メルセデス・ベンツも例外じゃない「EV戦略」見直しの必要性
独メルセデス・ベンツの最上級SUVであるGクラス。芸能人、スポーツ選手などを含めて富裕層の御用達として日本でもすっかり定着しているイメージがある。見た目の推しの強さとエレガンス、走りのパワフルさや頑丈さ、高いオフロード走行性能などを兼ね備えていることが人気の秘密だ。
現在、日本でのGクラスのグレードは4つ。ディーゼルの「Gd 450(1857万円)」、パワフルな「AMG G 63(2862万円)」、EVの「G 580 with EQ Technology(2237万円)」、そして「G 580 with EQ Technology Edition 1(2635万円)」というラインアップである。
ここで気になるのは、EQ Technologyという表記だ。EQといえば、メルセデス・ベンツの新しいEVブランドで、日本でのモデルラインアップでは現在、「EQA」と「EQS SUV」がある。この法則に従えば、G 580 with EQ Technologyは「EQG」を名乗るのが筋だと思う人がいるだろう。

なぜ、そうなっていないかについて、背景にあるのはメルセデス・ベンツのEV関連事業戦略の軌道修正が挙げられる。
そもそも「EQ」というブランドが登場したのは、2016年の仏パリ・モーターショーだった。そのころ、グローバル市場はEVシフトに向けて大きく動き出そうとしていた。きっかけは、2015年のCOP21(国連気候変動枠組条約・第21回締約国会議)で採択されたパリ協定だ。地球温暖化に向けた目標が明確化されたことで、温室効果ガスの一部であるCO2削減が自動車メーカーにとって大きな課題となった。解決策のひとつがEVであり、メルセデス・ベンツとしては、EQブランドの立ち上げとともに、通信によるコネクテッド、自動運転、シェアリングなど新しいサービス領域を融合して進めるCASEを提唱することになる。

さらに、2010年代後半になると、グローバル市場ではESG投資の嵐が吹き荒れる。従来の財務情報だけではなく、環境、社会、ガバナンスを通じた持続可能性を加味した投資のことだ。
その流れを受けて、メルセデス・ベンツは2021年に「市場環境が整えば」という前置きをした上で、2030年までに全ラインアップで電動化(事実上のEV化)するとの野心的な事業計画を発表する。この時点で、すでにスウェーデンのボルボなどが早期のフルEVラインアップ化を掲げていたが、グローバル自動車産業界を長きに渡り牽引してきたメルセデス・ベンツのEVシフト目標発表は業界全体に強烈なインパクトを与えた。
ところが、コロナ禍となるなか、ESG投資バブルも終焉し、行き過ぎたEVシフトを見直す流れが世界に広まる。欧州連合の執行機関である欧州委員会も、2035年の欧州域内で乗用車と小型商用車の新車100%をEV(またはFCEV)とする施策の再検討に入った(最終的に2025年12月に軌道修正)。

こうしたなか、メルセデス・ベンツは2024年2月の決算報告で、先に掲げていた「2030年までに……」というEVフルラインアップ化の目標を事実上転換し、多様なパワートレインを併存させる戦略に移行することを明らかにしたのだ。
これに伴い、EQブランド戦略も大幅に見直することなり、そうした事業転換期間に登場したGクラスのEVのモデル名称を考慮することになったといえるだろう。













































