コラム
share:

充電バカっ早! eMPが発表した超急速充電器の「ユーザーフレンドリー」っぷりがスゴイ


TEXT:高橋 優 PHOTO:EV NATIVE/THE EV TIMES
TAG:

出力だけではないeMPの急速充電器の魅力

しかしながら、その350kWという充電出力だけではない、今回の次世代超急速充電器の魅力が多数存在するという点こそ重要な部分であり、じつは本丸の部分となります。

具体的には、まず充電ケーブル、および充電コネクターの軽量化を実現したことによって、取りまわしが改善しているという点です。

各社急速充電器の性能比較表

このとおり、今回、住友が開発した新型充電ケーブル、コネクターのおかげによって、直径、重さともに大幅な改善が見られます。そして、我々一般ユーザーにとってもっとも重要な指標であると考えているのが、充電コネクター側の重さという点です。

というのも、今回の次世代超急速充電器をはじめとして、吊り下げ式など、充電ケーブルを地面に接地させない、取りまわしやすいケーブルマネージメントの採用が進んでいることで、大蛇のような重く太いケーブルを引っ張るというような状況は少なくなっています。ところが問題は、最後、EVの充電口に充電プラグを差し込む際に、その充電コネクターが重すぎて、両手を使っても刺しづらいという点です。ここの改善がないと、結局のところ取りまわし関連における、EVユーザーの充電体験が向上することがないわけです。

ポルシェの急速充電器

※ポルシェディーラーの150kW急速充電器には液冷式の充電ケーブルを採用。コネクターも大幅な軽量化を実現。

そして今回、充電コネクターの重さがおよそ1.0kgと、これまでの1.4kgと比較しても概ね3割ほどの軽量化を実現してきた格好です。さほど重さを感じずに、女性でもなんとか差し込めるなと感じる、50kW級の充電コネクターの重さは0.8kgであることから、その取りまわしは注目点です。

第二の強みというのが、プラグアンドチャージの実装を視野に入れたセンサーを搭載しているという点です。現在プラグアンドチャージを実装している充電器は、日本国内ではテスラしか存在しないものの、欧米中ではすでに、プラグアンドチャージは業界スタンダードなレベルでさまざまなメーカーが導入を進めています。よって、ようやく日本シェアトップのeMPについても重い腰を上げて、プラグアンドチャージの実装のために、とりあえず必要なハードの実装を行ってきた格好です。

もちろん今後、自動車メーカーと協力してソフト面の開発を進めていかないと、実際の実装には繋がりません。そもそもeMPの会長である姉川氏については、このプラグアンドチャージ機能の実装には否定的であり、むしろプラグアンドチャージできないことこそがチャデモ規格の強みであるという趣旨の発言すら行なっていることから、果たしてeMPがどこまで本気でプラグアンドチャージの実装に力を入れてくるのかについては、その動向に注視していく必要があるでしょう。

テスラのスーパーチャージャー

第三の強みというのが、ついに従量課金制の導入を表明してきたという点です。やはり高出力化すればするほど、従量課金制の導入がユーザーと設置者の両方から待望されていたわけであり、この点もeMPが重い腰を上げてきた格好です。

他方でさらに称賛するべきは、時間課金制とのハイブリッドシステムを導入するという点です。つまり、従量課金制だけだと、充電残量100%近くまで充電したとしても、ユーザーとしては時間制のようなコスパの悪さを感じる必要がなくなることで、立地の良い充電スペースの場合、割安な駐車スペースとして利用されてしまい、本当に充電が必要なEVが充電できなくなってしまうことになります。

よって、kWh課金と時間課金のハイブリッド課金システムを導入することによって、ユーザーと設置者、および運営側であるeMPの収益性、充電器の回転率などのバランスを図ることが可能となります。

ただし、この課金制度に対しては、二点ほど指摘しておきたい点が存在します。

まず第一に、その充電出力に応じて段階的なkWhあたりの単価を設定するべきであるという点です。軽EVなどが次世代超急速充電器を使用してしまうと、収益性という観点で設置者に旨みがなくなることから、概ね50kW以下、50kW以上150kW以下、そして150kW以上といったように、何段階かの出力に応じた単価設定が必要であると感じます。

