#BYD
TEXT:福田 雅敏
日本市場で存在感を増す新興EVメーカー……EV開発エンジニアのオートサロン探訪[その2]

世界最大級のカスタムカーのイベント「東京オートサロン2023」が1月13日から15日まで幕張メッセで開催された。今回の「オートサロン」には、多数のEVも出展されると聞いた。そこでEV開発エンジニアであり本媒体のエグゼクティブアドバイザーである福田雅敏が現地に赴いた。その現場をレポートしたい。今回は「その2」をお送りする。 超合理的に作られた1人用超小型EV、KGモーターズ「ミニマム・モビリティ・コンセプト」 今回気になっていた展示車が、スタートアップ企業「KGモーターズ」(広島県)が開発した「ミニマム・モビリティ・コンセプト」だ。展示されていたブースは、テスラが認めたカスタマイズパーツを扱うアフターパーツメーカー集団「テスラ・アライアンス」の一角。車両は小さいながらも、異彩を放っていた。 今回実車が初公開された「ミニマム・モビリティ・コンセプト」は、既に発表済みの軍用車にも似たものとは異なり、愛着のわく可愛い原付4輪EVとなっていた。かなり特徴的なスタイリングだ。 ボディサイズは全長2,450×全幅1,090×全高1,500mmとなる非常にコンパクト。80年代のポラロイドカメラをモチーフにレトロ感を演出しながら、前後左右対称という近未来的なデザインとなっている。フロントから見ると、なんだかポーランド製の「フィアット126」を想起させる雰囲気があった。 このボディデザインには理由がある。この形とすることで、ひとつの整形型で左右のボディパネルが作れる。すなわち合理的にコストダウンができるのだ。ガラスもコストを抑えやすい平面ガラスを使用している。 走行性能は、定格出力0.59kW(0.8ps)、最高出力5kW(6.8ps)、航続距離は100kmと控えめだが、エアコンがついており、1人用のチョイ乗り下駄代わりとしては十分だ。展示された試作車は日本製の部品で組み上げたというが、今後中国製のバッテリー等も検討し100万円を切る価格での販売を目指すという。100万円で100km走れるEVというのは魅力的ではないだろうか。 現在はモニターを募集中で、月額1万円で2ヵ月100人を募集しているという。興味ある方はぜひKGモーターズに問い合わせてみてはいかがだろうか。

TAG: #BYD #HWエレクトロ #KGモータース #アット3 #エレモ-L #ミニマム・モビリティ・コンセプト #東京オートサロン2023 #福田雅敏
TEXT:ABTwerke
BYD アット3がいよいよ日本発売! その価格と販売体制は日本のEV市場に革命を起こすか?

