目的は電動車を普及させること 地方自治体の関連施設の一部で、EVやプラグインハイブリッド車が無料で充電できる場合がある。これは、それぞれの地域でEVなど電動車を普及させることが目的だ。 背景には当然、「2050年までのカーボンニュートラル」がある。国としても、グリーン成長戦略やGX(グリーントランスフォーメーション)といった中・長期的な施策を掲げているのだから、地方自治体にもそうした考え方が浸透することは十分に理解できる。 具体的なアクションとしては、都道府県や市町村がそれぞれ、独自のCO2削減計画を策定し、そのなかでEVやプラグインハイブリッド車の購入や、充電インフラの設置費用に対する補助金制度を設けている。 そうした施策の一環として、一部では充電インフラを無償で利用できる場合もある。 こうした試みは、2010年代にもあった。当時、国は「EV・PHV(プラグインハイブリッド車の当時の表記)タウン構想」と称して都府県それぞれが日産「リーフ」や三菱「i-MiEV」などを公用車として購入したり、公共施設に普通充電器や急速充電器を積極的に設置した。そのときも「本格的なEV普及が始まる」というフレコミだった。 しかし、国や自動車メーカー各社の思惑に反して、EV普及の大波が起こらず。結果的に、地方自治体関連の施設駐車場に使われなくなったEVがホコリをかぶることも珍しくなかった。 充電インフラについては、耐用年数が過ぎても新規購入のための予算不足やそれまでの実績として当初予定よりも利用数が少ないなどの理由から、充電インフラを撤去するケースもあった。 そうした事態に対して、地域住民からは税金が正しく使われているのかという観点で、EV普及策に対する疑問の声が挙がることもあったことだろう。それが2010年代後半から2020年代前半にかけて、日本を含めてグローバルでのEVシフトが拡大するなかで、基礎自治体(市町村)も含めて充電インフラ拡充の動きが再び出てきた。 国からの補助金を得たベンチャー企業が、市町村と連携して各種施設での充電インフラ整備を進めるケースも増えてきている。 こうしたさまざま事例のなかで、住民が実質的に充電が無償になる場合もあるのだ。 ところが、ここへきて、欧州、アメリカ、中国では「EVシフトが踊り場に入った」と思われるような印象がある。それでも、中・長期的な視点では「2030年代にはEV普及が本格化する」との見方が日本の自動車メーカーの間でも主流だ。 地方自治体としては、今後のEVシフトに対する準備として、充電インフラを拡充し、利用に対する呼び水として一部で充電無償化を進めているところだが……。EVシフトの先行きが見えないいま、充電無償化に対しては地域住民からさまざまな意見や感想が出ることは致し方ないといえるだろう。