そして、それ以上に検討するべきは、1回30分の充電時間制限の廃止という点です。とくに青いマルチや赤いマルチ、さらには今回の次世代超急速充電器については、1箇所に4口以上の充電ストールが設置されることで、充電待ちのリスクは大幅に減少しています。

よって1回30分の時間制限の撤廃は、もはやマストであると感じます。

eMPの急速充電器

※さらに、充電終了後もケーブルを挿しっぱなしにして放置してしまう、いわゆる充電放置問題についても対応するとアナウンスされました。

そして、最後に期待している点というのが、ダイナミックプライシングの導入という点です。具体的には、再エネの有効活用を促進する充電料金を設定するという意味です。つまり、日中太陽光発電によって電気が余って安くなっている時間帯では、急速充電料金を安価に設定しようというものです。これによって、ただユーザー側が安く充電できるようになるという話だけではなく、運営側であるeMPについても、充電器利用者の時間帯を分散させることが可能となるでしょう。

いずれにしても、今回発表された次世代超急速充電器が、実際にどれほどの性能を実現することができるのか。軽量化・小型化された充電ケーブル・コネクターの取りまわしは女性や車椅子ユーザーにとっても扱いやすく開発されているのか。従量課金と時間制課金のハイブリッド課金システムはどれほど公平感があるのか。1回30分の時間制限の撤廃はあり得るのか。

これらの点については、最新情報とともに実際に設置された充電器の使い勝手もリポートする予定です。

TAG:

PHOTO GALLERY

NEWS TOPICS

EVヘッドライン
ブレーキダストを封じ込めて環境対策! メルセデス・ベンツが開発したEVならではの技術「インドライブ・ブレーキ」ってどんなもの?
ヒョンデの魅力を日本に伝える新たな拠点! 「ヒョンデ みなとみらい 本社ショールーム」がグランドオープン
中国から地球上最強コスパの新星EV現る! IMモーターL6の驚くべきスペックとは
more
ニュース
EVからEVに急速充電で可能性は無限大! 「V2V」を実現する移動式急速充電車「MESTA Pro」が誕生
日本初のEVマイクロバスとEV大型観光バスがついに姿を見せた! EVモーターズ・ジャパン「V8-Micro Bus」と「F8-Coach」がバステクで初公開
国際興業がいすゞエルガEVを埼玉県に初導入! パワーエックスとの提携で走行時CO2排出ゼロに取り組む
more
コラム
これがトヨタの本気だぜ! 新型bZ4Xの日本導入が待ち遠しい!!
EV時代は変速機が不要になるからトランスミッションメーカーが危ない……は間違い! EV時代に重要になる「精密な歯車」の技術
日産の起死回生の一撃がスゴイ! 「この中身でこんな安いの?」驚きしかない最新EVセダン「N7」
more
インタビュー
電動化でもジーリー傘下でも「ロータスらしさ」は消えない? アジア太平洋地区CEOが語るロータスの現在と未来
「EX30」に組み込まれたBEVの動的性能とは。テクニカルリーダーが語る「ボルボらしさ」
「EX30」には、さまざまな可能性を。ボルボのテクニカルリーダーが話す、初の小型BEVにあるもの
more
試乗
【試乗】5台の輸入EVに一気乗り! エンジン車に勝るとも劣らない「個性」が爆発していた
【試乗】CR-Vに中身を乗っけただけのプロトなのにもう凄い! ホンダの次世代BEV「0シリーズ」に期待しかない
【試乗】二度見必至の存在感は普通のコナとはまるで別モノ! イメージを大きく変えたヒョンデ・コナ「N Line」に乗って感じたマルとバツ
more
イベント
公道レース「フォーミュラE東京」が帰って来る! チケットを持っていなくとも無料で1日遊び尽くせる2日間
災害に備えて未来を楽しむ! 「AWAJI EV MEET 2025」の参加はまだまだ受付中
災害時にも活躍できるEVの可能性を淡路島で体験! 「AWAJI EV MEET 2025 from OUTDOOR FEELS」開催決定
more

PIC UP CONTENTS

デイリーランキング

過去記事一覧

月を選択