#イーロン・マスク
TEXT:桃田健史
トランプとマスクの仲違いでどうなる? 普通の自動車メーカーとは違う「政治」に左右されやすいテスラの立ち位置

個人の喧嘩レベルでは収まらないふたりの舌戦 アメリカのドナルド・トランプ大統領と、テスラのイーロン・マスク氏がSNS上で激しく意見をぶつけあうようになって久しい。一時、マスク氏が新党結成に動くのではという見方も出たが、今後については不透明な情勢だ。 そもそも、マスク氏は先の大統領選挙でトランプ氏の支援者として政治の世界に名乗りを上げて注目が集まり、その成果としてマスク氏は特別政府職員という形でトランプ政権入りした。新設された政府効率化省のトップとしてさまざまな施策を打ち出そうとした。 だが、トランプ大統領とマスク氏との間で意見の相違がみられるようになり、5月後半になりマスク氏は特別政府職員を退任。その後も、トランプ政権が重要施策として掲げている減税策について、マスク氏は批判を強めるなど、ふたりの関係はさらに悪化しているようにも見える。 そうとはいえ、政治の世界は報道されない裏の事情があるなど、事の真相が見えず、また先読みができないのが常であり、今後何が起こってもおかしくはないだろう。 いずれにしても、マスク氏としてはテスラや宇宙事業を手がけるスペースXなど、経営者や投資家の立場で経済活動に集中することになる。とくにテスラについては、マスク氏の政治的な発言や行動が欧米でのテスラ不買運動に発展した経緯があり、トランプ政権からの離脱を受けて、「テスラ=マスク氏」としてのブランド価値の早期復興が求められるところだ。 グローバル市場で「EV需要が踊り場」となっているいま、欧州メーカー各社はEVブランドの見直し等に着手することで、さまざまなパワートレインを併存させるマルチソルーションに舵を取っている。また、中国市場でも、エンジンを発電機として使うレンジエクステンダーの需要が伸びていたり、中国メーカーによる海外進出についても一部の国や地域では戦略の見直しが必要な情勢だ。 視野をさらに広げると、先のトランプ大統領とロシアのプーチン大統領の直接会談を経て、いわゆるウクライナ侵攻の終焉を探る段階に差しかかっていることで、天然ガスや水素のエネルギー利用の国際的な枠組みにも変化が起こりそうな気配がある。 テスラはEVを軸足としたエネルギーソリューションカンパニーであり、こうした政治的な動きがテスラの経営を大きく左右する。トランプ大統領とテスラ経営者としてのマスク氏の関係は、米国内でのEV普及施策に対する意見の相違を越えた、より複雑な関係になっているといえるだろう。

TAG: #イーロン・マスク #トランプ
TEXT:桃田健史
イーロンマスクの動きで不買運動まで起こったテスラ! EVが伸び悩むいまこの先の戦略はどうなる?

イーロン・マスクの一挙手一投足が経営に影響 6月に入って連日、「トランプ vs マスク」に関する報道が続いた。マスクとは、テスラCEO(最高経営責任者)のイーロン・マスク氏のことである。 ただし、今回の件でマスク氏はテスラ経営者としてではなく、アメリカ連邦政府の政府効率化省のトップとして報道されることが多い。その名のとおり、行政機関での無駄を削減することが、トランプ大統領がマスク氏に与えたタスクだったが、その強引な方策に解雇された職員やその家族から猛烈な反発が出た。 そうしたマスク氏に対する気もちが、テスラの不買運動へと飛び火した。また、欧州市場でもマスク氏の公的、または私的(テスラCEOとして)の発言がテスラの販売に大きな影響を及ぼした。 このような経営者の動向が、自動車メーカーの業績に直接関わるケースは極めてまれである。テスラの場合、創業時は投資家として、また2000年代末にテスラが窮地に陥ってからは経営トップとして表舞台に躍り出たマスク氏の一挙手一投足が、テスラの経営を大きく左右するというプロセスが続いた。 現状、そうした「テスラ=マスク氏」という構図が、テスラ事業にネガティブに作用しているといわざるを得ない。 一方で、テスラ事業そのものを見ると、モデルラインアップでは売れ筋「モデルY」と「モデル3」が熟成期となり、また「サイバートラック」の販売が頭打ち。新事業として、ロボットタクシーや人型ロボットを自社イベントでプロモーションし、一部は社会実装のステージに入っているものの、実質的なビジネスプランの先行きは未だ不透明な状況だ。 また、中国ではBYDを筆頭とする中国地場メーカーによるEV価格競争が激化するなかで、テスラとしては新たなるセグメントでの新車導入が必要な時期なのかもしれない。 時代を少し振り返ってみると、2000年代のEV業界は「リーフ」と「i-MiEV」が大手自動車メーカー初量産のEVとして市場の基盤を作った。2010年代に入るとテスラの「モデルS」構想が具体化したものの、安定的な生産に達するまでかなり長い年月を必要とした。 ところが、「モデル3」の登場と世界的なESG投資拡大によって、テスラの販売台数、そして株価が急上昇していった。ESG投資とは、従来のように財務状況だけではく、環境、ソーシャル(社会性)、ガバナンスを重視した投資のことだ。 そうした時代の波に乗ったテスラは、マスク氏の政権入りという高みに達したのだが、世界的なEGS投資のトレンドがすでにピークから下降に向かい、世界最大の中国市場で地場EVメーカーが躍進するなど、テスラにとって、またマスク氏にとってビジネスのステージが再び大きく変わり始めているのだと思う。 今後のテスラの動向を注視していきたい。

TAG: #イーロン・マスク #トランプ大統領

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