「駆け抜ける歓び」を磨き、電動化・デジタル化・循環型社会に対応
例えばすべてが刷新された4つの主要なコントロールユニットは、それまでのコンピューターでは個別に処理がなされていたものを、同時に動かし連携することで大幅に処理能力を向上させ、自動運転であったり、ダイナミックな運動性能の向上につなげ、BMWらしい「駆け抜ける歓び」をさらに磨いていくとしている。
SAV向けに最低地上高をより高く設けた電気自動車用アーキテクチャは、車内空間の拡大に加え、長いホイールベース、短いオーバーハングを実現している。これまでのBMW各Xモデルのエクステリアデザインを継承しながら、先進性を盛り込み近い将来のXモデルを示唆するデザインにまとめ上げている。
インテリアはデジタル化が進んでいる。再設計されたマルチファンクション付ステアリングホイール、直感的なタッチ操作機能のセンターディスプレイに加え、BMWパノラミックビジョンが、BMWインテリジェント・パーソナル・アシスタントの先進的なボイスコントロールと相まって、人間とクルマをつなぐ扱いやすい直感的なインターフェイスとして機能する。BMWパノラミック・ビジョンは、フロントウィンドウの全幅に主要な情報を投影する。
また、ノイエクラッセXの量産モデルでは、アップデートされたBMW 3Dヘッドアップ・ディスプレイを搭載予定だという。
ノイエクラッセXはEVとしての基本性能も新たな領域に入っている。その主要な役割を担うのは、最新の第6世代BMW eDriveテクノロジーである。改良されたe-driveユニットに加え、これまでの角形バッテリーよりも体積エネルギー密度が20%向上した新しい円形リチウムイオン・バッテリーを搭載。これを800Vへ移行したシステムと組み合わせることで、充電速度が最大30%改善し、300kmの航続距離に必要な電気をわずか10分で充電することができる。
その結果、第6世代BMW eDriveでは航続距離が最大30%延長することとなった。これにはドラッグを20%軽減させた空力性能の進化も大きく寄与している。
一方で循環型社会に対する取り組みにも余念がない。ノイエクラッセXのインテリアのために、100%植物と鉱物に由来する原料で、石油を一切使わずに製造するサーフェス用素材が開発された。これはドアパネリング下部とセンターコンソールに使用する予定である。
海洋プラスチックも初めて使用し、射出成形パーツの材料になる。廃棄漁網などから採取したこの二次原料の利用率は、特定の部品では既に30%を占める。
こうした素材と構成手法を選択することで、部品の分解が容易になりリサイクル率も高まる。サイドスカートとフロントエプロンおよびリヤエプロンの付属品も、単一のリサイクル素材を使用。この取り組みにおける新デザインコンセプトは、2021年に発表した「BMW i ビジョン サーキュラー」が示したRE:THINK、RE:DUCE、RE:USE、RE:CYCLEの原則に沿っており、リサイクル性を最適に実現するために広い範囲に単一素材を使用している。
さらに、ノイエクラッセは、生産についても新たなフェーズに入る。ハンガリーにあるBWMグループ・デブレツェン工場は、「iFACTORY」として計画と開発が行われており、2025年にノイエクラッセの量産モデルが生産を開始となるのにあわせ、世界のBMWグループ製造拠点のなかでは初めて化石燃料以外のエネルギーのみで稼働する工場になるという。
BMWは歴史上重みのある「ノイエクラッセ」という名称をあえて採用し、自らの大きな変革を表現している。同時にその変革を取り入れた量産車が、2025年には登場することが明言された。ノイエクラッセXは、BMWの新章が間もなく始まることを告げるプロローグ的な存在なのだ。