  これはEV維新というべき発表ではないだろうか。中国のEV大手BYDが日本に本格上陸。12月5日、BYDの日本法人であるBYDオートジャパンは、日本導入の第1弾のモデル「ATTO 3(アットスリー)」の価格を発表。同時に2023年からのBYDの日本展開についても語られた。それは日本市場に革命を起こしそうな規模である。 アット 3の価格は税込440万円(税抜400万円)、補助金を入れるとさらに手頃に 日本導入第1弾となる「アット 3」は、現在世界中のメーカーのドル箱であるSUVだ。価格は税込440万円。補助金の対象となるため、多くのケースでもっと手頃に購入できる。5日に行われたBYDオートジャパンによる発表会で、東福寺厚樹代表取締役社長は価格についてこう述べた。 「400万円という数字は、Eモビリティをみんなのものに、という我々が目指す姿の現れ。日本のどのクルマをベンチマークにしたというわけではないが、BEVとPHEVの総合的な価格帯から検討した結果、税抜400万円に決定した」 また現在は日本全体が値上げラッシュである。今後値上げの可能性があるかについては、このように答えた。 「価格は中長期的な視点で設定した。発表した以上は当面この価格で勝負したいと思っている」 この発言から、BYDの日本進出は流行を追った一過性のものではない、ということが窺える。 高級ブランドのエキスパートが手がけたデザイン アット3のボディサイズは全長4,455×全幅1,875×全高1,615mm。このサイズは国産のSUVと比較すると、「トヨタ・ハリアー」(4,740×1,855×1,660)や「日産エクストレイル」(4,660×1,840×1,720)、「マツダCX-5」(4,575×1,845×1,690)と同格と捉えられる。日本のユーザーでも馴染みやすいサイズではないだろうか。 滑らかな曲線とキャラクターラインを組み合わせたバランスは、欧州のプレミアムブランドと並べても見劣りしない。ホイールは車体の四隅に配置。ボンネットからキャラクターラインを経てテールランプに至るラインにSUVらしい腰高さを感じるものの、グリーンハウスの高さが抑えられていることで全体的にスポーティな印象だ。 インテリアはクルマらしい操作系が残されているのが特徴。全体としては、フィットネスジムをイメージしてデザインされたとのことだが、例えば細く感じるドアトリムやその上のホワイトのパネル、そこから前方のダッシュボード下部に至るラインからはデザインに対する意識の高さを感じる。 ダッシュボード中央にある12.8インチのタッチ式インフォメーションパネルは、「Apple CarPlay」「Android Auto」に対応し、その他車体の設定もつかさどる。ユニークなのは画面を回転することができ、スマートフォンやタブレット端末のようにフレキシブルな表示が可能であること。例えばナビ使用時は、縦画面にすると見やすさが格段に向上するだろう。 またインフォメーションパネル下のセンターコンソールには、馴染みのあるシフトレバーが備わる。レバーの周りにはハザードスイッチやエアコンなどのボタン類も配置されている。他のモデルでは、エアコンスイッチなどをタッチパネルにしているものもあるとはいえ、ブラインドタッチでの操作性は物理的なボタンに敵わない。シフトレバーも、電子制御であることを考えるとハンドル周辺に小さいレバーとして配置しても良いが、馴染んだ位置にあるほうが高齢者を含めた幅広い年代層に訴求しやすい。アット3の操作系の設計は、扱いやすさも考慮した結果だろう。 続いてパワートレインのスペックを見てみよう。モーターの最高出力は150kW(204ps)、最大トルクは310Nm。性能的には申し分ない。トルクが素早く立ち上がるEVならではの特性によって、市街地での発進や幹線道路への合流がしやすいだろう。 アット3の低重心設計はEVならではの特徴だ。自社製の薄型「ブレードバッテリー」を採用し、それが床下1面に搭載されている。ボンネットの下にある電動パワートレインも小型で、それら全てがタイヤの全高よりも低い位置に搭載されている。 バッテリー容量は58.56kWhで航続距離は485km(WLTCモード)。この数値であれば、冬にバッテリーの消費が激しい暖房を使用しても安心だ。購入開始から8年もしくは15万km以内にバッテリーの性能が新品比較で70%以下になった場合は無償交換の対象となる。 設計陣が欧州で鍛え抜かれたエキスパートであることは注目に値する。アルファ・ロメオのチーフデザイナー経験者であるウォルフガング・エガー氏をはじめ、メルセデス・ベンツでインテリアデザインを手がけたミケーレ・パーネティ氏、そして同じくメルセデスでシャシーチューニングを担当したハインツ・ケック氏を起用。簡単に言えば、アット3はアウトバーンを走るクルマを手がけた人々がデザインしたものだ。 ボディパネルのプレス成形品は、日本のタテバヤシモールディングが手がけている。衝突安全性についても、ユーロNCAPで最高水準である5つ星の評価を獲得している。アット3は中国のクルマだが、実は先進国の知恵と技術を取り入れたプレミアムカーと言える。 市場が覆るほど充実した販売とサービス体制 今回の発表でもっとも驚いたのは販売体制とアフターサービス等の充実ぶりである。購入の敷居を下げるため、月額4万400円のサブスクリプション型のリースプランも用意している(任意保険は付帯しない)。もちろん従来型ローンや残価設定型もあるので、どの支払い方式を選ぶかは自由だ。 手頃な価格設定であっても、そもそも買いに行く場所がないと購入も何もない。BYDオートジャパンは、2023年1月下旬以降に15都道府県で22箇所の「開業準備室」を順次オープンし、そこで新車の販売や試乗、アフターサービスを受けられる。もちろんこれ以降も全国にBYDの正規ディーラーをオープンさせる予定で、その数は2025年末までに100を超える計画だという。 各店舗には50kW級の急速充電器を備えるほか、故障時には購入店か否かに関係なく相談と対応が可能。電欠などに対応できるコールセンターも24時間365日で稼働させる。BYDオートジャパンは横浜の大黒埠頭に大規模な物流倉庫を設け、そこには新車はもちろん車体パーツも保管される。修理に長期間を要する心配もないだろう。 冒頭で「革命が起きそう」と言った理由は、この販売・アフターサービス体制の充実ぶりにある。近年、最初からこれほどの体制を持って日本に上陸した輸入車メーカーはあっただろうか。よほどの自信と普及への意気込みがなければ、大規模な体制を構築することはできない。うかうかしていると、既存のメーカーは市場をあっという間にBYDに明け渡してしまうのではないだろうか。

