#BYD
TEXT:岩尾 信哉
BYDオートジャパン社長が考える日本進出戦略とは?[社長インタビュー:その 2]

電動化の流れを見定めたBEV販売戦略 BYDがBEV一本で勝負する理由 東福寺氏がこれまでのキャリアで販売店勤務あるいは販売ネットワークを構築するにあたって培ってきたノウハウは、BYDオートジャパンにおいてスタッフの教育面などで活かされているはずだ。 「やはり売る側が『面倒くさいな』とか『難しいな』とか、『ここまで苦労するのであれば、他のものを』と考えてしまうようだと先に進めなくなってしまいます。まずは売る側がしっかりと製品を理解してお勧めできるような、そんなセールストークを最初からトレーニングしていくことが必要だと思います」 脱線気味かもしれないが、実力のあるセールススタッフほど自分の勧めたい製品を売る傾向があるように思われる。この点でセールススタッフが納得したうえで、顧客も納得して買ってもらうことがベストのはずだ。 「ガソリンやディーゼル、プラグインハイブリッドなど多様な選択肢があってBEVもあるといった場合に、BEV特有の準備や手続きがよく分かっていなかったり、お客様から質問された際に的確に答えられないと、自ずとそちらにお客様の目が向かないように、ディーゼルやガソリンを勧めることになってしまいます。ですが、BYDの日本でのラインナップはBEV100%ですので、BEVありきですべてきちんと仕事ができないと営業スタッフとして成績は上がりません。まして最初はアット 3の1車種しかありませんから、商品に精通してもらうことがセールススタッフとしての第一歩になると思います」 BYDはグローバルの販売状況を考えると、プラグインハイブリッドもかなりの比率を占めていると想像されるが、日本でプラグインハイブリッドを販売する考えはないのだろうか。 「実は初期の頃はプラグインハイブリッドとBEVと両方を手がけることを検討したのですが、日本市場の場合は一般的にマーケットの中心にハイブリッドがあって、次いでプラグインハイブリッドやBEVがあるという棲み分けになります。つまりプラグレスのハイブリッドが圧倒的にお客様から支持されているので、プラグインハイブリッドとBEVの両方をラインナップしていたとしても、大きなメリットがないことがひとつ。あとはBEVに絞れば、ディーラーの整備工場で用意していただくものが少なく済む利点もあります。ガソリンエンジン車に対応する設備やいろいろな油脂類を用意しながら、BEV用の専用設備も持つとなると負担が大きいのです。ここは最初からBEVでスタートした方が、ディーラーの設備の面からも投資がそれほど嵩まずに参入しやすいのではないかと考えてBEV一本でいこうと決断しました」 タイミングを見計らった日本市場参入 それではなぜ今このタイミンングで日本での販売をスタートし、BEV一本で行くことが相応しいと判断したのだろうか。 「日本政府が2050年にカーボンニュートラルを実現するという公約を表明し、それに向けて2035年までに新車販売は100%電動化する決定を菅内閣が下したことが一番大きな引き金になっています。2035年までの間に、様々な形で今までの内燃機関のクルマが徐々に電動車に置き換わっていく流れの中で、BEVもシェアが拡がると想定されます。そこで今の段階から関わることで日本でのBEV販売のチャンスも増やしていくことができると思います。他のメーカーでもBEVのラインナップが揃いつつあるので、いろいろな形でお客様にとっての選択肢のひとつとして、日本車もあるし、欧州車もある。アジアからもヒョンデも参入していますが、BYDもありますということです。姿形も中身も少しずつ違いますが、それぞれに特徴がありますので、その中から選んでいただける状況を構築していきます。BYDとしては長い目で見た時にカーボンニュートラルという大きな目標に少しても貢献できるのではないかと捉え、来年からの日本での販売が最終的に決定されたと理解しています」 日本でのグループ企業との協力関係 BYDはグループ企業として、BYDジャパンがバスや商用車を手がけ、日本でも販売が急拡大している状況にある。この中で、BYDオートジャパンの乗用車が参入するに当たって各社の協力関係はどのようなものなのだろうか。 「実は今朝も劉会長と部門長を集めてのミーティングがありました。BYDジャパンとともに、BYDグループ内に群馬県館林市にタテバヤシモールディング(筆者注:自動車用外板製作を主に手掛ける)があります。さらにBYDフォークリフトジャパン、そして我々BYDオートジャパンがあるため、4法人体制になっています」 「それぞれが自らの分野で目標を設定して頑張っていく関係ではあるものの、一方ではオリジンが共通で、同じバッテリー技術に基づく商品を数多く展開しており、今後はより協力やコミュニケーションを密にしていきます。たとえばすでにEVバスを納めている事業者の方で業務用の乗用車が必要であれば、すぐにその乗用車部門に繋いでもらう。乗用車を扱っているディーラーさんが地場の法人でバスが必要なら、バス部門に繋ぎます。いろいろな形で常に情報を共有して、BYDというファミリーの中でよりビジネスを大きくしていく方向で常にアンテナを張っていく、そういう関係ですね」  

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TEXT:岩尾 信哉
BYDオートジャパン社長が考える日本進出戦略とは?[社長インタビュー:その 1]

