コラム
share:

EVにレアメタルを使わない電池が普及するとレアメタルのリサイクルの採算が合わなくなる……そんな説の真偽を考える


TEXT:御堀直嗣 PHOTO:日産自動車/TET編集部
TAG:

ただ再利用すれば解決するほど単純ではない

だが素材リサイクルの前に、EVで使われるリチウムイオンバッテリーの二次利用をもっと進める必要がある。

EVで十分な性能が得られなくなっても、なお70%前後の容量をリチウムイオンバッテリーは残しており、それを単に原料へ戻すリサイクルをしたのでは、生産した際の性能を使い切らずに捨てることになりかねない。したがって、EV後は、まず定置型など含め、容量が0になるまで使い切る二次利用の道を探り、充実させることが先だ。

EVのバッテリーを再利用した電源

EVで使い終えたら次の材料へのリサイクルという発想は、20世紀型の着想である。また、リチウムイオンバッテリーとEVとの関係を十分に理解していない、机上の論理に陥りかねない。そこが、分析者たちが陥りやすい落とし穴である。

世界的に、二次利用を着実に事業化しているのは日本の日産自動車だ。

海外でも、EVから外したバッテリーパックをそのまま急速充電に活用する事例がなくはないが、まだ一部にとどまるうえ、何百セルも詰まったバッテリーパックをそのまま転用したのでは、各セル容量を0まで使い切ることはできない。理由は、バッテリーパック内のセルはひとつごとに容量が異なり、それをまとめて使ったのでは、もっとも容量の少ないセルの性能に制約されてしまうからだ。

バッテリー内のセルのイメージ

日産がフォー・アール・エナジー社を通じて実施しているように、少なくともモジュール単位まで分解して利用しなければ、十分な二次利用をしたことにならない。それには、リチウムイオンバッテリーとEVを知り尽くした知見が不可欠だ。

日産以外の自動車メーカーも、あるいは経済の分析者たちも、リチウムイオンバッテリーの本質についてあまりに知識が不足している。それでいながら、持論を展開する危うさがある。

EVとして役割を終えたあとにリサイクルが成り立つかという論議の前に、二次利用によってリチウムイオンを使いつくし、そのうえで材料リサイクルをして採算が合うかどうか。そうした道筋で思考しなければ、意味のない議論で終わってしまう懸念がある。

TAG:

NEWS TOPICS

EVヘッドライン
日本は3年連続「日産サクラ」がトップ! じゃあ中国・欧州・アメリカで一番売れてるEVってなにか調べてみた
電気自動車って「お金的に」得? エンジン車と諸々の費用を比べてみた
リーフのバッテリーパックをバラして積むって意外に大変! 初代フィアット・パンダのEV化に挑戦してみた【その5】
more
ニュース
新型エルグランドがいよいよe-POWERで登場!? 「EVの雄」日産のジャパンモビリティショー2025は電動モデルが盛り盛り
トヨタの新型モビリティでお台場周辺が一気に便利になる! 「eパレット」と「C+walk」が街全体の活性化にも貢献
ホンダがカーボンニュートラル実現に向け二輪の電動化を加速中! 欧州でネイキッドモデル「WN7」を発表
more
コラム
EVにレアメタルを使わない電池が普及するとレアメタルのリサイクルの採算が合わなくなる……そんな説の真偽を考える
レアメタルの資源不足を解決する手段! いま注目を集める「ナトリウムイオン電池」とは?
フェラーリよりもランボよりもポルシェよりも速い! たった13分で1万台が売れた中華SUV「Zeekr 9X」がヤバすぎる
more
インタビュー
電動化でもジーリー傘下でも「ロータスらしさ」は消えない? アジア太平洋地区CEOが語るロータスの現在と未来
「EX30」に組み込まれたBEVの動的性能とは。テクニカルリーダーが語る「ボルボらしさ」
「EX30」には、さまざまな可能性を。ボルボのテクニカルリーダーが話す、初の小型BEVにあるもの
more
試乗
【試乗】いい意味で「EVを強調しない」乗り味! 本格4WDモデルも用意される期待のニューモデル「スズキeビターラ」に最速試乗
【試乗】5台の輸入EVに一気乗り! エンジン車に勝るとも劣らない「個性」が爆発していた
【試乗】CR-Vに中身を乗っけただけのプロトなのにもう凄い! ホンダの次世代BEV「0シリーズ」に期待しかない
more
イベント
ホンダはジャパンモビリティショー2025で「陸・海・空・宇宙」を制す!? 「FUN to Drive」な小型EVと「0シリーズ」の新型SUVを世界初公開
電動化時代でもAMGは超弩級マシンでブランドを牽引! ジャパンモビリティショー2025でメルセデス・ベンツが「コンセプトAMG GT XX」をアジア初披露
STIコンセプトとブランド第2弾となるふたつのEVを初披露! ジャパンモビリティショー2025のSUBARUブースは「Performance」と「Adventure」魅力を提案
more

PIC UP CONTENTS

デイリーランキング

過去記事一覧

月を選択