EVのバッテリーは二次利用されている
EVで使い終えたバッテリーを、そのまま廃棄したのでは、まだ容量が7割近く残っているから、資源の無駄遣いになる。そこで、家庭電化製品などと同じように、一定の電力消費で使われる、定置型の電気機器などで利用することにより、容量ゼロまで資源を使い切ることが求められている。たとえば、発電の不安定な太陽光や風力といった再生可能エネルギーの蓄電用だ。
実際、日産自動車の子会社であるフォーアールエナジー社は、JR東日本の踏切の支援電力として、リーフで使い終えたバッテリーを供給している。従来の鉛酸バッテリーに比べ何倍も長もちするので、交換時期を長くでき、費用負担が軽減されるだけでなく、長期の使用に耐えるので万一の備えとしても安心が高まる。
ほかに、系統電力が届かない地域や道路などの外灯用としての再利用もある。小さな太陽光発電と、EV利用後のリチウムイオンバッテリーを組み合わせることにより、どこにでも外灯の設置が叶う。それは夜間の防犯にも役立つだろう。
これらの事例は、製造時の二酸化炭素排出量が多いといわれるリチウムイオンバッテリーを、EV後の二次利用で活用することにより、EV製造時の総CO2排出量の多さを、二次利用ではゼロにできることに貢献し、単にEV一台のライフサイクルアセスメントではなく、のちの社会活動を含めた総合的なCO2排出量管理の考え方につながる。脱二酸化炭素の取り組みが、単一商品の収支だけでなく、その構成部品であるバッテリーの生涯における環境負荷として検証する必要性を示している。
電気の時代となる21世紀の環境家計簿というかCO2の収支は、部品単位での生涯という新たな発想が求められるのである。
ちなみに、現在の日産のEVのバッテリー保証は、年または16万kmのどちらか先に来たほうを期限としている。より長期保証の例として、メルセデス・ベンツの上級EVでは、10年または25万kmの車種がある。
そして、200ボルト(V)での普通充電を主体にすれば、バッテリーの劣化はほぼ意識せずに済むと語るEV技術者もいる。バッテリーにやさしい充電という意識が、容量70%近くまでより長期間 EVを使い切るコツといえるのではないか。