富裕層はハイブリッドを選び庶民はEVへ
欧州が完全EVシフトをあきらめたという宣言は、エンジン車が生き残る余地が生まれたということになるが、CO2排出量を大幅に減らすという目標がある限り、ゼロエミッション車の普及は必須であり、その現実的なソリューションは安価なEVを増やすことにある。
「いやいや、庶民が安価なエンジン車を買えるようにすべきだ」という意見もあるだろう。
しかし、それは無理筋な主張だと感じる。新車販売の8割がEVとなった社会において、化石燃料を購入するユーザーはごく少数になる。ガソリンスタンド・インフラは壊滅的になるだろう。結果として、ガソリンを独自ルートで入手できる富裕層や、物流業など限られた範囲においてガソリンが流通することになるだろう。

水素エンジンやe-fuel(人工ガソリン)の普及を期待する声もあるが、そうしたカーボンニュートラル燃料は、既存の化石燃料よりコストが高くなることが予想される。とくに水素ステーションはインフラ整備にコストがかかることから、欧州全般におけるゼロエミッションのメインシナリオとは考えづらい。
ガソリン入手性の悪化、燃料コストの増大という要素を考えると、庶民にとっては手軽に充電でき、ランニングコストも抑えられるEVのほうがベターなソリューションとなるわけだ。結局のところ、エンジン車が手軽なモビリティであるためには、化石燃料とガソリンスタンドがあっての話といえる。
それはともかく、新車販売の8割がEVになるという前提でマーケティングすると、庶民向けの安価なEVを増やす必要がある。逆に、富裕層向けにはエンジンを積んだハイブリッドカーを設定することで特別感を演出することができるはずだ。

現時点で、欧州メーカーのEVは多量のバッテリーを積み、ロングディスタンスとハイパフォーマンスを誇る大型モデルが目立っているが、そうしたトレンドは一気に逆転するだろう。庶民向けのコンパクトなEVが増え、富裕層向けの高級車はあえてエンジンを搭載することで贅を表現、大衆モデルと差別化を図るのではないだろうか。
すでにルノー・サンクやフィアット500eなどコンパクトEVは増えつつある。EUの方針転換は、「富裕層向けはハイブリッドカー、庶民向けはEV」というドラスティックな市場変革を加速させるのではないだろうか。すなわち、プレミアムEVブランドには逆風となる。

こうした欧州での市場変化は、日本のEVファンにとってもポジティブといえるだろう。庶民に手の届くオシャレな欧州製EVが増えるというのは、これまで高価で大きな輸入モデルばかりだった日本のEVマーケットに選択肢を増やすからだ。
もちろん、ここでの仮説はシナリオのひとつであり、必ずしもこうした未来が訪れるとは限らない。しかし、欧州が完全なEVシフトをあきらめたとしてもCO2排出量の大幅削減を求めている限り、化石燃料を大量消費するエンジン車を庶民が愛車とする日常が続くとは思えないのだ。

















