TAG: #BYD #アット3
TEXT:岩尾 信哉
BYDオートジャパン社長が考える日本進出戦略とは?[社長インタビュー:その 4]

BYDの日本市場でのブランド構築 想像するほど大きくない国の干渉 BYDの日本市場への参入に関してひとつポイントになりそうなのは、BYDが中国にオリジンを持つ企業であることだ。過去には米国と日本のマーケットでは貿易不均衡が問題になり、そこに政治が介入することがあったが、客観的に中国という国家は様々な意味で大きな存在に思える。たとえばBYDのビジネスを拡大するために、私企業であるBYDに対して国家による大きなバックアップは期待できるのだろうか。 「中国は国策として『ニューエナジーヴィークル』(NEV)に対して補助金を出して普及を促進しています。NEVとは燃料電池車、BEV、プラグインハイブリッド車の総称です。BYDの乗用車はすべてNEVに認定されるように2022年の3月末にラインナップを整えて、純粋なガソリン車などは生産終了しています。自動車強国を目指す中国が、NEVを推すというのも大きな追い風のひとつかもしれません」 「海外への輸出に対して積極的な企業を、どんどん応援してくれる空気があると思います。BYDのような私企業でも一所懸命に社会のためになる製品をしっかりと生産・販売を拡大して輸出する会社に対する干渉はないと聞いています。BYDは現状では中国国内の販売も伸びており、この勢いのままどんどん行こうということで、輸出も今年からアジア太平洋地域とともにヨーロッパでも先のパリ・モーターショーでも来年以降の新型モデルを発表するなど、様々な形態で海外に打って出るフェーズに達している状況なので、そんな全体の空気感にうまく乗れているのではないのかと思います」 地道に進めるブランディング それではBYDのマーケティング活動は今後どのような形で進められるのか、具体的に尋ねてみた。たとえばブランドの訴求に当たって様々なメディアを活用する、イベントを開催する、若い人に関心を持ってもらいたいなど、企業によってそれぞれ方向性があると思われるが、今現在どのような方針で進めていこうと考えているのだろうか。 「日本の一般のお客様からするとBYDというブランド自体、まったくご存じない初めてのブランドだと捉えていて、まずはBYDという企業体がどのような会社なのか、今世界の中でどんな技術を備えて広がりを見せているのか、今に至る経緯をきちっとした形で伝えられるようなPR活動を実施していきます。販売を開始するまでの間に地ならし的な意味でBYDのブランディングを、主としてSNSを中心にウェブ媒体で、様々な形で多くの人々に目に触れるようなチャンスを作っていきたい。と同時にEVを紹介する展示試乗会のようなイベントで直接お客様にクルマをご覧いただき、BYDが持っている技術や品質の高さ、クルマとしての仕上がりの良さを実感してもらう機会をできるだけ多く用意していきたいと思っています」。 最後に具体的なネットワーク構築のスケジュールに関連する、BYDオートジャパンの販売促進の取り組みを訊いてみよう。 「来年1月以降に販売開始になりますが、当初の段階で出店が決まっている会社に対しては、近隣の地域のお客様に対して試乗できるようなイベントを実施したり、車両を毎月1ヶ月間貸与して、生活の中でBYDのEVの使い心地等々、生の声をSNSで発信してもらうモニターキャンペーンの応募受付を開始しています。メーカー側が宣伝するよりは、実際にお使いいただいだお客様からの声のほうがより刺さるのではないかと捉えています。店頭での販売も行いつつ、モニターキャンペーンや試乗の機会を様々な場所で設けてじわじわとBYDというブランドの認知と商品に対する関心を高めていく。最初は地道ですがそのように進めていきたいと考えています」

