#トランプ大統領
TEXT:桃田健史
イーロンマスクの動きで不買運動まで起こったテスラ! EVが伸び悩むいまこの先の戦略はどうなる?

イーロン・マスクの一挙手一投足が経営に影響 6月に入って連日、「トランプ vs マスク」に関する報道が続いた。マスクとは、テスラCEO(最高経営責任者)のイーロン・マスク氏のことである。 ただし、今回の件でマスク氏はテスラ経営者としてではなく、アメリカ連邦政府の政府効率化省のトップとして報道されることが多い。その名のとおり、行政機関での無駄を削減することが、トランプ大統領がマスク氏に与えたタスクだったが、その強引な方策に解雇された職員やその家族から猛烈な反発が出た。 そうしたマスク氏に対する気もちが、テスラの不買運動へと飛び火した。また、欧州市場でもマスク氏の公的、または私的(テスラCEOとして)の発言がテスラの販売に大きな影響を及ぼした。 このような経営者の動向が、自動車メーカーの業績に直接関わるケースは極めてまれである。テスラの場合、創業時は投資家として、また2000年代末にテスラが窮地に陥ってからは経営トップとして表舞台に躍り出たマスク氏の一挙手一投足が、テスラの経営を大きく左右するというプロセスが続いた。 現状、そうした「テスラ=マスク氏」という構図が、テスラ事業にネガティブに作用しているといわざるを得ない。 一方で、テスラ事業そのものを見ると、モデルラインアップでは売れ筋「モデルY」と「モデル3」が熟成期となり、また「サイバートラック」の販売が頭打ち。新事業として、ロボットタクシーや人型ロボットを自社イベントでプロモーションし、一部は社会実装のステージに入っているものの、実質的なビジネスプランの先行きは未だ不透明な状況だ。 また、中国ではBYDを筆頭とする中国地場メーカーによるEV価格競争が激化するなかで、テスラとしては新たなるセグメントでの新車導入が必要な時期なのかもしれない。 時代を少し振り返ってみると、2000年代のEV業界は「リーフ」と「i-MiEV」が大手自動車メーカー初量産のEVとして市場の基盤を作った。2010年代に入るとテスラの「モデルS」構想が具体化したものの、安定的な生産に達するまでかなり長い年月を必要とした。 ところが、「モデル3」の登場と世界的なESG投資拡大によって、テスラの販売台数、そして株価が急上昇していった。ESG投資とは、従来のように財務状況だけではく、環境、ソーシャル(社会性)、ガバナンスを重視した投資のことだ。 そうした時代の波に乗ったテスラは、マスク氏の政権入りという高みに達したのだが、世界的なEGS投資のトレンドがすでにピークから下降に向かい、世界最大の中国市場で地場EVメーカーが躍進するなど、テスラにとって、またマスク氏にとってビジネスのステージが再び大きく変わり始めているのだと思う。 今後のテスラの動向を注視していきたい。

TAG: #イーロン・マスク #トランプ大統領
TEXT:高橋 優
アメリカでもEVは失速気味……トランプ氏が大統領になるとテスラですら安泰ではなくなる可能性アリ!

ヒョンデとキアがシェアを伸ばしている アメリカ国内の、2024年第二四半期のEV普及動向が判明しました。これによると、EV普及スピードは停滞中であり、テスラ全体の販売台数も縮小しています。そしてトランプ前大統領が銃撃されたことで、トランプ政権が復活し、EVシフトがさらに混乱する可能性について解説します。 まず、このアメリカ市場における、直近の2024年6月度のバッテリーEVの販売台数は、およそ9.6万台以上と、前年同月比でまったく販売台数を伸ばすことができていない状況です。 そして、新車販売全体に占めるバッテリーEVの販売シェア率も7.3%と、2023年末に記録した8.34%というEVシェア率から低下。前年同月の7.36%と比較して、まったくEVシェア率が成長していない様子を確認できます。 また、このアメリカ市場におけるEV普及率が、その他の主要マーケットと比較してどれほど達成しているのかを比較してみると、中国や欧州などがEVシフトを引っ張る形で、世界全体のバッテリーEVの普及率は、2024年5月の段階で13%を実現。その一方、アメリカ市場は7.31%と、グローバル平均と比較して半分程度の普及率であることが見て取れます。 それでは、最新の2024年上半期において、アメリカ国内でどのようなEVが人気であるのかを分析していきたいと思います。 まず初めに、自動車ブランド別の販売台数について、2024年Q2と2023年Q2の販売台数を比較したグラフを見てみると、圧倒的トップを実現したのがテスラです。2024年Q2だけで16万台以上を販売し、アメリカ国内で販売されたバッテリーEVの総数のうち49.7%のシェアを確保。お膝元のアメリカ国内で、テスラの盤石さが光る格好となりました。 他方で、現在テスラについて指摘されているのが、じつは前年同四半期比で6.3%ものマイナス成長であるという点です。第一四半期も、前年同四半期比13.3%ものマイナス成長であり、この2024年前半戦は、9.6%ものマイナス成長でフィニッシュ。したがって、盤石であるように見せていたアメリカ国内のテスラは、じつは販売台数を落としているという状況なわけです。 その一方で、大きくシェアを伸ばしたのがヒョンデとキアという韓国勢の存在です。2024年上半期において、ヒョンデは34%もの販売増加を記録しながら、キアは倍以上の成長すら実現しています。ヒョンデグループ全体で、アメリカのバッテリーEV販売全体の10.5%ものシェアを獲得しており、かなり健闘している様子が見て取れます。 なかでもキアは、大型SUVのEV9が大きく販売台数を伸ばしています。さらに、ようやくアメリカ国内での生産をスタートしたことで、連邦政府からの日本円で100万円級の税額控除を適用可能となり、よりコスト競争力が増していくことにも期待可能です。 次にこのグラフは、第二四半期で人気のバッテリーEVの車種別ランキングトップ30を示したものです。トップはモデルY、次にモデル3、さらに第5位にはサイバートラックと、やはりテスラが圧倒的な支配力を有する一方、問題はモデルY、3の両車種ともに、販売台数が低下しているという点です。 なかでもモデル3は前年同四半期比で26.2%ものマイナス成長です。やはりモデル3に対する需要が、ハイランドへのモデルチェンジを経たとしても低下しているという点、またエントリーグレードであるRWDグレードが、7500ドルの税額控除の適用対象外であるという2点が、販売台数減少に影響したと推測可能でしょう。 他方で、販売台数を伸ばしているのが、フォード・マスタングマックE、ヒョンデIONIQ 5、トヨタbZ4X、キャデラック・リリック、キアEV6、シボレー・ブレイザーEVなどという、モデルYの競合となるミッドサイズSUVのEVたちです。なかでも、発売してすでに3年以上が経過しているマスタング・マックE、2年半が経過しているIONIQ 5については、いまだに販売台数が伸びています。 とはいうものの、やはり四半期で2万台を超えるような販売台数を実現する人気EVは、テスラ以外でいまだに存在しないのも現実であり、アメリカのEVシフトが停滞を脱するためには、テスラ以外の、人気のEVが続々と誕生する必要があるでしょう。

TAG: #アメリカ #トランプ大統領 #販売台数

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