東福寺厚樹 1958(昭和33)年生まれ。早稲田大学商学部卒業後、1981年に三菱自動車に入社。2011年にフォルクスワーゲングループジャパン(VGJ)、2016年よりVWジャパンセールス代表取締役社長を経て、2022年にBYDオートジャパン株式会社の代表取締役社長に就任、現在に至る。   セールスのエキスパートが考えるEV販売戦略 去る2022年7月に日本市場への参入を発表した中国の巨大企業であるBYD。いまや2022年上半期において、中国の新エネルギー車(NEV:BEV+PHEV+FCV)の合計販売台数をテスラモーターズを抜くことになった。今回はBYDオートジャパンの東福寺厚樹代表取締役社長に、日本市場での販売体制をどのように構築していくのか、氏の経歴が活かされたBYDオートジャパンのEV販売戦略について、TET編集長・田中誠司がインタビューする機会を得た。 三菱自動車、フォルクスワーゲンでの経験を活かす 「最初に三菱自動車に入社して、ひと通り自動車メーカーの中での仕事に携わってきました。2年ほど販売店でセールスに従事した後、本社に異動して海外事業で北米市場に13年間関わり、国内販売本部で北海道や首都圏販売部を担当しました。その後に販売金融子会社に出向して、オーストラリアの三菱自動車に2年ほど派遣され、日本に戻って中東アフリカ部を担当するなど、三菱自動車の中では様々な部署に関わってきました」 東福寺氏に転機が訪れたのは、今から10年ほど前。2011年に縁があってVWの日本法人であるVWグループジャパン(VGJ)に転職した。 「5年間ほどネットワークマネジメント部長として、主に販売体制整備の仕事に携わりました。仕事の内容としては、販売会社さんと契約を結んだり、あとは新しいお店を出店する際の販売スタッフ、セールス、サービス、管理部門、店長さんといった方の資格要件などのトレーニングですね。アカデミーという組織があって、そこからスタッフトレーニング担当の方を主として指導し、様々な方法で販売できる組織を作っていくための仕事に5年ほど携わりました。北海道から沖縄までいろいろ販売会社の幹部の方と知り合う機会を得たことが良い経験になりました」 「その後はVGJ子会社であるVWジャパンセールスに出向したのが2016年、そこで4年ほど社長を務め、首都圏を中心に現場の指導にあたっていました。そして縁あって2022年の7月からBYDオートジャパンに入社して、今日に至っています」 前職でのEV導入に向けた苦い経験 氏がはじめてEVに関わったのは以前に勤めていた企業でのことだ。「かなり早い時期から電気自動車をやりたいと言いながらも、なかなか日本市場に導入することがなかなかできませんでした」と東福寺氏は当時を振り返る。 「他国で発売していた電気自動車を日本でも限定で販売しようとしましたが、実現できなかったという経験があります。その時は販売会社さんでも充電器を用意してくださいとか、急速充電器は価格が高く、数が入らないので普通充電器でいきましょうとなって、ひと通り整備していたのですが、最終的に日本での電気自動車販売は実現しませんでした」 つまり、電気自動車を市場導入していく段階での貴重な経験をBYD入社以前に、氏は得ていたことになる。 「家庭で基礎充電する際の充電器周りのいろいろな設備を設置しなければならないなど、EVを試験導入する手前の段階でかなり準備はしましたので、そのあたりの経験が結構役に立っていますね」 過去のEVセールスの立ち上げで得た教訓 その際に感じた、電気自動車を現場のディーラーで売らなければいけない場合に何が必要なのか、実感や印象に残ったことはあったのだろうか。なにより、この点で氏がEV販売・購入についての壁の高さを感じていたことは強みといえる。 「やはり一般のお客様に買っていただくには、充電器をご家庭で準備いただくのが一番必要なことになりますので、どうしても車庫をお持ちのお客様で200Vを引けるかどうかがまずはハードルになることが難しさのひとつでした。あとは申請やサポートも政府や自治体から得られるケースも多いものの手続きがかなり煩雑だったので、これらをお客様にお願いするのは極めてハードルが高いなと。お客様からするとそこまで大変だったら『別にいいよ』という話になってしまうので、販売店側でお膳立てして整えて買っていただくとなると手間暇がかかる。すると今度は販売店側も面倒に感じてしまい、なかなか販売促進に繋がらないのが実態だと痛感しました」 「BYDオートジャパンが日本で販売する車種はすべてBEVですから、充電器を設置していただくことは、クルマをお勧めするのとセットでお客様に最初から話していく要素になります。ご案内の仕方、必要な書類、手続きに要する時間などもセールススタッフの方にはしっかりとした説明ができるよう学習して、販売が始まった時にはお話できるような知識を持っていただくようなトレーニングプログラムを今準備しているところです」 <つづく>

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TEXT:TET編集部
デイリーEVヘッドライン[2022.12.13]