TAG: #BYD
TEXT:岩尾 信哉
BYDオートジャパン社長が考える日本進出戦略とは?[社長インタビュー:その 3]

変化をいとわぬIT企業ゆえの身軽さ 巨大ITグループ独特の「スピード感」 ここまでBYDオートジャパンの具体的なビジネスを紹介してきた。いっぽうでBYDという企業グループは、これまで国内外の自動車会社でキャリアを積み重ねてきた東福寺氏の視点から見ると、企業としてどのような個性があるのだろうか。 「BYDに来て、他社と一番大きく違うなと驚いたのがスピード感ですね。方針決定から実現に至る期間の短さでした。そして本当により良い結果になるのであれば、状況の変化に応じて一旦決めたことでも変えていく、朝令暮改も恐れないフレキシビリティは従来の企業とは違うと思います。それが急成長、急拡大をもたらした主たる要因ではないでしょうか」 「私も長く自動車業界に関わってきましたが、自動車はご承知の通り、年式やマイナーチェンジ、フルモデルチェンジと1年や2年、4年ごとといったタイミングで変更を実施すると信じていたのですが、BYDは必要であれば年の途中でもバージョンアップするなど、市場が求めているのであれば計画変更も辞さずに新しい製品を投入していくなどの自由さが特徴です」 「さらに端的な特徴は、お客様の動向を常にウォッチしていることです。この色の方がもっと売れると思ったらその色に変えてしまうとか、切り替えがものすごく早いのです。その自由さはよくよく考えてみるとBYDは電子部品、バッテリーから始まったメーカーで、コンピューターや電子部品の売上利益も、いまだに自動車と並んでかなり大きいのです、ですからIT企業でもある、いわゆるテック系と呼ばれる企業としての身軽さや素早さ、変革に対する恐れのなさが働くのではないでしょうか。つまり、トラディショナルな自動車会社に比べると、『ITエレクトロニクス企業の自動車部門』と考えたほうが変化に対する躊躇のなさを説明できる気がします」 目が行き届いたディーラー拡大戦略 BYDオートジャパンでは、2025年までの3年間で100ディーラーの展開という目標を急務として掲げている。すなわち、各県あたり2ディーラーのレベルとなり、かなりの急拡大を実現しなければならない。ネットワーク全国拡大にあたってはどんな戦略を描いているのだろうか。 「2023年から販売を開始する際には、各販売会社さんがある程度余裕を持っていないと販売を開始できません。どの企業がディーラーとして我々のパートナーになってもらえそうかは様々な情報を集めました。私が入社してから、前職時代の様々なお付き合いや、業界でその道のプロの人だと認められる人たちばかりをリクルートしてチームを組んでいます。彼らが知っている販売店の情報を参考にしながら、販売してほしい会社をピックアップして飛び込み訪問で社長さんに直接アポイントを取りました。そのうえで『BYDがEV事業を考えているが興味ありませんか』と個別にアタックして、現在では16社ほどが来年以降に事業のパートナーになっていただけそうな状況です」 BYDは日本においてはBEV専業としているが、BEVは寒い環境に弱いというイメージが一般的にあるが、販売の地域性についてはどのように捉えているのだろうか。 「BYDの電気自動車の観点で見ると、中国には日本よりもはるかに寒く気候の厳しい地域があります。そんな場所で長年使われている事実を考えると、特に日本だから環境が厳しいことはないと考えています。一方でたとえば北海道や東北の販売会社からすると、雪国ではどうだろうか、マイナス20度になる気候の中でバッテリーが保つのだろうかなどと心配されている部分も現実にはあります。性能的にはBYDの最先端の温度管理ができるバッテリーマネジメントシステムが搭載され、熱帯地域でも寒冷地域でもバッテリーを最適な温度域で稼働できるように常にコントロールが可能です。いかなる温度環境下でも安心して使えるBEVとして商品化されているので、ほとんどの地域で問題なく使えます。この点はまずは販売会社さんに納得して販売していただく形を取っています」

