での利用にはB、スマートフォンなどへの充電用にはCといった使いわけを進めている。それらを、産業として成長させるには、中古EVの海外流出を止め、国内販売を活性化し、そのうえで廃車後のリチウムイオンバッテリーの二次利用を国内で産業化する必要がある。

バッテリー再利用の例

国内でのEV販売が順調に進めば、日本国内に使用後のリチウムイオンバッテリーの電極で使われた貴重な資源であるコバルトやニッケルが、再利用として存在しつづけることになる。

EVの普及は、ただ目新しい新車が売れればよいということではない。中古EVの市場が確立し、一度日本で売られたEVが国内で止まったうえで、廃車後のリチウムイオンバッテリーの二次利用が進み、最終的な資源リサイクルによって、国内では地下資源として存在しない希少金属を国内に止め置くことこそ、将来へつながることなのである。

その大前提がデジタルパスポートだ。欧州市場で規制がはじまるからというような他人ごとではなく、自ら未来を築くためであることを知ることが大切だ。その意味では、4R社の株が急騰してもいいくらいの話なのである。

TAG:

PHOTO GALLERY

NEWS TOPICS

EVヘッドライン
3列シートEV市場へレクサスが投入するTZ! ライバルモデルとの比較でわかった競争力とは
ゲーミングPCでお馴染みの「MSI」がEV用充電器に参入ってナゼ? 設置とサポートを行う「パルコミュニケーションズ」に魅力を聞いた【後編】
ゲーミングPCでお馴染みの「MSI」がEV用充電器に参入ってナゼ? 狙いと魅力を直撃取材した【前編】
more
ニュース
実質300万円台のフレンチEVが登場! シトロエン新型「ë-C3」は航続388kmでコスパも抜群
ビジネスも車中泊もコーディネート自在なKIA PBVの正規ディーラーに老舗キャンピングカービルダーが名乗り! 「ダイレクトカーズ」ならアウトドアライフもビジネスも自由自在
日本専用チューニングを施したヒョンデの新型FCEV「ネッソ」が発売開始! 価格は実質603万円から
more
コラム
EVで苦戦気味のヒョンデを救うヒット作の可能性! IONIQ3の競争力をライバルと比べてみた
EQGじゃなくてwith EQ Technologyってどういうこと? メルセデス・ベンツの「GクラスEV」の車名の謎
急速充電は「早食い競争」のようなもの! EVのバッテリーは人間の食事と考えると「寿命を延ばす」コツがわかる
more
インタビュー
ゲーミングPCでお馴染みの「MSI」がEV用充電器に参入ってナゼ? 設置とサポートを行う「パルコミュニケーションズ」に魅力を聞いた【後編】
ゲーミングPCでお馴染みの「MSI」がEV用充電器に参入ってナゼ? 狙いと魅力を直撃取材した【前編】
「BMWの核はセダン」。「i5」での表現は、BEV世代のセダンの在り方を示している。
more
試乗
【試乗】速さはスーパースポーツ並! AWD技術も完成の域! アウディS6スポーツバックe-tronに望むのは「感性に訴えかける走り」のみ
【試乗】いい意味で「EVを強調しない」乗り味! 本格4WDモデルも用意される期待のニューモデル「スズキeビターラ」に最速試乗
マイチェンで名前まで変わった「アウディQ8 e-tron」ってどんな車? [Q8 e-tron試乗記]
more
イベント
東京湾岸に140台超のEVが集結で大盛り上がり! 「NEW YEAR EV MEET 2026」の勢いがスゴすぎた
日本生まれの英国EVスポーツクーペや全幅1m切りの小型モビリティなどEVも元気! 会場で見つけた気になるEV一気見せ【東京オートサロン2026】
新型レクサスESがモデリスタ仕様で登場! ヒョンデはMIYAVIコラボで対照的なEV披露【東京オートサロン2026】
more

PIC UP CONTENTS

デイリーランキング

過去記事一覧

月を選択