TEXT:福田 雅敏、ABT werke
“無骨・剥き出し”の80’sスタイル……米新興アルファ、EVピックアップ「ウルフ」を発表[2023.08.10]
“アメリカの軽トラック”らしい実用性重視のヘヴィデューティ志向 EVをヒットさせるには魅力的な商品性が必要 【THE 視点】アメリカの新興EVメーカーのアルファは7月31日、EVのピックアップ・トラック「ウルフ」を初公開した。同社によれば、初公開までのスケジュールは予定通りに進んでいるという。プロトタイプが高温状態・険しい地形・高速道路においてテストを実施し、それぞれの状況で高いパフォーマンスを示したとのこと。 「ウルフ」は、シングルキャブの「ウルフ」(ベーシックモデル)/ダブルキャブ(センターピラーレス・観音開きドア)の「ウルフ+」/ダブルキャブ(センターピラー有り)の「スーパー・ウルフ」の3種類を用意。 ボディサイズは、最も大きい「スーパー・ウルフ」の値で、全長5,450×全幅1,995×全高1,768mm。荷台のサイズは、長さ1,652×幅1,490×深さ458mm(スーパー・ウルフ)となっている。 シングルモーターのRWD(ベーシックのみ)とデュアルモーターのAWDの用意があり、0〜96km/h(0〜60mph)の最速タイムは5.9秒(ウルフ+)と、重く大きなピックアップ・トラックとしてはかなりの高性能ぶり。航続距離は最大で440km(275マイル)以上。アルファは現在、プロトタイプを追加生産して開発を進め、量産の準備を進めているという。 今回の発表に合わせて、アルファの公式YouTubeに「ウルフ」の走行動画がアップされた。現代のEVらしい洗練された映像ではなく、荒野をホコリにまみれて豪快に走る映像を捉えている。 北米、特にアメリカ・テキサスといった地域でのピックアップは、日本でいう「農家の軽トラック」のように、一家に一台あるような存在だと聞いたことがある。 それゆえ北米を中心にEVピックアップが続々と発表されている。筆者もカナダ旅行にて見かけた新興メーカー「リヴィアン」の「R1T」は、EV時代のピックアップを象徴するような存在だし、老舗のフォードやラムも「F150ライトニング」や「ラム1500REV」といったEVピックアップを発表している。 「ウルフ」がユニークな点は、レトロなデザインを採用していることであろう。リヴィアンもフォードもラムも、どちらかといえばモダンなデザインだが、「ウルフ」は、エンジンオイルの匂いを画面越しにも感じるような剥き出し・無骨さ溢れる1980年代風である。ベーシックモデルは特に、映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」に登場した「トヨタ・ハイラックス」そのものの雰囲気ではないか。 日本でもレトロなデザインの「トヨタ・ランドクルーザー70」新型が発表され注目を集めているが、レトロでヘビー・デューティーなデザインを好むユーザーは世界共通で存在する。「ウルフ」はそのような層の心を虜にすると思う。 ピックアップといえば、「トヨタ・ハイラックス」が、日本で若者を中心に“メーカーの想定を超えて”ヒットした。それを受けてか、三菱も新型ピックアップ「トライトン」を日本に導入する。日本でもピックアップの支持層は確実に増えている。 もしEVのピックアップが日本でも登場すれば面白い展開になる。日本でEVが売れない理由は、インフラの問題以前に“商品性が乏しい”からだと思っている。“EVはエコ”という考えと売り文句はすでに手垢まみれである。ピックアップのような、ユニークで目を引きライフスタイルに刺激を与えるEVが必要ではないだろうか。どうせ持つならかっこいい方が良い。 ともあれ、「ウルフ」は発表から2年が経過しての公開。認証プロセスや量産体制の構築といった課題があり、発売までにはまだ時間が掛かりそうではある。ただ、期待値は大きいだろう。早く市販にたどり着いて欲しいものだ。 (福田雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ★★BMW、防弾仕様の「i7プロテクション」を発表……ドイツ政府公式のセキュリティレベル「VR9」をクリア、自衛隊の64式小銃も採用する7.62mmをはじく高い防御性能[詳細はこちら<click>] ★★HWエレクトロのEVバン「エレモ-L」がキャンピングカーに……カーステイが「エレモ-L」ベースの「ムーン T-01」の先行予約を開始、HWエレクトロと共同開発 ★★出光興産、さいたま市内の再生可能エネルギーを使用したEV充電サービスを開始……「idemitsuでんき」契約者自宅の太陽光発電の電力を買取り ★武蔵精密工業、インドのEVスタートアップ「BNC」に出資……EVバイク用の駆動ユニット「eアクスル」以外にソフト開発なども協力へ ★武蔵精密工業、ケニアのスタートアップ「ARC Ride」に追加出資……二輪・三輪EVのハード・ソフトの開発を強化、東アフリカでのEV事業の展開も視野 ★TSMC/ボッシュ/インフィニオン/NXPが欧州に半導体製造の合弁会社「ヨーロピアン・セミコンダクター・マニュファクチャリング・カンパニー(ESMC)」を設立……2027年末までに製品の生産を開始 ★GM、V2H(EVの電力を家庭用電力として使用可能にするシステム)技術を推進……キャデラックの新型EV「エスカレードIQ」をはじめ2024年型のEVモデルをV2H技術「アルティウム」に適応 ★東京住宅供給公社JKK、社用車にEVを導入……「日産サクラ」を17台 ★フォルクスワーゲン、「ID.4」の展示・試乗イベントを開催……8月19日(土)の「東京ミッドタウン」<港区六本木>を皮切りに11月末まで全国19都市を巡業 ★「日産サクラ」と音楽ユニット「ゆず」がコラボレーション……「Kアリーナ横浜」<みなとみらい地区>でのこけら落とし公演を記念し「#ゆずサクラ」をキーワードとした取り組みを実施 ★“人力シリーズハイブリッド”のEVバイク「ENNE T250」、EVバイク専用タイヤを標準装備へ……予約済み車両も無償でアップグレード デイリーEVヘッドライン[2023.08.10]
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