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TEXT:岩尾 信哉
BYDオートジャパン社長が考える日本進出戦略とは?[社長インタビュー:その 2]

電動化の流れを見定めたBEV販売戦略 BYDがBEV一本で勝負する理由 東福寺氏がこれまでのキャリアで販売店勤務あるいは販売ネットワークを構築するにあたって培ってきたノウハウは、BYDオートジャパンにおいてスタッフの教育面などで活かされているはずだ。 「やはり売る側が『面倒くさいな』とか『難しいな』とか、『ここまで苦労するのであれば、他のものを』と考えてしまうようだと先に進めなくなってしまいます。まずは売る側がしっかりと製品を理解してお勧めできるような、そんなセールストークを最初からトレーニングしていくことが必要だと思います」 脱線気味かもしれないが、実力のあるセールススタッフほど自分の勧めたい製品を売る傾向があるように思われる。この点でセールススタッフが納得したうえで、顧客も納得して買ってもらうことがベストのはずだ。 「ガソリンやディーゼル、プラグインハイブリッドなど多様な選択肢があってBEVもあるといった場合に、BEV特有の準備や手続きがよく分かっていなかったり、お客様から質問された際に的確に答えられないと、自ずとそちらにお客様の目が向かないように、ディーゼルやガソリンを勧めることになってしまいます。ですが、BYDの日本でのラインナップはBEV100%ですので、BEVありきですべてきちんと仕事ができないと営業スタッフとして成績は上がりません。まして最初はアット 3の1車種しかありませんから、商品に精通してもらうことがセールススタッフとしての第一歩になると思います」 BYDはグローバルの販売状況を考えると、プラグインハイブリッドもかなりの比率を占めていると想像されるが、日本でプラグインハイブリッドを販売する考えはないのだろうか。 「実は初期の頃はプラグインハイブリッドとBEVと両方を手がけることを検討したのですが、日本市場の場合は一般的にマーケットの中心にハイブリッドがあって、次いでプラグインハイブリッドやBEVがあるという棲み分けになります。つまりプラグレスのハイブリッドが圧倒的にお客様から支持されているので、プラグインハイブリッドとBEVの両方をラインナップしていたとしても、大きなメリットがないことがひとつ。あとはBEVに絞れば、ディーラーの整備工場で用意していただくものが少なく済む利点もあります。ガソリンエンジン車に対応する設備やいろいろな油脂類を用意しながら、BEV用の専用設備も持つとなると負担が大きいのです。ここは最初からBEVでスタートした方が、ディーラーの設備の面からも投資がそれほど嵩まずに参入しやすいのではないかと考えてBEV一本でいこうと決断しました」 タイミングを見計らった日本市場参入 それではなぜ今このタイミンングで日本での販売をスタートし、BEV一本で行くことが相応しいと判断したのだろうか。 「日本政府が2050年にカーボンニュートラルを実現するという公約を表明し、それに向けて2035年までに新車販売は100%電動化する決定を菅内閣が下したことが一番大きな引き金になっています。2035年までの間に、様々な形で今までの内燃機関のクルマが徐々に電動車に置き換わっていく流れの中で、BEVもシェアが拡がると想定されます。そこで今の段階から関わることで日本でのBEV販売のチャンスも増やしていくことができると思います。他のメーカーでもBEVのラインナップが揃いつつあるので、いろいろな形でお客様にとっての選択肢のひとつとして、日本車もあるし、欧州車もある。アジアからもヒョンデも参入していますが、BYDもありますということです。姿形も中身も少しずつ違いますが、それぞれに特徴がありますので、その中から選んでいただける状況を構築していきます。BYDとしては長い目で見た時にカーボンニュートラルという大きな目標に少しても貢献できるのではないかと捉え、来年からの日本での販売が最終的に決定されたと理解しています」 日本でのグループ企業との協力関係 BYDはグループ企業として、BYDジャパンがバスや商用車を手がけ、日本でも販売が急拡大している状況にある。この中で、BYDオートジャパンの乗用車が参入するに当たって各社の協力関係はどのようなものなのだろうか。 「実は今朝も劉会長と部門長を集めてのミーティングがありました。BYDジャパンとともに、BYDグループ内に群馬県館林市にタテバヤシモールディング(筆者注:自動車用外板製作を主に手掛ける)があります。さらにBYDフォークリフトジャパン、そして我々BYDオートジャパンがあるため、4法人体制になっています」 「それぞれが自らの分野で目標を設定して頑張っていく関係ではあるものの、一方ではオリジンが共通で、同じバッテリー技術に基づく商品を数多く展開しており、今後はより協力やコミュニケーションを密にしていきます。たとえばすでにEVバスを納めている事業者の方で業務用の乗用車が必要であれば、すぐにその乗用車部門に繋いでもらう。乗用車を扱っているディーラーさんが地場の法人でバスが必要なら、バス部門に繋ぎます。いろいろな形で常に情報を共有して、BYDというファミリーの中でよりビジネスを大きくしていく方向で常にアンテナを張っていく、そういう関係ですね」  

