トヨタ連合の商用軽EV発売延期で日本のEVシフトはさらに遅れる
そして、日産を除いた、それ以外の自動車メーカーのバッテリーEVの販売状況を確認すると、三菱、テスラ、トヨタに続き、中国BYDがトップ5にランクインしてきているという点も注目するべき動向です。1月単体では198台と、同じ時期に進出を果たした韓国ヒョンデの70台と比較しても、圧倒的な販売台数を実現しています。
BYDについては、年末からドルフィンの納車を本格化させており、年度末にかけて、さらに販売台数が増加することが期待されています。
ただし、このBYDについてもまったく同様に、2024年度のEV補助金に左右されることは間違いありません。販売ディーラーを整備しているものの、充電ネットワークの拡充にはコミットしていないことから、日本メーカーと比較して、補助金額がどうなるのかには要注目です。
韓国ヒョンデについては、すでに年末から2車種目のコンパクトSUVであるコナの納車をスタートしているものの、それでも月間70台というのは、非常に厳しい状況であるといえます。
確かにヒョンデについては、2024年から2025年にかけて、IONIQ5のハイパフォーマンスモデルであるIONIQ5 N、コナよりもさらにコンパクトなキャスパーのEVバージョン、そして、3列目シートを搭載した大型SUVであるIONIQ7を日本国内に導入する可能性が濃厚であるものの、どれも日本国内にドンピシャでハマるような車種ではないことから、ヒョンデの知名度を大きく向上させることは難しいのではないかとは感じます。
そして、2024年シーズンにおいて注目するべき、日本国内に導入される新型EVについてですが、商用軽EVの本格普及元年になるという点が重要です。
まず、すでに発表されたのが、日産のクリッパーEVです。三菱のミニキャブミーブの兄弟車として、競合よりもいち早く商用軽EVをラインアップした格好です。
他方で、商用軽EVの大本命であるのが、ホンダのN-VAN: eの存在です。ガチンコの競合と目されていたトヨタ連合の商用軽EVについては、ダイハツの不正問題によって発売が延期してしまいました。よって、2024年シーズンに商用軽EVを購入するとなれば、このホンダのN-VAN: eとなることは間違いなく、ラストワンマイルの配送車両として、一定の販売台数を達成することに期待可能です。
次に、すでに発売済みである輸入メーカー勢の注目EVとして、ボルボのコンパクトSUVであるEX30、BYDドルフィンに関しては、引き続き2024年もおすすめEVの中心的な車種となることは間違いありません。
確かに、BYDからはプレミアムセダンであるSeal、ボルボからもフラグシップSUVであるEX90が発売予定であるものの、これらの車種に関しては、日本国内においてはニッチな販売台数に留まるわけであり、それを考慮に入れると、大衆EVの入門版であるドルフィン、プレミアムEVの入門版であるEX30というのは、2024年も引き続き、最重要EVとなることは間違いないわけです。
また、BYDに関しては、アット3よりもさらにコンパクトなSUVのYuan Upを日本国内に導入する可能性が高く、ドルフィンと同等の値段設定で、それでいてSUVタイプのEVとくれば、購入検討に入れるユーザーも出てくるはずです。
他方で、冒頭でも指摘していた日本メーカー勢からは、商用軽EV以外、新型EVが導入される可能性がほとんどないという点こそ、2024年シーズンにおける、日本のEVシフト停滞を予期させるもっとも大きな問題点となるでしょう。
日産についても、リーフの大規模なモデルチェンジが行われないということ、トヨタもすでに欧米では発売が予告されているコンパクトSUVを、まだ日本国内には導入予定ではないという点、ホンダについても、Honda eの生産を終了しながらその後継モデルとなるN-ONEのEVバージョンについても、発売は2025年中に計画されていることから、2024年は、EVシフト停滞がキーワードとなる一年になりそうです。