  ・プレステージ・インターナショナル、BYDのロードアシストサービスを提供……電欠現場への駆けつけサービス等 【THE 視点】株式会社プレステージ・インターナショナルは、BYDオートジャパン株式会社にロードサービスを提供すると発表した。プレステージ・インターナショナルの子会社の株式会社プレステージ・コアソリューションが他のグループ会社と連携し、サービスを展開する。プレステージ・インターナショナル・グループは、これまでも「電欠現場でのEV駆けつけ充電サービス」等にも取り組んでおり、EVに関するサービスのノウハウを十分に持つ。 BYDオートジャパンは2023年1月より日本国内での乗用EVの販売を開始する。BYDはEVでは世界的に最大手であるが、日本市場ではこれまでEVバスなど商用車のみを展開してきた。 先日の発表では、日本導入第1弾となる「アット 3」の価格が発表され、性能的にも競合に対して十分な競争力を持つことが確認できた。今回のサービスは、BYDオートジャパンにとって新興メーカーにつきまとう不安やトラブルを解決できるという強みになる。販売に拍車が掛かるのではと感じた。 (福田雅敏-自動車エンジニア、THE EV TIMESエグゼクティブ・アドバイザー) ・ホンダ、電動車でのレース参戦を検討……「二輪を皮切りに」とホンダ青山真二専務が表明 ・日産、フォーミュラEシーズン9用Gen3マシンをテスト……12月13日〜16日までスペイン・バレンシアで ・エネチェンジ、USENネットワークスとEV充電器設置で協業……飲食店、商業施設などUSENの顧客ネットワークを活用 ・エネチェンジ、「ジャパンEVオブザイヤー」を立ち上げ……第1回は2021年10月〜2022年9月に販売されたEVから選定 ・テラモーターズ、新築マンションにEV充電器の無料設置を支援……補助金を活用した新プランを提案 ・モビリティテクノロジーズ、タクシーのEV化を支援……運行計画に乗っとった充電計画の作成や充電器の提供など ・プラゴ、6kWの壁掛け型充電器「PLUGO BOX」を来春から提供……施設に応じた充電スペースへの設置自由度を高める ・bp、英国内のショッピング施設「M&S」に充電器を設置……今後2年間で70店舗、900基の急速充電器

TAG: #BYD #THE視点 #デイリーEVヘッドライン #プレステージ・インターナショナル #福田雅敏
TEXT:TET編集部
デイリーEVヘッドライン[2022.12.06]

  ・BYD、日本市場で発売……第1弾モデルは「ATTO 3」 【THE 視点】中国のEVメーカーBYDの日本法人であるBYDオートジャパンは、電動SUV「ATTO 3(アットスリー)」の価格と発売日を発表した。440万円(税込)で2023年1月31日に発売する。今年度の補助金の利用で355万円で購入可能となる。 今後日本全国に正規ディーラーを設けて、販売のほかアフターサービスも提供する。販売店の運営会社にはオートバックス系列も含まれ、将来的には100店舗程度に増やす計画という。 「ATTO 3」は中国市場では今年2月に発売され、10月末でのグローバル累計で14万3000台を販売した。欧州でも発売が予定され、すでにユーロNCAP安全性評価で最高評価の5つ星を獲得している。 プラットフォームには、BYDが独自に開発した「ブレードバッテリー」を搭載した「e-Platform 3.0」を採用。バッテリー容量は58.5kWh、モーター出力は150kW(204ps)。満充電での航続距離は485km(WLTCモード)となっている。 BYDは日本市場にEVバスをすでに導入しており、シェア約70%を占め一定の評価を得ている。「ATTO 3」は大容量の電池を搭載し安全性が高く価格は比較的安価だ。一般ユーザー向けとしては初の中国製EVとなるが、磐石の販売とサービス体制を構築することで、EVバスでの実績同様、一定のシェア獲得が期待できるのではないだろうか。 (福田雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ・オートバックス、BYDの正規販売ディーラーに……2023年度上半期に「BYD AUTO 宇都宮(仮称)」をオープン ・エフエルシー、BYDの正規販売ディーラー3店舗を計画……2023年下半期に「BYD AUTO四日市」、2024年より「BYD AUTO松坂」「BYD AUTO岐阜」のオープンに向けて準備 ・フォルクスワーゲン、改良予定の「ID.3」のデザインスケッチを公開……外観のほかインテリアにもテコ入れ ・フォルクスワーゲン、カナダにバッテリーの大規模工場を建設……2030年に年間40GWh分(約55万台分)を生産 ・EUの2021年EV輸出額が123億ユーロで輸入額を上まわる……EU統計局「ユーロスタット」発表 ・ステランティス、EVの「ラム1500レボリューションBEVコンセプト」を2023年のCESで公開予定……米伝統のピックアップトラックのEV ・BMW、燃料電池車の「iX5」の生産を開始……駆動機構はBMWのEVに使用されているEアクスルを使用 ・BMWチューナーのACシュニッツァー、パトカー仕様のEV「BMW i4」を公開……サスペンションなども専用にチューニング ・DS、フォーミュラE選手権シーズン9用のマシンを発表……名門チーム「ペンスキー」とのタッグ、「DSペンスキー」として再出発 ・プレステージ・インターナショナル、“電欠”救援サービス「EV駆けつけ充電サービス」を開始……現場に駆けつけて自走再開を支援

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