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TEXT:岩尾 信哉
BYDオートジャパン社長が考える日本進出戦略とは?[社長インタビュー:その 1]

東福寺厚樹 1958(昭和33)年生まれ。早稲田大学商学部卒業後、1981年に三菱自動車に入社。2011年にフォルクスワーゲングループジャパン(VGJ)、2016年よりVWジャパンセールス代表取締役社長を経て、2022年にBYDオートジャパン株式会社の代表取締役社長に就任、現在に至る。   セールスのエキスパートが考えるEV販売戦略 去る2022年7月に日本市場への参入を発表した中国の巨大企業であるBYD。いまや2022年上半期において、中国の新エネルギー車(NEV:BEV+PHEV+FCV)の合計販売台数をテスラモーターズを抜くことになった。今回はBYDオートジャパンの東福寺厚樹代表取締役社長に、日本市場での販売体制をどのように構築していくのか、氏の経歴が活かされたBYDオートジャパンのEV販売戦略について、TET編集長・田中誠司がインタビューする機会を得た。 三菱自動車、フォルクスワーゲンでの経験を活かす 「最初に三菱自動車に入社して、ひと通り自動車メーカーの中での仕事に携わってきました。2年ほど販売店でセールスに従事した後、本社に異動して海外事業で北米市場に13年間関わり、国内販売本部で北海道や首都圏販売部を担当しました。その後に販売金融子会社に出向して、オーストラリアの三菱自動車に2年ほど派遣され、日本に戻って中東アフリカ部を担当するなど、三菱自動車の中では様々な部署に関わってきました」 東福寺氏に転機が訪れたのは、今から10年ほど前。2011年に縁があってVWの日本法人であるVWグループジャパン(VGJ)に転職した。 「5年間ほどネットワークマネジメント部長として、主に販売体制整備の仕事に携わりました。仕事の内容としては、販売会社さんと契約を結んだり、あとは新しいお店を出店する際の販売スタッフ、セールス、サービス、管理部門、店長さんといった方の資格要件などのトレーニングですね。アカデミーという組織があって、そこからスタッフトレーニング担当の方を主として指導し、様々な方法で販売できる組織を作っていくための仕事に5年ほど携わりました。北海道から沖縄までいろいろ販売会社の幹部の方と知り合う機会を得たことが良い経験になりました」 「その後はVGJ子会社であるVWジャパンセールスに出向したのが2016年、そこで4年ほど社長を務め、首都圏を中心に現場の指導にあたっていました。そして縁あって2022年の7月からBYDオートジャパンに入社して、今日に至っています」 前職でのEV導入に向けた苦い経験 氏がはじめてEVに関わったのは以前に勤めていた企業でのことだ。「かなり早い時期から電気自動車をやりたいと言いながらも、なかなか日本市場に導入することがなかなかできませんでした」と東福寺氏は当時を振り返る。 「他国で発売していた電気自動車を日本でも限定で販売しようとしましたが、実現できなかったという経験があります。その時は販売会社さんでも充電器を用意してくださいとか、急速充電器は価格が高く、数が入らないので普通充電器でいきましょうとなって、ひと通り整備していたのですが、最終的に日本での電気自動車販売は実現しませんでした」 つまり、電気自動車を市場導入していく段階での貴重な経験をBYD入社以前に、氏は得ていたことになる。 「家庭で基礎充電する際の充電器周りのいろいろな設備を設置しなければならないなど、EVを試験導入する手前の段階でかなり準備はしましたので、そのあたりの経験が結構役に立っていますね」 過去のEVセールスの立ち上げで得た教訓 その際に感じた、電気自動車を現場のディーラーで売らなければいけない場合に何が必要なのか、実感や印象に残ったことはあったのだろうか。なにより、この点で氏がEV販売・購入についての壁の高さを感じていたことは強みといえる。 「やはり一般のお客様に買っていただくには、充電器をご家庭で準備いただくのが一番必要なことになりますので、どうしても車庫をお持ちのお客様で200Vを引けるかどうかがまずはハードルになることが難しさのひとつでした。あとは申請やサポートも政府や自治体から得られるケースも多いものの手続きがかなり煩雑だったので、これらをお客様にお願いするのは極めてハードルが高いなと。お客様からするとそこまで大変だったら『別にいいよ』という話になってしまうので、販売店側でお膳立てして整えて買っていただくとなると手間暇がかかる。すると今度は販売店側も面倒に感じてしまい、なかなか販売促進に繋がらないのが実態だと痛感しました」 「BYDオートジャパンが日本で販売する車種はすべてBEVですから、充電器を設置していただくことは、クルマをお勧めするのとセットでお客様に最初から話していく要素になります。ご案内の仕方、必要な書類、手続きに要する時間などもセールススタッフの方にはしっかりとした説明ができるよう学習して、販売が始まった時にはお話できるような知識を持っていただくようなトレーニングプログラムを今準備しているところです」 <つづく>

TAG: #BYD
TEXT:TET編集部
デイリーEVヘッドライン[2022.12.13]

  ・プレステージ・インターナショナル、BYDのロードアシストサービスを提供……電欠現場への駆けつけサービス等 【THE 視点】株式会社プレステージ・インターナショナルは、BYDオートジャパン株式会社にロードサービスを提供すると発表した。プレステージ・インターナショナルの子会社の株式会社プレステージ・コアソリューションが他のグループ会社と連携し、サービスを展開する。プレステージ・インターナショナル・グループは、これまでも「電欠現場でのEV駆けつけ充電サービス」等にも取り組んでおり、EVに関するサービスのノウハウを十分に持つ。 BYDオートジャパンは2023年1月より日本国内での乗用EVの販売を開始する。BYDはEVでは世界的に最大手であるが、日本市場ではこれまでEVバスなど商用車のみを展開してきた。 先日の発表では、日本導入第1弾となる「アット 3」の価格が発表され、性能的にも競合に対して十分な競争力を持つことが確認できた。今回のサービスは、BYDオートジャパンにとって新興メーカーにつきまとう不安やトラブルを解決できるという強みになる。販売に拍車が掛かるのではと感じた。 (福田雅敏-自動車エンジニア、THE EV TIMESエグゼクティブ・アドバイザー) ・ホンダ、電動車でのレース参戦を検討……「二輪を皮切りに」とホンダ青山真二専務が表明 ・日産、フォーミュラEシーズン9用Gen3マシンをテスト……12月13日〜16日までスペイン・バレンシアで ・エネチェンジ、USENネットワークスとEV充電器設置で協業……飲食店、商業施設などUSENの顧客ネットワークを活用 ・エネチェンジ、「ジャパンEVオブザイヤー」を立ち上げ……第1回は2021年10月〜2022年9月に販売されたEVから選定 ・テラモーターズ、新築マンションにEV充電器の無料設置を支援……補助金を活用した新プランを提案 ・モビリティテクノロジーズ、タクシーのEV化を支援……運行計画に乗っとった充電計画の作成や充電器の提供など ・プラゴ、6kWの壁掛け型充電器「PLUGO BOX」を来春から提供……施設に応じた充電スペースへの設置自由度を高める ・bp、英国内のショッピング施設「M&S」に充電器を設置……今後2年間で70店舗、900基の急速充電器

TAG: #BYD #THE視点 #デイリーEVヘッドライン #プレステージ・インターナショナル #福田雅敏
TEXT:TET編集部
デイリーEVヘッドライン[2022.12.06]

  ・BYD、日本市場で発売……第1弾モデルは「ATTO 3」 【THE 視点】中国のEVメーカーBYDの日本法人であるBYDオートジャパンは、電動SUV「ATTO 3(アットスリー)」の価格と発売日を発表した。440万円(税込)で2023年1月31日に発売する。今年度の補助金の利用で355万円で購入可能となる。 今後日本全国に正規ディーラーを設けて、販売のほかアフターサービスも提供する。販売店の運営会社にはオートバックス系列も含まれ、将来的には100店舗程度に増やす計画という。 「ATTO 3」は中国市場では今年2月に発売され、10月末でのグローバル累計で14万3000台を販売した。欧州でも発売が予定され、すでにユーロNCAP安全性評価で最高評価の5つ星を獲得している。 プラットフォームには、BYDが独自に開発した「ブレードバッテリー」を搭載した「e-Platform 3.0」を採用。バッテリー容量は58.5kWh、モーター出力は150kW(204ps)。満充電での航続距離は485km(WLTCモード)となっている。 BYDは日本市場にEVバスをすでに導入しており、シェア約70%を占め一定の評価を得ている。「ATTO 3」は大容量の電池を搭載し安全性が高く価格は比較的安価だ。一般ユーザー向けとしては初の中国製EVとなるが、磐石の販売とサービス体制を構築することで、EVバスでの実績同様、一定のシェア獲得が期待できるのではないだろうか。 (福田雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ・オートバックス、BYDの正規販売ディーラーに……2023年度上半期に「BYD AUTO 宇都宮(仮称)」をオープン ・エフエルシー、BYDの正規販売ディーラー3店舗を計画……2023年下半期に「BYD AUTO四日市」、2024年より「BYD AUTO松坂」「BYD AUTO岐阜」のオープンに向けて準備 ・フォルクスワーゲン、改良予定の「ID.3」のデザインスケッチを公開……外観のほかインテリアにもテコ入れ ・フォルクスワーゲン、カナダにバッテリーの大規模工場を建設……2030年に年間40GWh分(約55万台分)を生産 ・EUの2021年EV輸出額が123億ユーロで輸入額を上まわる……EU統計局「ユーロスタット」発表 ・ステランティス、EVの「ラム1500レボリューションBEVコンセプト」を2023年のCESで公開予定……米伝統のピックアップトラックのEV ・BMW、燃料電池車の「iX5」の生産を開始……駆動機構はBMWのEVに使用されているEアクスルを使用 ・BMWチューナーのACシュニッツァー、パトカー仕様のEV「BMW i4」を公開……サスペンションなども専用にチューニング ・DS、フォーミュラE選手権シーズン9用のマシンを発表……名門チーム「ペンスキー」とのタッグ、「DSペンスキー」として再出発 ・プレステージ・インターナショナル、“電欠”救援サービス「EV駆けつけ充電サービス」を開始……現場に駆けつけて自走再開を支援

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